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News 今年はさらに悩ましい!大阪アジアン映画祭&花開くコリア・アニメーションのススメ

Text by mame
2014/2/27掲載



 今年もいよいよこの季節がやってきました!

 第9回大阪アジアン映画祭が3月7日(金)~16日(日)の期間、大阪市内各所にて開催されます。観たいプログラムと会場の移動時間に悩まされるのは昨年同様ですが、今年は韓国映画ファンにとって悩ましい事がもうひとつ。昨年『豚の王』の上映で話題を呼んだ「花開くコリア・アニメーション」の開催が、今年は3月7日(金)~14日(金)と、大阪アジアン映画祭とがっぷりかぶって連携企画となっています。

 大阪アジアンか、それとも花コリか…。スケジュール管理に頭を悩ませているみなさまを、さらに悩ませる展開で話を進めてまいりましょう。

 まずは大阪アジアン映画祭。韓国映画は共に海外初上映となる『ローラーコースター』『サンシャイン・ラブ』の2作品に加えて、嬉しいサプライズが。『友へ チング2』の日本初上映が急遽決定しました!

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『ローラーコースター』

 『ローラーコースター』は、抜群の存在感を持つ俳優ハ・ジョンウが、あえて出演なしで臨んだ初監督作。チョン・ギョンホ演じる韓流スターが、飛行機内を舞台に繰り広げるコメディとの事ですが、マルチな才能を持つハ・ジョンウの作風がどんなものか、興味津々です。

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プチョン・ファンタでの『サンシャイン・ラブ』ティーチインの模様
左から司会、監督、オ・ジョンセ、チョ・ウンジ

 『サンシャイン・ラブ』は昨年プチョン国際ファンタスティック映画祭で上映され、好評を得たチョ・ウンソン監督の長編デビュー作。偶然にも昨年の『1999、面会~サンシャイン・ボーイズ』に引き続いてのサンシャイン?つながりです。昨年の主人公は、何とも味のある男子3人組でしたが、今年の主人公も決してイケメンとはいえないオ・ジョンセ…。だからこそ、多くの人が親近感を抱ける、ほのぼの心温まるラブ・ストーリーに仕上がっています。全3回の上映のうち、最終日3月16日(日)は唯一、昼の回に上映され、チョ・ウンソン監督の舞台挨拶も予定されているので、まさにサンシャインの中で監督と対面できるチャンスです。

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『友へ チング2』

 そしてお待ちかね、『友へ/チング』が帰って来ます! 2001年に韓国公開されるや空前の大ヒット。その後、日本においても韓国映画ブームの一端を担った名作。昨年クァク・キョンテク監督が再びメガホンを取って制作された12年ぶりの続編『友へ チング2』は、韓国内で再び大ヒットを収め、今回が日本初上映となります。ドンス(チャン・ドンゴン)の死から17年後を舞台に、ユ・オソン、チュ・ジンモ、キム・ウビンら新旧キャストが魅せる新たな物語に、今から胸が熱くなります。

 花開くコリア・アニメーションは、長編『パタパタ』と3本の短編プログラム、さらに大阪限定でイ・ソンガン監督の長編『マリといた夏』特別上映とトークショーが予定されています。

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イ・ビョンホンが声優をつとめた『マリといた夏』
イ・ソンガン監督が来日しトークショーを開催する

 今年の長編アニメーション『パタパタ』は、活きの良いサバ「パタパタ」が繰り広げる水槽から海への脱出劇。アニメーションならではのミュージカルも交えた意外な展開で、表情豊かに描かれた魚たちに感情移入してしまいそうです。短編プログラムの醍醐味は、様々な持ち味のアニメーションを連続して観るうちに、いつしか脳内で取捨選択され、自分の好みの作品が浮きあがってくる事ではないでしょうか。今年も展覧会に来た気分で、お気に入りの1本を見つけたいものです。

 大阪アジアン映画祭では日本発の劇メーション『燃える仏像人間』も特別上映なので、日韓アニメの競演を楽しむといった趣も。花コリが連携企画になった事で、スケジュールは過密になりますが、選ぶ楽しみは倍増。体調を万全に整えて、今年も楽しみたいと思います。


第9回大阪アジアン映画祭
 期間:2014年3月7日(金)~3月16日(日)
 会場:梅田ブルク7、シネ・ヌーヴォ、シネ・リーブル梅田、ABCホール、テイジンホールほか
 公式サイト http://www.oaff.jp/

花開くコリア・アニメーション2014 in 大阪
 期間:2014年3月7日(金)~3月14日(金)
 会場:PLANET+1、大阪韓国文化院
 公式サイト http://anikr.com/

Writer's Note
 mame。大阪アジアン映画祭への参加は今年で2回目。上映作のうち、台湾の短編ドキュメンタリー『台中州高砂族の内地観光』は、あの『セデック・バレ』のセデック族が、阪神電車に乗って大阪に観光に行くという記録映像らしく…。阪神電車ユーザーとしてはどうにも気になって仕方ありません。


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Review 『渚のふたり』 ~悲しみを共有する障害者夫婦に幸福の形を見出す

Text by 井上康子
2014/2/4掲載



 視聴覚二重障害をもつ青年と、脊椎障害のある妻の日常風景を捉えて、「ドキュメンタリーのカンヌ」とも呼ばれるアムステルダム国際ドキュメンタリー映画祭で、2011年にグランプリを受賞した作品。ドキュメンタリー監督イ・スンジュンの長編3本目にあたる。

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 監督はテレビのドキュメンタリー番組のリサーチをしている中で夫婦のことを知り「ヘレン・ケラー以外にも視聴覚二重障害の人が存在することを伝えたい」という思いから企画を立てた。そして「彼らに会えば会うほど人間的に温かい気持ちになった」と言う。そのような監督の気持ちが反映された本作は、障害者の生活上の困難や障害に対する差別をテーマにしたものではなく、触覚などによる夫婦の日常会話を中心に取り上げ、監督が二人の姿に敬意を抱き、見つめたものとなっている。

 夫のヨンチャンは幼児の時に視力と聴力を失い、漆黒で、辛うじて強大音がぼんやり聞こえるという世界に生きている。周囲の人は彼に指点字で伝え、彼は周囲の人に、不明瞭さはあるが、幼児の時まで聞こえていたために発話が可能で、音声で伝える。彼は時に自ら「宇宙人」と称する。作品中、彼の詩が彼自身の朗読でいくつか紹介されるが、「指の先で夢見る宇宙人は誰とも話ができずに一人孤立していると、宇宙空間に一人ぼっちでいる気分になる。視聴覚障害者はみんな宇宙人の気質がある」からは、誰かが指点字で話かけてくれない限り会話が開始できず、周囲の状況も分からない彼の深い孤独が伺える。

 しかし、同時に「人の視力や聴力というものは、なくなるものではない。宇宙のどこかをさ迷っているだけだ。時が経てば主人の元へ戻ってくるだろう」には、キリスト教信者であるらしい彼のどこか達観した態度も感じられる。パートナーのいる彼を羨む同じ障害をもつ仲間に「結婚するには準備が必要だ」と言って少し相手を緊張させておいて、「(自分は)寂しさは準備できていた」と語る。ユーモアを愛す、ひょうひょうとした味わいのある青年だ。

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指点字:両手の6本の指を点字の6つの点に見立て、指で点字を打つこと

 妻のスンホは障害のため低身長だ。家事全般と夫が外出する時の移動の介助、指点字ができない健常者と夫が会話する際の通訳など、献身的な姉さん女房として様々な役割をこなしているが、低身長のために天井の蛍光管の交換ができない。彼女に代わって、ヨンチャンが蛍光灯に触れた感覚と妻の指点字での指示を頼りに、ようやっと新しい蛍光管を取り付ける。健常者にとっては容易な作業でも、障害がある二人には大変な作業であることが見て取れる。だが、監督が注目しているのはそのことではなく、協力して作業を行い、電気が灯れば「成功だね」と抱き合っていたわり合う二人の関係性だ。

 ヨンチャンは大学で学んでおり、学資を得るため公募された手記に応募する。だが、当選者の中に彼の名前はない。そのことを告げる「一生懸命やったから私が拍手を送るわ。ごめんね、名前を見つけられなくて」というスンホの言葉に筆者は胸が熱くなった。ここまで相手の悲しみに寄り添おうとする強い意志を感じさせる言葉を聞いたことがあっただろうかと。

 ヨンチャンもスンホの悲しみに敏感だ。雨だれを手で触れながら、スンホが「泣きたい時は、にわか雨が降った時に。雨にあたれば雨か涙か分からないから」とつぶやくと、ヨンチャンは妻の来し方を思い「そうだったのか」と抱き寄せる。

 監督は約2年に及ぶ撮影中に「二人が寂しさを共有しているなと感じることが度々あり、それは現代社会で生きている私たちが忘れがちなことで、とても羨ましいと感じた」と述べている。筆者も同様に感じた。互いが寂しさや悲しみを共有できる、そのような相手と過ごせることを幸福といわないでどうしよう。

 もうひとつ、二人が幸せに見えた理由を挙げると、障害という大きな困難を抱えていることが影響しているのだろうが、日常のささやかなことに幸福が宿っていることに夫婦が気づいているためだ。雨粒の柔らかさや、木の葉が掠れ合うことの中にも彼らの幸福がある。

 ナレーションを排し、そこにいる人だけが発する言葉で成り立たせたゆえに、共に生きるとはどういうことか、そして幸福とは何かを、見る者に考えさせる。夫妻に長期間寄り添った監督の努力と思想が結晶となっている。


『渚のふたり』
 原題 달팽이의 별 英題 Planet Of Snail 韓国公開 2012年
 監督 イ・スンジュン 出演 チョ・ヨンチャン、キム・スンホ
 2014年2月15日(土)より、シネマート新宿ほか全国順次公開
 公式サイト http://nagisanofutari.jp/

Writer's Note
 井上康子。東大教授で盲ろう者の福島智氏は「最も辛いのはコミュニケーションが困難なこと」と語る。触れたらどの札か分かるトランプがあればゲームに参加することはできるが、周りの会話を受信できないとトランプは全く面白みの無いものと化す。人として生きるには情報の共有だけでなく、他者との情動の共有が必要なのだ。


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