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Review 『新しき世界』 ~ファン・ジョンミンの演技が光る、欲望と裏切りのノワール

Text by Kachi
2014/1/30掲載



 昨年11月下旬、第34回青龍映画賞が発表された。主演男優部門を争ったのは、『7番房の奇跡』のリュ・スンリョン、『観相』のソン・ガンホ、『ソウォン(願い)』のソル・ギョング、『ザ・テロ・ライブ』のハ・ジョンウ、『新しき世界』のファン・ジョンミン。実力派の千両役者5人がノミネートされたことは、年間の映画観客動員数が初めて2億人を突破するなど、活況が伝えられた2013年の韓国映画界を象徴する出来事であった。11月上旬に開催された第50回大鐘賞映画祭では、リュ・スンリョンとソン・ガンホが主演男優賞を共同受賞しており、青龍映画賞も誰が受賞してもおかしくない状況だった。そんな激戦を制したのが『新しき世界』のファン・ジョンミンだ。

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 『新しき世界』は、欲望と裏切りが渦巻く闇社会を舞台に、男たちの生き様を描いたドラマである。中国系韓国人の警察官ジャソン(イ・ジョンジェ)は、上司のカン課長(チェ・ミンシク)の命を受け、韓国最大の犯罪組織にして大企業のゴールド・ムーンに入り込み、捜査活動をしている。8年にも及ぶ潜入で、今や理事の地位にまでのし上がっていた。ある時、組織の会長ソク(イ・ギョンヨン)が事故死し、会長の右腕だったジュング(パク・ソンウン)と、組織No.2のチョン・チョン(ファン・ジョンミン)が、後継者の座を巡って対立する。これを組織壊滅の好機と見たカン課長は「新世界プロジェクト」と名付けた計画を敢行。ジャソンを熾烈な後継者争いに介入させる。

 本作を見るうえで知っておきたいのは、韓国華僑という中国系韓国人の存在だ。プレスシートによると、第二次世界大戦後に南北分断された韓国では、1880年以降、商人や労働者・農民として朝鮮半島全域に暮らしていた中国人、そして自国での内戦を逃れた山東省からの移住者が、中国系の社会を形成していったという。1948年に韓国政府が樹立し、「国民」の範囲とその利益を守るための方針が打ち出されると、「国民」とみなされない韓国華僑は「外国人」として差別を受けるようになった。現在、制度的には改善しつつあるものの、今も韓国の中では差別感情が強いため、韓国華僑は共同体として結束する傾向にある。

 会長の葬儀で出る焼肉にカン課長は「牛肉は韓国産か?」と軽口を叩き、一方ジャソンと同じ出自のチョン・チョンは、兄弟分のジャソンを親しげに「ブラザー」と呼ぶ。しかし本作は韓国華僑をただ差別されるだけの存在として描いていない。中国系のチョン・チョンの全身から醸し出されるケレン味は非常に魅力的で、ゴールド・ムーンの韓国人構成員たちの端正な佇まいを圧倒している。中国系韓国人という民族性は、ジャソンにとってはマイノリティとしての弱みであり、チョン・チョンにとっては恐るべきよそ者としての強烈な個性である。

 『新しき世界』はキャスティングで成功している。一向に終わりが見えない危険な潜入捜査にいら立ち、チョン・チョンの温情に欺いていることを思い悩むイ・ジョンジェ扮するジャソンの切ない姿には惚れてしまう。チェ・ミンシクはいつものようなアグレッシブな演技ではないが、冷酷さの中に葛藤を抱えたカン課長を見事に表現しており、その安定した存在感はさすがだ。

 だがそれ以上に素晴らしいのが、チョン・チョンを演じたファン・ジョンミンだ。『甘い人生』でのヤクザ役は、少ない出番ながらも強い印象を残し、『生き残るための3つの取引』で、悪役はファン・ジョンミンの代名詞となった。その一方、純朴な男性を演じた『ユア・マイ・サンシャイン』や『星から来た男』、そして『ダンシング・クィーン』のコミカルさも彼の魅力である。

 本作のチョン・チョンは、敵と見れば容赦なくいたぶり尽くす残酷さと、兄弟分への人懐っこさ、作中で一瞬垣間見せた苦悩とが渾然一体となった複雑なキャラクターだ。プレスインタビューでパク・フンジョン監督は、本作で目指したものを「3人の男たちが求めるものの違いであって、それは善悪ではありません」と述べているが、まさにファン・ジョンミンは「物事は複雑で、善悪で定義しきれない」という作品のテーマを、チョン・チョンという男で体現したのだ。

 納得の青龍賞主演男優賞である。


『新しき世界』
 原題 신세계 英題 New World 韓国公開 2013年
 監督 パク・フンジョン 出演 イ・ジョンジェ、チェ・ミンシク、ファン・ジョンミン
 2014年2月1日(土)より、丸の内TOEI、シネマート新宿ほか全国ロードショー
 公式サイト http://www.atarashikisekai.ayapro.ne.jp/

Writer's Note
 Kachi。ファン・ジョンミンはドラマでも素晴らしいです。『アクシデント・カップル』で演じた平凡な郵便局員ク・ドンペクは、私の理想の旦那様です。


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