Report 『新しき世界』松崎ブラザーズ・トークショー ~絶対に2回以上見るべき傑作!
資料提供:ムヴィオラ
2014/1/31掲載
1月28日、シネマート六本木にて『新しき世界』の一般試写会、並びにトークショーが開催された。この日、登壇したのは「松崎ブラザーズ」として「WOWOWぷらすと」やトークショーなどでの、映画の深堀りトークでお馴染みの松崎まことさんと松崎健夫さん。共に映画検定一級を持つ超映画マニアの2人が、上映後の観客を前に見どころをたっぷりと解説した。

冒頭、2人揃って「本作は絶対に2回以上は観た方が良い」と熱く語るところからスタート。実は2人とも、1回目に観た時に同じシーンを「あそこはなくても…」と思っていたそうだが、2回目に観た際に「そこも必要なシーンだった」と考えを改めたとのこと。ただ2回以上は観なければその深い意味に気づくのはなかなか難しいかもしれない、ということで、映画を2回以上楽しむための超深堀りトークが展開された。
まずは『ゴッドファーザー』『インファナル・アフェア』『エレクション』といったギャング組織を描いた傑作の影響を受けながら、それらに引けをとらない面白さ、と絶賛。潜入捜査ものは数多くあれど、そこまでやってしまうのか?という非情さに驚いたと語った。特に、主人公の潜入捜査官が、映画の冒頭シーンで、警察という立場では、やってはならない悪事を犯すという描写に驚き、潜入捜査官といえど犯罪者になってしまった主人公は、葛藤してはいるものの完全な悪人であり、しかしながらそれを指示する上司や周囲の方がもっと悪いために彼が正義に見える、と対比の構造を説明。また設定が非情なだけでなく、エレベーター内で繰り広げられる格闘シーンの暴力描写の容赦なさについても、良くあるメインの人物に向かってくる数名だけが動く、といった撮り方ではなく、全員が動くことによって凄まじい迫力を出している、と解説。設定だけでなく演出によっても、映画の世界観を徹底的に作り上げていることを解説した。
続いて、本作は単なるエンターテイメントではなく、社会的な批評性をも持った映画とも解説。主人公が華僑という設定であることが物語に大きな影響をもたらしていることを説明し、それは、戦後直後の在日朝鮮人の存在を盛り込んだ『仁義なき戦い』をはじめとする1970年代東映ヤクザ映画に通じる精神であり、今の日本映画が描かなくなってしまった本物のヤクザ映画が韓国映画では描けている、とも語った。さらに『新しき世界』=新世界、NEW WORLD、というタイトルにも言及。ハリウッド映画で描かれてきたイタリア系マフィア、作曲家のドヴォルザークなどを引き合いに、新世界を夢見てアメリカに渡ったものの決して思い描いていた幸せはそこにはなかったという象徴としての意味合いも込められているとし、ある場面の背景にある、NYの摩天楼の写真が映画の世界観を象徴していると語った。
他にも2人の意見が唯一分かれた『ゴッドファーザー』を彷彿とさせる、とあるシーンの賛否や、物語にあわせたカメラショットの緩急のつけ方など数々の見どころを、名作を延べ20本以上引き合いに出しながら語りつつ、ハリウッドリメイク版はどうやれば成功するのか?という予想、本作に続編はありえるのか、主演の3俳優の上手さなど、映画ファンの心を掴んで離さない濃厚なトークが繰り広げられ、来場者も大満足のトークとなった。
『新しき世界』、ぜひ映画館で何度でも楽しんでいただきたい。公開はいよいよ今週末2月1日より。
『新しき世界』
原題 신세계 英題 New World 韓国公開 2013年
監督 パク・フンジョン 出演 イ・ジョンジェ、チェ・ミンシク、ファン・ジョンミン
2014年2月1日(土)より、丸の内TOEI、シネマート新宿ほか全国ロードショー
公式サイト http://www.atarashikisekai.ayapro.ne.jp/
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