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Interview 『恋に落ちた男(仮題)』ハン・ドンウク監督 ~ファン・ジョンミンが素晴らしいのはアドリブを入れないところ

Text by 加藤知恵
2014/8/2掲載



 「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014」にて、韓国映画『恋に落ちた男(仮題)』がインターナショナルプレミア上映された。監督は『生き残るための3つの取引』『悪いやつら』『新しき世界』など、数々の話題作に助監督として携わり、本作が長編デビュー作となるハン・ドンウクである。

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『恋に落ちた男(仮題)』

 高利貸しの借金取りであるテイル(ファン・ジョンミン)は、昏睡状態の父親を看病し借金を肩代わりすることになったホジョン(ハン・ヘジン)に一目ぼれをする。借金を帳消しにする代わりに自分と付き合えと言い出すテイルに対し、ホジョンは嫌悪感と猜疑心を抱くばかり。しかし粗野で不器用ながらも真っ直ぐ自分に好意を示すテイルに、彼女は次第に心を開いていく。そしてテイル自身もホジョンへの愛に目覚めることで、家族や友人との関係を見つめ直していくのだが…という真正面から「愛」を描いた物語。

 作品の舞台となるのは、韓国の港湾都市の一つである群山(クンサン)だ。「テイルとホジョンの他に第三の主人公を挙げるとすれば、それは群山の町です」と監督が語るように、さびれた群山の街並みにチンピラ・ファッションを着て肩を張り、ガニ股で歩くテイルの姿が良く似合う。警察沙汰を起こしてばかりの厄介者でありながら、どこか可愛らしいテイルのキャラクターが何とも魅力的だ。恋に悶える純粋な男の姿から、家族とのコミカルな掛け合いや激しいアクションまで、ファン・ジョンミンが絶妙な演技を見せてくれる。

 韓国映画やファン・ジョンミンのファンが会場に駆けつけ、7月26日(土)の上映回は満席に。ゲストで登場したハン・ドンウク監督にも、「感動しました」「来春の劇場公開が決まって嬉しいです」という温かな感想が多数届けられた。今回は奥様と一緒に一週間日本に滞在されたハン監督。観客からの「これまでにテイルのような熱烈な恋をした経験は?」という質問に、「今まさにそんな恋をしています」と堂々と答える姿がとても素敵だった。

 そんな監督にインタビューを行った。


── まず監督ご自身についてお聞きしたいのですが、どのようなきっかけで映画の道を目指されたのですか?

16・7歳頃に見た『ビート』(1997、キム・ソンス監督)という韓国映画がとても面白くて、映画制作に興味を持ちました。そんな時、偶然に「青少年映像制作団」という青少年を集めて映画制作実習をする団体に加わることになり、そこで映画の作り方を学びました。その後はずっとスタッフとして多数の現場に参加し、今に至ります。

── 当初から監督になりたかったのでしょうか?

はい。当時も短編映画を2・3本監督しました。ビデオ・カメラを借りて友達を集めて撮影し、映画祭にも出品しました。それがとても楽しくて、絶対にプロの監督になりたいと思っていました。

── その時の短編映画はどんな作品だったのですか?

『Son of a bitch』というタイトルで、10代の若者が大人に反抗して問題を起こしたりしながら、互いの友情を確かめ合うというような内容です。悪口もたくさん出てくるし、荒々しい作品でしたね。

── 当時から男性的な荒々しい映画がお好きだったんですね。

そうですね。僕の見た目もそういう感じですし(笑)。

── 雰囲気がおありなので、俳優をされても良さそうな気がしますが(笑)。

実はこれまで何度か出演もしているんです。僕が参加した映画には、必ず一度は俳優として顔を出しています。外見がカッコいいと言われて(笑)。今回の作品でも、中華料理店に入ってきたテイルにのれんを開けてあげる役で一瞬出ていますし、『新しき世界』ではジャソンを殺すと見せかけてチャン理事を殺す役で、助監督兼俳優として出演しました。『生き残るための3つの取引』にも刑務所の看守の役で出ています。

── 全て拝見したはずなのですが、もう一度見て確認したいと思います。

もう一度見ていただければ、『新しき世界』の中で、食べている姿の僕がすぐ目に入ると思いますよ。


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ハン・ドンウク監督

── では本作についてお聞きします。今回はファン・ジョンミンさんからの推薦で監督に決まったと伺いました。これまで何作も一緒にお仕事をされていますが、ファン・ジョンミンさんとは親しいのですか?

そうですね。助監督時代から仲良くしていただいて、よく一緒にお酒も飲みました。

── 普段のファン・ジョンミンさんはどんな方ですか?

イメージと変わらないですよ。周りにすごくよく気配りをしてくださるし、年下の俳優やスタッフを可愛がってくれます。一番年上の兄のような存在ですね。

── 監督に声がかかった時には、既にファン・ジョンミンさんもシナリオを読んで気に入ってらしたのでしょうか。

シナリオ自体は随分前からあったのですが、「愛」をテーマにした作品が良いということで、これに手を加えて現代風のスタイルにしようという話になり、出演を決められたようです。それでどのようにアレンジするかを一緒に打ち合わせしながら、進めていきました。

── シナリオをアレンジする中で、一番気を遣った点や大事にした部分はどのようなところですか?

まずは元のシナリオが大分古く、脚本家も年配の方だったので、全体のバランスを見ながら僕の感覚や現代の雰囲気にあわせる作業に気を遣いました。恋愛表現も、シナリオが書かれた当時と今とでは違いますし。家族への愛情は元のシナリオにも描かれていたので、良いところは残し、それ以外をアレンジするという方法を取りました。

── 恋愛以外にも家族愛や友情が温かく描かれているのが印象的でしたが、やはりそこは大事にされていたんですね。

もちろんです。元のシナリオにも人物同士の関係性や心情はよく表現されていたのですが、気持ちが変化していく過程や台詞などに工夫を凝らし、僕のスタイルに変えていきました。

── 構成の面で、テイルとホジョンの距離が段々と縮まり、やっと気持ちが通じたと思ったら突然2年後に移りますが、それも元のシナリオにあったのでしょうか。すごく裏切られた感じがしたのですが(笑)。

韓国でも驚いた、混乱したという声をたくさん聞きました。元のシナリオはメロ・ドラマとして淡々と描かれていて、そのまま作品にしたら当たり前すぎてつまらないような気がしました。それで編集の段階で今の形に変えたんです。一番良い時のすぐ後に一番悪い状況を持ってくることで一層効果的になるのではないかと思って。

── お金を借りて使い込む牧師のキャラクターも元からありましたか?

あの設定は僕が追加しました。牧師役を演じたキム・ビョンオクさんとは個人的に親しくて、何かの役で出演をお願いしようとした時に、ストーリーが重々しかったので、笑いを混ぜようと思って加えました。出演シーンはもっとたくさんありましたが、編集で大分カットしてしまいました。

── 社会風刺というよりは面白さを求めて牧師になったわけですね。

説教をする牧師が借金をしてギャンブルをするという設定が面白いかなと思ったので。

── 撮影中に一番苦労されたシーンはどこですか?

テイルとホジョンが再会するシーンですね。テイルがホジョンを抱きしめながら苦痛に耐える場面と、ホジョンが病気を知ってから再会する場面の両方です。2人が会ったらきっと泣くだろうなと頭で想像はできますが、実際に経験したことがないので、感情を捉えて演出するのが難しかったです。

── 泣いている2人を横から写したシーンもそうですし、2人が一緒にいる場面は光や背景の木々の感じがすごく美しいなと思いました。ギターやピアノのBGMもとても温かな雰囲気でしたよね。

撮影監督と音楽監督によく伝えておきます。テイルとホジョンが一緒にいられる時間は短いので、その場面をいかに印象的に見せるかについて、撮影監督も音楽監督もすごく悩んでいました。何度も打ち合わせを重ねて、幸いに音楽も良いものに仕上がりました。


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ティーチインの模様

── このシーンにはこんなエピソードや仕掛けがあるといった裏話があれば、教えて下さい。

色々あったはずなんですが、編集作業の間に大分記憶が飛んでしまって…。面白くてカットするのが惜しい場面はたくさんありました。例えばテイルがホジョンに覚書を渡しに行く前に、兄の理髪店へ髪を切りに行きますが、兄夫婦がケンカをして結局髪を切ってもらえず、首にタオルを掛けたまま出てくるというシーンもあったんです。DVDにはカット場面集も収録されているので、またご覧になってください。

── あの覚書のイラストはひょっとして監督が描かれたのですか? すごく可愛かったですが。

そうです。あれは僕の作品です。テイルの、荒々しいけれど子供っぽい、純粋な部分を表現したいと思い、僕自身も最大限に純粋な気持ちで描きました。

── ファン・ジョンミンさんはこの作品で、一つの役でありながら多様な姿を見せていらっしゃいますね。演技については細かく打ち合わせをされましたか? それともある程度ご本人にお任せしたのでしょうか。

ジョンミンさんが素晴らしいのはアドリブの演技を入れないところです。「こういうのはどう?」「これは大丈夫?」と、必ず事前に相談をしてくれます。撮影後の食事やお酒の席ではいつも一緒に座って、次の撮影シーンについて打ち合わせをしましたし、全て僕の同意を得たうえで演じてくださいました。全体的な視点で見ている僕よりも、キャラクターについては彼の方がよく分かっているので、アイディアもたくさん出してくださいました。本当に最高の俳優です。

── ハン・ヘジンさんは現場ではどんな方ですか?

大人しい方かと思っていたのですが、実はとても楽しい方でした。よく冗談を言ったりふざけたりもされますし。普通に見えるけれど、実はどこかが飛んでいて不思議と面白い、そんな感じでしょうか。演技に対する集中力もすごいです。自分の役について僕の考えが及ばないところまで深く掘り下げて、ジョンミンさんと2人で話し合いながら役作りをされていました。2人の息もぴったりでしたね。

── 他の俳優やスタッフの方々も、監督と過去に一緒にお仕事をされた経緯から積極的に参加されたと聞きましたが、そこはやはり監督の人徳でしょうか。

僕は本当に恵まれていると思っています。これまで一生懸命頑張ってきた姿が認められたのかもしれません。スタッフ同士もとても仲が良く、自由に意見を言いあって、全員揃ってよく飲みました。助監督時代からそのように過ごしてきた仲だったので、多くのメンバーがシナリオを見る前から手伝うと言ってくれました。テイルの兄役のクァク・トウォンさんも最初に電話をした段階で、「出るよ。で、何の役なの?」という感じでしたし。それに制作会社サナイ・ピクチャーズの社長が人脈の広い方なので、彼がハン・ドンウクに任せるなら信じようといって参加して下さった方々も大勢います。もちろんジョンミンさんの力も大きかったと思います。

── 長編としてはデビュー作なので、ある程度プレッシャーもおありだったのではないかと思いますが、今までのお話だとそこまで苦労されてはいないようですね(笑)。

これまではスケジュールに合わせて撮影を進めればいいだけでしたが、今回は監督として全責任を取る立場だったので、そういう意味で最初はとてもプレッシャーを感じました。でも素晴らしいスタッフと俳優が協力してくれたおかげで、良い雰囲気の中で撮影できて、中盤からは楽しむことができました。「ダメならやめてやる」「失敗したら撮り直せばいい」と開き直ってましたね(笑)。それに撮影監督や年上のスタッフの方々が励ましてくださったのも有難かったです。運が良かったのだと思います。

── それも実力のうちではないでしょうか。監督自身が一番お気に入りのシーンや、是非ここを見てほしいという部分はありますか?

いくつかありますが、あえて挙げるならテイルが父親の足を揉んであげるシーンですかね。まあ全部大事ですよ。この作品がうまくいってこそ次に繋がるので。

── ソンジ(テイルの兄の娘)役の子はすごく上手でしたね。彼女のキャスティングはどうされたのですか?

彼女とテイルの友達のような関係性やエピソードも大事なので、キャスティングには苦労しました。何度もオーディションを繰り返しましたが、テスト撮影の日になっても決まらず、結局は一番不良っぽくて気の強そうな子を選びました。でも悪口がうまく言えなかったので、僕が教えてあげました(笑)。演技も上手でしたし、結果的には正解でしたね。

── 最後に、これまでの経験の中で、ご自身で準備されてきたテーマもおありではないかと思いますが、今後はどのような作品を監督される予定ですか?

次回作はまだ具体的には決まっていません。宇宙人やロボットが出てくるアクションやスリラーなど、作りたいジャンルはたくさんありましたが、この映画を撮る中で自分には身の回りの話を描く方が合っていると思うようになりました。見る人が「自分だったらどうしよう」と考えたり、その状況や感情に共感したりできるような、人間味の溢れる作品を撮りたいですね。



SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014
 期間:2014年7月19日(土)~7月27日(日)
 会場:埼玉県・SKIPシティほか
 公式サイト http://www.skipcity-dcf.jp/

『恋に落ちた男(仮題)』
 原題 남자가 사랑할 때 英題 Man In Love 韓国公開 2014年
 監督 ハン・ドンウク 出演 ファン・ジョンミン、ハン・ヘジン
 2015年春、シネマート新宿にて公開

Writer's Note
 加藤知恵。字幕制作会社に勤務し、韓国ドラマやバラエティ番組の翻訳に携わる日々。今年はプチョン国際ファンタスティック映画祭に参加できなくて残念でしたが、日本で公開される話題作を見て楽しみます。


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