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Review 『2LINES あるカップルの選択』 ~新たな形の幸せを求めて模索するふたり

Text by mame
2013/8/31掲載



 上映後、後方のドアからトコトコと可愛らしい足音と共に男の子が駆け出して来た時、場内は「あっ!」という歓声に沸いた。チミン監督の息子、カン君だ。続いてチミン監督、パートナーのチョルさんが登場。一見どこにでもいる3人家族だが、映画を観た後だとなんとも感慨深く、思わず笑みがこぼれてしまう。

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左からチョルさん、カン君、チミン監督

 「韓国女性監督特集2013」で上映された『2LINES あるカップルの選択』は、非婚と結婚の間で揺れるカップルを描いたドキュメンタリーだ。30代を目前に控えたチミンと、年上のチョル。ふたりは長い間同棲しているが、妊娠をきっかけに結婚するか否か悩む。「そんなのは親の身勝手で、子どもがかわいそうなだけだ」。カメラはチミンの母、父、友達の意見を映し出し、筆者も共感した。だが、ふたりがただ世間一般の考えに埋もれたくないから非婚を選んでいるのではなく、従来ある結婚制度に希望が持てなくなってしまったからという意見にも納得してしまう。なにより結婚に対して意見をぶつけ合い、お互いを理解しようとするチミンとチョルの関係が心地よい。

 チミンと同世代、お年頃の筆者の周りでも、最近は集まれば結婚話に花が咲く。「今の時代だと夫婦共稼ぎで、子どもを育てられたら充分幸せだろうな」と結婚のイメージは湧くが、パートナーがいるのに非婚で子どもを育てるなんて想像がつかない。あえて非婚を選ぶにつけて、理想があったのかを訊いてみたところ、「あえて選んだというよりも、自分の親を見てきて、現行の結婚制度はふたり、更にはふたりの家族の関係を悪い方に変えてしまうようにしか思えず、安易に選ぶ気にはなれなかった」という答えがあった。彼らが選んだ非婚という形は漠然としたイメージすらなく、未完成、模索中なのだ。私達が思う幸せがいかに結婚ありきの常識の上に成り立っているのか、その選択肢の少なさに改めて驚かされる思いだった。

 カン君が生まれ、出生届を出すギリギリまで、息子を私生児扱いにするのか、ふたりは悩む。だが、カン君に手術が必要となり、手術費の支援を受けられるのは正式な夫婦の子どもだけという事実を前にして、ふたりはようやく結婚を決意する。あれだけ悩んでいた結婚も、一度してしまえば、あらゆる制度が結婚を条件にスムーズに進むことを知ってしまう。今となっては、その恩恵に預かりながらも、結婚前に感じていた「結婚する人と、しない人との間の壁に対する考え方」が変わってしまう事への怖さがあるという。「今までは、なんで結婚するの?と否定的な気持ちでマイクを向けていましたが、結婚した今となっては、結婚しない人にも、同様の権利が必要ではないか?と思うようになった」とチミン監督は語る。

 結婚、独身、事実婚…。いろんな形の幸せが溢れる今の日本では、どの道がいちばん幸せとはいえないし、自分の選んだ道がいちばん幸せだと信じたい。『2LINES』には、そこから一歩抜け出し、従来ある幸せの形に疑問を抱き、新たな形の幸せを掴みとるために模索を続ける人々の姿が爽やかに描かれていた。

 韓国女性監督特集2013は9月6日(金)までシネ・ヌーヴォX(大阪・九条)にて開催。上映作品は他に『牛と一緒に7泊8日』(イム・スルレ監督)、『空色の故郷』(キム・ソヨン監督)の計3作品。牛の豊かな感情表現に驚かされたり、韓国人画家の生涯に迫るドキュメンタリーに圧倒されたりと、五感を刺激される作品群だ。


韓国女性監督特集2013
 期間:2013年8月17日(土)~9月6日(金)
 会場:シネ・ヌーヴォX(大阪・九条)
 公式サイト http://www.cinenouveau.com/sakuhin/kankoku/kankoku.htm

Writer's Note
 mame。チミンの意見を尊重し、理解あるチョルの姿はまさに女性の理想。そんなふたりも、付き合い始めの頃はよくケンカをしたそうで、言い返し方を考えるうちに、相手の考えを理解できるようになったとか。ケンカ上等! ぶつかってこそ最良の関係は築けるものなのですね。肝に銘じます…。

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News 開幕目前! あいち国際女性映画祭2013 ~『容疑者X 天才数学者のアリバイ』『レッドマリア』ほか上映

Text by 加藤知恵
2013/8/25掲載



 8月31日(土)より9日間、国内唯一の国際女性映画祭である「あいち国際女性映画祭2013」が開催される。

 今年で18回目を迎える本映画祭は、国内外の女性映画監督作品の上映やトーク・シンポジウム等のイベントを通じ、女性映画人の活動を応援するとともに、女性の生き方や男女共同参画社会の在り方について考える機会を提供する映画祭である。

 とはいえ堅く重いテーマの作品ばかりが中心なのではなく、昨年劇場公開された『ふがいない僕は空を見た』(日本、タナダユキ監督)、今年の大阪アジアン映画祭で好評を博した『親愛』(中国、李欣蔓監督)や『二重露光~Double Xposure~』(中国、李玉監督)、そして『きっと、うまくいく』に続くヒットが期待されるインド映画『English Vinglish(英題)』(ガウリ・シンデー監督、日本初公開、監督ゲスト来場)など、ジャンル多彩で映画ファンの心をくすぐるようなラインナップが目を引く。また、女優の吉永小百合さん、篠原ともえさんらを招いたゲストトークや、字幕翻訳者戸田奈津子さんの講演など、豪華なゲスト陣と充実したイベントも魅力的だ。

 そして、昨年は韓国作品が上映されず、寂しい思いをされた方にも朗報を。今年は韓国作品として、長編のドラマ部門に『容疑者X 天才数学者のアリバイ』、ドキュメンタリー部門に『レッドマリア』の2作品がノミネートされている。

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『容疑者X 天才数学者のアリバイ』

 『容疑者X 天才数学者のアリバイ』は、東野圭吾の小説『容疑者Xの献身』の韓国版リメイクだ。監督は『受取人不明』(2001年、キム・ギドク監督)等への出演で有名な女優出身のパン・ウンジンで、韓国内では昨年公開され、観客動員150万人以上のヒットを記録している。『ベルリンファイル』の演技も記憶に新しい、個性派俳優リュ・スンボムが想いを寄せる女性のために完全犯罪を企てる主人公を演じたことも話題となった。愛知県ではこれが初公開となる。

 『レッドマリア』は、『ショッキング・ファミリー』(2006年)で、シングルマザーである自身や仲間の女性スタッフの日常生活を素材に、家父長的な家族制度や学歴偏重の教育体制へ軽やかに批判を投げかけたキョンスン監督の新作。韓国・日本・フィリピンにおいて3年の取材期間を費やし、専業主婦、非正規職員、性労働者から元慰安婦、ホームレスまで、社会の周辺部で「労働者」として体を張って生きる女性たちの姿を捉え、「労働」の意味を問い直したドキュメンタリー作品だ。

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『レッドマリア』

 この2作以外にも、沖縄戦の生存者の証言を基に集団死や強制連行、慰安婦問題の真実に迫る朴壽南(パク・スナム)監督の『ぬちがふぅ(命果報)―玉砕場からの証言―』(長編ドキュメンタリー、監督ゲスト来場)や、家庭内の不和に心を痛める小学校一年生の少女を描いた朴美和(パク・ミファ)監督の『いたいのいたいのとんでいけ』(ショートフィルムコンペティション)など、在日コリアンの女性監督作品にも注目したい。

 なお『レッドマリア』の上映後には映画祭コーディネーター斉藤綾子さんによる解説トークが、そして『ぬちがふぅ』の上映後には監督本人によるティーチインが予定されている。

 『容疑者X 天才数学者のアリバイ』と『レッドマリア』は初日の8月31日(土)に上映されるので、どうぞお見逃しのないようスケジュールのチェックはお早めに。


あいち国際女性映画祭2013
 期間:2013年8月31日(土)~9月8日(日)
 会場:ウィルあいちほか
 公式サイト http://www.aiwff.com/

Writer's Note
 加藤知恵。今年の夏休みはプチョン国際ファンタスティック映画祭に参加してきました。ティーチインで監督と熱く語りあう映画ファンや、野外上映・深夜上映で盛り上がるたくさんの観客の姿を見て、「韓国っていいな」「映画祭っていいな」と私も学生時代に戻ったような気持ちで胸が熱くなったのでした。


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Essay 北の街のシネマ放浪記・その2 ~シアターキノで『恋は命がけ』『僕の妻のすべて』を見る

Text by hebaragi
2013/8/21掲載



 この季節に初めて札幌を訪れた人の多くが、その暑さに驚く。涼しいどころか真夏日も珍しくない。涼を求める人々が大通公園や札幌駅前、そしてビール会社直営の野外ビアガーデンに大挙して訪れるのは短い夏の風物詩だ。暑い夏の隠れたおすすめスポットが映画館。クーラーの効いた快適な劇場で映画を見た後、ビールでも飲みながら映画の話に花を咲かせるのも楽しい。


ミニシアターの聖地「シアターキノ」


 シアターキノは、札幌中心部の老舗アーケード街・狸小路にある。狸小路はかつて札幌随一の映画街であり、10スクリーンを超える劇場が軒を連ねていた。その後、シネコンの相次ぐ進出により唯一の常設館となったシアターキノは、1992年に29席の「日本一小さな映画館」としてオープンした後、1998年に現在の地に移転し、2スクリーン体制でリニューアルオープンした。現在、国内外の秀作が常時5~10本程度上映されており、映画人を招聘しての企画上映も多い。名実ともに北海道を代表するミニシアターであり、札幌市内はもとより道内各地からの来場者も多く、ロビーは次の上映を待つたくさんのお客様でにぎわっている。

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シアターキノの上映作案内板

 リピーターが多いのも当館の特徴で、年間10作品まで無料で見られるヴィンテージ会員も多い。隣接する「kino cafe」では軽食をとることができ、劇場と共通のポイントカードでポイントを貯めると無料鑑賞券にもなる。幕間のわずかな時間に食事をしているとき、次に見る作品の整理券をテーブルに置いておくと、劇場スタッフがカフェに現れ、「○○をご覧のお客様はまもなくご入場となります」などとアナウンスしてくれるきめ細かなサービスも嬉しい。客席は傾斜が緩くなっており、ゆったりと映画を楽しむことができる。また、シアターキノは以前から韓国映画の紹介に力を入れており、イム・グォンテク、ホ・ジノ、ホン・サンス、キム・ギドク、パク・チャヌクといった監督の作品を積極的に紹介してきたことは特筆すべき点といえる。

 今回は「韓国映画特集」で2本の作品を見た。

 『恋は命がけ』は、ソウルで公開初日に見てから1年あまりでの再見。ホラー・ラブコメという宣伝コピーとは裏腹に怖いシーンは少ない(あくまでもホラーに抵抗感の少ない筆者の印象だが)。ポップなBGMに載せて軽快なテンポで展開するストーリーは、楽しいロマンティック・コメディそのものだ。とりわけ、霊感を持つミステリアスな女性ヨリを演じるソン・イェジンの変幻自在の表情が印象的で、普通の女性のようにコロコロと笑ったり、はにかんだりする表情も新鮮に感じられる。また、彼女にとっては初めてと思われる、かわいらしい酔っぱらい姿やバッティングセンターでの華麗なフォーム、そしてレアな制服姿も見どころだろう。一方、ヨリとの関わりを通じて数々の不可解な体験に見舞われ、戸惑いつつも彼女に惹かれていくマジシャン、ジョグを演じるイ・ミンギのクールな演技や、ヨリの親友たちのユニークなキャラクターも楽しい。ヨリの悲しい過去にまつわる回想シーンもあるが、全体としてはハートウォーミングな印象が強く、ラブコメディの新たなジャンルともいえる試みはひとまず成功したといえるのではないだろうか。ちなみに、原題『오싹한 연애』を直訳すると『不気味な恋愛』、『ゾッとした恋愛』、『身ぶるいするような恋愛』となる。今回、改めて作品を見直してみて、邦題『恋は命がけ』も絶妙なネーミングに感じられた。

 『僕の妻のすべて』はイム・スジョン主演のラブコメディ。結婚前には分からなかった妻ジョンインの正体に翻弄される夫ドゥヒョンが、妻と別れるため、伝説のカサノバ、ソンギに妻を誘惑させる…。ふたりの出会いは地震が起こった日の名古屋という設定で、日本語の会話も登場する。イム・スジョン演じるジョンインが、誰に対しても自分の意見をはっきり主張するドラマ「斉藤さん」の主人公のようなキャラクターを生かして「毒舌DJ」としてマシンガントークを炸裂させるのが楽しい。また、今回のイム・スジョンは強気なだけでなく、少女のようなしぐさや妖艶な大人の女性の表情も見せてくれるなど、女優としての演技の幅を着実に広げている。独特の透明感から、今まではしっとりとしたラブストーリーへの出演が多かったが、新たな一面を見せてくれたといえるだろう。さらに、妻との関係に悩む夫を演じるイ・ソンギュンのコミカルな葛藤ぶりや、カサノバを演じるリュ・スンリョンの破天荒ながらも憎めないキャラクターがストーリーに厚みを与え、魅力あふれる大人のラブコメディに仕上がった。ラスト近く、家を出るために荷物をまとめようとするジョンインをドゥヒョンが手伝うシーンは『愛してる、愛してない』を彷彿とさせるが、かなり違う印象になっている点も興味深い。

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シアターキノがあるアーケード街・狸小路


Writer's Note
 hebaragi。シアターキノ周辺の商店街には飲食店、とりわけ様々な外国料理を楽しめる店が多く、アフターシネマのスポットには困らない。商店街の多国籍な雰囲気が、劇場で上映される作品の地域的多様性を反映しているようで興味深い。


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News アジアフォーカス・福岡国際映画祭、福岡インディペンデント映画祭、東アジア映画フェスティバル開催! ~9月は福岡でアジア映画の魅力を満喫しよう

Text by 井上康子
2013/8/11掲載



 福岡市では9月から10月にかけて、アジアの文化・芸術の紹介に加え、クリエーターの育成や映画産業の振興を図るための「アジアンパーティ」を展開する。主な事業のひとつがアジアフォーカス・福岡国際映画祭で、協賛企画として福岡インディペンデント映画祭、東アジア映画フェスティバルが開催される。3映画祭の上映作品と注目企画を紹介しよう。


アジアフォーカス・福岡国際映画祭2013


 質の高いアジア映画を発掘・紹介し、監督・俳優など多くのゲストとのトークによる交流が行われている。23回目を迎える今年の注目作は、オープニング上映作品でカンフーがストリートダンスになった『狂舞派(『踊るぜ、香港!』を改題)』(香港)、フランスの権威ある文学賞「ゴンクール賞」受賞小説の作家自身が監督した『悲しみを聴く石』(フランス/アフガニスタン)、タイ映画史上最大のヒット・ホラーコメディ『死者の村からこんにちは』などで、アジア21ヶ国・地域の51作品が9月13日~23日にキャナルシティ博多を主要会場に上映される。

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 韓国映画は、カンヌ脚本賞、ヴェネチア監督賞などで世界的評価を得たイ・チャンドン監督の全作特集上映がある(『オアシス』は交渉中)。デビュー作『グリーンフィッシュ』が鑑賞できるのは今となってはたいへん貴重な機会。

 韓国からの公式招待作品は『結界の男』と『未熟な犯罪者』の2本。

 『結界の男』は、ヤクザが突然霊的な力を得たことで、エリートヤクザでありながら巫女としても過ごさざるを得なくなる、というストーリー。ヤクザと巫女という全く異なる仕事を掛け持つ主人公を実力派パク・シニャンが演じて笑いを誘う。『花嫁はギャングスター』で暴力団の女親分で愛らしい妻という主人公を見せたチョ・ジンギュ監督作で、こういうコメディはお手の物だ。

 昨年の第25回東京国際映画祭で審査員特別賞と最優秀男優賞を受賞した『未熟な犯罪者』は、過酷な生育環境のために小さな過ちを犯した少年が主人公。カン・イグァン監督は前作『歯二つ』(オムニバス映画『視線の向こうに』の一編)も本作と同じく韓国の国家人権委員会の依頼による作品で、貧しい脱北少女と恵まれた環境の少年の交流をみずみずしく希望を持たせて描いていることに大変好感を持った。

 注目企画は、運河をコンセプトにした会場であるキャナルシティ博多ならではの水上レッドカーペット、カンヌのパルム・ドール受賞監督アピチャッポン・ウィーラセタクンを招いてのシンポジウムなど。「アジアの今」を切り取った作品を味わいつつ、映画人と交流し、お祭りの楽しさも味わえる趣向になっている。


福岡インディペンデント映画祭2013


 自主映画制作者の交流と活性化、国際映画祭との連携を目的にした映画祭で、5回目を迎える今年は8月30日~9月1日、9月5日~10日に福岡アジア美術館と中州大洋映画劇場を会場に開催される。コンペティションに加え、国内外の優秀な作品を招待上映している。

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 韓国作品の上映、および韓国映画人ゲストによるトークが例年実施されている。今年も姉妹映画祭であるメイド・イン釜山独立映画祭の優秀作品が、9月6日~7日に中洲・大洋メディアホールで上映される。釜山の東西大学大学院映画学科で学ぶソン・イルソン監督による脱北者の苦悩を描いた短編『境界人』、釜山独立映画協会所属キム・ヨンジョ監督が猟師の姿を追った長編ドキュメンタリー『Hunt』など、釜山で生まれた11作品を観ることができる。9月7日(土)13:00からは釜山からのゲストによるトークが福岡アジア美術館FAAM Cafeで行われる。

 犬童一心監督のグランプリ作品講評トークなど、見どころのある企画が多いので映画祭公式サイトで確認してほしい。


東アジア映画フェスティバル2013


 アジアの心実行委員会主催の映画祭で15周年を迎える。今年は「香港映画大特集」として『桃さんのしあわせ』など香港4作品、中国2作品、韓国2作品が、9月19日~24日に福岡アジア美術館あじびホールにて上映。韓国作品は、イ・ジェフン主演のホラー・コメディ『漁村の幽霊 パクさん、出張す(原題:占い師たち)』と、チャ・テヒョン主演のアクション時代劇『風と共に去りぬ!?』。

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 イ・ジェフン主演作が福岡の映画祭で日本初公開されるのは3度目。アジアフォーカス・福岡国際映画祭2011『Bleak Night(原題)』、福岡アジア映画祭2013『パパロッティ』、そして今回の上映と、毎回全く異なるジャンルの作品・異なる役柄での登場だ。


アジアフォーカス・福岡国際映画祭2013
 期間:2013年9月13日(金)~9月23日(月・祝)
 会場:キャナルシティ博多
 公式サイト http://www.focus-on-asia.com/

福岡インディペンデント映画祭2013
 期間:2013年8月30日(金)~9月1日(日)、9月5日(木)~9月10日(火)
 会場:福岡アジア美術館、中州大洋映画劇場
 公式サイト http://fidff.com/

アジアの心15周年記念上映会・東アジア映画フェスティバル2013 香港映画大特集
 期間:2013年9月19日(木)~9月24日(火)
 会場:福岡アジア美術館あじびホール
 HP http://www.focus-on-asia.com/kyosan/#asiafes(アジアフォーカス公式サイト内)

Writer's Note
 井上康子。およそ20年前、インドネシアを旅行中にパレードに遭遇し、8月15日が日本の旧植民地国の独立記念日だと知った。夜には残虐な日本兵が登場する独立までを描いた映画が放送された。毎年8月15日になると「今年もアジアのどこかであのような映画を見ている人がいるのでは」と思う。アジアフォーカス・福岡国際映画祭2013の協賛企画:台湾映画祭2013では日本統治下に青春期を送った台湾人の今を追うドキュメンタリー『台湾人生』が上映される。彼らの日本への思いはどのようなものだろう。ぜひ観たい。


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Report 第4回アジアンクィア映画祭 ~様々な愛、様々な生き方を示す珠玉の作品たち

Text by Kachi
2013/8/10掲載



 8月17日(土)より、自らゲイを公言している韓国の映画監督キム=チョ・グァンスの短編『ただの友達?』、『少年、少年に会う』、『愛は100℃』が、「Gショートムービーセレクション」として東京のシネマート新宿と大阪のシネマート心斎橋で上映される。「99.9%真実のゲイ映画を作りたかった」という監督の意欲が見事に表現されていながら、韓国歌謡のトロットやダンスも飛び出すエンターテイメント性も備えている。初めて見た時は、あまりに官能的な描写に驚倒したので、限定とはいえ劇場公開されることは感慨深い。

 第4回アジアンクィア映画祭(5月24日~26日、5月31日~6月2日@シネマート六本木、以下AQFF)では、そのキム=チョ・グァンス監督の初長編作『2度の結婚式と1度の葬式』や、イ=ソン・ヒイル監督の連作プログラム「One Night and Two Days」、ソ・ジュンムン監督の特集上映、キム・スヒョン監督『マネキンと手錠』、短編作品ではチャン・ユンジュ監督『ネイル』、アンドリュー・アン監督『アンディ』などが上映された。

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『2度の結婚式と1度の葬式』

 『2度の結婚式と1度の葬式』は、ゲイのミンス(キム・ドンユン)とレズビアンのヒョジン(リュ・ヒョンギョン)が、自分たちの性的指向を隠して偽の結婚式を挙げるシーンから始まるコメディ。作品のテーマである同性カップルの婚姻や養子縁組の問題は深く掘り下げない。だが「笑えるクィア映画を撮る」が信条のキム=チョ・グァンス監督らしい、間断なく客席から爆笑が起きる娯楽作だった。「クィアに友好的なフランスへ行きたい」と愚痴り、控えめに生きるミンスが、今も偏見の残る韓国でめげずに暮らそうとするパートナーのソク(ソン・ヨンジン)やヒョジンと関わることで少しずつ変わっていく前向きなメッセージに好感を持った。ヒョジンとソヨン(チョン・エヨン)のレズビアンカップルの扱いの小ささには物足りなさもあり、ゲイ仲間はいわゆるオネエ口調でややステレオタイプな描き方ではあったが、それぞれの魅力が十分に感じられる。とりわけ、ミンスに熱い想いを寄せるティナ(パク・チョンピョ)はキュートで、実は一番芯の強い、忘れがたいキャラクターだ。韓国唯一のゲイ・コーラスグループ「G-VOICE」が務めたエンディング曲はさすがだったが、本編のキャストたちの歌も彼らに劣らず素晴らしい。

 『マネキンと手錠』は、美大の教授が、教え子に紹介されたユン(キム・ヒョジン)をモデルにスカウトして映像作品を撮影している話と、ユンによる失恋の回想で展開していく。カルト映画のような作りで、規格外なクィア映画だった。デパート店員のユンは、自分と同じ服装をさせたマネキンを屋上から落とし、通りかかったカン(キム・コッビ)たちスリ集団の車に激突する。追ってきた刑事が手錠でユンとカンをつないだことから、二人の愛と不思議な逃避行が始まる。刑事とその後輩との珍妙なやり取りで明らかになる事実や、光州事件で命を落とした女性のこと、カンと謎の僧侶の関係などが次々と現れ、物語は様々な愛と生き方、現実と非現実を自由にめぐって広がりをみせていく。

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『マネキンと手錠』

 ユン曰く「レズビアンの愛とは自分がどんな立場にいようと相手を思いやる利他愛」だ。差し挟まれる女性たちの昔の記憶や想像が、その主体が誰であるか時としてあいまいにされ、まるで彼女たちの心が共鳴しあっているようだ。ユンとカンをつなぐ手錠は、気持ちのつながりの象徴である。だが、かつて『バンジージャンプする』が同性愛を思わせる関係を「これは人間愛」と否定したこととは異なり、レズビアン描写は美しくもストレートなもので、女優二人の熱演が光っていた。

 「AQFFセレクション ソ・ジュンムンプログラム」では、同監督の新作『REC』とAQFF2009からのアンコール上映となる『蛍の光』が上映された。『REC』は、ホテルの一室でゲイのカップルがお互いを撮りあう映像で進んでいく。セックスにふける二人の熱々ぶりをひたすら見る映画かと思っていたが、粗いカラー画面が鮮明なモノクロになった瞬間、彼らを待っていた結末の冷たさに気づき、ハッと息を飲んだ。『蛍の光』では、かつての恋人同士が、老境に至って偶然再会する。ホテルの部屋で、思い出の歌謡曲を口ずさみながらの二人のチークダンスは珠玉のシーンだ。まるで『REC』のその後を見ているようで切なさもひとしおだった。2作品とも巧みな映像表現、悲しいのに何度も見たくなる筋書きは、まさに一級のラブストーリーだ。

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『REC』のティーチインより
チョン・ヘフンさん(左)とソン・サムドンさん(右)

 ソ・ジュンムン監督のデビュー作である、ゲイカップルの別れを描いた『カメリア・プロジェクト:ボギル島の三つのクィア・ストーリー』の一編『漂流する島』は、以前監督自らが『チョンノの奇跡』の中で「みんなで映画を撮っている気持ちになれなかった」と告白していたように、ゲイであるために撮影現場で感じた監督の孤独が現れているような、どこか遠慮がちな作品であった。しかし『REC』のティーチインで、主演のソン・サムドンさんとチョン・ヘフンさんは、ソ監督との撮影中の思い出を笑顔で話した。クィアではない二人は、韓国のゲイ・ストリートであるチョンノやイテウォンに行って当事者たちと話したり、ネットでゲイのアダルト動画を見たりして撮影に臨んだが、「すごくリアリティを追求していた監督が、プロデューサーと二人でラブシーンの演技の手本を示してくれた」とのこと。監督は入隊中、性的指向を理由に言われなき屈辱を受けたこともあったそうだが、誰かを愛することの喜びと苦しみを映し出す映画を、様々なトラウマを乗り越えながら、スタッフや俳優たちと一緒に作り上げているのだ。

 イ=ソン・ヒイル監督の連作『あの夏、突然に』、『南へ』、『白夜』は「One Night and Two Days」としてクロージングで一挙上映された。『あの夏、突然に』では教師と生徒、『南へ』では軍隊内での同性愛が、『白夜』では2011年にチョンノ一帯で起こったゲイをターゲットにした襲撃事件が、それぞれ物語のベースになっており、クィアの状況や社会的問題に触れてはいる。だが、監督は『白夜』について「付き合っていた人と手をつなげずチョンノを散歩した思い出を元に執筆した脚本に、事件のことを書き加えた」と語る。ホモフォビアからの攻撃によって心身に傷を負った被害者の痛みをすくいとりつつあえてそこに固執せず、苦く切ない恋愛模様にスポットを当てたのだ。

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ティーチイン中のヒイル監督

 ヒイル監督の映画は、夜や夕日などが作り上げる暗さと、そこに浮かび上がる登場人物の美しさが魅力で、今回の3作品にも引き込まれた。AQFF2007で上映された『後悔なんてしない』では、施設育ちの貧しい青年スミン(イ・ヨンフン)は恵まれた家庭のジェミン(キム・ナムギル)を強く拒みながら彼と愛し合っていく様子が印象的だった。同様に『あの夏、突然に』の教師と生徒、『南へ』の現役兵と除隊した元上官、『白夜』の裕福な男とその日暮らしの青年など、身分や階級、生活レベルなどで何らかの格差を持つ彼らは、傷つける言葉とは裏腹にどうしようもなく惹かれていく。そんな彼らに感情を揺さぶられた。

 今年6月26日に、アメリカ連邦最高裁が「結婚を男女間のみのもの」と規程する連邦法の条項を違憲とする初めての判断を示した。クィアカップルにも異性愛者の結婚と同等の権利を与える道筋をつけつつある欧米に比べ、アジアでは法律はおろか、社会の意識も一進一退を繰り返している。そんな中、AQFF2013はクィアとして言いたいことを押し出していくものばかりではなく、笑いや感動、恋の喜びやもどかしさといった人間の普遍的感情や、多様な人生を描き出す作品が多かった。会場では、映画ファンの知り合いに何人も会った。それはひとえに、作品がクィア当事者のみならず、映画好きにもアプローチしている証拠だろう。むしろクィア映画の枠に収まらない作品も発信し続け、異性愛者の映画と変わらない状況を作り上げることこそが、ホモフォビアに対する一番の抵抗策なのかもしれない。隔年開催のAQFF、2年後にはどんな珠玉の作品が揃うのだろうか。


第4回アジアンクィア映画祭
 期間:2013年5月24日(金)~5月26日(日)、5月31日(金)~6月2日(日)
 会場:シネマート六本木
 公式サイト http://aqff.jp/

Writer's Note
 Kachi。『2度の結婚式と1度の葬式』は、ソウルLGBT映画祭でも見てきました。G-VOICEの音楽、キャストのキレのあるダンスと歌は何度見ても良かったです。


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