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Report K-CINEMA WEEK 2013 in OSAKA ~秋の週末は最新韓国映画を満喫

Text by mame
2013/12/28掲載



 関西在住の韓国映画ファンにとって秋はとっても楽しみな季節。なぜなら最新話題作をひと足先にゲストトークと共に楽しめるイベント「大阪韓国映画週間」があるから~!と、叫びたくなるのは私だけではないはずです。駐大阪韓国文化院が主催するこの企画は、2006年より毎年開催されており、今年は日韓交流期間「KOREA MONTH 2013」の一環として、10月27日(日)、11月2日(土)~4日(月・祝)の週末の4日間、開催されました。

 今年からは名前も「K-CINEMA WEEK」と改称されたかと思ったら、オープニング会場も今大阪で最もアツいスポット、グランフロント大阪内にあるナレッジシアターと聞き、いよいよ韓国映画もオシャレものとして市民権を得る日が来たのね…と感慨深くなってしまいます。

 そんな私も実は昨年が初参加だったのですが、どっぷりこの映画週間にはまってしまいました。なぜって昨年のラインナップ! 『建築学概論』『ダンシング・クイーン』『合唱』『Hana ~奇跡の46日間~』『サニー 永遠の仲間たち』 どうでしょう? 涙なしには観られない傑作揃いです。もちろん私も毎回号泣。ハンカチだけでは足らず、ティッシュで溢れる涙を拭った結果、涙と鼻水、さらに紙粉にまみれた自分の顔を鑑賞後のトイレで発見して愕然としておりました。昨年のラインナップのうち、まだ劇場公開されていないのは『合唱』のみですが、実はこの映画こそが私の大のお気に入り。音楽を聴いて涙を流すという事を初めて経験した忘れられない作品です。

 さてさて、楽しみな今年のラインナップをご紹介します。『結界の男』『マイラティマ』『ミナ文房具店』『漁村の幽霊 パクさん、出張す』『ブーメラン・ファミリー』の5作品。いくつかの作品は大阪に先んじて東京の韓国文化院でも上映されたので(「Report コリアン・シネマ・ウィーク2013 ~王道のストーリーが感動を呼ぶ」)、今回は『漁村の幽霊』『ブーメラン・ファミリー』をご紹介します。

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『漁村の幽霊 パクさん、出張す』

 『漁村の幽霊 パクさん、出張す(原題:占い師たち/점쟁이들)』。怪奇現象に悩まされる田舎の漁村を救うべく集まった占い師たち。漁村に漂うただならぬ空気、非協力的な村民達を前に、多くの占い師が逃げ出し、残った5人のワケあり精鋭集団+新聞記者で立ち向かいます。驚いたのが村民を悩ませている悪霊の正体。昔ながらのおどろおどろしい幽霊を想像していたら、ゾンビ映画を思わせる意外な展開に。戦闘シーンも手に汗握り、目が離せませんでした。ハイテク機器を駆使する占い師に扮したイ・ジェフンもちょっとキザでありながら、とぼけた味わいで、新境地を見せてくれています。

 『ブーメラン・ファミリー(原題:高齢化家族/고령화가족)』。69歳の母親と、44歳になった今もすねかじりの長男の住むマンションに、40歳の売れない映画監督の次男、15歳の娘を連れて出戻ってきた35歳の長女が転がり込み、共同生活をする事に。哀しみとおかしさが混ざりあった作風は、どこか懐かしく往年の日本映画を思わせます。家族内のいざこざをなだめるのが、韓国ドラマにありがちな、やたらと喚きたてる母親ではなく、ありのままの子ども達を静かに受け入れる母親像というところにも、共感を覚える方は多いのではないでしょうか。会場となったシネマート心斎橋ではソン・ヘソン監督によるトークも行われ、「ユン・ヨジョンさん演じる母親像は自分の母親がモデル。家族映画を作る事で自分も癒されたいと思った」と意気込みを語ってくれました。

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『ブーメラン・ファミリー』

 今年のK-CINEMA WEEK、共通するのは家族の絆を再確認できる作品群だったのではないでしょうか。家族に対する感謝の気持ちは、思っていても口に出すのは照れくさいもの。それは映画を撮る側にしても同じだという事が、ソン・ヘソン監督のトークから感じられ、親近感を覚えました。

 韓国公開時から気になっていた!という選りすぐりの話題作を、劇場公開に先駆けて鑑賞できる貴重な秋の週末。鑑賞料金も当日1,000円とお手頃なので、チケットの売り切れにご用心を。また来年の秋が楽しみです!


KOREA MONTH 2013
K-CINEMA WEEK 2013 in OSAKA
 期間:2013年10月27日(日)、11月2日(土)~11月4日(月・祝)
 会場:ナレッジシアター、シネマート心斎橋
 公式サイト http://www.k-culture.jp/

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 Report コリアン・シネマ・ウィーク2013 ~王道のストーリーが感動を呼ぶ

Writer's Note
 mame。年の瀬になると、今年のベスト映画を決めたくなってきますね。年末年始、見逃した作品をレンタルで見つけて迷ってしまうのも至福の瞬間ですが、やはり劇場で良作に立ち会う瞬間に勝るものはありません。来年も、たくさんの良い映画と出会える年となりますように。


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News 『ソウォン/願い(原題)』日本公開へ

Text by 西村嘉夫
2013/12/27掲載



 11月に開催された「ダマー映画祭 in ヒロシマ2013」でジャパンプレミア上映され、観客をして「今年一番」と言わしめた感動作『ソウォン/願い(原題)』が、2014年劇場公開予定となっていることが分かった。配給は本年『建築学概論』を成功に導いたアット エンタテインメント。

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『ソウォン/願い(原題)』

 シネマコリアの取材に対して配給のアット エンタテインメント担当者は「あまりにも重いテーマなので当初てがけることを躊躇していたが、観たら涙が止まらず…。一人でも多くの観客に全力で届けたい」と力強く語った。

 『ソウォン/願い(原題)』は性的暴行を受けた少女が、両親と近隣の人々の支えによって再生していく感動の物語。監督は『王の男』他の名匠イ・ジュニク。主演はソル・ギョング、オム・ジウォン、イレ。第34回青龍賞 最優秀作品賞、脚本賞(チョ・ジュンフン、キム・ジヘ)、助演女優賞(ラ・ミラン)受賞作。


『ソウォン/願い(原題)』
 原題 소원 英題 Wish 韓国公開 2013年
 監督:イ・ジュニク 出演:ソル・ギョング、オム・ジウォン、イレ、キム・ヘスク、ラ・ミラン
 韓国版公式サイト http://www.wish-movie.kr/
 ダマー映画祭 in ヒロシマ2013特別招待作品
 2014年劇場公開予定(配給 アット エンタテインメント)

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 Report ダマー映画祭 in ヒロシマ2013 ~『ソウォン(願い)』初上映、コンペ・グランプリは韓国短編に

Writer's Note
 西村嘉夫。今年も残りわずかとなりました。映画の見納めはリム・カーワイ監督による、香港・韓国・日本を舞台にした無国籍映画『FLY ME TO MINAMI ~恋するミナミ』になりそうです。


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Report 第14回東京フィルメックス ~キム・ドンホ、マフマルバフの映画人生と、映画祭の役割

Text by Kachi
2013/12/24掲載



 「ぜひ今回のフィルメックスで、インディペンデント映画にポジティブな影響を与えられるよう祈ってます。そして皆さんに忘れないでもらいたいのは、中国とイランの検閲問題です」。審査委員長を務めるモフセン・マフマルバフ監督は、東京フィルメックス(11月23日~12月1日@有楽町朝日ホールほか:以下、フィルメックス)の開会式で、そう挨拶した。

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開会式でのマフマルバフ監督(右から2人目)

 今年、審査員の一人であるイン・リャン監督が来日できなかった。フィルメックスでも上映された『私には言いたいことがある』の製作が原因で中国に帰ることができず、現在の居留地である香港の滞在期限も切れてしまう彼にはビザが発行できなかったのだ。短い挨拶の中には、自由に映画を作り、見ることができる世界を切に願う気持ちが込められていた。

 そんなマフマルバフ監督が、釜山国際映画祭(以下、BIFF)を創立したキム・ドンホ名誉執行委員長の日常を追ったドキュメンタリー『微笑み絶やさず』が、フィルメックス初日に上映された。上映後のQ&Aで監督は、ドンホ氏の素顔を作品のテーマにしたことについて、2つの理由を挙げた。

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『微笑み絶やさず』

 1つ目は「自分の生活はコントロールできるがコミュニケーションが下手。逆にコミュニケーション能力は高いが自分の生活はコントロールできない。そういう人が多い中、ドンホ氏は、高い能力で両方を兼ね備えている」と監督が指摘する、ドンホ氏の自己を律する力と、コミュニケーション能力のバランスだ。いつも早朝4時に目を覚ましてから運動をし、それから仕事に取りかかるという話は、10月に開催されたコリアン・シネマ・ウィークでのドンホ氏トークショーで聞いてはいたが、テレビを見ながらのストレッチやウォーキング、テニスに興じる姿を映像で目の当たりにすると、そのよどみない動きに改めて敬服する。マフマルバフは、息子のメイサムと朝からつきっきりでカメラを回したため、朝7時にドンホ氏が朝食をとる頃には二人とも疲労困憊だったと、笑って振り返った。

 『微笑み絶やさず』には、韓国内外の映画人、プロデューサーも綺羅星のごとく登場しては、ドンホ氏のエピソードが次々と語られ、彼が韓国映画の世界的躍進にどれだけ貢献してきたか、多大な功績がうかがい知れる。その一方、ある宴席では、ドンホ氏と乾杯した若い女性が、韓国の酒席での習慣にならい、横を向いて口元を隠そうとするのを制止してクロスハンド(コップを持った腕を交差させる)で互いの酒を飲み干したドンホ氏は、満足そうな笑顔を浮かべている。映画が作られるための重要なエンジンとして存在しているにも関わらず、質素な生活を送り、「世界の映画祭は酒で制覇したんだ」と軽妙に話す謙虚で穏やかな性格のドンホ氏は、常に尊敬を集め続けているのだ。

 普段のティーチインでは聞き役に徹するフィルメックスの林加奈子ディレクターも、「映画祭プロデューサーが、みんなドンホ氏のように気高く、克己心のある方だと思われては困る」とドンホ氏への敬意を口にする。彼女が川喜多記念映画文化財団に勤務していた頃から、BIFFのキム・ジソク プログラマーが日本映画の選定のため彼女の元を訪れていたり、フィルメックスを創設してからはドンホ氏と林氏は互いの映画祭を行き来するなど、深いつながりがあるからだ。またドンホ氏は、第7回東京フィルメックスで審査委員長も務めている。

 「唯一、自分とドンホさんに共通点があるとしたら早食いなところ。一緒に食事をした時、二人同時にあっという間に食べ終わったので、顔を見合わせて笑った」とは林氏の弁。また、「劇中、ドンホ氏と女優ジュリエット・ビノシュがダンスをしていたが、あの場に自分もいた。映画祭期間中のパーティーでゲストと踊るのは、映画祭ディレクターの宿命」と、プロデューサーならではの苦労話も披露。「自分のダンス相手は、イランのアミール・ナデリ監督だった」と話すと、会場から笑いが起きた。

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『微笑み絶やさず』Q&Aの模様

 マフマルバフが『微笑み絶やさず』を作った理由として2つ目に挙げたのは、作家主義の映画を世界へ発信し続けてきた映画祭プロデューサーへの感謝である。

 「アート映画は、映画祭がサポートしてくれることで世界へ出て行ける。しかし、サポートしてくれた映画祭についてはあまり映画にならない。作家性を重視する映画祭を続けてきてくれたドンホ氏、そしてフィルメックスの林加奈子ディレクターのような人がいなかったら、アート性の強いインディペンデント映画は死んでしまう。」

 マフマルバフが、こう口にするのは、監督の映画作りにおける困難な歩みと関係がある。イランのテヘラン出身である監督は、10代でイスラム主義に傾倒するが、当時の体制を倒すため地下活動に参加していた15歳の時に逮捕、4年半の獄中生活を余儀なくされた。1979年のイラン革命で出所し、作家や映画監督として活動を始めたが、文化イスラム指導省によるメディアへの検閲が厳しいイランでは思うように映画が撮れず、現在は家族とともに海外に活動拠点を置いている。中国のイン・リャン監督を思いやるのも、彼の才能を評価していると同時に、自身と重なるからなのだ。

 「BIFFがなかったら、商業映画以外の映画は韓国では作れなかった。」

 『微笑み絶やさず』で、笑顔を見せながらそう語るのはキム・ギドクだ。世界的な巨匠となった今も、アートフィルムの作り手としてプライドを持ち続ける原動力は、ドンホ氏がいたからこそであった。1962年の映画法制定以来、少しずつ姿を変えて存在した韓国における映画の検閲は、1996年に憲法裁判所で違憲と判断され、金大中政権下でその時代の終わりを迎えた。しかし従来型の制度はなくなったものの、検閲機関の後身とされる映像物等級委員会と映画人たちとの軋轢は今も続いている。

 『微笑み絶やさず』では、ヨーロッパの映画関係者から知られざる秘話が明かされた。

 「政府機関で検閲官を務めていたドンホ氏は、ある日出勤するとデスクの引き出しから韓国では上映できない作品のリストを取り出した。その中には、共産主義的プロパガンダが含まれる旧ソ連映画『戦艦ポチョムキン』も含まれていた。すると、“なぜこの作品が上映できないんだ?”と言いながら、リストに次々と線を引いていった。その2年後、韓国で検閲が廃止された。」(著者注:キム・ドンホは1993年から1995年まで公演倫理委員会委員長を務めていたので、その頃のエピソードと思われる。「公演倫理委員会」は現「映像物等級委員会」。劇場公開作品に18禁などレイティングを付与する機関。)

 マフマルバフは「キム・ドンホは検閲を検閲した人」と称賛する。

 本作は、単にキム・ドンホという人物を追い、事実だけを映したドキュメンタリーではない。ドンホ氏のことを語る人たちは、彼の「微笑み」そのままにみな笑顔であり、ドンホ氏について話したくて仕方がない様子が見て取れる。それは本作の製作動機を「人生の師匠(=キム・ドンホ)を皆と共有したかった」と語るマフマルバフ監督も同じだ。ドンホ氏が映画とともに歩んで来た歴史が、記録よりも多くの映画関係者の記憶として表現される。「BIFFは人々の映画祭」という劇中の言葉は、彼が人々と映画祭を作り上げ、成功させてきた証なのだ。

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フィルメックスのポスター

 『微笑み絶やさず』は、いかにお金をかけずに作り手の意志を込めて映画を撮るか、というモデルにもなっている。昨年フィルメックスで披露された『庭師』も同様だったが、マフマルバフ本人と息子でビデオカメラを回す手法のため、費用はほとんどかかっていないそうだ。もはやマフマルバフは押しも押されもせぬ著名な映画監督だが、「これは自分の訓練になってる」と語る。

 フィルメックスがベルリン国際映画祭と提携して行っている人材育成事業「タレント・キャンパス・トーキョー」は、そんなマフマルバフ監督の思いに呼応するような企画だ。フィルメックス開催中に映画製作を志す若者が集結し、プレゼンテーション実習やグループ・ディスカッションなど行い、最終日の公開プレゼンで、国際共同製作に関心のあるプロデューサーや配給会社へアピールするのだ。日本、韓国、フィリピン、中国、タイやインドネシアなど、様々な国のプレゼンターが参加していたが、民族的アイデンティティなど、作り手の問題意識と気概を感じる作品が多かった。若い才能を育てようという試みだが、政治的理由で自分の国では映画製作ができない、作品として残せないなど、映画の作り手としてこれ以上ない苦しみを負わせてはならないという、フィルメックスの強い意思が感じられる。

 キム・ドンホ氏がBIFF執行委員長を退いた年、韓国の映画雑誌『シネ21』が彼の特集を組んだ(No.772 2010年9月28日~10月5日号)。イム・グォンテク監督やイ・チャンドン監督、北野武監督、アン・ソンギ、カン・スヨン等からコメントが寄せられているほか、パク・チャヌク監督によるドンホ氏インタビューが掲載されている。BIFF発足当初、規定上は映画祭の作品も上映前に審査を受けなければならなかったが、あの手この手で時間を稼ぎ、少しでも多くの作品を上映しようとした。審議に反して上映してしまえば告発されただろうが、ドンホ氏は「執行委員長が責任を負えばよいと考えました」と語る。そのことをパク監督は「本当に感激でした。我が国で映画祭という解放区ができたからです」と讃えている。

 この「解放区」という言葉を、開会式やQ&Aでのマフマルバフ監督の話、イン・リャン監督の問題、そしてタレント・キャンパス・トーキョーといったフィルメックスでの取材中に何度も思い出した。世界中の作家主義映画やインディペンデント作品を紹介し続けているだけでなく、その担い手を育てていこうとしているフィルメックスは、まさに日本における映画の「解放区」と言えるだろう。


第14回東京フィルメックス
 期間:2013年11月23日(土・祝)~12月1日(日)
 会場:有楽町朝日ホールほか
 公式サイト http://filmex.net/

Writer's Note
 Kachi。ドンホ氏が一日の予定を精力的にこなす気力と体力には、本当に圧倒されました。彼の半分以下の年齢で怠惰な生活を送っているにも関わらず、「疲れた」「眠い」が口癖の筆者は、猛省を促されたのでした。


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News 『はちみつ色のユン』文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞受賞&アンコール上映決定!

Text by 西村嘉夫
2013/12/22掲載



 フランス・ベルギー・韓国・スイス合作によるドキュメンタリー・アニメーション『はちみつ色のユン』が、第17回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で大賞を受賞した。

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『はちみつ色のユン』

 幼くして海外養子に出された韓国系ベルギー人、ユン・エナンの半生を描いた本作は、これまでも「アニメーション界のカンヌ」と呼ばれる第36回アヌシー国際アニメーションフェスティバルで観客賞とユニセフ賞を、また世界三大アニメーション映画祭の一つとされるザグレブ国際アニメーション・フェスティバル2013でもグランプリと観客賞を受賞するなど、華々しい成果を上げてきたが、ここ日本でも最高の評価を受けることとなった。

 2013年は、『風立ちぬ』が年間総合興行収入ベスト1となったほか、興収ベスト10のうち過半数をアニメーションが占めるなど、映画界ではアニメーションの躍進が目立ったが、そんな日本でミニシアター公開された『はちみつ色のユン』が、文化庁メディア芸術祭で大賞を受賞した意味は大きい。今回、アニメーション部門への応募総数は587作品というが、『サカサマのパテマ』『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』といった著名作が次点の優秀賞という事実からも、その価値を推し量ることができるだろう。

 本作の主人公であり、原作者・監督でもあるユン・エナンは、宮崎駿、大友克洋らの名前を挙げ、大賞受賞の喜びの弁を述べている(詳細は文化庁メディア芸術祭のHPを参照)。本編でも描かれているように、ユン監督は幼少期にアイデンティティ・クライシスに見舞われるが、日本文化にハマリ、そこから「自分がアジア人である」ことを受け入れ、「ルーツが韓国である」ことに誇りを持つようになる。映画やアニメーションを含む「文化」がいかに人間形成に大きな役割を果たすかを証明している本作が、世界中で高い評価を受けるのはある意味当然のことかも知れない。

 今回の受賞を記念して、下北沢トリウッドでは2014年1月4日(土)より2週間限定でアンコール上映を行う。何かを声高に主張するわけではないが、見た者の心に何かを確実に残してくれる本作で2014年の映画鑑賞を始めてはいかがだろう。


『はちみつ色のユン』
 原題 Couleur de peau : Miel 肌の色:はちみつ色/2012年/フランス・ベルギー・韓国・スイス
 監督・脚本 ユン、ローラン・ポアロー
 2014年1月4日(土)より、下北沢トリウッドにて2週間限定アンコール上映
 公式サイト http://hachimitsu-jung.com/

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 News 海外養子をテーマにした異色のドキュメンタリー×アニメーション『はちみつ色のユン』、12/22より公開!
 Review 『はちみつ色のユン』 ~素朴なアニメーションで描かれたマイノリティの心の成長記録

Writer's Note
 西村嘉夫。名古屋シネマテーク年末恒例の自主製作映画フェスティバルで酒井健宏監督の新作『ハチミツ』を鑑賞しました。作品内容もさることながら、名古屋在住の監督・出演者・スタッフ一同が会した温かい雰囲気の上映会で、映画を作ることの喜び、上映することの楽しさを再確認した一日でした。


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Report ダマー映画祭 in ヒロシマ2013 ~『ソウォン(願い)』初上映、コンペ・グランプリは韓国短編に

Text by 井上康子
2013/12/10掲載



 「ダマー映画祭 in ヒロシマ2013」が、NTTクレドホール(広島そごう新館11階)を会場に11月22日から24日まで開催された。ダマー映画祭は「Spiritual Experiences」をテーマに2001年からアメリカのシアトルで始まった国際映画祭で、広島では「ココロとココロをつなぐ映画祭」として2009年から毎年開催されている。

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NTTクレドホール内

 私は広島出身で、同級生から、2010年に、いずれも監督が来日した『裸足の夢』『マラソン』上映時の盛り上がりについて聞かされていたので、いつか参加したいと思っていた。そこに、今回『王の男』『あなたは遠いところに』などで私が信頼を寄せるイ・ジュニク監督の新作『ソウォン(願い)』が特別招待作品として上映され、さらに監督と主演のソル・ギョングも来日すると聞き、初めて参加した。

 映画祭では、短編コンペティション部門で応募118作品から選ばれた11作品と、特別招待作品が上映され、他に、映画の作り手たちをゲストに招いてのトークとワークショップが催された。以下、コンペ作品と『ソウォン(願い)』について、トークの内容を交えて紹介する。


短編コンペでは韓国作品がグランプリ


 韓国映画は、国別最多5作品が本選進出し、最優秀作品賞にあたる「ヒロシマ・グランプリ」も受賞した。グランプリ受賞の『Etude, Solo』は、調律師の主人公が弾くピアノ曲により、初恋の女性が彼のことを想起するというストーリー。ユ・デオル監督は音楽についての映画を作り続けている異才で、本作も「タイトルになっているスクリャービンの曲を聞いた時に抱いた初恋の印象を映画にした、まず音楽ありきの作品」。主人公のピアノ演奏は体全体から喜びが溢れ出ていて見惚れたが「ピアニストが演じた」と聞いて納得。本当に音楽が好きな人たちでなくては作ることができなかった、愛すべき特別な映画だ。

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グランプリを受賞したユ・デオル監督

 イ・ソンガン監督『ひとりぼっちの怪物』は心優しい怪物と女の子の奥ゆかしい交流を描いたアニメーション。監督は日本でも公開された『マリといた夏』を代表とする抒情的な作品で高い評価を得ているベテランのアニメーション作家で、いつもながら作品がもつ静謐さに心が清められるような気がした。

 フランスの映画学校で学んだパク・ソンミ監督『Flying Pig』は、自殺を試みる少女が毎日届けられるチラシの裏にあるペーパークラフトを作ることで生きる意欲を取り戻していくというストーリー。ペーパークラフトの「Flying Pig」や部屋のしつらえなどがメルヘンチックで超カワイクて、目を見張った。凝った美術と、主人公がコミュニケーション下手なところはフランス映画『アメリ』のようだった。

 『冬眠』は、ユ・ヨンソン監督が「映画に導いてくれた先輩の死をきっかけとして構想し、追悼の思いも込めた」という作品。主人公の女性が部屋から一歩も出ずに待っているのは、日本滞在中に東日本大震災に巻き込まれて亡くなったとされる恋人だ。喪失感にとらわれて身動きできなかった主人公が、かすかな希望を見出すのを見ていると、監督が日本の遺族にも「そうあってほしい」と励ましを送ってくれているように思われた。

 『Delayed(延着)』は、駅で夫を待つ女性が見知らぬ男性に話しかけられるというスリリングな冒頭で見る者を惹きつけたまま、全く予想外の二人の関係を結末で明かすという手法で、キム・ドンハン監督の「ストーリーに大きな反転がある作品は長編より短編が合う」という言葉に肯いた。


日本・イラン・台湾の短編作品


 日本映画は3作品が本選に進出。高橋コウジ監督『霞』は、事故死して亡霊になった娘が人形職人の父を見守るというお話。具体的行動ができない霊が、それでも父の苦しみを癒したいと念じる姿が、日本人形の凛とした美しさと呼応していた。金子雅和監督『水の足跡』は、スランプに陥った動物写真家を主人公にした物語。『もののけ姫』を彷彿させる、自然への畏敬と、人間と自然が共存することの難しさを表わした、深みのある作品だった。青木紀親監督『ひかり、吹きすさんで』は、東日本大震災直後を描いた作品。「実際の被災地で撮影した」と言うだけあって、被災地のその時をリアルに感じさせた。

 イランからの2作品はいずれも反戦をメッセージにしていた。「審査員特別賞」を受賞したAhmad Hayati監督『The Buried』は、元気の良い子供を登場させ、明るく軽やかに反戦を伝えたことが斬新だった。Marjan Ashrafizadeh監督『Deep Blue』は、前半の明るいハネムーンと後半の爆発後という対比が強い印象を残した。

 「観客賞」を受賞した台湾のChiang Chung-Chieh監督『Panacea』は、漢方薬局を舞台に傷心を癒やす万能薬を求める人々を描いた作品で、漢方薬のようにじんわりと見る者を温めてくれた。


ヒロシマと共鳴した『ソウォン(願い)』


 小学校2年生のソウォンは酷い性的暴行を受け、辛うじて命は助かったものの、体にも心にも大きな障害が残ってしまう。両親は彼女の心身の痛みに徹底的に寄り添い、そんな両親を近隣の人々が支える中で、ソウォンがゆっくりと利発な少女である自分を取り戻していく姿が暖かい感動を呼んだ。

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イ・ジュニク監督(左)とソル・ギョング

 11月22日に開催された韓国の映画賞「青龍賞」の授賞式で、本作は最優秀作品賞、脚本賞、助演女優賞を受賞し、また、ソウォンの父親を演じたソル・ギョングは人気スター賞を受賞した。受賞式を終えたばかりのイ・ジュニク監督とソル・ギョングの登壇に、作品の感動に浸っていた、ほぼ満員の観客は大喜びだった。

 監督は「こういう事件が起きると、皆が加害者への怒りを抱き、死刑にしろ!と言うが、被害者については無関心だ。それに、加害者を死刑にしても被害者は幸福にはなれない。“幸福に生きろ。それが最大の復讐だ”という言葉があるが、このような残酷な事件が起きた時に、周囲の人が被害者の心のサポートをすることが必要だ」と熱く語った。

 ソル・ギョングは「このような事件の被害者に苦痛を与えないかと最初は出演を躊躇したが、妻で女優のソン・ユナが脚本を読んで、そういう心配は無用の作品だから監督に会うようにと勧めてくれた。監督に会ったら、話がうまくて(笑)すぐに承諾してしまった」と出演に至った経緯を紹介した。

 性的暴行という内容だけに、監督は子役への配慮として「ソウォンの苦痛を理解するように準備し、心理学の専門家が子役の心理的負担をチェックしながら撮影を進めた」。他の配慮として「私はすごく笑う人間で、撮影時もカットと同時に、皆がリラックスできるように率先して笑った」と言うと、ソル・ギョングが「おかげで役に集中できなかった(笑)」と返し、続けて「重苦しい場面の撮影が終わると監督がモニターの所におらず、隅で泣いていたこともあった」とのエピソードを披露した。

 事件のトラウマから男性を拒否するようになった娘のそばにいるために、父親が彼女の好きなアニメキャラクターの着ぐるみを身につけて奮闘するのは、笑いと涙が誘われる見どころだった。演じたソル・ギョングは「実際に父親であることを役に反映したということはない。普遍的な人としての思いが込められた作品だから」と作品に対する自身の思いを語った。

 最後に、監督が「広島は世界的に重要な都市。広島が犠牲となり、平和を夢見、形作る役割を負った。一番傷ついた者が一番大きく笑う。広島の人が一番大きく笑うべきだ」と映画に込めた思いと重なる、含蓄のあるメッセージを述べ、『力道山』のロケで広島県竹原市に滞在したことがあるソル・ギョングが日本語で「(監督と)同じです」と話すと会場から大きな拍手が沸き起こった。


人の心を描いた作品を上映する、小さな美しい映画祭


 イ・ジュニク監督は『王の男』上映後のトークで「私のこれまでの9作品のほとんどはマイノリティが中心人物となる作品で、『ソウォン(願い)』も英雄ではなく小市民が偉大な作品」と述べ、「ダマー映画祭は小さな映画祭だが、小さいものほど美しい」と映画祭に対する言葉も残していった。

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イ監督はコメントも一級品

 「ココロとココロをつなぐ映画祭」として、コンペ部門では人物の葛藤や心情の変化など、人間の内面描写にスポットをあてた作品を公募するという特色をもち、特別招待作品も、同様の視点で選んでいると思われたが、いずれの作品もしみじみと心に残る美しい作品だった。

 イ・ジュニク監督とのユーモラスなトークで観客を爆笑させた水田伸生監督と、脚本家の鴨義信氏は広島出身のゲストで、二人の発言には映画祭を盛りたてようという思いが滲んでいたが、それもこの映画祭が小さく美しいためだろう。

 映画祭発祥の地、シアトルでの映画祭開催は休止状態になっているそうだが、映画祭共同創設者のマーク・ジョセフ氏が本選審査員として参加し、彼がプロデュースした『MAX ROSE』が特別招待作品として上映されており、アメリカとの交流も続いているようだ。

 今後、回を重ね、どのように発展していくのかが楽しみな、美しい映画祭である。


ダマー映画祭 in ヒロシマ2013
 期間:2013年11月22日(金)~11月24日(日)
 会場:NTTクレドホール
 公式サイト http://www.damah.jp/

Writer's Note
 井上康子。福岡在住。ダマー映画祭の会場NTTクレドホールのすぐそばに広島市映像文化ライブラリーがある。広島に住んでいた80年代に、ここで『カッコーは夜中に鳴く』『春香伝』などの名作を見たのが私の韓国映画事始めだ。懐かしくて映画祭の合間に訪問した。


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Interview 短編『セーフ』ムン・ビョンゴン監督 ~カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した期待の新星

Text by 井上康子
2013/12/1掲載



 今年のカンヌ国際映画祭短編部門で最高賞にあたるパルムドールを受賞した『セーフ』が、10月に開催された「フォーカス・オン・アジア&ワークショップ」で上映された。

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短編『セーフ』

 舞台はギャンブルの違法な交換所。日本で言えば、パチンコの交換所のように換金を行う所だ。そこでアルバイトをする女子大生は客に渡すべき現金の一部を着服し続けていたが、そのことに気づいたギャンブル中毒の客によって、過激で皮肉な制裁を受けることになる。空間と音響の使い方が素晴らしくて、狭く密閉された交換所、紙幣を計数する器械音などで、観る者の緊張を短時間で高めておいて、一気に終息させる手法が鮮やかだ。短編ならではのおもしろさがあることを実感させてくれた。

 「フォーカス・オン・アジア&ワークショップ」で来日できなかったムン・ビョンゴン監督が、メールで質問に答えてくれた。


── 違法な交換所に関心をもったきっかけは?

大学映画学科の同級生が書いた『セーフ』の原作がおもしろく、違法交換所に関心を持つようになった。同級生は実際に違法な交換所でアルバイトをしていた。違法という点を除けば、銀行での両替行為と何も変わらず、一般の人々は手数料をあまり気にしない点がおもしろいと思った。

── 韓国にはギャンブル中毒者が多いと聞いている。作品では詳細に語られていなかったがギャンブル中毒の男はどんな設定か?

韓国で実際にギャンブル中毒者が多いかどうかはよく分からない。男は、一ヶ月前に会社をクビになり、退職金でギャンブルを始めた日にすべてのお金を失った。独身で田舍に住む親兄弟と行き来がなく、お金を稼いで何かしたいといった夢は持ってないが、お金がないと不安という漠然とした強迫観念を持っている設定。彼はお金を手段ではなく、目的と見なしている。

── 実際の駐車場に交換所を作ったのか? 暗く、狭く、密閉された交換所がこちらの緊張感を高めてくれた。映像効果のために意識したことは?

ビルの地下駐車場に交換所を作った。あからさまに「危険な場所だ」と美術・映像表現で見せるのではなくて、「よく見かける空間なんだけど、ちょっと中には入りにくい」といった雰囲気が出るよう心がけた。

── 紙幤を数える器械音とそれに同期して男が指でコツコツたてる音により、男の焦燥や不安が感じられた。音響で配慮したことは?

指音は男の苛立ちを効果的に伝えようとしたもの。指音から計数器の音へ、そして、計数器の音から、男が金庫をハンマーで叩く音へと、音を繋げて拡大させ、男の怒りと事態の深刻さを伝えようと思った。

── お金を着服していた女子大生がセーフなBOXである金庫に隠れ、出られなくなるという結末が何とも皮肉だった。この結末に込めた思いは?

「皮肉」という側面を強調したかった。女子大生は交換所を早く辞めるために行った着服行為により、交換所のもっとも暗く奥深い空間である「金庫」に閉じこめられてしまう。これは会社勤めの友人から聞いた話、そして、そこから感じたことを反映させた。サラリーマンの友人の多くは、少しでも早く会社で稼いで独立したがる。しかし、そうやって頑張れば頑張るほど昇進してしまい辞められなくなる。早く辞めようと独立資金を銀行で借りると返済のために退職することができなくなる。結局、会社を辞めるどころかますます深く会社組織の一部になっていく。そんな皮肉としか言いようがない状況を作品に込めた。

── 金庫は本物と聞いた。最初から本物の金庫を使うつもりだったのか?

そうだ。小さい作り物の金庫では女子大生が中に入ることができないからだ。

── 女子大生役にイ・ミンジさんをキャスティングした理由は?

まず、他の作品を見て演技がうまいと思った。そして『セーフ』の女子大生のキャラクターにピッタリと感じた。彼女は、表面上は純粋で善良に見えるけれど、見ようによっては、ずる賢くも見える。そんな二面性を持っているから。


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作品とはイメージが異なるイ・ミンジさん

── 映画監督になろうと思ったのはどういう理由から?

映画スタッフの熱情的な姿がすてきだと思った。何より映画を見るのが好きなため。

── カンヌ映画祭で受賞した所感は? 受賞による環境の変化はあったか?

受賞は本当にうれしいことで、環境も大きく変わったが、平常心で次の作品に臨まなくてはと思っている。激変する周辺環境に素早く適応するのも大事だが、結局、私がすべきことは次の作品だ。これまで通り、熱心に本を読み、映画を見て、多くの人に会い、シナリオを書こうと考えている。



 返信をもらって、やはり空間と音響について明確な意図と表現手段を持っている監督だと感心した。また、友人に聞いた話から皮肉な結末を創作したということからは、慧眼とストーリーテラーとしてのセンスの持ち主であることが伺えた。パルムドール受賞後も平常心で精進している監督の次回作が楽しみだ。


ショートショートフィルムフェスティバル&アジア
フォーカス・オン・アジア&ワークショップ
 期間:2013年10月24日(木)~10月27日(日)
 会場:東京都写真美術館
 公式サイト http://www.shortshorts.org/focus_on_asia_2013/

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Writer's Note
 井上康子。『セーフ』を見て、アジアフォーカス・福岡国際映画祭2013で上映された香港映画『奪命金』を思い出した。文字通り「命を奪う金」、即ちカネの奴隷になり命を落とす人々が描かれた作品だ。無関係だった登場人物がカネのために絡んでいく構成が素晴らしく、また黒社会・金融機関で香港らしさを堪能させてくれた。


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Report フォーカス・オン・アジア&ワークショップ ~『セーフ』主演女優イ・ミンジに大器の片鱗を見た!

Text by Kachi
2013/12/1掲載



 ショートショートフィルムフェスティバル&アジアが手がける「フォーカス・オン・アジア&ワークショップ」が、10月24日から27日まで開催された。このイベントは東京国際映画祭提携企画として始まり、今年で4回目を数える。24日にはスペシャルプログラム「アジア発短編から世界へ」と題して、韓国映画初のカンヌ国際映画祭短編部門パルムドール受賞作『セーフ』のほか、大川五月監督『京太の放課後』、佐々木想監督『隕石とインポテンツ』、森岡龍監督『Nostalgic Woods』が上映され、監督によるトークイベントが催された。『セーフ』のムン・ビョンゴン監督は直前に来日キャンセルとなったが、代わりに主演女優のイ・ミンジさんが来場しトークにも参加された。

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短編『セーフ』

 『セーフ』の主人公ミンジ(イ・ミンジ)は、ギャンブルの違法な景品交換所でアルバイトをしている訳ありの女子大生。借金返済のため日々客の金をくすねている。高収入につられて危険な仕事に手を出す若者、ギャンブル中毒者など、社会的な題材も盛り込まれるが、それ以上に本作は、ミンジがバイトの上司に借金をしている理由などの説明を極力省いたことで、画面が感覚に訴える力が強くなっている。地下駐車場のようなところに建つ交換所の灰色のコンクリート、お札を数えるカウンターの機械音といった無機質な演出は、後の展開とあいまってスリルをかき立てる。「殺人でも起きない限り警察は来ない」と上司がうそぶくほど「安全」、つまり「セーフ」な交換所で起きた事の顛末は、ブラックコメディのようでもあった。

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高校までは水泳選手だったミンジさん

 主演のイ・ミンジは、水原(スウォン)大学演劇映画学部在学中に先輩から出演を頼まれたことがきっかけで映画に出るようになり、以来、短編を中心に多くのインディペンデント映画で活躍している。特に『私のオオカミ少年』のチョ・ソンヒ監督が韓国映画アカデミー卒業作品として制作した長編『獣の最後/짐승의 끝』(2011年韓国公開、パク・ヘイルと共演)は、バンクーバー国際映画祭、ロッテルダム国際映画祭など海外で高い評価を受けた。また、ヴェネチア国際映画祭で最優秀短編賞にあたる「オリゾンティYOUTUBE賞」を獲得した『招待/초대』(2011)は、昨年のフォーカス・オン・アジアでも『葬式』のタイトルで上映されている。そして、今年『セーフ』がカンヌ国際映画祭で短編部門パルムドール(最高賞)を受賞したことによって「ショートフィルム界のチョン・ドヨン」として注目すべき若手女優の一人に躍り出た。

 来日できなかったムン・ビョンゴン監督に、後日メールでインタビューを行った。イ・ミンジの起用について監督は、演技の上手さを挙げるとともにこんなことを言った。「彼女は優しくて無邪気な印象だが、見ようによってはずるい役もできるような二面性を持っている」。確かに実際の彼女は、素朴な可愛らしさが魅力の女性。そんな素顔に反し、『葬式』では不倫相手の葬式で奥さんと静かに対峙する難しい役柄を、実に自然に演じていた。『セーフ』は「本当にこういうバイトをしていると思って演じて欲しいと監督に言われたし、役名も本名と同じだったので」と、特に役を作っていないそうだが、金額をごまかしていることを客に咎められてもふてぶてしく言い返す女子大生になりきった。

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トークの模様、右から2番目がイ・ミンジさん

 日本人監督3人とイ・ミンジのトークイベントでは、『セーフ』で金庫の中に入る場面について質問が及んだ。「あれは本物なんです」という彼女の一言に、一斉にどよめく会場。だがムン監督は、本物の金庫を使った演出の理由を「小さい作り物の金庫では、女の子が入らないので」とさらりと答えた。そんな関係を見て、コリアン・シネマ・ウィークで聞いたイ・チャンドン監督とムン・ソリのエピソードを思い出した(TOKYO FILMeX「コリアン・シネマ・ウィーク2013/イ・チャンドン監督トークショー」)。「自分はそこまで要求していない」というイ監督の言葉に反し、監督の作品に出演した俳優は一様に、自分たちがいかに追いつめられて演じたかをインタビューなどで話す。特に『オアシス』で脳性マヒの女性を演じたムン・ソリは「監督に怒りすらおぼえた」そうだ。イ・ミンジも、撮影とはいえ本物の金庫に閉じ込められる恐怖に、カットの声を聞くや否や「監督!開けて下さい!」と叫んだと、苦笑いしつつ語った。演技者を極限まで追い込む監督、そんな監督の情熱から逃げることなく演技に没頭したイ・ミンジの二人に、大器の片鱗を見た。

 先日、東京国際映画祭でキム・ギドクがプロデュースした『レッド・ファミリー』が観客賞を受賞したが、ギドクは、イ・ジュヒョン監督を起用した理由を「彼が作った短編アニメーションを見て、人間の苦痛と、生きていくことへの暖かい視線を感じたから」と語った。また、今秋話題を呼んだ『Venezia 70 - Future Reloaded』は、今年70周年を迎えるヴェネチア国際映画祭の記念プロジェクトで、キム・ギドク、ホン・サンス、園子温、ベルナルド・ベルトルッチら巨匠70名の超短編を集めて一本の作品として披露された。数々の名作を生み出した監督たちも、ショートフィルムという映画の原点に立ち返ろうしているのかもしれない。

 新進気鋭の監督・俳優の活躍の場として、そういった人材の発掘の場として、そして巨匠たちが自由に創作できる場として、ショートフィルムの果たす役割は大きい。トークではアジア短編映画界を牽引する若い4人のクリエイターから「世界では短編映画が身近な存在である」ことが語られた。日本でも、もっとショートフィルムを見る機会が増えることに期待したい。


ショートショートフィルムフェスティバル&アジア
フォーカス・オン・アジア&ワークショップ
 期間:2013年10月24日(木)~10月27日(日)
 会場:東京都写真美術館
 公式サイト http://www.shortshorts.org/focus_on_asia_2013/

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Writer's Note
 Kachi。今回スペシャルプログラムで見た大川五月監督の『京太の放課後』、良かったです。蛍光イエローの防災頭巾をかぶった元気いっぱいの京太はヒヨコのように愛らしく、覚えたての英単語で外国人教師に話しかけようと奮闘する姿も微笑ましいですが、そこに隠されていたのは、幼い心が震災で負った深い傷。見た後、京太を抱きしめたくなりました。


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