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Interview 日韓合作映画『風の色(仮題)』クァク・ジェヨン監督 ~演技力でなく、自分なりのスタイルを持っている俳優を選ぶ

Text by 加藤知恵
2014/8/30掲載



 8月24日(日)大手町サンケイプラザにて、2015年制作・公開予定の日韓合作映画『風の色(仮題)』の企画概要説明会が開かれた。同イベントでは本作を演出するクァク・ジェヨン監督の『ラブストーリー』の上映とトークショーもあわせて行われ、多くの映画ファンが会場に集まった。

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クァク・ジェヨン監督

 クァク・ジェヨン監督といえば、日韓両国で爆発的なヒットを記録した『猟奇的な彼女』や『僕の彼女を紹介します』、綾瀬はるか主演の日本映画『僕の彼女はサイボーグ』などの作品で日本人にも馴染みの深い監督である。近年は中国での活躍も目覚ましく、新作の中国映画『我的早更女友』は中国国内2万3,000スクリーンという規模で今年10月に公開予定とのこと。そんな人気監督の意欲作であるだけに、制作陣営によるプレゼンテーションからもただならぬ熱意と意気込みが伝わった。

 『風の色(仮題)』の構想は、クァク監督が2002年にゆうばり国際ファンタスティック映画祭へ参加した際に北海道の街と自然に惹かれ、ぜひ北海道で映画を撮りたいと思ったことに始まる。その後、監督は多忙なスケジュールの合間を縫って2010年12月に来北し、1ヶ月の滞在期間中にロケハンティングとシナリオ執筆を行ったという。そのストーリーは、東京に住む主人公が恋人を亡くし、恋人が生前に語った「自分とそっくりな女性が北海道にいる」という言葉の真相を確かめるために北海道を訪れる。すると実はその女性も主人公そっくりの恋人を事故で亡くしたばかりであり…というドッペルゲンガーも絡むミステリアスでファンタジックな内容だ。

 トークショーでは、監督の個性ともいえる魅力的な女性キャラクターやファンタジックなストーリー展開についても話が及んだ。「きっとご自身が素敵な恋愛をたくさんされたから思いつくのですね」というコメントに対し、「本当に恋愛経験が豊富な監督は、むしろ悲恋物や複雑なラブストーリーを撮りたがるものだ。自分は経験が少ないからこそ、ファンタジックなシチュエーションに憧れて想像を膨らませているんだと思う」と若干謙遜気味の監督。また「監督にとって泣ける話はどのようなものですか」という質問には、「人への愛が感じられるもの。泣かせようという意図的な表現ではなく、悲しさと楽しさといった異なる感情が交差するところに涙が生まれる」と、独自の理論も語ってくれた。

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トークショーの模様。左からファン・ヨンスン プロデューサー、監督、司会の西田和昭氏

 『風の色(仮題)』のクランクインは2015年2月頃の予定だが、それに先立ち主役の女性キャストの公開オーディションも行われる。我こそはという方(プロ・アマ問わず)はぜひ挑戦して第二のチョン・ジヒョンや綾瀬はるかを目指して頂きたい。

 『風の色(仮題)』一般公募オーディションのエントリー・ページ
  http://kaze-iro.jp/entry/


 トークショーを終えた監督に、『風の色(仮題)』の話題を中心にインタビューを行った。


── 本作は実際に北海道を旅する中で、神秘的な景色からインスピレーションを得て、脚本を練られたと伺いました。これまでも風景のイメージを基に作品を作られたことがありますか?

デビュー作の『雨降る日の水彩画』は、韓国映画に初めて韓国の草原が登場した作品です。私はその場所を見た時、アイディアというよりは感情面でのインスピレーションを感じました。そしてこういう場所でこんなドラマが起きたらいいなと具体的な場面を想像し、ストーリーを構成しました。

── 『猟奇的な彼女』のようなラブコメ作品にも風景から得たインスピレーションが生かされていますか?

あの作品は少し違いますね。ストーリーが先にできあがって、それに合う風景を一生懸命探しました。あの一本松も、国内のあらゆる路線の電車に乗って回って見つけたんです。今では有名な場所になりましたが。私は感情に訴える力のある景色であってこそ、ロマンティックな演出が可能だと思っています。そういう景色は少ないので、背景となる場所は本当に大事です。その景色が放つイメージによって、場面が美しく見えたり悲しく見えたりもしますし。

── シナリオも北海道に滞在して書かれたそうですが、舞台となる場所でシナリオを書かれることも多いのですか?

滞在することは少ないです。現地でリサーチをしたり、インターネットの情報を参考にすることはよくありますが、その土地にいながら執筆することはほとんどありません。今回の北海道はよく知らない場所だったので、実際に写真を撮ったりして雰囲気を確かめながら書きました。

── では普段は事務所や家にこもって一生懸命書かれるわけですか?

事務所では書きませんね。いつもは生活環境から少し離れた、コンドミニアムのような完全に集中できる場所で書きます。家では絶対に書きません。家の中だとテレビやインターネットなどの誘惑が多すぎて、つい気が散ってしまうので(笑)。

── 北海道が舞台の作品といえば、韓国でも人気の高い岩井俊二監督の『Love Letter』という日本映画がありますが、この作品を意識されたりはしましたか?

同じ北海道が舞台で韓国でも有名な作品なので、意識しないわけにはいかないですね。実は以前に、岩井俊二監督と一緒に北海道を舞台にしたラブストーリーを撮ろうと話していたことがあるんです。ちょうどその時『風の色(仮題)』が構想段階にあったので、シノプシスを話したら、『Love Letter』と少し似ているところがあると言われました。現在のシナリオはその内容から随分変わっていますが。

── お二人で作られた映画もすごく見たいのですが、今後別の作品でご一緒される予定はありませんか?

今でもそうしたい気持ちはあって、幾つかプロジェクトの話もあがっています。ただ彼もいろんな国を渡り歩いていますから、なかなか頻繁に連絡を取るのが難しくて。中国でも撮影していましたよね。

── 本作は先に原作が漫画化されてインターネットで公開されていますが、原作と漫画、脚本の内容はほぼ同じですか?

漫画は原作から大分変わっています。漫画という媒体は表現方法が特殊ですから。脚本も原作をもとに脚色し直しているので、漫画の内容とは違います。


 漫画版『風の色』(林光黙 BY YLAB 著/原案 クァク・ジェヨン)
  http://club.shogakukan.co.jp/book/detail-book/book_group_id/12/

── 漫画の内容も監督が監修されましたか?

前半はチェックしましたが、後半は見ていません。漫画の場合は原作をモチーフに、比較的簡単に手を加えて簡易なプロットで展開しているので、映画とはまた別のものだと思っています。

── 韓国でも翻訳版のウェブトゥーンが公開されましたが、何か反応を聞かれましたか?

日本の場合と似ていますね。最初の頃の反応はとても良くて、連載を楽しみにする声も多かったのですが、話が進むにつれて複雑で難しいという感想が出てきて若干人気が落ちてしまったようです。その代わりにマニアやオタク層が生まれて、そういう人たちから支持されました。ものすごく大衆的というよりは、少数のオタク層に人気のある作品だと言えます。

── キャストの決定はこれからですが、過去のインタビューで、主役のイメージは蒼井優さんのようなミステリアスな魅力のある方とおっしゃっていましたよね。それは今も変わりませんか?

蒼井優さんは好きですし、もちろん一緒に仕事ができれば嬉しいですが、どうでしょうね。彼女が公開オーディションに参加してくれるのかどうか(笑)。彼女も含めて、今は色んなタイプの俳優と会ってみたいと思っています。

── キャスティングの際にいつも一番重視されるポイントは何ですか?

イメージが大事ですね。演技力ももちろん必要ですが、その人がどんなイメージを持っているかがもっと重要です。演技力のある人は自分の持つイメージをよりうまく魅せられる点で有利なわけで、演技力そのものが大事だとは思いません。最近も韓国で『時間離脱者/시간이탈자』という作品のオーディションを何度も行いましたが、結局のところ演技がすごく上手な俳優というのは必要ないんです。上手な人はたくさんいますが、みんな同じ演技で似たようなスタイルに見えて、正直見飽きてしまう。最終的に演技力は少し劣っても、自分なりのスタイルを持っている俳優を選びましたね。

── ちょうどその作品のキャスト(イム・スジョン、イ・ジヌク、チョ・ジョンソク)が決定したというニュースを見ました。来月から撮影に入られるそうですが、準備は万全ですか?

キャストは全て決定しました。一番志望者の多かった悪役が最後まで残っていましたが、新人の俳優に決まりました。

── その作品も楽しみにしていますので、ぜひ日本でも早い公開をお願いします。

私もそうしたいです。私の映画は韓国人だけの情緒に合うような作品ではないので、日本や中国ででも制作できるのだと思います。韓国固有の文化や歴史の理解が必要なわけでもないし、どの国の人でも共感できるストーリーではないかと。この『風の色(仮題)』についても同じことが言えます。

── 中国映画も監督されていますが、国ごとにシナリオの書き方や演出方法を変えたりはされますか?

意図的に変えるというよりは、俳優の力に頼るところが大きいです。言語が異なるために自分がその台詞の感情を完全に理解できない時もありますし。だからこそ優秀な俳優と一緒に作り上げることで、理解の及ばない部分をカバーしてもらっていると感じます。中国でも素晴らしい俳優の力を借りて、そのように撮影しています。

── 中国の現場の雰囲気はどうですか?

映画の現場というのはどこも似たところはありますが、コミュニケーションを取るのが日本よりも難しいという印象はあります。日本人のスタッフは監督にたくさん質問をして自分の考えと相違ないかを確認してくれますが、中国の人はあまり聞かずに行動します。だから違っていたとしてもそのまま進んでしまう。「なぜこうしたの?」と聞いても、「そう思ったから」とか「今までもこうしてきたので」というような返事が来ます。そこで反省するよりは、違うなら今から切り替えればいいという考え方なんです。

── 日本の俳優に対してはどのような印象をお持ちですか?

一言で言えば監督を困らせないスタイルですね。すごく一生懸命で監督の描くイメージや要求にうまく対応してくれるし、監督のことを敬って従ってくれます。中国では逆に監督が俳優を敬わなければいけなくて。中国の俳優は自分の意のままに進めてしまうので大変です。監督とは名ばかりのもので、俳優が制作側に「監督の言いなりになるな」なんて言ったりもしますから(笑)。そういうシステムなんですよ。

── 日本映画『僕の彼女はサイボーグ』では監督以外、俳優もスタッフも全て日本人という環境でしたが、『風の色(仮題)』では韓国人スタッフも参加されるそうですね。前回とは少し現場の雰囲気が変わるのでは?

韓国人スタッフは撮影や照明担当の数名だけで、他は全て日本人の予定です。海外での撮影で一番苦労するのは、制作面の問題よりも、その国の撮影機材とその技術者を扱うことなんです。韓国の物とは違いますから。予算を抑えるという意味でも、今回はこれまで一緒に仕事をしてきた韓国人スタッフに協力してもらうのがベストだと考えました。説明や機材に慣れることに余計な時間がかからずスムーズですしね。

── 日本や中国についてお話ししてくださいましたが、脚本を担当された『デイジー』の舞台はオランダですよね。アジアに限らず、ハリウッドやヨーロッパでの制作も考えていらっしゃいますか?

実はハリウッドに進出する機会は以前にもありました。撮影の都合がつかず断ってしまいましたが。作品名はまだ言えませんが、最近も私の作品をハリウッドでリメイクしようという動きがあります(『猟奇的な彼女』は既にリメイク権を売却)。ハリウッドでの新作制作も念頭にはありますし、一緒に作品を作りたいという話があればどこの国でも行きたいですね。



『風の色(仮題)』
 監督 クァク・ジェヨン 出演 未定
 2015年制作・公開予定
 公式サイト http://kaze-iro.jp/

Writer's Note
 加藤知恵。「健康管理やストレス解消のためにしていることは?」と尋ねた際、「何もできていませんよ」と笑いながら、おもむろにカメラを取り出して筆者を撮り始めた監督。筆者が慌てていると、「写真を撮るのが好きなんです。写真は日記帳のようなもので、いつ誰とどこにいたのか記憶の代わりになるから」と、札幌の美しい風景写真を見せて下さいました。


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Interview 『恋に落ちた男(仮題)』ハン・ドンウク監督 ~ファン・ジョンミンが素晴らしいのはアドリブを入れないところ

Text by 加藤知恵
2014/8/2掲載



 「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014」にて、韓国映画『恋に落ちた男(仮題)』がインターナショナルプレミア上映された。監督は『生き残るための3つの取引』『悪いやつら』『新しき世界』など、数々の話題作に助監督として携わり、本作が長編デビュー作となるハン・ドンウクである。

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『恋に落ちた男(仮題)』

 高利貸しの借金取りであるテイル(ファン・ジョンミン)は、昏睡状態の父親を看病し借金を肩代わりすることになったホジョン(ハン・ヘジン)に一目ぼれをする。借金を帳消しにする代わりに自分と付き合えと言い出すテイルに対し、ホジョンは嫌悪感と猜疑心を抱くばかり。しかし粗野で不器用ながらも真っ直ぐ自分に好意を示すテイルに、彼女は次第に心を開いていく。そしてテイル自身もホジョンへの愛に目覚めることで、家族や友人との関係を見つめ直していくのだが…という真正面から「愛」を描いた物語。

 作品の舞台となるのは、韓国の港湾都市の一つである群山(クンサン)だ。「テイルとホジョンの他に第三の主人公を挙げるとすれば、それは群山の町です」と監督が語るように、さびれた群山の街並みにチンピラ・ファッションを着て肩を張り、ガニ股で歩くテイルの姿が良く似合う。警察沙汰を起こしてばかりの厄介者でありながら、どこか可愛らしいテイルのキャラクターが何とも魅力的だ。恋に悶える純粋な男の姿から、家族とのコミカルな掛け合いや激しいアクションまで、ファン・ジョンミンが絶妙な演技を見せてくれる。

 韓国映画やファン・ジョンミンのファンが会場に駆けつけ、7月26日(土)の上映回は満席に。ゲストで登場したハン・ドンウク監督にも、「感動しました」「来春の劇場公開が決まって嬉しいです」という温かな感想が多数届けられた。今回は奥様と一緒に一週間日本に滞在されたハン監督。観客からの「これまでにテイルのような熱烈な恋をした経験は?」という質問に、「今まさにそんな恋をしています」と堂々と答える姿がとても素敵だった。

 そんな監督にインタビューを行った。


── まず監督ご自身についてお聞きしたいのですが、どのようなきっかけで映画の道を目指されたのですか?

16・7歳頃に見た『ビート』(1997、キム・ソンス監督)という韓国映画がとても面白くて、映画制作に興味を持ちました。そんな時、偶然に「青少年映像制作団」という青少年を集めて映画制作実習をする団体に加わることになり、そこで映画の作り方を学びました。その後はずっとスタッフとして多数の現場に参加し、今に至ります。

── 当初から監督になりたかったのでしょうか?

はい。当時も短編映画を2・3本監督しました。ビデオ・カメラを借りて友達を集めて撮影し、映画祭にも出品しました。それがとても楽しくて、絶対にプロの監督になりたいと思っていました。

── その時の短編映画はどんな作品だったのですか?

『Son of a bitch』というタイトルで、10代の若者が大人に反抗して問題を起こしたりしながら、互いの友情を確かめ合うというような内容です。悪口もたくさん出てくるし、荒々しい作品でしたね。

── 当時から男性的な荒々しい映画がお好きだったんですね。

そうですね。僕の見た目もそういう感じですし(笑)。

── 雰囲気がおありなので、俳優をされても良さそうな気がしますが(笑)。

実はこれまで何度か出演もしているんです。僕が参加した映画には、必ず一度は俳優として顔を出しています。外見がカッコいいと言われて(笑)。今回の作品でも、中華料理店に入ってきたテイルにのれんを開けてあげる役で一瞬出ていますし、『新しき世界』ではジャソンを殺すと見せかけてチャン理事を殺す役で、助監督兼俳優として出演しました。『生き残るための3つの取引』にも刑務所の看守の役で出ています。

── 全て拝見したはずなのですが、もう一度見て確認したいと思います。

もう一度見ていただければ、『新しき世界』の中で、食べている姿の僕がすぐ目に入ると思いますよ。


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ハン・ドンウク監督

── では本作についてお聞きします。今回はファン・ジョンミンさんからの推薦で監督に決まったと伺いました。これまで何作も一緒にお仕事をされていますが、ファン・ジョンミンさんとは親しいのですか?

そうですね。助監督時代から仲良くしていただいて、よく一緒にお酒も飲みました。

── 普段のファン・ジョンミンさんはどんな方ですか?

イメージと変わらないですよ。周りにすごくよく気配りをしてくださるし、年下の俳優やスタッフを可愛がってくれます。一番年上の兄のような存在ですね。

── 監督に声がかかった時には、既にファン・ジョンミンさんもシナリオを読んで気に入ってらしたのでしょうか。

シナリオ自体は随分前からあったのですが、「愛」をテーマにした作品が良いということで、これに手を加えて現代風のスタイルにしようという話になり、出演を決められたようです。それでどのようにアレンジするかを一緒に打ち合わせしながら、進めていきました。

── シナリオをアレンジする中で、一番気を遣った点や大事にした部分はどのようなところですか?

まずは元のシナリオが大分古く、脚本家も年配の方だったので、全体のバランスを見ながら僕の感覚や現代の雰囲気にあわせる作業に気を遣いました。恋愛表現も、シナリオが書かれた当時と今とでは違いますし。家族への愛情は元のシナリオにも描かれていたので、良いところは残し、それ以外をアレンジするという方法を取りました。

── 恋愛以外にも家族愛や友情が温かく描かれているのが印象的でしたが、やはりそこは大事にされていたんですね。

もちろんです。元のシナリオにも人物同士の関係性や心情はよく表現されていたのですが、気持ちが変化していく過程や台詞などに工夫を凝らし、僕のスタイルに変えていきました。

── 構成の面で、テイルとホジョンの距離が段々と縮まり、やっと気持ちが通じたと思ったら突然2年後に移りますが、それも元のシナリオにあったのでしょうか。すごく裏切られた感じがしたのですが(笑)。

韓国でも驚いた、混乱したという声をたくさん聞きました。元のシナリオはメロ・ドラマとして淡々と描かれていて、そのまま作品にしたら当たり前すぎてつまらないような気がしました。それで編集の段階で今の形に変えたんです。一番良い時のすぐ後に一番悪い状況を持ってくることで一層効果的になるのではないかと思って。

── お金を借りて使い込む牧師のキャラクターも元からありましたか?

あの設定は僕が追加しました。牧師役を演じたキム・ビョンオクさんとは個人的に親しくて、何かの役で出演をお願いしようとした時に、ストーリーが重々しかったので、笑いを混ぜようと思って加えました。出演シーンはもっとたくさんありましたが、編集で大分カットしてしまいました。

── 社会風刺というよりは面白さを求めて牧師になったわけですね。

説教をする牧師が借金をしてギャンブルをするという設定が面白いかなと思ったので。

── 撮影中に一番苦労されたシーンはどこですか?

テイルとホジョンが再会するシーンですね。テイルがホジョンを抱きしめながら苦痛に耐える場面と、ホジョンが病気を知ってから再会する場面の両方です。2人が会ったらきっと泣くだろうなと頭で想像はできますが、実際に経験したことがないので、感情を捉えて演出するのが難しかったです。

── 泣いている2人を横から写したシーンもそうですし、2人が一緒にいる場面は光や背景の木々の感じがすごく美しいなと思いました。ギターやピアノのBGMもとても温かな雰囲気でしたよね。

撮影監督と音楽監督によく伝えておきます。テイルとホジョンが一緒にいられる時間は短いので、その場面をいかに印象的に見せるかについて、撮影監督も音楽監督もすごく悩んでいました。何度も打ち合わせを重ねて、幸いに音楽も良いものに仕上がりました。


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ティーチインの模様

── このシーンにはこんなエピソードや仕掛けがあるといった裏話があれば、教えて下さい。

色々あったはずなんですが、編集作業の間に大分記憶が飛んでしまって…。面白くてカットするのが惜しい場面はたくさんありました。例えばテイルがホジョンに覚書を渡しに行く前に、兄の理髪店へ髪を切りに行きますが、兄夫婦がケンカをして結局髪を切ってもらえず、首にタオルを掛けたまま出てくるというシーンもあったんです。DVDにはカット場面集も収録されているので、またご覧になってください。

── あの覚書のイラストはひょっとして監督が描かれたのですか? すごく可愛かったですが。

そうです。あれは僕の作品です。テイルの、荒々しいけれど子供っぽい、純粋な部分を表現したいと思い、僕自身も最大限に純粋な気持ちで描きました。

── ファン・ジョンミンさんはこの作品で、一つの役でありながら多様な姿を見せていらっしゃいますね。演技については細かく打ち合わせをされましたか? それともある程度ご本人にお任せしたのでしょうか。

ジョンミンさんが素晴らしいのはアドリブの演技を入れないところです。「こういうのはどう?」「これは大丈夫?」と、必ず事前に相談をしてくれます。撮影後の食事やお酒の席ではいつも一緒に座って、次の撮影シーンについて打ち合わせをしましたし、全て僕の同意を得たうえで演じてくださいました。全体的な視点で見ている僕よりも、キャラクターについては彼の方がよく分かっているので、アイディアもたくさん出してくださいました。本当に最高の俳優です。

── ハン・ヘジンさんは現場ではどんな方ですか?

大人しい方かと思っていたのですが、実はとても楽しい方でした。よく冗談を言ったりふざけたりもされますし。普通に見えるけれど、実はどこかが飛んでいて不思議と面白い、そんな感じでしょうか。演技に対する集中力もすごいです。自分の役について僕の考えが及ばないところまで深く掘り下げて、ジョンミンさんと2人で話し合いながら役作りをされていました。2人の息もぴったりでしたね。

── 他の俳優やスタッフの方々も、監督と過去に一緒にお仕事をされた経緯から積極的に参加されたと聞きましたが、そこはやはり監督の人徳でしょうか。

僕は本当に恵まれていると思っています。これまで一生懸命頑張ってきた姿が認められたのかもしれません。スタッフ同士もとても仲が良く、自由に意見を言いあって、全員揃ってよく飲みました。助監督時代からそのように過ごしてきた仲だったので、多くのメンバーがシナリオを見る前から手伝うと言ってくれました。テイルの兄役のクァク・トウォンさんも最初に電話をした段階で、「出るよ。で、何の役なの?」という感じでしたし。それに制作会社サナイ・ピクチャーズの社長が人脈の広い方なので、彼がハン・ドンウクに任せるなら信じようといって参加して下さった方々も大勢います。もちろんジョンミンさんの力も大きかったと思います。

── 長編としてはデビュー作なので、ある程度プレッシャーもおありだったのではないかと思いますが、今までのお話だとそこまで苦労されてはいないようですね(笑)。

これまではスケジュールに合わせて撮影を進めればいいだけでしたが、今回は監督として全責任を取る立場だったので、そういう意味で最初はとてもプレッシャーを感じました。でも素晴らしいスタッフと俳優が協力してくれたおかげで、良い雰囲気の中で撮影できて、中盤からは楽しむことができました。「ダメならやめてやる」「失敗したら撮り直せばいい」と開き直ってましたね(笑)。それに撮影監督や年上のスタッフの方々が励ましてくださったのも有難かったです。運が良かったのだと思います。

── それも実力のうちではないでしょうか。監督自身が一番お気に入りのシーンや、是非ここを見てほしいという部分はありますか?

いくつかありますが、あえて挙げるならテイルが父親の足を揉んであげるシーンですかね。まあ全部大事ですよ。この作品がうまくいってこそ次に繋がるので。

── ソンジ(テイルの兄の娘)役の子はすごく上手でしたね。彼女のキャスティングはどうされたのですか?

彼女とテイルの友達のような関係性やエピソードも大事なので、キャスティングには苦労しました。何度もオーディションを繰り返しましたが、テスト撮影の日になっても決まらず、結局は一番不良っぽくて気の強そうな子を選びました。でも悪口がうまく言えなかったので、僕が教えてあげました(笑)。演技も上手でしたし、結果的には正解でしたね。

── 最後に、これまでの経験の中で、ご自身で準備されてきたテーマもおありではないかと思いますが、今後はどのような作品を監督される予定ですか?

次回作はまだ具体的には決まっていません。宇宙人やロボットが出てくるアクションやスリラーなど、作りたいジャンルはたくさんありましたが、この映画を撮る中で自分には身の回りの話を描く方が合っていると思うようになりました。見る人が「自分だったらどうしよう」と考えたり、その状況や感情に共感したりできるような、人間味の溢れる作品を撮りたいですね。



SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2014
 期間:2014年7月19日(土)~7月27日(日)
 会場:埼玉県・SKIPシティほか
 公式サイト http://www.skipcity-dcf.jp/

『恋に落ちた男(仮題)』
 原題 남자가 사랑할 때 英題 Man In Love 韓国公開 2014年
 監督 ハン・ドンウク 出演 ファン・ジョンミン、ハン・ヘジン
 2015年春、シネマート新宿にて公開

Writer's Note
 加藤知恵。字幕制作会社に勤務し、韓国ドラマやバラエティ番組の翻訳に携わる日々。今年はプチョン国際ファンタスティック映画祭に参加できなくて残念でしたが、日本で公開される話題作を見て楽しみます。


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