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Report ダマー映画祭 in ヒロシマ2013 ~『ソウォン(願い)』初上映、コンペ・グランプリは韓国短編に

Text by 井上康子
2013/12/10掲載



 「ダマー映画祭 in ヒロシマ2013」が、NTTクレドホール(広島そごう新館11階)を会場に11月22日から24日まで開催された。ダマー映画祭は「Spiritual Experiences」をテーマに2001年からアメリカのシアトルで始まった国際映画祭で、広島では「ココロとココロをつなぐ映画祭」として2009年から毎年開催されている。

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NTTクレドホール内

 私は広島出身で、同級生から、2010年に、いずれも監督が来日した『裸足の夢』『マラソン』上映時の盛り上がりについて聞かされていたので、いつか参加したいと思っていた。そこに、今回『王の男』『あなたは遠いところに』などで私が信頼を寄せるイ・ジュニク監督の新作『ソウォン(願い)』が特別招待作品として上映され、さらに監督と主演のソル・ギョングも来日すると聞き、初めて参加した。

 映画祭では、短編コンペティション部門で応募118作品から選ばれた11作品と、特別招待作品が上映され、他に、映画の作り手たちをゲストに招いてのトークとワークショップが催された。以下、コンペ作品と『ソウォン(願い)』について、トークの内容を交えて紹介する。


短編コンペでは韓国作品がグランプリ


 韓国映画は、国別最多5作品が本選進出し、最優秀作品賞にあたる「ヒロシマ・グランプリ」も受賞した。グランプリ受賞の『Etude, Solo』は、調律師の主人公が弾くピアノ曲により、初恋の女性が彼のことを想起するというストーリー。ユ・デオル監督は音楽についての映画を作り続けている異才で、本作も「タイトルになっているスクリャービンの曲を聞いた時に抱いた初恋の印象を映画にした、まず音楽ありきの作品」。主人公のピアノ演奏は体全体から喜びが溢れ出ていて見惚れたが「ピアニストが演じた」と聞いて納得。本当に音楽が好きな人たちでなくては作ることができなかった、愛すべき特別な映画だ。

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グランプリを受賞したユ・デオル監督

 イ・ソンガン監督『ひとりぼっちの怪物』は心優しい怪物と女の子の奥ゆかしい交流を描いたアニメーション。監督は日本でも公開された『マリといた夏』を代表とする抒情的な作品で高い評価を得ているベテランのアニメーション作家で、いつもながら作品がもつ静謐さに心が清められるような気がした。

 フランスの映画学校で学んだパク・ソンミ監督『Flying Pig』は、自殺を試みる少女が毎日届けられるチラシの裏にあるペーパークラフトを作ることで生きる意欲を取り戻していくというストーリー。ペーパークラフトの「Flying Pig」や部屋のしつらえなどがメルヘンチックで超カワイクて、目を見張った。凝った美術と、主人公がコミュニケーション下手なところはフランス映画『アメリ』のようだった。

 『冬眠』は、ユ・ヨンソン監督が「映画に導いてくれた先輩の死をきっかけとして構想し、追悼の思いも込めた」という作品。主人公の女性が部屋から一歩も出ずに待っているのは、日本滞在中に東日本大震災に巻き込まれて亡くなったとされる恋人だ。喪失感にとらわれて身動きできなかった主人公が、かすかな希望を見出すのを見ていると、監督が日本の遺族にも「そうあってほしい」と励ましを送ってくれているように思われた。

 『Delayed(延着)』は、駅で夫を待つ女性が見知らぬ男性に話しかけられるというスリリングな冒頭で見る者を惹きつけたまま、全く予想外の二人の関係を結末で明かすという手法で、キム・ドンハン監督の「ストーリーに大きな反転がある作品は長編より短編が合う」という言葉に肯いた。


日本・イラン・台湾の短編作品


 日本映画は3作品が本選に進出。高橋コウジ監督『霞』は、事故死して亡霊になった娘が人形職人の父を見守るというお話。具体的行動ができない霊が、それでも父の苦しみを癒したいと念じる姿が、日本人形の凛とした美しさと呼応していた。金子雅和監督『水の足跡』は、スランプに陥った動物写真家を主人公にした物語。『もののけ姫』を彷彿させる、自然への畏敬と、人間と自然が共存することの難しさを表わした、深みのある作品だった。青木紀親監督『ひかり、吹きすさんで』は、東日本大震災直後を描いた作品。「実際の被災地で撮影した」と言うだけあって、被災地のその時をリアルに感じさせた。

 イランからの2作品はいずれも反戦をメッセージにしていた。「審査員特別賞」を受賞したAhmad Hayati監督『The Buried』は、元気の良い子供を登場させ、明るく軽やかに反戦を伝えたことが斬新だった。Marjan Ashrafizadeh監督『Deep Blue』は、前半の明るいハネムーンと後半の爆発後という対比が強い印象を残した。

 「観客賞」を受賞した台湾のChiang Chung-Chieh監督『Panacea』は、漢方薬局を舞台に傷心を癒やす万能薬を求める人々を描いた作品で、漢方薬のようにじんわりと見る者を温めてくれた。


ヒロシマと共鳴した『ソウォン(願い)』


 小学校2年生のソウォンは酷い性的暴行を受け、辛うじて命は助かったものの、体にも心にも大きな障害が残ってしまう。両親は彼女の心身の痛みに徹底的に寄り添い、そんな両親を近隣の人々が支える中で、ソウォンがゆっくりと利発な少女である自分を取り戻していく姿が暖かい感動を呼んだ。

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イ・ジュニク監督(左)とソル・ギョング

 11月22日に開催された韓国の映画賞「青龍賞」の授賞式で、本作は最優秀作品賞、脚本賞、助演女優賞を受賞し、また、ソウォンの父親を演じたソル・ギョングは人気スター賞を受賞した。受賞式を終えたばかりのイ・ジュニク監督とソル・ギョングの登壇に、作品の感動に浸っていた、ほぼ満員の観客は大喜びだった。

 監督は「こういう事件が起きると、皆が加害者への怒りを抱き、死刑にしろ!と言うが、被害者については無関心だ。それに、加害者を死刑にしても被害者は幸福にはなれない。“幸福に生きろ。それが最大の復讐だ”という言葉があるが、このような残酷な事件が起きた時に、周囲の人が被害者の心のサポートをすることが必要だ」と熱く語った。

 ソル・ギョングは「このような事件の被害者に苦痛を与えないかと最初は出演を躊躇したが、妻で女優のソン・ユナが脚本を読んで、そういう心配は無用の作品だから監督に会うようにと勧めてくれた。監督に会ったら、話がうまくて(笑)すぐに承諾してしまった」と出演に至った経緯を紹介した。

 性的暴行という内容だけに、監督は子役への配慮として「ソウォンの苦痛を理解するように準備し、心理学の専門家が子役の心理的負担をチェックしながら撮影を進めた」。他の配慮として「私はすごく笑う人間で、撮影時もカットと同時に、皆がリラックスできるように率先して笑った」と言うと、ソル・ギョングが「おかげで役に集中できなかった(笑)」と返し、続けて「重苦しい場面の撮影が終わると監督がモニターの所におらず、隅で泣いていたこともあった」とのエピソードを披露した。

 事件のトラウマから男性を拒否するようになった娘のそばにいるために、父親が彼女の好きなアニメキャラクターの着ぐるみを身につけて奮闘するのは、笑いと涙が誘われる見どころだった。演じたソル・ギョングは「実際に父親であることを役に反映したということはない。普遍的な人としての思いが込められた作品だから」と作品に対する自身の思いを語った。

 最後に、監督が「広島は世界的に重要な都市。広島が犠牲となり、平和を夢見、形作る役割を負った。一番傷ついた者が一番大きく笑う。広島の人が一番大きく笑うべきだ」と映画に込めた思いと重なる、含蓄のあるメッセージを述べ、『力道山』のロケで広島県竹原市に滞在したことがあるソル・ギョングが日本語で「(監督と)同じです」と話すと会場から大きな拍手が沸き起こった。


人の心を描いた作品を上映する、小さな美しい映画祭


 イ・ジュニク監督は『王の男』上映後のトークで「私のこれまでの9作品のほとんどはマイノリティが中心人物となる作品で、『ソウォン(願い)』も英雄ではなく小市民が偉大な作品」と述べ、「ダマー映画祭は小さな映画祭だが、小さいものほど美しい」と映画祭に対する言葉も残していった。

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イ監督はコメントも一級品

 「ココロとココロをつなぐ映画祭」として、コンペ部門では人物の葛藤や心情の変化など、人間の内面描写にスポットをあてた作品を公募するという特色をもち、特別招待作品も、同様の視点で選んでいると思われたが、いずれの作品もしみじみと心に残る美しい作品だった。

 イ・ジュニク監督とのユーモラスなトークで観客を爆笑させた水田伸生監督と、脚本家の鴨義信氏は広島出身のゲストで、二人の発言には映画祭を盛りたてようという思いが滲んでいたが、それもこの映画祭が小さく美しいためだろう。

 映画祭発祥の地、シアトルでの映画祭開催は休止状態になっているそうだが、映画祭共同創設者のマーク・ジョセフ氏が本選審査員として参加し、彼がプロデュースした『MAX ROSE』が特別招待作品として上映されており、アメリカとの交流も続いているようだ。

 今後、回を重ね、どのように発展していくのかが楽しみな、美しい映画祭である。


ダマー映画祭 in ヒロシマ2013
 期間:2013年11月22日(金)~11月24日(日)
 会場:NTTクレドホール
 公式サイト http://www.damah.jp/

Writer's Note
 井上康子。福岡在住。ダマー映画祭の会場NTTクレドホールのすぐそばに広島市映像文化ライブラリーがある。広島に住んでいた80年代に、ここで『カッコーは夜中に鳴く』『春香伝』などの名作を見たのが私の韓国映画事始めだ。懐かしくて映画祭の合間に訪問した。


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