News ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015 ラインナップ発表 ~『ONE ON ONE(原題)』特別招待、キム・ギドク監督&イ・ウヌ来夕、韓国映画4本コンペイン
Text by hebaragi
2015/1/18掲載
2月19日から開催される「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015(以下「ゆうばりファンタ」)」のラインナップ記者発表が夕張市内で行われた。今回のキャッチコピーは「世界で一番、楽しい映画祭」。長い間、多くの映画人・映画ファンに愛されてきた「ゆうばりファンタ」も25回目の節目を迎えたが、これまで同様に「参加して楽しい映画祭」の理念のもと、映画の普遍的な魅力を夕張から発信していくコンセプトとのこと。期間中は、夕張市内7会場で85本の作品が上映されるほか、スペシャル企画も多数予定され総上映本数は100本を超える見込みとなっている。なお、これまで開会式などのメイン会場として使用されてきた「アディーレ会館ゆうばり」は、建物の老朽化のため「ゆうばりファンタ」での使用は今回が最後となる。

記者発表の模様
映画祭はこれまで同様、5部門から構成されている。劇場公開前の話題作をいち早く紹介する「特別招待作品部門」、映画祭おすすめのファンタスティックな作品を上映する「ゆうばりチョイス部門」、日本映画を中心とした興味深い傾向の作品や、惜しくもコンペインしなかった作品を、ジャンルにこだわらずトークショーやライブなどを盛り込んで紹介する「フォアキャスト部門」に加え、コンペ部門として中長編を対象とした若手の登竜門的な存在となっている「オフシアター・コンペティション部門(以下「オフシアター部門」)」と、今後が期待される若きクリエイターの短編を紹介する「インターナショナル・ショートフィルム・コンペティション部門(以下「ショートフィルム部門」)」がある。さらに今回は特別企画として、『幸福の黄色いハンカチ』で夕張と縁の深い俳優・高倉健をしのぶ追悼上映も多数予定されるほか、学生アニメーションの祭典ICAF実行委員会セレクション上映など、様々な企画が目白押しだ。
今回も大きな見どころは新たな才能の発掘を目的としたコンペ部門だ。「オフシアター部門」では海外からの28本を含む236本の応募があり、このうち8本が審査対象として選ばれた。また、「ショートフィルム部門」では海外からの84本を含む268本の応募作品から20本が審査対象となっている。
オフシアター部門の審査委員長には大森一樹監督、審査員には、マイク・ホステンク氏(スペイン/シッチェス映画祭・プログラムディレクター)、1995年度オフシアター部門審査員特別賞を受賞した西村喜廣監督、キム・ギドク監督の『メビウス』や廣木隆一監督の『さよなら歌舞伎町』への出演が注目されている韓国の女優イ・ウヌ(ウンウとも表記)、ドイツの映画研究家アレックス・ツァールテンといったそうそうたる顔ぶれが名を連ねている。プログラミングディレクターの塩田時敏氏は「今回のオフシアター部門は傑作から珍品まで幅広いラインナップ。新人に限らずデビュー済みの監督にも改めて光を当てる趣旨もある」と語っていた。また、ショートフィルム部門では、1995年度ファンタスティック・ビデオ・フェスティバル部門グランプリ受賞の石井克人氏(フィルムディレクター)、韓国のアン・ジェフン監督、ゆうばりファンタのオフシアター部門で受賞歴のある女優・菜葉菜(なはな)が審査にあたることになっている。
期間中に上映される韓国映画を紹介したい。

『ONE ON ONE(原題)』
特別招待作品部門では、キム・ギドク監督の最新作『ONE ON ONE(原題)』が上映されるとともに、監督のゲスト参加も予定されている。この作品は、韓国社会に対する様々な思いが込められており、民主主義の死を象徴するような悲劇的な事件と、死んでいった主人公の姿を重ねて描いている。今、世界の人が共有し苦悩を表しているともいえるような大きなテーマも隠れており、ヴェネチア国際映画祭「ヴェニス・デイズ」部門のオープニングを飾った。ちなみに、監督は『サマリア』が上映された2005年以来10年ぶりの夕張ゲスト参加となる。
オフシアター部門では2本の韓国映画が日本初上映される。『MIZO』(ナム・ギウン監督)は、ゴミ箱で生まれた捨て子のミジョ(MIZO)が養子として引き取られた先で性暴力を受けた後、自身が拾われた際にくるまれていた血のついた毛布を手掛かりに本当の親を探すストーリー。その暴力的な内容から韓国では限定上映等級の判定が下されたという。また、『メイドロイド』(ノ・ジンス監督)では、人間そっくりの美女ロボットが登場。自分の夢に陥った一人の男の欲望と愛、そして挫折を描き、SF、アブノーマル、純情、ロマンスが交錯するコメディである。
ショートフィルム部門でも2本の作品が上映される。『ハードル』(パク・ソンジン監督)は、アルツハイマー病の母を持つ無気力な女の子の心が凍っていくストーリー。『モラルボーイ』(キム・ドフン監督)は、人助けをして彼女とのデートに遅刻した男と彼女の関係を描いており、「固定概念が、現象に隠された真実をゆがめることができるのを明らかにしたかった」という作品だ。
記者発表で挨拶に立った映画祭名誉大会長の鈴木直道・夕張市長は「映画祭は1990年、ふるさと創生をきっかけにスタートしたが、夕張市の財政破綻後は市民の力主体で復活し、25回目を迎えることができた。観客動員も、夕張市の現在の人口9千人を上回る1万2千人を超えているように、映画祭の楽しさを伝える力が年々力強くなってきているように感じている。25回という大きな節目にあたり、北海道、日本だけではなく、世界で一番だといえる映画祭の魅力をしっかりと世界に発信していく機会になれば」と、ゆうばりファンタの魅力を話していた。純白の雪に加え、今回は1,500枚もの黄色いハンカチに覆われる小さな街の心温まる映画祭・ゆうばりファンタ。まだ行ったことのない方は、ぜひ一度参加されることをおすすめしたい。きっと素敵な作品や映画人との出会いが待っていることだろう。
ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2015
期間:2015年2月19日(木)~2月23日(月)
会場:北海道夕張市内
公式サイト http://www.yubarifanta.com/
Writer's Note
hebaragi。たくさんの作品やゲストとの出会いを提供してくれたアディーレ会館ゆうばりが、映画祭の会場としては今回最後となることに一抹の淋しさを感じる。来年以降も新たな形でゆうばりファンタの魅力が続いていくことを願いたいものだ。
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