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Report 第9回大阪アジアン映画祭 ~共感を呼ぶ作風、日本の存在感も顕著な作品群

Text by mame
2014/4/23掲載



 今年も行ってきました! 第9回大阪アジアン映画祭。

 近年注目著しい台湾映画の特集、さらには暉峻プロデューサーが「映画祭後はマニラ通いが始まるに違いない!」と断言するほど、自信を持って送り出されたフィリピン映画5作品など、今年も多彩な全43作品に目移りした10日間でした。

 ちなみに私、今年は自転車ではなく地下鉄での参加となり、去年よりは鑑賞本数も少なめだったのですが、やはり映画館から駅までの距離、そして空腹を満たす場所を考えながらの移動はかなり焦りますね。映画の合間に映画祭講座でお知り合いになった方々と話す機会はありつつも、映画の余韻と次の移動に気をとられて目が泳ぎ、最終的には泳ぎすぎた目が二重まぶたから三重にグレードアップしていました…。

 そんなところで今年も本題に参りましょう。

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グランプリ作『シフト』

 グランプリとなった『シフト』(シージ・レデスマ監督/フィリピン)では、クリエイター志望の赤い髪の女の子エステラと、できる上司でゲイのトレヴァーとの友達以上、恋人未満の関係がお洒落に描かれていますが、テーマは割と残酷です。2人の職場であるコールセンターを、エステラはあくまでつなぎの仕事としか考えていないのですが、クリエイターとして生きるまでの自信は持てず、なかなか仕事を辞める決心がつきません。トレヴァーは彼女にとても優しいけれど、ゲイだから自分を愛してくれる可能性はないのだと思うと、優しくされるほど傷つき、素直になる事すらできません…。どうでしょう、このモヤモヤしたあらすじ! 共感する方も多いのでは? 私も、まさかフィリピン映画に自分の分身を発見するとは思いませんでした。今年の大阪アジアン映画祭では、この『シフト』に代表される「共感を呼ぶ」映画が多かったのではないでしょうか。

 2013年のアジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映され、観客賞を受賞した『狂舞派』(アダム・ウォン監督/香港)。若者達の躍動感溢れるダンスは、好きな事に没頭するが故に生まれる全能感に満ちています。若者は未来を切り拓く勇気を持つ事ができ、もはや若者と呼べなくなった世代にとっても、夢に賭ける事の素晴らしさを思い出させてくれる傑作でした。

 『ブルー・ブースタマーンティー』(ミコ・リヴェロ監督/フィリピン)は、なりゆきで日本の戦隊ヒーロー番組に出演する事になった出稼ぎ労働者という斬新な設定。低予算映画特有のユルさに笑わされていたかと思いきや、家族のために仕事を辞められない、雇われヒーローの悲哀と、彼が見せるささやかな抵抗に共感し、思わずほろりとさせられました。

 日本と関りのある作品が多かったのも、今年の大阪アジアン映画祭の特徴です。

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俳優陣勢揃い!圧巻の『KANO』舞台挨拶

 オープニングに選ばれた『KANO』(マー・ジーシアン監督/台湾)。1930年代、日本統治下の台湾を舞台に、台湾人と日本人の混成チームで甲子園を目指した嘉義農林高校(KANO)野球部の軌跡を追う、実話を基にしたヒューマンドラマです。スポーツで結ばれた絆の強さをまざまざと見せつけてくれた『KANO』は、まさに大阪アジアン映画祭のオープニングにふさわしく、上映後にはスタンディングオベーションが起こるほどの盛り上がりを見せ、納得の観客賞受賞でした。

 今年の韓国映画3作品についても、「共感を呼ぶ」「日本の存在感」という特徴は顕著に現れています。

 『ローラーコースター』(ハ・ジョンウ監督)は、女性スキャンダルが発覚して日本から韓国へ帰国することになった韓流スター、マ・ジュンギュ(チョン・ギョンホ)が主人公です。乱気流に巻き込まれ、なかなか着陸できない飛行機の中で、必死に神に祈るジュンギュと、彼を取り囲む乗客・乗務員との掛け合いのテンポの良さに笑わされました。これが初監督作品となるハ・ジョンウは、見事「来るべき才能賞」を受賞。次回作も準備中との事で、これからは監督としての活躍も目が離せなくなりそうです。

 『友へ チング2』(クァク・キョンテク監督)は前作から12年ぶりの続編。刑期を終えたユ・オソンの枯れた哀愁か、新鋭キム・ウビンの何をしでかすかわからない危うさに共感するかは、世代で分かれそうです。ドラマとしてはユ・オソン寄りの、やや枯れ気味な展開でしたが、韓国ならではの場所で繰り広げられる、あまりに派手なアクションシーンには、残忍さを通り越して笑ってしまうほどの痛快さがありました。

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共感度MAX『サンシャイン・ラブ』

 最後に、日本に関連、共感を呼ぶという点において、『サンシャイン・ラブ』(チョ・ウンソン監督)の右に出るものはないでしょう。公務員試験に失敗し続けるギルホ(オ・ジョンセ)と、彼に片想いしていたジョンスク(チョ・ウンジ)の再会から始まるラブストーリー。なんといっても主演ふたりの自然な演技には共感を通り越し、自分を見ているかのようなふがいなさを感じるほど。日本文化に造詣の深いチョ・ウンソン監督ならではの妄想シーンに加え、少女マンガを思わせる萌えシーンが満載でした。小説家として生きる自信のないギルホが「あの頃と今は違う」と言い訳すれば、「何が違うの? そんな大昔でもないくせに」と切り返すジョンスク。素敵な社会人に成長したジョンスクに引け目を感じ、「金も仕事も夢もないくせに、愛して悪かった」とうなだれるギルホ…。こうしたエピソードを何とも思わない人は、相当順調な人生を送ってきたのでは? 恋愛が贅沢と言われている今こそ、若い世代に観てほしいと思う快作でした。

 連携企画として開催された「花開くコリア・アニメーション2014」からは『パタパタ』『マリといた夏』を鑑賞。『パタパタ』(イ・デヒ監督)は水槽から脱出を試みる魚の奮闘記とのあらすじから、「およげ!たいやきくん」のようなほのぼの哀愁漂うストーリーを想像していたら、さすがは韓国アニメ…。容赦ない残酷描写に戦慄を覚えます。昨年の『豚の王』をも彷彿とさせる水槽内のカースト制度を一度見てしまうと、今後居酒屋等でいけすを見る度にドキッとしてしまいそうです。一転して『マリといた夏』(イ・ソンガン監督)は、浮遊感溢れるオープニングから、まるで夢の中にいるような幻想的な気分に浸れるファンタジー。制作年は2001年ですが、もっと昔に作られたようなノスタルジーを感じさせる作品で、色紙を敷き詰めたように統一された色彩が印象的でした。

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上映後はサイン会や握手会も

 近年、政治的な面からは、アジアにおける日本の立場に不安の声も寄せられていますが、映画というフィルターを通してアジアを観る限り、その共通点の多さに驚かされました。シチュエーションに共感するのはもちろん、同じアジア人同士、見た目が似通っているというのも共感を呼ぶ大きな一因となっています。相手に共感する事から国に対する理解が始まるなら、まさに映画祭は絶好の機会と言えるでしょう。スクリーンで活き活きと輝き出すアジアの人々、風景を観る事は、パワーを貰えると共に、アジアの一員である自分を誇らしく思える貴重な体験でもありました。

 終わってみれば、今年も「やっぱり無理してでも、もっと作品を観ておけば良かった…」という後悔でいっぱい。「ひょっとして日本をいちばん過小評価しているのは日本人かも?」と思える程、日本の存在感を感じられる嬉しい機会ともなったので、出会った映画の名シーンを思い出す度に、明日への活力が湧いてくるのを実感しています!


第9回大阪アジアン映画祭
 期間:2014年3月7日(金)~3月16日(日)
 会場:梅田ブルク7、シネ・ヌーヴォ、シネ・リーブル梅田、ABCホール、テイジンホールほか
 公式サイト http://www.oaff.jp/

花開くコリア・アニメーション2014 in 大阪
 期間:2014年3月7日(金)~3月14日(金)
 会場:PLANET+1、大阪韓国文化院
 公式サイト http://anikr.com/

Writer's Note
 mame。映画祭の興奮も冷めやらぬ中、台湾旅行に行ってきました! 短い滞在ではありましたが、屋台での美味しい食事、台湾人のさりげない優しさに大感動。今回出会ったアジア映画の面白さから、ますますアジアへの興味は尽きる事がなさそうです。


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