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Report 第26回東京国際映画祭 ~新人監督のエネルギー、巨匠の名作、娯楽作と異色作を一度に楽しめる映画祭

Text by Kachi
2013/11/25掲載



 10月17日から10月25日まで、第26回東京国際映画祭(以下、tiff)が、東京・TOHOシネマズ六本木を中心に開催された。来日したキム・ギドクが、作品のQ&Aで開口一番「大きな被害もなく台風が通り過ぎてくれることを願っています」と口にしたほど天候が心配されたが、オープニングセレモニーのグリーンカーペットも雨に降られることなく無事行われた。

 韓国映画は2作品が上映された。

 ホ・ジノやポン・ジュノを輩出した韓国映画アカデミー(KAFA)から、新鋭が登場した。「アジアの未来」部門で上映されたキム・ジョンフン監督の初長編作品『起爆』である。ジョング(ピョン・ヨハン)は大学で研究者をしながら就職活動をしているが、仕事はなかなか決まらない。教授にこき使われ、同僚ともうまくやれない毎日の鬱屈を、得意である爆弾を作っては希望者に送り、晴らしている。ある時、校内の問題児ヒョミン(パク・チョンミン)に興味を持ったことで、ジョングの日常が大きく変わっていく。

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『起爆』

 若い時は特に「思い通りにならない現実」への苛立ちを感じる。ジョングのように爆発したい思いを抱えながら、それでも生き辛い社会に順応していくために堪えながら生きている。一方「自分の存在の痕跡すべてを消すのが目的」とうそぶくヒョミンは、いわばジョングの持つ破壊衝動そのもので、鏡のような存在だ。ジョングを演じたピョン・ヨハンはソフトで甘いマスク、他方ヒョミン役のパク・チョンミンはシャープな外見と、対照的であったが真逆な見た目である二人の内面がだんだん境界をなくし、爆弾をコントロールできなくなっていく過程の緊迫感は息もつかせぬ迫力があり、とても長編デビュー作とは思えない。

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左からパク・ソンフン撮影監督、キム・ジョンフン監督、主演のピョン・ヨハン

 Q&Aでキム・ジョンフン監督は「爆弾は不器用だから作れない」と語ったが、登場人物たちがうさ晴らしに取る行動はほぼ実体験だそうだ。次回作について聞かれても答えられないほど、本作に「自分がこれまで生きてきて考えてきたことを全て表現し尽くした」という。粗削りだが、これで終わらせて欲しくない才能を感じた。

 なお、同じ「アジアの未来」部門で作品賞を受賞した中国映画『今日から明日へ』(ヤン・フイロン監督)は、大卒という高学歴にもかかわらず、非正規雇用に甘んじて北京郊外の集合住宅に住む「蟻族」と呼ばれる若者の夢と恋愛を描いた作品で、『起爆』のジョング、そして日本の若者との共通点を感じた。ある国の問題が、実は世界で同時に起きていることだと気づけるのも、コンペティション部門だけで1,500本もの応募があるほど、ジャンルを越えてたくさんの映画が集結するtiffならではだろう。


 鬼才キム・ギドクが脚本を手がけ、新人イ・ジュヒョン監督の初めての長編映画となった『レッド・ファミリー』は、コンペティション上映作。北朝鮮工作員スンヘ(キム・ユミ)、ミョンシク(ソン・ビョンホ)、ジェホン(チョンウ)、ミンジ(パク・ソヨン)の、世代も性別も異なる4人が家族を装い、隣の韓国人一家と交流しながら南でスパイ活動を行う中で絆が生まれ、イデオロギーとのジレンマに陥る。家族愛に満ちた本作は多くの観客の感動を呼び、観客賞を受賞した。

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左からパク・ソヨン、チョンウ、キム・ユミ、ギドク、監督

 『映画は映画だ』、『プンサンケ 豊山犬』、『俳優は俳優だ』など、ギドクがプロデュースする際は、いつもの彼独特な色合いが薄く、大衆的な作風に仕上がる。『レッド・ファミリー』も、単純なメッセージや娯楽性の強さが目立った。「ツツジ班」「野ウサギ」などのコードネームや、清渓川沿いに立ち並ぶまるで迷路のような工場街に仲間が身を隠している設定は、いかにもスパイらしかったものの、シンプルさや分かりやすさを追求するギドクの脚本とイ監督の演出からは、最も重要なスンヘたちの工作活動にリアリティが感じられなかった。工作員としての姿のディティールにこだわってこそ、祖国の家族や仲間への愛情という人間的感情を、使命のために押し殺す痛みが浮き彫りになるはずだ。

 今年のワールド・フォーカス部門では「台湾電影ルネッサンス2013」と題して6本の台湾映画が特集上映された。『高雄ダンサー』は、台湾のホー・ウェンシュン監督と韓国のファン・ウチョル監督の二人に加え、音楽をアメリカのディラン・テイラー氏が、そしてポストプロダクションを早稲田大学の安藤紘平研究室が行うという、国際映画祭にふさわしいボーダーレスに製作された一本だ。イー(クライ・ファン)、チー(エド・パン)、コン(クオ・ユィティン)の幼なじみの男女3人は、故郷を捨てて都会へ出る決意をする。だが実行当日、ふとしたボタンの掛け違いでチーは罪を犯し、3人の運命は大きく変わってしまう。屈託なく笑っていられた子供のままではいられない、成長していくことの残酷さを描くストーリーをアーティスティックな映像に乗せるという異色な表現に新しさがあった。

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台湾・韓国による共同監督作品『高雄ダンサー』

 新人監督の意欲作が上映される中、台湾ニューウェーブの名作として名高い短編オムニバス『坊やの人形』が、製作30周年を記念してデジタルリストア版で上映された。幼子を育てながら映画館のサンドイッチマンをする夫と、その妻の生活を描いたホウ・シャオシェン監督の『坊やの人形』、身重の妻を残して片田舎へ赴く、日本製圧力鍋セールスマンを描くツォン・チュアンシアン監督『シャオチの帽子』、駐留米軍の車に父が轢かれたことで大金が転がり込んできた家族のある一日を描いたワン・レン監督『りんごの味』の3本は、いずれも貧しい暮らしの哀歓にシニカルな眼差しが向けられており、結末はほろ苦い。しかし不思議と暖かな気持ちになる作品だった。

 新人監督のエネルギーに圧倒され、巨匠の名作を再発見し、娯楽作と異色作が一度に楽しめるのは映画祭の醍醐味だが、その点でtiffは今年も充実していた。また取材中、祭りの空間ならではの華やいだ雰囲気と映画ファンの熱気を肌で感じた。グリーンカーペットや連日開かれるQ&Aでは、世界の映画人に会える観客の興奮と笑顔が会場にあった。六本木駅のコンコースにはポスターが貼られ、tiff以外を目的に訪れた人の関心も引いていた。

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審査員のムン・ソリはクロージングで美しい韓服を披露

 そんな祭りの空気がある一方、「今年は釜山国際映画祭と東京国際映画祭で審査をしたが、笑える作品が一本もないのが大変ゆゆしき問題」という「アジアの未来」部門審査員の青山真治監督が放った痛烈な一言をはじめ、日本映画が無冠に終わったことなど、作品の質についてはなおも審査員たちから課題が示された。映画祭は、集められる映画によっていかようにも変化する。来年は、今年以上に多くの観客と映画人に愛される映画祭になっていることを期待したい。


第26回東京国際映画祭
 期間:2013年10月17日(木)~10月25日(金)
 会場:TOHOシネマズ六本木ヒルズほか
 公式サイト http://tiff.yahoo.co.jp/

Writer's Note
 Kachi。11月3日に、大阪・シネマート心斎橋で開催されていた「K-CINEMA WEEK」に行ってきました。ソン・ヘソン監督の『ブーメラン・ファミリー』は大盛況。立ち見ならぬ座り見をする大阪の韓国映画ファンのパワーに、東京も負けていられないと思いました。


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