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News 「フォーカス・オン・アジア&ワークショップ」開幕 ~『セーフ』主演女優イ・ミンジさん来日!

Text by Kachi
2013/10/25掲載



 ショートショートフィルムフェスティバル&アジア「フォーカス・オン・アジア&ワークショップ」が10月24日に初日を迎えました。

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来日されたイ・ミンジさん

 『セーフ』のムン・ビョンゴン監督は残念ながら訪日がキャンセルになりましたが、主演女優のイ・ミンジさんが急きょ来場。日本の若手監督たちとのトークイベント「アジアンショートが彩る映像の未来」に登壇されました。

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 写真はトーク後のイ・ミンジさんです。「日本の映画にも出たいです!」と、流暢な日本語で語って下さいました。

 韓国映画として初めてカンヌ国際映画祭の短編部門パルムドールを受賞した『セーフ』はCプログラムで会期中5回上映。イ・ミンジさんの舞台挨拶も10月25日17:00と26日13:00の回に予定されています。

 「フォーカス・オン・アジア&ワークショップ」は東京都写真美術館にて10月27日まで!


ショートショートフィルムフェスティバル&アジア
フォーカス・オン・アジア&ワークショップ
 期間:2013年10月24日(木)~10月27日(日)
 会場:東京都写真美術館
 公式サイト http://www.shortshorts.org/focus_on_asia_2013/


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Report 第26回東京国際映画祭オープニングイベント ~ムン・ソリ×寺島しのぶ、日韓の実力派女優が審査員として登場

Text by Kachi
2013/10/18掲載



 第26回東京国際映画祭が開幕しました。10月17日(木)のオープニングイベントには今年も国内外からたくさんのゲストが集結し、華やかなグリーンカーペットとなりました。

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『ジンクス!!!』主演のヒョミン(T-ARA)と熊澤尚人監督


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『ほとりの朔子』プロデューサーの杉野希妃と深田晃司監督

 コンペティション国際審査員も豪華です。向かって左から順にクリス・ワイツ、ムン・ソリ、チェン・カイコー、寺島しのぶ、クリス・ブラウン。

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 記者会見でのムン・ソリ。「また日本に来ることができて、久しぶりに友人に会うような気持ち」と、審査員に選ばれたことの喜びを口にしました。

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 質疑応答では、「審査で作品のどんな点を見る?」との問いに、ムン・ソリは「審査する前に、まず一人の観客として楽しみたい。監督の考えや思いが作品にどれくらい込められているか、自分がその思いをどのくらい感じ取れるのか、見終わった後に考えさせてくれる作品を期待しています」と回答。

 女優二人に対しては「出演者の演技のどんな部分が気になる?」との質問も。

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 ムン・ソリ「ベテラン俳優の演技にも、子役の初めての演技にも、プロの俳優ではない方の演技にも心動かされます。自分がポイントにしたいのは演技のテクニックなどではなく、真心・誠意です。真心が伝わると一番感動します。」

 寺島しのぶ「自分がいい映画だと思うのは、出演している役者さんに嫉妬してしまうような作品。だから『オアシス』のムン・ソリさんには嫉妬しました(笑)。」

 ムン・ソリ「私も寺島さんに嫉妬しますよ(笑)。」


 第26回東京国際映画祭は、TOHOシネマズ六本木ヒルズをメイン会場に10月25日まで開催中。


第26回東京国際映画祭
 期間:2013年10月17日(木)~10月25日(金)
 会場:TOHOシネマズ六本木ヒルズほか
 公式サイト http://tiff.yahoo.co.jp/


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Interview 『結界の男』チョ・ジンギュ監督 ~商業映画に自信と誇りをもつ男

Text by 井上康子
2013/10/16掲載



 アジアフォーカス・福岡国際映画祭2013で上映された『結界の男』は、ヤクザが暴力団内部の抗争に巻き込まれ怪我をしたことから巫女としての力を授かり、運命に逆らえず巫女の役割も果たしていくという話。ヤクザの主人公がいやいや巫女をかけ持つというペーソスを含んだコメディであり、また巫女として死者の姿が見えるようになったことから生じる死者との交流はホロリとさせる人間ドラマでもあった。

 主人公を演じたパク・シニャンはもちろんだが、彼と敵対するヤクザを演じたキム・ジョンテ、そして検事役のチョ・ジヌンと、ドラマとコメディを縦横にこなせる演技の巧い役者が揃っていて、天真爛漫な演技を見せる子役も登場し、満員の観客は微笑、爆笑、そして涙だった。映画祭期間中、何度も「『結界の男』がおもしろい」という声を耳にし口コミで評判が伝わっているのを実感したが、観客による人気投票でも堂々第2位になった。

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ティーチインでの監督(写真提供:映画祭事務局)

 チョ・ジンギュ監督は2001年に韓国公開された『花嫁はギャングスター』で監督デビュー。この作品は大ヒットし、さらに映画のリメイク権をハリウッドの映画会社が購入した。長編映画のリメイク権が購入されたのは韓国で初めてのことだったので、大きな話題になった。『花嫁はギャングスター』も『結界の男』も、華々しい成功を収めるだけの演出の冴が見て取れる作品だ。

 監督は日本で映画を学んだ方でインタビューは日本語で行った。作品に関して、また日本に留学した経緯なども聞かせていただいた。


作品構想・脚本について

── 『花嫁はギャングスター』では、暴力団の女親分が臨終の床にある姉の遺言に従って公務員の妻になった。かけ離れたイメージの二つの役割をこなすというのは今回のヤクザと巫女も同様で、そこから生じるおもしろさがあった。今回の構想はどのように得たのか?

ネット記事に、実際にヤクザが「いたこ」をしていると書いてあったのがきっかけで、おもしろい話ができると思い構想を練った。極端にかけ離れた設定にし、そこから逃れられないという状況を作る。そこから生じるジレンマがおもしろさになる。

── 脚本は、パク・シニャンがヤクザを演じた『達磨よ、遊ぼう!』のパク・キュテだが、同じヤクザが主演のコメディということで依頼したのか? 脚本執筆はスムースだったのか?

彼がコメディの脚本を書ける人だからという面はあって依頼したが、「今回はコメディも重要だけど、それだけではない」と伝えていた。まず、この素材でどんな状況を作り、どんなキャラクターを設定するかを彼と6ヶ月間話しあった。それから彼が2回脚本を書き、3回目は私と彼でホテルに1ヶ月間籠って仕上げた。脚本はたいへん重要で、韓国では脚本に通常1~2年かけている。私は商業映画に強いと自負しているが、観客に受け入れられる映画を制作することに真剣勝負で臨んでいる。

── 『花嫁~』では夫が暴力団の妻に同化するコミカルなラストだったのが、本作では主人公が暴力団から離れることが示唆されたラストになっていて、違いを感じた。監督が年齢を重ねて心境の変化があったのか?

『花嫁~』では、妻が家庭で落ちついて子どもを産むだろうという観客の予想を裏切る必要があった。あのラストは特に女性に歓迎された。笑いだけではない、希望を与える話がしたいという思いは以前からある。


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『結界の男』(写真提供:映画祭事務局)


主人公はカリスマ性をもつパク・シニャン

── パク・シニャンはヤクザとしても巫女としてもカリスマ性があり適役だと思ったが、彼を起用した理由は? ステータスの高い俳優なのでキャスティングが容易ではなかったのでは?

彼はヤクザを演じた経験があるし「神秘的で近寄り難い存在」というイメージがあって、今回のカリスマ性がある特別な存在としての巫女役にぴったりだと思った。半年くらい交渉に時間を要した。

── パク・シニャン演じる巫女が女装をしているのは、巫女になっているのがバレないようにするためかと思っていた。

男性巫女は女装する習慣があり、作品では笑いを取るために女装を誇張した。男性が「自分は男巫女だ」と言うのは、トランスジェンダーがカミングアウトするのと同じニュアンスで受け止められる。

── パク・シニャンくらいの演技派だと、演技について自分の考えが色々ありそうだが、監督として演出し難いことはなかったか?

監督と俳優の意見が違うというのはよくあること。僕の意見が正しいと思ったら説得し、彼の意見も聞いて、調整しながら進めた。彼は自然に話せる台詞を重視する。「演技が大切だから脚本通りだとやり難い」という時は任せた。


存在感の光るキム・ジョンテとチョ・ジヌン

── キム・ジョンテとチョ・ジヌンが絡む、検察の取調室のシーンは思い出してもおかしさが込み上げてくる。あそこは監督が二人に任せたのでは?

二人ともすごくアドリブが上手な俳優。あそこは観客へのサービスシーンで脚本にも具体的なことは書いていなかった。二人とも、どんどんアイデアがあふれ出てきて、午後5時から始めて朝まで撮影していた。キム・ジョンテは事前に自分のアイデアを話さず、相手に準備をさせない。チョ・ジヌンはそれを受けて立って、自分のアドリブで返す。二人は釜山の慶星大学演劇映画学科の先輩後輩で元々親しく息があっていた。

── 二人とも存在感を感じる俳優だ。監督の評価は?

キム・ジョンテは状況設定があれば、台詞を口にしなくても存在感を見せる。韓国で誰もが認める才能ある俳優だ。チョ・ジヌンは現在、主役級の俳優なので、それほど出番が多くない本作の場合は「特別出演」になった。取調室のシーンは、笑いながらも悲しいという雰囲気を作りたかったのだが、彼は見事にやってくれて、あまりにも演技が巧くて感謝している。


子役の天真爛漫さは演出の力

── 子役は重要な役柄だったがのびのび演じていて良かった。演じたユン・ソンイはどのようにキャスティングしたのか? 全く緊張感なく演じているように見えたが、天真爛漫さによるのか? 演出によるものか?

子役は、800人から絞られた約20人になったところで、私が会ってあの子に決定した。映画初出演だが、演技が良かったしイメージも良かった。演技と釜山方言の指導を3ヶ月程度する中で「いける!この子に全てを懸けてみよう!」とまで思えた。子供はみんな緊張する。スタッフ全員に命じて皆がずっと子供のように振る舞った。イタズラをしたり…。子供が間違っても怒ったりしてはいけない。仕事だと感じさせないよう、遊びだと思ってもらうように心がけた。


日本に留学した理由、今村昌平監督の言葉

── 監督が日本で学んだ学校は? なぜ日本への留学を思い立ったのか?

日本大学芸術学部の研究生になり、日本映画学校(現、日本映画大学)で映画の実務的なことを、また早稲田大学で映画理論について学んだ。私は1960年生まれだが、学生時代は今と異なり、韓国ではそれほど映画が盛んでなかった。文化的に解放されていなかった時期で「韓国で見ることができない『地獄の黙示録』『乱』を日本に行ったら見よう」という思いが強かった。日本に行けばたくさんの映画を見ることができると期待した。

── 日本で学んで良かったと思うか?

良かった。私はフェデリコ・フェリーニやミケランジェロ・アントニオーニが好きで作家性の強い監督を志望していた。印象に残っているのは日本映画学校で今村昌平監督がかけてくれた言葉だ。「作家になることは簡単にはできない。まずは社会で生存しろ」と。それで、生存するとはどういうことかと考えて、商業映画を撮ろうと思うようになった。今は商業映画を作るのが楽しい。2時間、観客を夢中にし幸福にしようと使命感をもっている。幸福に劇場を出てくれたら私も幸福だ。



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日本語も堪能なチョ・ジンギュ監督(撮影:井上)

 付け加えると、キム・ジョンテとチョ・ジヌンの取調室シーンの撮影時は「二人の演技がスタッフも笑い転げるほどおもしろかったが、インパクトを持たせた終わりにしたかった」ので、監督のアイデアで「作品中、最後にチョ・ジヌンが発する一言を加えた」そうだ。確かにこの一言で場面が転換し、おもしろさがグッと増し、歯切れのよい終わりになっている。なるほど、これが「商業映画に強い」監督の演出力だと感動した。『結界の男』は今後、コリアン・シネマ・ウィーク2013(10/18~10/22@韓国文化院ハンマダンホール)とK-CINEMA WEEK 2013 in OSAKA(10/27@ナレッジシアター、11/2~11/4@シネマート心斎橋)でも上映される。鑑賞の折はチョ・ジヌンの最後の一言にご注目を。

 次回作は、自閉症の人を主人公にし、外の世界へ連れだそうとする人との摩擦を描いたコメディを構想中だそう。福岡の食べ物が大好きで、中でもお寿司は気に入りの店まであるとのこと。また新作を福岡に持って来て、観客を笑わせ泣かせてほしい。


『結界の男』
 原題 박수건달 英題 Man on the Edge 韓国公開 2013年
 監督:チョ・ジンギュ 出演:パク・シニャン、キム・ジョンテ、オム・ジウォン、チョン・ヘヨン
 アジアフォーカス・福岡国際映画祭2013公式招待作品
  公式サイト http://www.focus-on-asia.com/


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Report アジアフォーカス・福岡国際映画祭2013 ~多彩な作品でアジアの今を写す

Text by 井上康子
2013/10/16掲載



 「アジアフォーカス・福岡国際映画祭2013」(以下、アジアフォーカス)が、9月13日~9月23日、キャナルシティ博多を主要会場に開催された。23回目の今年は23ヶ国・地域から、これまでで最多の51作品が上映された。アート系のクールな作品、コメディ・恋愛・社会派のホットな作品、文芸の香立つピュアな作品、そして混沌としたバイオレンスを描いた作品など、多彩な作品から「アジアの今」が見て取れた。注目企画として、香港映画大特集、今年の福岡アジア文化賞の受賞者であるタイのアピチャッポン・ウィーラセタクンを招いての受賞記念上映&シンポジウム、韓国のイ・チャンドン監督全作上映など、たいへん充実していた。


多彩な作品:アジア諸国・地域の今


 伝統を受け継ぎながら新しい価値観・表現を示してインパクトが強かったのが、香港映画『狂舞派』とタイ映画『Pee Mak(原題)』だった。

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福岡観客賞を受賞した『狂舞派』のゲスト(写真提供:映画祭事務局)

 『狂舞派』は香港映画の伝統である高い運動能力を誇示するカンフーをモダンなヒップホップに置きかえた作品。「他者に勝つ」という従来の価値ではなく、「独自性」という新しい価値を示して、すがすがしさを残した。ヒロインの少女は片足を怪我して杖が必要になり、杖を小道具としたダンスを考案するのだが、そのダンスの斬新なこと。片足が義足でプロのダンサーであるトミー・ガンズ・リーが主演し、超人的な踊りを披露しているが、彼が上映後のQ&Aで「素晴らしいダンスとは?」と尋ねられ、「オリジナルなダンス」と答えた時には映画のメッセージと重なり、割れんばかりの拍手が沸き起こった。スターの出演しないインディペンデント映画だが、異例なことに大ヒットしたという。香港映画の新時代を感じさせる勢いのある作品で、アジアフォーカスでも人気投票で第1位の福岡観客賞を受賞した。

 『Pee Mak(原題)』は、タイで民間伝承され、繰り返し映画化されてきた怪談のリメイクで、タイ映画史上最大のヒット作。出征した夫を待つ妻が出産時に死亡してしまい亡霊となって夫を待つ、という譚は元怪談通り。従来の映画では主題が妻の怨念であったのを、本作では妻を愛する夫の愛の深さにし、さらにホラーだがコメディという大胆な変更で明るい作品になっていて、若い観客が大勢来場した。既存の作品では、男性中心主義の代表である僧が妻の亡霊を退治してきたのが、本作では、亡霊に怯えた僧の方が逃走してしまうというのも痛快で、タイ社会の変化が伺えた。

 新作が最多3本上映されたインド映画はいずれも社会派ドラマで、中でも2部作計5時間半で対立するファミリーの3世代に渡る復讐劇を描いた『血の抗争』は見応えがあった。インド特有の歌と踊りが満載のマサラムービーからインド映画は変貌しつつあるのだろう。

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『聖なる踊子』(写真提供:映画祭事務局)
監督は釜山国際映画祭のアジアンフィルムアカデミーと東西大学で映画制作を学んだ

 作品の中には韓国とのつながりや違いを考えさせるものもあった。釜山にある東西大学林權澤(イム・グォンテク)映画芸術学部で学んだ、インドネシアのイファ・イスファンシャ監督による『聖なる踊子』で、踊り子として生きることを選択したヒロインの辛苦は、イム監督作品『風の丘を越えて~西便制』のヒロインを彷彿させた。台湾映画『ウィル・ユー・スティル・ラブ・ミー・トゥモロー?』は夫がゲイだったという内容なのだが、ゲイを扱った韓国映画のような重さはなく、ほのぼのとした味わいで意表を突かれた。不器用にしか人を愛せない人々が登場し、結婚に踏み切れない女性が非現実的な韓ドラにハマっているという設定が笑いどころで、韓ドラが台湾でも浸透していることが伺える。


質の高い作品:『悲しみを聴く石』を筆頭に


 アジアフォーカスはイランのアカデミー賞受賞監督、アスガー・ファルハディ作品をいち早く紹介するなど、質の高い作品選びに定評がある。

 梁木靖弘ディレクター今年の一押し作品『悲しみを聴く石』(フランス/アフガニスタン)は、アフガニスタンからフランスに亡命後、本作の原作小説を著し、フランスで最も権威あるゴンクール賞を受賞した作家アティグ・ラヒミ自身が監督した作品で、2009年にアジアフォーカスで上映されたファルハディ作品『アバウト・エリ(原題)』(公開時タイトル『彼女が消えた浜辺』)に主演したゴルシフテー・ファラハニが美貌と成熟した演技を見せている。戦闘で植物状態になった夫を看病しながらの妻の独白は女性の受苦の歴史であり、再生への熱望である。作家から監督に転身したイ・チャンドン監督作のように文学作品の深みがある映画に大勢の観客が期待以上の感動を得た。

 イランから亡命中のバフマン・ゴバディ監督『サイの季節』(イラク/トルコ)では、反革命的な詩を書いたとして30年間投獄された詩人と妻を中心に据え、監督第一作『酔っぱらった馬の時間』のようにクルド人の苦悩が描かれている。時にサイが突然現れるといったシュールな芸術表現の持つ力に圧倒された。

 アジアフォーカス常連のレイス・チェリッキ監督『沈黙の夜』(トルコ)は一族のために殺人を犯し、長い服役を終えた初老の男が主人公。今度は一族和解のための結婚をするのだが、その新婚初夜の出来事を喜劇から一転して悲劇で収束させる手法が見事だった。


韓国映画:話題作と名監督特集


 『未熟な犯罪者』は、アジアフォーカス開幕直前に第86回アカデミー賞外国語映画部門の韓国代表に選ばれた。言わば韓国映画界の自信作だ。友だちに誘われて空き巣に入り、少年院に送られた中学生の元に、彼を捨てた母親が迎えに来て、一緒に暮らすようになる。母親には家も定職もなく、少年は復学を拒否され、悲惨な状況に陥るが、互いが家族を得た喜びに支えられ、明るさを失わない姿がさわやかな印象を残した。カン・イグァン監督は実際に3~4ヶ月にわたって少年院などを取材し、脚本も監督自身が執筆しているが、劣悪な環境のために罪を犯し社会に拒否される少年と、家族に受け入れられず過酷な状況に追い込まれる若いシングルマザーを描き、社会の問題を鋭く問うている。

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熊本市賞を受賞したチョ・ジンギュ監督(写真提供:映画祭事務局)

 『結界の男』は、ヤクザが突然巫女の能力を得て、ヤクザと巫女をかけ持ちせざるを得なくなるというコメディで、最後はしんみりとさせてくれる。観客は笑って泣いての大満足で、人気投票第2位に授与される熊本市賞を受賞した。主人公を演じたパク・シニャンのファンから、撮影中のエピソードを問われたチョ・ジンギュ監督は「化粧(男性の巫女は化粧をして女装する習慣がある)に苦労した。説得しウソもついて(笑)きれいにした。彼の演技は素晴らしくて出演に応じてくれて有難かった。何でも一生懸命やる俳優で、何ヶ月も前から準備をしていた」と応じ、ファンも大喜び。日本に留学経験がある監督はすべて流ちょうな日本語で答え、映画だけでなく日本語についても絶賛された。

 名監督特集「イ・チャンドン全作上映」は、梁木氏の「初期イ・チャンドン作を若い人たちに見てほしい」という思いから企画された特集だそうだ。デビュー作『グリーンフィッシュ』では、土地開発のために生活の基盤を失った主人公が居場所を求めたことから暴力団に使い捨てにされる。第2作『ペパーミント・キャンディー』では、兵役中に軍事独裁政権側の人間になることを強いられた主人公が時代に過剰適応し遂には身を滅ぼす。いずれの作品も、時代のうねりの中に置かれた若者が主人公で、厳しい雇用環境へ投げ出された現在の日本の若者の姿に重なる部分がある。鑑賞した若者はどんな感想を抱いただろう。


アピチャッポン監督:受賞記念上映&シンポジウム


 アピチャッポン監督は今年の福岡アジア文化賞受賞者で注目度が高く、さらに監督による『メコンホテル』が上映されるとあって、入場できない人が出るほど盛況であった。『メコンホテル』はパルム・ドール受賞作『ブンミおじさんの森』と同様に死者と生者が同席するスピリチュアルな作品。舞台がメコン川にされたことで、悠久の流れと輪廻のイメージが重なって感じられた。

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シンポジウムでのアピチャッポン監督(写真提供:映画祭事務局)

 シンポジウムの締めくくりで、梁木氏の「未来の映画祭のあるべき姿は?」との問いに、監督は「(産業化した映画祭ではなく)農業をしている人が撮った作品を上映できるような民主的な映画祭」と答えた。実は、アジアフォーカスでは昨年、シネコンに代表される映画のグローバル化に対抗するため、地産地消を目的とした特集「農業と映画」を企画し、実際に農業をしながら映画作りをしている監督の作品を上映している。二人の志向の共通性に驚いた。また、梁木氏からは「(アートとして)過激な作品を見てほしいが、そういう作品を上映すると観客を集めにくい」という悩みも吐露された。

 もし映画祭で上映される作品が、いずれシネコンで上映されるような作品ばかりだったら、ずいぶん寂しいものになるに違いない。グローバル化に対抗するアジアフォーカスの未来はどのような姿になるのだろう。来年もアジアフォーカスの真骨頂を思わせる質の高い作品を中心に、他所では見ることができない過激なアート作品も織り交ぜて「アジアの今」を感じさせてほしい。


アジアフォーカス・福岡国際映画祭2013
 期間:2013年9月13日(金)~9月23日(月・祝)
 会場:キャナルシティ博多
 公式サイト http://www.focus-on-asia.com/

Writer's Note
 井上康子。アジアフォーカスで、亡霊とその遺族が共に過ごす作品『結界の男』『Pee Mak(原題)』『メコンホテル』を見て、「東北の被災地で行方不明の家族を雑踏の中で見かけるなど霊的な体験を訴える方がいる」と新聞にあったことが思い浮かんだ。根底にあるのは大切な人に会いたいと願う心だ。遺族の痛切な思いと、その思いが堆積された文化としての亡霊譚が胸に染み入った。


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Essay 北の街のシネマ放浪記・その3 ~シネマ・トーラスで『ベルリンファイル』を見る

Text by hebaragi
2013/10/15掲載



 苫小牧市と聞いて皆さんは何を思い浮かべるだろうか。筆者が思い浮かべるのは高校野球である。二度にわたる全国制覇、三度目の決勝戦は延長再試合の末の準優勝という北海道勢初の快挙をもたらした駒大苫小牧高校ナインの勇姿は今でも鮮明に記憶に残っている。普段は日本ハムファイターズの応援をしている北海道民も、駒大苫小牧快進撃の立役者・田中将大投手が楽天ゴールデンイーグルスのエースとして活躍する姿を見るたびに誇らしく感じるのではないだろうか。

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シネマ・トーラスの外観

 さて、素顔の苫小牧市は製紙や自動車・石油化学を中心とした北海道随一の工業都市である。最近では電車で1時間以内という交通の便から札幌市のベッドタウンとして宅地開発が進むほか、新千歳空港に隣接し、本州各地へのフェリーが多数発着する苫小牧港を抱える交通の拠点としても発展著しい。また、日本一の水揚げ量を誇るホッキ貝をキーワードにした観光振興が図られていることもユニークな点といえるだろう。

 そして、知られざる苫小牧市のもうひとつの顔が「映画の街」である。とりわけ、『バッシング』『愛の予感』『春との旅』『日本の悲劇』などの作品で知られ、ヨーロッパの映画祭で高い評価を受けている小林政広監督が惚れ込んだ街であり、多くの監督作品でロケ地になっていることは特筆すべき点といえる。一般に苫小牧の風景は無機質な工業都市のイメージが強いが、どこまでも続くモノトーンの海岸線に工場の煙突が立ち並ぶ風景は、映画制作にとってあらゆる可能性を秘めた無限のキャンバスにもなるようだ。最近では『のぼうの城』のロケも行われている。

 「シネマ・トーラス」は、苫小牧駅から徒歩10分ほど、製紙工場に近い商店街を抜けたところにある。映画館の看板は目立たないが、併設されているボーリング場を目当てに来ると分かりやすいかもしれない。札幌のシアターキノなどと同様に市民出資をもとに立ち上げたミニシアターであり、今年になって実現したデジタル化に際しても市民の寄付が大きかったと聞く。通常上映のほか、毎月1回、ミニシアターのない室蘭市と伊達市の公共ホールで出張上映会を実施するなど意欲的な活動を続けているほか、先述した小林政広監督とのタイアップによる様々な企画も行われている。そして、韓国映画を積極的に紹介してきていることも大きな特徴のひとつであり、最近も『高地戦』『拝啓、愛しています』『王になった男』『殺人の告白』といった作品を上映している。こじんまりとした中にもアットホームな暖かみを感じるミニシアターである。

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シネマ・トーラスの館内

 今回は「韓国映画特集」で上映されていた作品の中から『ベルリンファイル』を見た。チョン・ジヒョンが出演する南北スパイ映画という程度の予備知識だけで先入観なしに見たが、オープニングから各国のスパイや得体の知れない人物たちが暗躍するテンポのよい展開に引き込まれ、あっという間の二時間だった。ハ・ジョンウとハン・ソッキュの渋い演技、リュ・スンボムのややコミカルなキャラクターが印象的だが、登場人物のほとんどが男性という設定のなかで、チョン・ジヒョンの存在は異彩を放っている。彼女は前作『10人の泥棒たち』では華麗なワイヤーアクションや様々なコスチュームで楽しませてくれたが、今回は一転して凛としたたたずまいを感じさせる北朝鮮大使館職員(通訳)として登場する。ストーリーは中盤以降、本国関係者に追われることとなったハ・ジョンウ、チョン・ジヒョン夫妻の逃避行、そして拉致監禁の舞台となったアジトでの銃撃戦など緊迫したシーンが続く。一方、極限状況にあっても、ふたりの会話にはすれ違いがちな夫婦の葛藤が描かれ、ラブストーリーの要素も感じさせる。チョン・ジヒョンが、屋根伝いに逃げ回ったり、銃撃戦でピストルを持つシーンを余裕でこなしているように見えたのも新たな発見といえる。

 作品中に描かれている国際関係は最近の北朝鮮情勢が反映されるなどリアリティにあふれており、見る者に強い印象を残す。南北分断やスパイをテーマにした韓国映画はこれまでにも多数製作され、多くの観客を集めてきた。しかし、現実の対立状況をベースに描かれていることからくるリアリティある迫力は「悲しい現実」ともいえるのではないだろうか。本作品の舞台として、かつて東西冷戦の象徴であったベルリンを選んだことについて、製作側の強いメッセージを感じる。1989年、誰もが想像しなかったベルリンの壁崩壊のシーンを今でも鮮明に思い出す。あれから四半世紀が経とうとする現在も、残念ながら南北分断は続いている。朝鮮半島に真の平和が訪れ、分断が本当の意味で昔話になる日が一日でも早く訪れることを切に願いつつ、劇場をあとにした。


Writer's Note
 hebaragi。筆者とシネマ・トーラスとの出会いは2004年公開の『チルソクの夏』にさかのぼる。その後も、札幌で見逃した韓国映画を見る際などに重宝させていただいているありがたい存在だ。


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News 秋の映画祭特集 in 東京 ~ここでしか見られない貴重な一本を見逃すな!

Text by Kachi
2013/10/5掲載



 今年も映画祭シーズンがやって来た。都内でも、待望の新作や話題作、今しか見られない貴重な一本、もう一度スクリーンで見たい名作などが数多く上映される。待ち遠しいイベントが目白押しだ。

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『レッド・ファミリー』(東京国際映画祭)

 アジア最大規模の映画祭、第26回東京国際映画祭(10月17日~10月25日@TOHOシネマズ六本木ヒルズほか)。ムン・ソリが国際審査委員を務めるコンペティション部門には、イ・ジュヒョン監督の『レッド・ファミリー』が出品される。脚本・製作をキム・ギドクが手がけ、現代の朝鮮半島が抱える矛盾をユーモアとスリルで描いた作品だ。長編映画2本目までの新人アジア監督を紹介する新部門「アジアの未来」では、韓国の学歴社会にするどく切り込むキム・ジョンフン監督の『起爆』が上映され、監督とパク・ソンフン撮影監督のQ&Aが決定している。

 ショートショートフィルムフェスティバル&アジアの秋の恒例イベント「フォーカス・オン・アジア&ワークショップ」(10月24日~10月27日@東京都写真美術館)は、毎年アジアから選りすぐった短編プログラムが魅力だ。今年は、第66回カンヌ国際映画祭短編部門パルムドール(最高賞)を獲得したムン・ビョンゴン監督と気鋭の日本人監督たちによるトークイベントに加え、パルムドール受賞作『セーフ』が日本初披露される。

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『セーフ』(フォーカス・オン・アジア&ワークショップ)

 コリアン・シネマ・ウィーク(10月18日~10月22日@韓国文化院ハンマダンホール)では、ユ・ジテの初長編監督作となるヒューマン・ラブストーリー『マイラティマ』や、『ミナ文房具店』、『南へ走れ』など、日本未公開作を含む6作品を上映する。多彩な顔ぶれのゲストにも注目だ。9月のアジアフォーカス・福岡国際映画祭で反響を呼んだ『結界の男』のチョ・ジンギュ監督、人間の清濁をみつめる作品を撮り続けて来たイ・チャンドン監督、そして短編『JURY』で映画監督デビューを果たした釜山国際映画祭前ディレクターのキム・ドンホ氏が、それぞれ作品上映とトークショーを行う。

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『マイラティマ』(コリアン・シネマ・ウィーク)

 第14回東京フィルメックス(11月23日~12月1日@有楽町朝日ホールほか)。残念ながら韓国作品は参加していないが、コリアン・シネマ・ウィークで来日するキム・ドンホ釜山国際映画祭名誉執行委員長のドキュメンタリー『微笑み絶やさず』が特別招待作品として上映される。「釜山国際映画祭の顔」として数十年を映画とともに歩んだ人となりと活動に、イラン映画界の巨匠モフセン・マフマルバフ監督が密着した本作を、ぜひ見ていただきたい。


第26回東京国際映画祭
 期間:2013年10月17日(木)~10月25日(金)
 会場:TOHOシネマズ六本木ヒルズほか
 公式サイト http://tiff.yahoo.co.jp/

ショートショートフィルムフェスティバル&アジア
フォーカス・オン・アジア&ワークショップ
 期間:2013年10月24日(木)~10月27日(日)
 会場:東京都写真美術館
 公式サイト http://www.shortshorts.org/focus_on_asia_2013/

第26回東京国際映画祭提携企画・KOREA CENTER開館記念
コリアン・シネマ・ウィーク2013
 期間:2013年10月18日(金)~10月22日(火)
 会場:韓国文化院ハンマダンホール
 公式サイト http://www.koreanculture.jp/

第14回東京フィルメックス
 期間:2013年11月23日(土・祝)~12月1日(日)
 会場:有楽町朝日ホールほか
 公式サイト http://filmex.net/

Writer's Note
 Kachi。今夏の思い出は、ずっと欲しかったキム・ギヨンDVD-BOXを手に入れたことです。でも、もったいなくて開封できていません。


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Report 福岡インディペンデント映画祭(FIDFF)2013 ~目覚ましく成長・進化する韓国との交流

Text by 井上康子
2013/10/2掲載



 福岡インディペンデント映画祭2013(以下、FIDFF)が、8月30日から9月10日まで福岡市内3会場で開催された。自主映画制作の活性化とクリエイター同士の交流、また海外映画祭との連携を目的に2009年にスタートし、5周年を迎えた今年は、コンペティション・招待作あせて193作品が上映された。若い映画祭だけあって、その成長は目覚ましい。コンペ応募数は昨年の86作品から今年は129作品まで増加した。招待作品は、メイド・イン釜山独立映画祭(以下、MIB)の優秀作品など、国内外の秀作が上映された。さらに、犬童一心監督による「コンペ部門グランプリ作品講評カフェトーク」をはじめ、盛りだくさんのイベントが実施された。どの会場も盛況で、観客数は昨年の1,871人から今年は2,471人と大幅増だった。


力作揃いの日本作品、女性作品に注目


 コンペ応募作は上映時間で6部門に分けられ、各部門で頂点に立った作品には部門別グランプリが、さらに全作品から選ばれた作品には最優秀作品賞が授与される。受賞式後に上映された受賞4作品はいずれも力のこもった作品だったが、最優秀作品賞だけあり『家族の風景』(佐近圭太郎監督)が秀逸だった。社会人になって間もない青年が、母親の怪我をきっかけに、家族の中では子どもだったのが大人となっていく。何気ない日常を通して、彼の心の変化が表現されていた。昨年、『かしこい狗は、吠えずに笑う』で最優秀作品賞を受賞した渡部亮平監督は、講評を行った犬童一心監督に認められ、その後、犬童監督のドラマ作品の脚本を担当しているそうだ。FIDFFにより若い制作者の育成が実現されている。

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コンペ授賞式(写真提供 FIDFF事務局)

 国内招待作品では、今年の釜山国際映画祭ドキュメンタリー部門で公式上映される『ある精肉店のはなし(仮)』の予告編と、昨年、ベルリン国際映画祭こども審査員特別賞を受賞した『聴こえてる、ふりをしただけ』が、特に観たかった作品で、いずれもトークも聴けて、作品への興味がより強まった。前者は大久保千津奈撮影監督が屠畜を行う家族に真摯に向き合う姿に、後者は看護師で母親でもある今泉かおり監督の「育児休暇を利用して撮影した。母親になり、子どもにきちんとメッセージを伝えられる映画を作らなくては、と思うようになった」という言葉に、会場から大きな拍手が起こった。今年のコンペ参加者も女性の比率がかなり低かったが、この二人のような女性映画人がロールモデルとなって映画を志す女性がもっと増えていくことだろう。


斬新で個性的なメイド・イン釜山独立映画祭作品


 FIDFFは、スタート時より毎年、釜山の映画祭の作品を上映し、FIDFFの作品も釜山で上映するという形で交流を継続している。昨年9月初旬に開催されたFIDFFでもMIB優秀作品が上映され、上映作品の監督を中心にしたゲスト・トークが行われた。その後、11月のMIBではFIDFF推薦作が上映され、今年5月の釜山国際短編映画祭(以下、BISFF)でも同じくFIDFF推薦作が上映されている。今年も、姉妹映画祭であるMIB優秀作品11本が上映され、監督とMIBを主催する釜山独立映画協会(通称Indi Busan、以下、IB)のスタッフら計8名が招待された。釜山の作品をこれだけまとめて見ることができ、あわせてトークも聴けるのはたいへん貴重な機会だ。

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釜山から来日したゲスト、右端がIB代表チャ・ミンチョル氏(写真提供 FIDFF事務局)

 MIB優秀作品は、ベテラン監督中心の長編3本、『Hunt』(キム・ヨンジョ監督)、『The Illusion』(キム・デファン監督)、『トダリ・リドックス』(パク・チュンボム監督)と、若手監督中心の短編8本、『同行』(カン・ミンジ監督)、『ピンポン玉』(イ・ジョンファ監督)、『mother』(アン・ミョンファン監督)、『平行線』(チェ・ユンス監督)、『境界人』(ソン・イルソン監督)、『ダイビング』(ミン・ジュホン監督)、『花夢』(パク・へジョン監督)、『像』(オ・ミヌク監督)であった。

 特に印象に残った6作品を紹介する。

『Hunt』 田畑を荒らすイノシシを狩猟する男たちを追跡したドキュメンタリー。語りを一切排し、開発による自然破壊、イノシシ被害の深刻さ、捕獲の困難さを写し、政府が奨励する狩猟が有効な対策ではないことを訴えている。

『境界人』 『ムサン日記~白い犬』のように脱北者が韓国で生活することの厳しさを描いている。主人公が脱北途中に家族を見捨てた苦悩が効果的にフラッシュバックで挿入され、15分の短編だが長編を見たような充実感があった。監督は「社会には絶対的な善も悪も存在しないことを伝えたかった」と制作意図を語った。

『平行線』 映画の編集を任された主人公の学生が、映画に登場する女性に恋心を抱き、編集で自分と相愛の映画にしてしまうが、現実では彼女は彼を知らず通り過ぎるだけで、交わることなく平行である。監督が「映像媒体で見ると親しみを感じるが実際は違うことが分かった時に感じる無力感を表現した」と語るのを聞き、非凡な着眼に感心した。

『mother』 清掃員をする母親の一日を息子である監督が追ったドキュメンタリーで、たいへん親孝行な映画だ。働き者のお母さんと息子の会話が微笑ましい。

『ピンポン玉』 聴覚障害の少年の孤独感を描いているが、かすかにしか聴こえない少年の音の世界をイメージできる音響効果が素晴らしかった。

『ダイビング』 ガラスの部屋に引きこもっている青年を主人公にし、外の世界への憧れや不安がメルヘンタッチで描かれていて、若い監督らしい作品だと好感をもった。

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ゲスト・トークの模様

 来日ゲストによるトークでは、IB副代表チェ・ヨンソク氏から「釜山国際映画祭が開催される釜山は映画産業に力を入れており、大学の映画学科も増えている。若手が頑張っているが、映画はどうしてもソウルが中心であり、苦労しながら制作している。協会はできるだけ支援をしていこうとしている」という状況報告があった。筆者は、昨年のMIBと今年のBISFFに参加する機会を得たが、MIBの短編プログラムでは、上映作の学生監督が「いつも良きアドバイスをくれる」という司会の監督を「先輩」と呼び、会場にいた家族も紹介され、若い監督を支える雰囲気が何とも温かだった。BISFFでは国際映画祭として、中国映画の特集が組まれ、中国の学生監督・ベテラン監督の作品を上映し、映画理論のレクチャーや中国の監督についてのセミナーが開催され、発表の場であると同時にシステマティックに学べる場なのだと思えた。こういう面から、釜山の若手は恵まれているように感じたが、確かにプロの映画人として生活していくのは大変であろう。

 IB代表チャ・ミンチョル氏は「映画祭同士が交流しているが、言語の問題があり、例えば私は今日のFIDFF上映作を観ても理解できない。字幕制作の支援が実現し、互いの作品を理解できれば深く長い交流になるだろう」と指摘。また、上映作『The Illusion』の監督でもあるキム・デファン事務局長は「今年11月開催のMIBでもFIDFFの作品を上映予定。確実に互いを支えあえるよういろいろ企画している」と抱負を語った。これらが実現すれば交流の質は今後さらに高まることだろう。


進化する韓国との交流


 FIDFFと釜山の共同プロジェクトとして、釜山出身で福岡ソフトバンクホークスに所属する金無英(キム・ムヨン)投手の活躍を描いた『金無英ドキュメンタリープロジェクト』(ダイジェスト版)が上映された。FIDFF代表・西谷郁氏の企画&監督作品で、日韓交流を体現しているキム投手を描くことで、両国の絆をさらに強くすることを目的としたものだ。

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ジョン・チヨンさん(左)とムン・チヨンさん(右)

 また、韓国出身&福岡在住のFIDFFアートディレクター、ムン・チヨンさんと、ジョン・チヨンさんが、日本という異なる文化・言語の世界で感じたアイデンティティの問題を表現した美術作品展「KIZUNA」も開催された。FIDFFのスタッフが日韓交流に関する作品を発表したことに、FIDFFにおける韓国との交流の進化を感じた。

 来年はさらに活況を呈し、韓国との交流がより深いものになっていることだろう。ぐーんと大きくなったFIDFFに再会したい。


福岡インディペンデント映画祭2013
 期間:2013年8月30日(金)~9月1日(日)、9月5日(木)~9月10日(火)
 会場:福岡アジア美術館、中州大洋映画劇場
 公式サイト http://fidff.com/

Writer's Note
 井上康子。今年のFIDFFでは李達也監督の『GALAPAGOS』を観ることができなかった。FIDFF2012で、国籍をめぐる在日親子の葛藤を描いた『アイゴ~! ~我が国籍は天にあり~』を見せてくれた李監督の新作で、在日への差別に対する監督の思いが込められた作品だ。互いをよく知ることが共存の道。韓国との交流を続けるFIDFFの果たす役割は大きい。


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