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Review 『ムサン日記~白い犬』

Text by Kachi
2012/7/17掲載



 北朝鮮と中国の国境近くにあるムサン(茂山)から韓国へやって来た青年スンチョル(パク・ジョンボム)は、北にいた時と同じおかっぱ頭にボロい服を着ている。住民登録番号125から始まる脱北者の彼を雇う職場はほとんどなく、ポスター貼りをしてはいるが現場では安い賃金でこき使われ、なじられ、しまいには別のポスター貼りの連中とのなわ張り争いで暴力を振るわれる。熱心に教会に通い、自宅のラジカセで賛美歌を流して聖書を読むスンチョルの憧れは聖歌隊にいるスギョン(カン・ウンジン)。もちろん彼女を遠くから見つめたり、後をつけたりするだけだ。せっかく彼女の父が経営するカラオケ店で働けることになるのに、ろくに話しかけることもできない。

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 暮らしがよくなると思って北から逃れてきたのに、スンチョルは身も心もすり減るばかり。必死に神に祈っても変わることはない。そんな日々を、背中を丸めて暴力に耐える時と同じように、ただじっと我慢するスンチョル。それは、生まれた時の姿をそのまま固持し続けているかのようだ。

 愚直なまでに純粋さを守って生きるスンチョルに胸苦しさを覚えるが、南のチンド犬(珍島犬)と北のプンサン犬(豊山犬)のミックス、白い犬ペックの登場には救われる思いがする。ダウンジャケットの破れ目にガムテープを貼って着るスンチョルが、愛犬ペックには拾ったその日から可愛らしい赤い服を着せたりする“親バカ”ぶりがほほえましい。ペックとスンチョルがたわむれるシーンに差す陽光は実に暖かいのだ。韓国にも北朝鮮にも居場所のないスンチョルは、南北のミックス犬にそんな自分を投影し、それでも白いまま生きるペックをよりどころにしていたのだ。

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 他の登場人物たちは、ペックの白さが象徴する、見ていて歯がゆくなるほどのスンチョルの純粋さとは対照的に描かれている。ひそかに想っていたスギョンは、店に呼ぶホステスに対する差別意識と、“神様に恥ずかしい”職業を父から引き継いだ負い目とが、ないまぜになった複雑な気持ちを抱えている。最も印象的なキャラクターは脱北仲間で一緒に住む世渡り上手のギョンチョル(チン・ヨンウク)だ。万引きしてきた服をスンチョルに着させるほど、よくも悪くも堂々としている彼は、実際の脱北者の一部がそうであるように危ない仕事に手を染め、スンチョルにとがめられている。スギョンもギョンチョルも、それぞれ生きるためのうす汚れた道を仕方なく歩んでいる。程度の差はあれどそんな二人に共感する人もいるだろう。

 やがて転機が訪れる。ある事件が起き、窮地に立ったギョンチョルに助けを求められたスンチョルは「もうお前とは最後だ」と言って彼の頼みを引き受ける。しかしスンチョルは約束を破ってしまう。息の詰まる暮らしからもう一度抜け出すために、初めて他人を裏切って得た大金で髪を切り、背広に身を包んだスンチョル。聖歌隊に入ってスギョンと賛美歌を歌う彼にはささやかながらも幸せが待っているはずだった…。

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 純粋な自分を捨てて新たに生き始めたスンチョルを待っていた残酷過ぎる結末。スンチョルの丸い背中がじっと映し出され、歩き出したところでエンドロールになる。彼は失われてしまった純粋さにもう手を伸ばさず、丸い背中に絶望感を負ったままおぼつかない一歩を踏み出す。純粋なまま生きたかったのに、それが出来なかったスンチョル。しかし「それでも生きるんだ」と背中を押したようなラストシーンで本作は暗い印象だけにならず幕を閉じるのだ。

 製作から脚本・監督・主演までを務めたパク・ジョンボムが、脱北者だった亡き親友をモデルにしている点は大きい。「亡くなる頃、そばにいてあげられなくて寂しい思いをさせてしまったことが、ずっと心に引っかかっていた」とは監督の弁。パク監督の個人的な思いを強く反映しつつも、私的な世界に止まらず、人間が生きていくことの清さと濁りを肯定したことで、大きな共感を呼ぶ作品となっている。

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『ムサン日記~白い犬』
 原題 ムサン日記/英題 The Journals Of Musan/韓国公開 2011年
 監督 パク・ジョンボム 主演 パク・ジョンボム、チン・ヨンウク
 名古屋シネマテーク、京都シネマなどで上映中、全国順次ロードショー予定
 公式サイト http://musan-nikki.com/

Reviewer's Note
 Kachi。1984年、東京生まれ。図書館勤務。『ムサン日記~白い犬』と同じく脱北者を描いた『クロッシング』にも犬が登場し、名前も「ペック」(漢字で「白狗」。日本で言うところの「シロ」)です。犬が人間の良きパートナーなのは世界共通のようですが、両作品で「ペック」はとても重要な役割を果たしています。ところで、今夏公開の『プンサンケ 豊山犬』の主人公の名はそのものずばり「プンサンケ」。さて「プンサンケ」とは?


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