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Review 『7番房の奇跡』 ~リアリズムのイントロを、ファンタジーに転調させて描いた小さき者たちの献身

Text by 井上康子
2014/1/12掲載



 韓国映画には、虐げられた者たちが自分たちの正当性を主張し、国家権力や差別する側を告発した作品が多い。本作もその系譜を持ち、主人公のヨングは、知的障害のために状況を理解できないまま、少女を暴行殺害した犯罪者に仕立てあげられた人物だ。ヨングが拘束されたために、小学校入学前に彼と引き離された娘のイェスンは、後に弁護士を目指し、模擬裁判で父親に対する捜査と裁判の問題点を告発していく。

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 死亡した少女の父親は警察庁の長官で、何としても犯人を確保しようとして、イェスンの身に危険が及ぶと脅迫し、ヨングに虚偽の自白を強要する。それはただの脅しではなく、本気だ。描かれた警察・裁判関係者による人権侵害の数々はたいへんリアルだ。

 正しくあるべき世界は汚れている。一方、犯罪者であるにも関わらず、ヨングが収監された7番房では、信義に厚い房長のもとで、皆が互いを思いやって、正しく生きている。房内はたいへん暖かみのあるファンタジーの世界であり、パステルカラーで彩色されている程だ。

 刑務所内の派閥争いのために殺されそうになった房長を助けたヨングは、何でも望みを叶えてやると言われ「娘に会いたい」と訴える。同房者の活躍で、イェスンを刑務所訪問の聖歌隊に紛れ込ませて、房内に連れ込み、再会を成功させるという展開はファンタジーとしての真骨頂発揮である。

 そして、ファンタジー性の核心はヨング役のリュ・スンリョンによって体現されている。『王になった男』の冷静な王の側近など、低音の声を朗々と響かせる男性的な役が多かった彼が、今回はドラマ『裸の大将放浪記』の山下清のように吃音があり、誰にでも親近感を抱かせる知的障害者を演じ切った。障害をもつ人たちに会って、どう演じるかを決めたそうだが、生真面目さや正直さを強調し、ヨングを天使のごとき主人公として確実に造形している。本作で映画デビューし、イェスンの幼少期を演じたカル・ソウォンもけなげで愛らしく、まさに天使のようだ。無垢な父と娘の絆の強さ、特に障害がありながらも娘に対して献身的に愛を注ぐ父の姿には誰もが心揺さぶられるだろう。

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 7番房の人々も父娘に心揺さぶられて、献身的な働きをする。『10人の泥棒たち』のオ・ダルスを筆頭に、『結界の男』のキム・ジョンテ、『折れた矢』のパク・ウォンサンなど、アクの強い異才たちのコミカルな演技はその場面だけ取りだして見ても充分に楽しめる。また、成長したイェスンに扮した『シラノ恋愛操作団』のパク・シネと、ヨングを支える刑務所課長に扮した『王の男』のチョン・ジニョンはリアルな演技で作品全体を引き締めている。

 2012年末に大統領選が行われた韓国では、朴正煕の娘で現大統領の朴槿惠が大統領候補となっていたことが影響してか、選挙前には実際の事件をもとに軍事独裁の暴虐を写実的に描いた『南営洞1985』『26年』が公開された。

 2013年1月に公開された本作では、イ・ファンギョン監督はリアリズムを隠し味に使い、暖かいファンタジーとして父娘と7番房の人々を前面に浮き上がらせ、歴代動員記録3位を成し遂げた。韓国伝統のリアリズムと親子の絆を見せつつ、ファンタジー重視という新しい形式の告発作品を生みだしたという点に瞠目した。


『7番房の奇跡』
 原題 7번방의 선물 英題 Miracle in Cell No.7 韓国公開 2013年
 監督 イ・ファンギョン 出演 リュ・スンリョン、パク・シネ、カル・ソウォン
 2014年1月25日(土)より、シネスイッチ銀座、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
 公式サイト http://7banbou.com/

Writer's Note
 井上康子。『7番房の奇跡』を最初に見たのは2013年の旧正月だった。いつもは若い観客が中心の映画館が、この時は家族連れでごった返していた。母親に「オンマー(ママー)」と甘える子や、紳士然とした息子に「オモニ(お母さん)」と足元を気遣われて微笑む老母を見ていると、作品の余韻も重なり、一人で映画を見るのがちょっと寂しく思えた。


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