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Review 韓国社会派監督チョン・ジヨン特集 ~歴史の闇に光を当てる不屈の映画監督

Text by Kachi
2014/5/13掲載



 韓国で社会派映画監督として知られているチョン・ジヨンの『南営洞1985 国家暴力:22日間の記録』(2012)と、『南部軍 愛と幻想のパルチザン』(1990)を上映する「韓国社会派監督チョン・ジヨン特集」が、渋谷アップリンクと大阪シアターセブンで開催されている。

 チョン・ジヨン監督は、1982年に『霧は女のように囁く』で監督デビュー。『南部軍』は、韓国では観客動員30万人を超えるヒットとなり、1990年の韓国映画・国内興行成績年間2位となる。1992年、ベトナム戦争の後遺症に苦しむ韓国軍兵士を描いた『ホワイト・バッジ』で、東京国際映画祭グランプリと最優秀監督賞を獲得。昨年日本でも劇場公開された『折れた矢』(2012)では、司法の暗部を描き出した。また、2010年に起きた韓国の哨戒船沈没事件を、北朝鮮軍の攻撃によるものとした政府調査団の発表を批判し、昨年『天安艦プロジェクト』を製作するも、上映中止の憂き目に遭っている。


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『南部軍 愛と幻想のパルチザン』

 『南部軍』は、実際にパルチザンとして従軍したジャーナリスト、イ・テ氏による同名の手記をチャン・ソヌが脚色し、チョン監督が映画化した作品である。ソウルの合同通信社の記者イ・テ(アン・ソンギ)は、会社が人民軍に接収されたことで、朝鮮中央通信社の従軍記者として全州に送られていた。ある日、半ば強制的にパルチザンに入隊。その後、より北朝鮮の正規軍に近い、南朝鮮労働党の指導者イ・ヒョンサン率いる南部軍に加わる。

 著書の中でイ・テ氏は、朝鮮戦争前後の半島の状況を、当時よく使われたという比喩でこう表現する。「北はリンゴ、南はスイカ」つまり「北は表面、すなわち執権層は赤いが、中味、つまり民衆は白く、南はその反対」。アメリカ軍政下にある南朝鮮と、ソ連が政治介入する北朝鮮の溝は深まる一方で、実は民衆はどちらの政府も支持していなかった。

 パルチザンを構成していたのは、大邱で230万人が蜂起した10月事件や、済州島の島民が虐殺された4・3事件、国防警備隊が反乱した麗水・順天事件の残党など、親共主義と反共主義という二元論で片付けられない人々が多かった。映画の中でも、イ・テを慕う詩人の青年キム・ヨン(チェ・ミンス)は、同じく入山した恋人を「彼女は思想とは無縁の女だ」と心配し、「赤か白か、時代が自分に問うのなら」、つまり親共か反共か選ばなければならないのならと、パルチザン闘争に身を投じたのだった。イ・テと想いを交わすミンジャ(チェ・ジンシル)も、韓国軍に従軍した兄が戦死したが、敵であるパルチザンに入隊したという複雑な事情を抱えていた。

 イ・テ氏は手記の中で「北朝鮮の政権によってさえ見捨てられたまま韓国の山中で消滅していった、悲劇的な生霊たちのこだまなき絶叫を記録にとどめておきたかった」と、執筆理由を明かす。さらに「北朝鮮の政権は韓国のパルチザンに過酷な犠牲を強いただけで、生命に対してはほんのわずかな考慮すら、いや最後まで関心すら払おうともしなかった」と、実際に経験した者として北朝鮮を痛烈に批判している。映画『南部軍』は、パルチザンの武勲を称えることも、南北政府を糾弾することもない。智異山に散った命に対する、チョン・ジヨン監督の憐憫と鎮魂の気持ちがうかがい知れる。


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『南営洞1985 国家暴力:22日間の記録』

 『南営洞1985』のモデルは、民主化運動の中心人物として活躍し、後に政界入りして保健福祉部長官(日本の厚生労働大臣)を務めたキム・グンテ氏。本作は、1985年9月4日から22日間に渡ってグンテ氏が公安警察から受けた拷問の記録である。氏が他界した翌年の2012年に自伝的手記「南営洞」が出版され、彼の死を悼んだチョン・ジヨン監督が映画化した。

 民主化運動のリーダーであったキム・ジョンテ(パク・ウォンサン)は、警察公安当局によって治安本部南営洞対共分室に連行される。民主化運動青年連合の議長として、日頃から投獄され、取り調べを受けていたが、南営洞での拷問は苛烈を極めた。調書を偽装させようとする警察に抗うジョンテだったが、「葬儀社」と呼ばれる室長のイ・ドゥハン(イ・ギョンヨン)が現れたことで状況が一変する。

 近代化による経済発展と引き替えに、朴正煕軍事政権は民主主義を犠牲にしてきた。そしてそれを引き継いだ全斗煥は、より過酷に国民を締め付け、民主化を求める勢力を「パルゲンイ(共産主義者の蔑称)」と呼び、徹底的に弾圧。当時の韓国内では、時と場所を問わず、映画と同様のことが行われていた。例えば1987年、ソウル大生のパク・チョンチョルは、南営洞対共分室で水攻めによる拷問を受けた末、死亡している。

 本作は、ジョンテが連行されていくファーストシーンから、観客をすさまじい暴力の世界に引きずり込み、息つく暇を与えない。特にイ・ドゥハンが、まるで知り尽くした機械を触るような慣れた手つきで拷問をする様子に背筋が凍った。


 雪に覆われた智異山でイ・テは無念を叫ぶ。キム・ジョンテは「世の中が変わったら、お前が私を罰するがいい」とイ・ドゥハンに卑しめられる。強引に「赤か白か」と人々に問い、戦いに駆り出したのも、苛烈な拷問を行ったのも、国家の暴力だった。理不尽な力の前に、二人は無力感をおぼえたこともあったはずだ。だが、不屈の精神で国家の暴力に声をあげ続けたことで、世の中を変える偉大な力となった。そして、映画製作を通じて社会のあり方に一石を投じ続けてきたチョン・ジヨン監督も、その一端を担っているのである。


韓国社会派監督チョン・ジヨン特集
 『南部軍 愛と幻想のパルチザン』
  原題 남부군 英題 North Korea's Southern Army 韓国公開 1990年
  監督 チョン・ジヨン 出演 アン・ソンギ、チェ・ジンシル、チェ・ミンス
 『南営洞1985 国家暴力:22日間の記録』
  原題 남영동1985 英題 Namyeong-dong1985 韓国公開 2012年
  監督 チョン・ジヨン 出演 パク・ウォンサン、イ・ギョンヨン
 2014年4月26日(土)より、渋谷アップリンク、大阪シアターセブンほか全国順次公開
 公式サイト http://jimakusha.co.jp/nam1985/

Writer's Note
 Kachi。イ・テ氏の「南部軍」は、1991年に邦訳「南部軍―知られざる朝鮮戦争」(アン・ウシク訳、平凡社)が出版されています。膨大かつ綿密で、読み応え十分な手記。一方、キム・グンテ氏の「南営洞」は未邦訳。映画に感動した出版関係者の皆様、ぜひ日本語版の出版をお願いします。


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