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Review 『ドンジュ』 ~詩人、尹東柱の清冽な叫びを語り継ぐ

Text by 井上康子
2016/4/11掲載



 尹東柱(ユン・ドンジュ)は、日本が朝鮮半島を植民地支配した時代にハングルで詩を書き続けた詩人だ。彼の詩は政治的なものではなかったが、ハングルで日本支配に同調しない詩を書くことが危険視された時代だった。留学中の日本で治安維持法違反により逮捕され、27歳の若さで獄死した。生前は1冊の詩集も出せなかったが、日本敗戦後に詩集が出版されて後、「国民詩人」と呼ばれるまでになった。没後71年にあたる今年出版された復刻版詩集はインターネット書店の1月第4週のベストセラー堂々1位だった。それほど韓国で愛されている詩人なのだ。

dongju.jpg
韓国版チラシ

 生前は詩人になるという夢を果たすことができず、学ぼうと渡った日本で亡くなった彼の無念さはいかばかりであったろう。『王の男』『ソウォン/願い』のイ・ジュニク監督が、その心情に寄り添い、夢を抱いて困難な時代を駆け抜けた若者ドンジュを描いている。

 認知度が高いにもかかわらず「映画大国」韓国で彼を描いた映画が作られてこなかったのは、物静かな文学青年である彼は素材として地味であったためだろうが、監督はドンジュの同い年の従弟で、行動的な独立運動家の宋夢奎(ソン・モンギュ:実在した人物でドンジュ同様に獄死した)を登場させ、動きのある見せ場を作った。何より、そのことで二人の心情や目指すものの違いが明確になり、人物がリアルに造形された。

 映画は終始モノクロで、日本支配下の過酷な状況を映し出す。故郷を離れて入学した延禧専門学校(現・延世大学)時代には創氏改名を迫られる。立教大学に留学するが、軍事教練に参加しなかったという理由で教室に押し入った軍人に髪を刈られる。同志社大学に移るが、そこで逮捕され、福岡刑務所に送られ、厳しい取り調べを受けつつ、連日わけのわからない注射をされる。刑務所の日本人取調官は、政治的な意図のないドンジュを追い詰めることに躍起だが、立教大学の日本人教授はドンジュの詩を評価し、第三国で詩集を出版するための援助をする。ステレオタイプに日本人を描くことはされていない。

 作品では、ドンジュ役のカン・ハヌルが清々しい声で朗読するドンジュの詩が、イメージが重なる重要なシーンに挿入されている。「死ぬ日まで空を仰ぎ 一点の恥辱なきことを」で始まる、最も有名な詩「序詩」は取調室での抗議の絶叫に重ねられている。韓国の詩人、高銀(コ・ウン)は「詩と詩人は切り離せない。尹東柱は彼の詩以上に詩であり、尹東柱の詩は彼以上に詩人であった」と述べている。傷つけられても誇り高く頭を持ち上げたドンジュと彼の詩が一体となって胸に迫る。美しい映画である。


『ドンジュ』
 原題 동주 英題 DongJu; The Portrait of A Poet 韓国公開 2016年
 監督 イ・ジュニク 出演 カン・ハヌル、パク・チョンミン
 日本未公開作

Writer's Note
 井上康子。尹東柱没後70周年の2015年、甥の尹仁石さんが「福岡・尹東柱の詩を読む会」の招きで講演した。「1984年に日本で初めて詩集が出版された時、亡父(ドンジュの弟)は本当に喜んだ」とその時の笑顔の写真を見せられ、涙した。本作が日本で公開され、彼への理解がさらに深まることを切望する。


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Review 『更年奇的な彼女』 ~この機に一気見!クァク・ジェヨン監督が描く「彼女」たちの変化

Text by mame
2016/4/3掲載



 2001年(日本では2003年)に公開された『猟奇的な彼女』で、チョン・ジヒョンはスター女優の仲間入りをした。韓国では「猟奇」という言葉が社会的現象になり、日本でも幅広い層に韓国映画を知らしめるきっかけとなったこの作品は、同時にクァク・ジェヨン監督の知名度をも広めたといえよう。

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『更年奇的な彼女』

 この度、国境を越えて製作された「“彼女”シリーズ三部作の完結編」として、中国作品『更年奇的な彼女』が完成した。この機に三部作とされる『猟奇的な彼女』、『僕の彼女はサイボーグ』を見返してみる事にしよう(クァク監督は他にも邦題で「彼女」がつく作品を撮っているが、猟奇的な女性が登場する作品から、それぞれ各国代表として選ばれたという事だろう)。


『猟奇的な彼女』(2001年/韓国)


 地下鉄で酔いつぶれた「彼女」を介抱した事から始まった恋愛は、暴力的な彼女に終始主導権を握られながらも、うまくいっているように思えたが…。名シーンとなった地下鉄内で豪快にリバースする美女と、その中味(!)からは食生活が垣間見え、入隊中に恋人にフラれる軍人、ダンキン・ドーナツ…。今となっては懐かしさを感じる部分もあるが、随所に韓国らしさを感じられる作品だ。

 なんといってもこの作品は、チョン・ジヒョンとチャ・テヒョンの魅力抜きには語れない。飄々とした大学生、チャ・テヒョンの絶妙な抜け具合と、凄まじいツンデレぶりながらも、彼女なら許せてしまう絶対的な魅力を持ったチョン・ジヒョン。2004年に韓国に留学中だった筆者はチョン・ジヒョンが韓国の男性にとって「理想の女性」で、誰もが彼女に夢中である事に驚かされた。「顔がきれいでスタイルが抜群なのがたまらない」らしく、この映画をきっかけに現在に至るまで、彼女のイメージは崩れる事がない。チャ・テヒョンも同様に安定のコメディアンぶりを現在まで保っており、まさに韓国映画の力を海外に広めると共に、主演ふたりにとっても魅力を最大限に引き出すきっかけとなった作品だろう。

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クァク・ジェヨン監督


『僕の彼女はサイボーグ』(2008年/日本・韓国)


 冴えない大学生、ジローは誕生日もひとり寂しく祝うのが常だったが、20歳の誕生日、ちょっと風変わりな「彼女」が現れる。強い印象を残して去った彼女は1年後、同じ姿で彼の元に現れるが…。

 クァク監督が、綾瀬はるかを主演に日本版の「猟奇」を作り出した、と上映当初も話題になっていた作品。観て思うのはまさに「猟奇」の成功のセオリーが活かされたSFラブストーリーだが、その荒唐無稽ぶりは「猟奇」を凌駕している。ヒロインを魅力的に見せるクァク監督の手腕はここでも発揮されており、ボディラインも露わな数々の衣装に身を包んだ綾瀬はるかは、まさにアニメから抜け出したかのような完璧なかわいらしさで、男性陣の目を楽しませている。サイボーグという設定のため、少ない表情ながらも、数々の危機から小出恵介扮する主人公を命がけで救う姿は、まさに「理想の彼女」と言って良いだろう。

 ノスタルジックに映された神戸を舞台に(設定上では東京らしいが)、屋上に作られた住居や、少しやり過ぎな程グロテスクな描写には、監督ならではのこだわりを感じられる。だが、多くが想像力でできているSFというジャンルの面白さは、いかに現実を凌駕するほどインパクトのある画で観客を圧倒できるかに懸かっていると思う。数々の「彼女」の活躍ぶりは、綾瀬はるかという美女がやってのけるという見所はあるが、後半に明らかになる「時空を超えたラブストーリー」という設定の前では、どうも散漫な印象に終わってしまった。特筆すべきは、今となっては国民的スターになり過ぎて封印されてしまった「セクシーな綾瀬はるか」を観る事のできる貴重な機会というところだろうか。


『更年奇的な彼女』(2014年/中国)


 こうして久々の「猟奇」シリーズという事で制作された『更年奇的な彼女』。前2作と比べて思うのは、ずいぶん視点が変わったな、という事である。今までの作品にはどうも「男性から見た理想の女性像」が目立ち、ヒロインに感情移入する事ができなかったが、今回のヒロイン、チー・ジアの「猟奇」度は数々の要素によりだいぶ抑えられ、対する相手役ユアン・シャオオウの魅力がぐっと際立っている。

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(左)ジョウ・シュン演じるチー・ジア
(右)トン・ダーウェイ演じるユアン・シャオオウ

 更年期という設定上、確かに怒りっぽく、泥酔して暴れたりというシーンもあるが、まだ許容範囲内だ。その理由として、ジョウ・シュン演じるチー・ジアが大変可愛らしく(もう40代なのに!)、逆プロポーズを控えウェディングドレス姿で卒業式に出席し、嬉しくてたまらないという様子でウズウズする姿は、ひな鳥のように可愛らしい。さらに、ジャン・ズーリン演じる親友、リン・シューアルが大変なモデル体型であり、彼女と並ぶとその身長差からチー・ジアの可愛らしさが引き立っている。

 恋人への逆プロポーズで玉砕したチー・ジアはショックのあまり(たぶん)、変な髪型になり、更年期障害を患い、えなりかずきのように冴えないユアン・シャオオウに見守られながら同居生活をスタートするのであるが、このユアンが彼女の病気を治そうと料理を作ってくれたり、薬を買ってきてくれたり、セックス療法を試そうとしてくれたりと、涙が出るほど献身的なのだ。おまけに仕事もできるらしい。そういえばユアンを演じたトン・ダーウェイは『最愛の子』(ピーター・チャン監督/中国・香港)でも弁護士役を好演しており、「だんだんと格好良く見えてくる」感が最高である。また、景色を綺麗に見せるクァク監督の手腕はここでも健在であり、南国を思わせる中国・廈門(アモイ)の魅力や、恋人を追いかけて北京へ向かう道中では、ちょっとしたロードムービーのような趣向も凝らされ、異国の空気を存分に楽しめる作品だ。

 果たして自分の気持ちに気づいたチー・ジアは導かれるようにある展覧会に向かうが、そこで彼女を待っていたものとは…。クァク監督ならではともいえるカメラワーク、雨のシーンなども健在なこの作品。今回の発想はクァク監督の奥さんが実際に更年期障害を患っていた事に端を発したというが、年を経てクァク監督が描く「猟奇」にも幅が生まれたようだ。


舞台挨拶レポート


 3月16日に東京で行われた舞台挨拶付き特別試写会では、主人公チー・ジアの日本語吹替版を担当した藤原紀香さんとクァク・ジェヨン監督が登壇。クァク監督からは「撮影後にヒロインを演じたジョウ・シュンが劇中と同じサプライズプロポーズを決行し、結婚した」というエピソードも披露され、紀香さんはさっそく結婚観を聞き出そうとする芸能リポーターに囲まれていました(その後、紀香さんは結婚を発表し、主演女優がふたりとも結婚するという縁起の良い事態に!)。

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舞台挨拶での藤原紀香さんとクァク・ジェヨン監督

 藤原紀香さんがキャスティングされた事について、クァク監督は「作品に新しく生命が吹き込まれた気分。もともと紀香さんの大ファンだったので驚いた。私の座右の銘が『運命は努力した人に偶然を引き寄せてくれる』なので、こうした縁ができた事は大変励みになるし、嬉しく思う」とコメント。ん?この言葉、どこかで聞いた事がある…? 上記三部作でご確認をお願いします!


『更年奇的な彼女』
 原題 我的早更女友 英題 Meet Miss Anxiety 中国公開 2014年
 監督 クァク・ジェヨン 出演 ジョウ・シュン、トン・ダーウェイ、ジャン・ズーリン、ウォレス・チョン
 日本語吹替版出演 藤原紀香ほか
 2016年4月8日(金)より、TOHOシネマズ日本橋・新宿ほか全国順次公開
 公式サイト http://kounenki-girl.jp/

Writer's Note
 mame。今まで韓国、日本、中国で映画制作を経験してきたクァク・ジェヨン監督。過去のシネマコリアのインタビューでも、自分の映画について「どの国の人でも共感できるストーリー」と語っている。確かに、どの国においても、ここまで自分の色を全面に出したラブストーリーを撮り続ける監督も稀有だろう。だが、「猟奇」から15年も経つというのに、未だに「『猟奇的な彼女』の監督」と紹介されるのは、名作がゆえの名誉でもあるが、不本意ではないだろうか。次回作として日本を舞台にした『風の色』、韓国での『時間離脱者/시간이탈자』が控えている。三部作として区切りをつけた今、新たな代表作の誕生に期待したい。


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