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Interview 『慶州』チャン・リュル監督、俳優パク・ヘイル、キム・ドンヒョン プロデューサー

Text by 井上康子
2014/10/22掲載



 チャン・リュル監督は出世作『キムチを売る女』から、アジアフォーカスで上映された3作品『風と砂の女』『イリ』『豆満江(とまんこう)』、さらに日本未公開のドキュメンタリー『風景』まで、中国朝鮮族出身である自身の立場から、一貫してマイノリティの置かれた現実の厳しさを描いてきた人だ。そんな監督の最新作『慶州』は生と死が入り混じり、これまでの作品と全く異なる、現世を超越したファンタジックな味わいをもっている。3人のゲストに作品について語ってもらった。

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左からプロデューサー、パク・ヘイル、監督


インタビュー


── 監督のこれまでのような、マイノリティの視点で描かれた作品と全く異なる趣があった。視点が変わったのは心境に変化があったためか?

監督:歳を取ったためだ(笑)。人は歳を取ると丸くなるというが、それだ。それから、韓国へ行ったり来たりを繰り返して20年が経った。出会いがあり、思い出も積り、韓国語も話せるようになり、素晴らしい俳優にも恵まれ、その結果としてこの作品ができあがった。

── 春画に代表される「生」よりも、主人公の先輩の死やユニの夫の自殺と、「死」が強く描かれていると感じられたが、それも歳を取ったためか?(笑)

監督:歳を取れば死に近づくのは当たり前だ(笑)。慶州は王の墓である古墳があって、死に近い場所だ。それが作品で表現されている。

── 「かつて慶州で見た春画が気になって探す」というのは監督の実体験に基づいていると聞いたが?

監督:そうだ。1995年に初めて韓国に行ったが、友人と慶州にも行き、カフェで春画を見た。その7年後に知人が亡くなり、訪韓した折に衝動的に慶州に行った。作品中の「慶州のカフェを再訪するが春画がなくなっていた」というのも私の体験通りの話だ。女性が登場するのはフィクションだが(笑)。クリエイターは知りたいという思いを持ってないといけない。知りたいことを探る旅として慶州を描いた。映画を作りながら春画の作者を探して見つけることができ、撮影時は再現してもらった絵を使った。

── パク・ヘイルとシン・ミナをキャスティングした理由は?

監督:私の個人的な意見だが、パク・ヘイルは韓国で一番演技がうまい俳優だ。今のパク・ヘイルは欲望が溢れている年齢に当たる。これから10年経つと欲望が減少していくだろう。変化していく姿が見たいと思ってキャスティングした。残酷な話かもしれないが彼が老いていく姿を見守っていきたいと思っている。シン・ミナは、カフェの主人コン・ユニに必要な神秘性や美しさを持っている人なので選んだ。

── では、またパク・ヘイル主演で映画を撮るつもりか?

監督:彼が承諾してくれたら光栄だ(笑)。

── 監督は芸術家肌のこだわりがありそうだが予算を超過しそうになるなど、プロデューサーが困ることはなかったのか?

キム プロデューサー:事前に詳細に話し合いをして全く問題なく撮影を進めた。

── 主人公チェ・ヒョンは何を考えているのか分からないところがある不思議な人物だったが、監督は主人公について、どんな説明をしたのか?

ヘイルさん:監督と一緒に仕事をして、たくさん指示を出す監督ではないと思った。この作品は監督の実際の体験に基づいているので手がかりは監督から得られると思い、監督をとにかく観察した(笑)。

── 主人公が最初に登場した時に、監督そっくりの顔だ!と驚いた。監督に似せようとしたのか?

ヘイルさん:とても意識した。今はそこから抜け出したい気持ちだ(笑)。

── 監督はパク・ヘイルが欲望に溢れた年齢と言ったが、そうならば、主人公がユニの家で、彼女が寝室の扉を開けて待っていても、部屋に入らなかったことが気になる。

監督:彼は欲望もあるが責任感もある。そういう行動を取れば結局二人は苦痛を得る。彼を愛する妻もいるし。私だったら入っただろうが(笑)。実際のパク・ヘイルも入らないと思い、そういう俳優の性格も考慮した。

ヘイルさん:扉がもう少し開いていたら入ったかもしれない(笑)。

── 部屋に入らずに何をするかと思ったら、にわかに離れたろうそくを吹き消そうとするので拍子抜けした(笑)。監督からはどのような説明があったのか?

ヘイルさん:監督がろうそくを消してみようと言い、演じた。ろうそくをなかなか吹き消すことができず、消耗してフラフラになり、他のことは何も考えられない状態になってしまった(笑)。

── 肝心なところでろうそくを吹くなど、チェ・ヒョンは不思議な人だった。演じるに当たってどんな苦労があったか?

ヘイルさん:監督を観察するということに最も力を注いだ。韓国人で北京大学教授役なのでネイティブではないが中国語もできるだけ勉強した。日本語も少し話す場面があったので恥ずかしい(笑)。高校で1年間日本語は学習したことがあった。作品をきっかけに太極拳も習い始めた。

監督:パク・ヘイルは「独特」の人だ。私の実体験に基づく話なので私の姿が出ると思っていたが、映画を見たら、私でなく、パク・ヘイルの映画になっていた。

── カフェにいた日本の中年女性観光客が主人公を俳優と勘違いして写真撮影を求めるのは韓流スターを追いかける日本女性を風刺しているように見えたが(笑)。

監督:美しい姿じゃないか。私は一度も追いかけられたことはない(笑)。

ヘイルさん:私も追いかけられたことはない。一人、息子が結婚する等と手紙をくれていた女性ファンがいたが、手紙が届かなくなった。

── 女性が撮影後に主人公に日本の過去を謝罪したのはたいへん印象的だった。

監督:国から国に謝るべきことで、普通の人の罪ではない。演じてくれたのはソウル在住の日本語の教授だったが、この撮影の時に彼女から「私は役のようによく謝っている。国が謝らないので、一般市民である私が謝らなくてはと謝罪している」と聞かされて感動した。



取材後記


 最後に監督から「昨日はパク・ヘイルと福岡の屋台でお酒を飲んだ。彼を屋台の主人公にして福岡で映画を撮りたい」という言葉があった。老いたパク・ヘイル演じる不思議な屋台の主人、ぜひ観たい。また、イム・スルレ監督『ワイキキ・ブラザース』で映画界入りしたパク・ヘイルが、久々にイム監督作品に主演した『提報者』が10月に韓国公開された。パク・ヘイルから「日本の観客が見ても楽しい作品なので是非ご覧になって下さい」とメッセージがあった。


アジアフォーカス・福岡国際映画祭2014
 期間:2014年9月12日(金)~9月21日(日)
 公式サイト http://www.focus-on-asia.com/

特集 アジアフォーカス・福岡国際映画祭2014
 Report アジアフォーカス・福岡国際映画祭2014 ~日常を離れて映画を凝視する
 Interview 『慶州』チャン・リュル監督、俳優パク・ヘイル、キム・ドンヒョン プロデューサー
 Interview 『神の眼の下(もと)に』俳優オ・グァンノク、キム・ヒョヌ プロデューサー


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