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Report 第27回福岡アジア映画祭2013 ~博多祇園山笠のような熱気あふれる映画祭

Text by 井上康子
2013/7/29掲載




歴史あるアジア映画祭


 今年で27回を迎える「福岡アジア映画祭」が、7月5日から7月14日まで福岡市の西鉄ホールとアンスティチュ・フランセ九州を会場として開催され、コンペ部門5作品、アジアン・パノラマ部門9作品が上映された。半数の作品を見ることができたので紹介したい。

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 アジアへの玄関口である福岡では、アジア映画を上映する主な映画祭が夏期に集中的に開催されている。毎年その一番手として、博多祇園山笠で賑わう時期に開催されるのが本映画祭で、9月には「福岡インディペンデント映画祭」「アジアフォーカス・福岡国際映画祭」「東アジア映画フェスティバル」が控えている。1987年に第1回開催と開始も一番手。即ち、福岡で最も長い歴史をもつアジアの映画祭である。

 映画祭代表の前田秀一郎氏が、今村昌平監督作品を自主上映した際に監督が語ったマレーシア作品のおもしろさに興味を抱いたことが映画祭誕生のきっかけになった。27年前のことなので、前田氏は苦労してアジアの作品を見て、選び、開催したところ、今村監督に映画祭の意義を絶賛され、毎年の開催を促がされた。前田氏は監督のことば通りに、途切れることなく毎年開催し、今回までで約500作品を上映している。「継続は力なり」を実感させてくれたのは、最近の例では、昨年、国民俳優アン・ソンギ主演の大ヒット作『折れた矢』を上映し、併せて、ビッグスターである彼をゲストとして招いていたことが挙げられる。彼の出演作はこれまでに15作品以上上映しているが、そのような実績があってこその来福であっただろう。

 『折れた矢』のようにメジャー公開されたヒット作を日本初で上映することにもこだわりをもっているが、開催の主たる目的は「才能はあっても、まだ知られていない若い監督の作品を日本に、さらには世界に紹介する」ことだ。第8回からはコンペ部門を設け、今回までに韓国映画は11作品が最優秀作品賞にあたる「福岡グランプリ」を授与されている。今や世界三大映画祭を制覇し巨匠になったキム・ギドク監督も第16回(2002)に『バッド・ガイ(一般公開時タイトル:悪い男)』で受賞している。


コンペは娯楽性と社会性を兼ね備えたメジャー作品で、いずれも日本初公開


 今年の新しい若い才能、中国のホアン・レイ監督のデビュー作『アングリー・キッズ』は、両親が海外赴任し祖父の元に放置されたことに怒った少年が家出し、少女と共に児童を酷使する悪者をRPGの趣でやっつけるコメディ。都会の富裕層の少年と田舎の貧困層の少女のコンビに現代中国の縮図が見て取れた。台湾のチュウ・ヨウニン監督による『おばあちゃんの秘密』は監督の自伝的要素が強い作品で、家族の絆を描いたドラマ。迷える青年主人公を見守る祖母の視線が温かい。祖母役の女優チャン・シウユンは90歳近いそうだが彼女の存在感は圧巻。主人公を演じたクー・ユールンはアン・リー監督作品『ラスト、コーション』に出演するなど、すでに注目度の高い俳優だがさすがの演技力だ。

 コンペ部門では、韓国映画が3作品上映されたので、ティーチインの内容も含めて紹介しよう。

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『ウエディングスキャンダル』のシン・ドンヨプ監督

 『ウエディングスキャンダル』は、監督デビュー作『愛しのサガジ』で2004年にも本映画祭に登場したシン・ドンヨプ監督作品。延辺出身の朝鮮族の女性が韓国での就労のために偽装結婚するが発覚して拘束される。双子の妹(クァク・チミン)は姉を助けるため、偽装結婚相手の青年(キム・ミンジュン)に、相愛の夫婦であることを証明するためのセックス・ビデオ撮影の協力を迫るというラブコメ。本作は監督が企画した作品で商業的な投資がなく、キム・ミンジュンは役柄に意欲を見せてノーギャラで出演したとのことだが、格好よくない青年を肩の力を抜いて演じている。ビデオ屋の店員等により、真剣に楽しくセックス・ビデオ撮影が進む様に、監督自身の映画作りに対する愛情を感じた。

 『パパロッティ』は、『青燕 あおつばめ』などを手掛けたベテランのユン・ジョンチャン監督作品。孤児の高校生(イ・ジェフン)は孤独感からヤクザ組織に身を置いたものの、天賦の歌声を持ち、クラシック歌手を夢見、音楽教師(ハン・ソッキュ)は彼を全力で支える。イ・ジェフンとハン・ソッキュの安定したコミカルなやりとりに改めて二人の演技の巧さを実感できた。笑いを誘いながら感動的な展開を見せ、本作は今年の「福岡グランプリ」を受賞した。審査員の尾上克郎特撮監督からは「粒揃いの作品の中から選択するのに苦労した。最も多くの人が満足する作品として選んだ」との講評があったが、観客数も最も多かった。本作はすでに日本で配給権が獲得されている。

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グランプリを受賞したユン・ジョンチャン監督(左から2番目)

 『鋼鉄テオ』は、前作『バンガ?バンガ!』で職を得るためにブータン人に化けた青年の笑いと涙を描いたユク・サンヒョ監督が、主演のキム・イングォンと再びコンビを組んだ作品。韓国で民主運動が盛んだった1985年、中華料理店の配達員が憧れの女子大生に近づこうとしたことから、民主運動の学生闘士に変身し大活躍するというコメディ。同じく1985年の民主運動を描いたシリアスな『南営洞1985』が日本で上映されたばかりだが、本作は監督曰く「簡単にコメディにできない民主運動をコメディで描くということに挑戦した」意欲作だ。旬の俳優キム・イングォンが本作でも大いに笑って泣かせてくれる。監督は次作では「障害者を主人公にしたコメディ」に挑戦するそうで期待している。


多様なアジアン・パノラマ ~長編ドラマから社会派ドキュメンタリーまで


 韓国映画は『Jury』がパノラマ部門唯一の作品。前釜山国際映画祭執行委員長(現名誉執行委員長)キム・ドンホ氏が初めてメガホンを取った短編作品だ。昨年、アシアナ国際短編映画祭10周年を記念して製作された。映画祭の審査員役に、アン・ソンギ、カン・スヨンたちが実名で登場するほか、多数の映画人がカメオ出演している。「映画は夢です」と映画の良さを素朴に肯定した台詞は監督自身の思いだろう。

 アントワーヌ・バロー監督『夢想の森』(フランス)は、小栗康平、寺山修司、若松孝二ら3監督の作品と人となりを描いたドキュメンタリーで、小さきもの、名もなきものに寄せる3監督の思いがインタビュー等を通して迫って来た。

 以下は残念ながら鑑賞できなかったので簡単な紹介に留める。武正晴監督『モンゴル野球青春記 -バクシャー-』は、日本人青年がモンゴルで野球を教えた実話をもとにした長編ドラマ。蜂須賀健太郎監督『サンタクロースがやってきた』は、虚構の夢の重要性を伝え、今年のクリスマス時期に公開予定とのこと。中井信介監督『空に溶ける大地』と『忍び寄る原発 -福島の苦悩をベトナムに輸出するのか?-』は開発を巡る問題を描いたドキュメンタリー。谷津賢二監督『アフガニスタン 干ばつの大地に用水路を開く -治水技術7年の記録-』は福岡に拠点をもつNPO「ペシャワール会」の活動を追ったドキュメンタリー。尾登憲治監督『宝満山』は、福岡在住の監督が福岡の山の魅力を描いたドキュメンタリー。ジム・ウィテカー監督『リバース』(アメリカ)は、9.11アメリカ同時多発テロの生存者・遺族を追ったドキュメンタリー。

 アジアン・パノラマでは、例年、短中編のドラマが比較的多く上映されているが、今年は社会派ドキュメンタリー作品の割合が増えた。


自由な熱気に包まれて


 映画祭会場には、毎年「福岡アジア映画祭」と筆で手書きした立て看板が置かれている。その骨太の文字を見ると「今年はどんな作品を見せてくれるのだろう」と期待で胸が熱くなる。観客もアジア映画の熱心なファンが多く、目利きたちの興奮した会話がはずみ、場内は熱い。そして、上映後のティーチイン(コンペ部門では全回、アジアン・パノラマ部門でも約半数の上映回で実施)でその熱さが最高潮に達する。会場にいるボランティア・スタッフたちの服装は、ある人は浴衣、ある人はコスプレとたいへん自由で賑やかなことも手伝い、文字通り非日常的なお祭り気分に浸ることができる。前田氏は釜山国際映画祭と香港国際映画祭に毎年出向いているので、韓国作品と香港・台湾・中国のいずれかの作品は、毎年上映されている。韓国映画ファンにはお勧めの映画祭だ。博多祇園山笠の見物も兼ねて、ぜひ来てほしい。最後になるが、映画祭では通年、運営のための寄付を募っていることを付記しておく。

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『鋼鉄テオ』ユク・サンヒョ監督(右)


第27回福岡アジア映画祭2013
 7月5日(金)~7月7日(日)@西鉄ホール
 7月12日(金)~7月14日(日)@アンスティチュ・フランセ九州
 公式サイト http://www2.gol.com/users/faff/faff.html

Writer's Note
 井上康子。福岡アジア映画祭にまつわる思い出。それまでシリアスな韓国映画しか観たことがなかったのが、第10回福岡アジア映画祭(1996)でコメディ『トゥー・カップス』を観て「新しさのある映画」のおもしろさに開眼した。9月開催の「福岡インディペンデント映画祭」「アジアフォーカス・福岡国際映画祭」「東アジア映画フェスティバル」についてのお知らせ記事を近日執筆予定。乞うご期待。


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Review 『ザ・タワー 超高層ビル大火災』 ~ガラス細工のような現代文明の危機に立ち向かう人々

Text by hebaragi
2013/7/15掲載



 ソウルを訪れた旅人が空港から都心に入る手前で必ず目にする漢江(ハンガン)。その雄大な流れを眺めていると「大陸に来た」という実感がわいてくる。そして、韓国の経済成長を形容する言葉として知られる「漢江の奇跡」の象徴が「ソウルのマンハッタン」とも呼ばれる汝矣島(ヨイド)だ。そこにそびえ立つ大韓生命63ビルは、建設から30年近く経った今でも燦然と輝いている。

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 『ザ・タワー 超高層ビル大火災』の舞台は、大韓生命63ビルの隣にある108階建ての架空のビル「タワースカイ」。ツインタワーをガラスの連絡通路が結ぶデザインは近未来のイメージそのものだ。クリスマスイブ、ビルの中ではスタッフたちがパーティーの準備に追われている。この時期、キリスト教信者が多い韓国では街全体が華やいだムードに包まれる。タワースカイのパーティー参加者たちも夢のような時間が続くことを信じて疑わない。

 しかし、思いがけず発生した大規模火災が楽しい時間を一瞬にして打ち砕いてゆく。超高層ビルの火災は恐ろしい。火との戦いばかりでなく、水との戦いでもあり、脱出までの限られた時間との戦いでもあり、地上までの気の遠くなるような距離との戦いでもあるからだ。一瞬の判断が生死を分けるシーンが続くが、極限状況に追い詰められた人間の行動は様々だ。他人を突き飛ばしてでも逃げようとする者がいる一方で、自らの避難だけでもひと苦労と思われる身重の女性が若いカップルの避難を手助けしたりする。まさに社会の縮図である。

 世界有数の経済大国となって久しい韓国だが、その恩恵に浴さない人々も少なくなく、格差社会の是正が課題となっている。本作ではそんな韓国社会の光と影を垣間見ることもできる。着飾った男女が参加するパーティーを支えているのはレストランやビルの裏方スタッフたちであり、清掃作業員として働きながら息子を大学に通わせている母親である。また、スタッフから防災設備の不備を指摘されていながら安全よりも利益を優先するビルの経営陣や、一般市民よりも有力者の避難を優先する消防局幹部の呆れた実態が皮肉たっぷりに描かれているのも興味深い。ビルの居住空間にある司祭の部屋に飾られたダ・ビンチの名画「最後の晩餐」は、まるでビルに集う人々の行く末を暗示しているかのようだ。

 火災発生後、消防士たちはカン・ヨンギ隊長(ソル・ギョング)の指揮の下、懸命の消火活動を続けるが、未経験の超高層ビル火災は想像以上に手強く、活動は困難を極める。しかし、そんな状況でもあきらめずに事態を打開しようと奮闘する隊長の表情が印象的で、後輩消防士たちを思いやる言葉の数々も胸を打つ。ラスト近く、少しでも多くの命を救うために下された「ある決断」がビル利用者ばかりでなく消防士たちの運命をも変えていくことになる。超高層ビルに限らないが、現代社会はガラス細工のようなハイテク技術によって成り立っている。しかし、トラブルが起きた際のとっさの判断は人の手にかかっている、という当たり前の事実に改めて気づかされる。

 ストーリーは、フードモールのマネージャー・ユニ(ソン・イェジン)と施設管理チーフ・デホ(キム・サンギョン)を中心に展開する印象が強く、ラブロマンスの要素も込められている。また、副士長・ビョンマンを演じるキム・イングォンのコミカルな雰囲気や、新人消防士ソヌ(ト・ジハン)に対する先輩隊員の“温かい”歓迎ぶりは、緊迫したシーンが続く中で一服の清涼剤といえる。さらに、シングルファザーであるデホと娘の交流シーンも見どころのひとつと言えるだろう。消防署長役のアン・ソンギは他の出演作同様、今回もキーとなるシーンで重厚な存在感を示す。そして、状況を的確に判断し素早く行動につなげていくソン・イェジンも、これまでの出演作品以上に強い輝きを放っている。

 もちろん、パニック映画の醍醐味である大がかりな特撮シーンは大きな見どころだ。ほとんどが実写で制作されたという火災シーンの迫力に加え、ビルの空撮映像も特撮とは思えない完成度で、見る者を圧倒する。果たして、登場するカップルや家族たちは無事に脱出し再会できるのか。最後まで息詰まるようなシーンが続く。

 ソウルの夜景は美しい。その光と影に翻弄される人間模様を、韓国映画ならではのダイナミックなスケール感で味わえる作品である。


『ザ・タワー 超高層ビル大火災』
 原題 타워 英題 The Tower 韓国公開 2012年
 監督 キム・ジフン 出演 ソル・ギョング、ソン・イェジン、キム・サンギョン
 2013年8月17日(土)より、シネマート新宿ほか全国順次公開
 公式サイト http://www.thetower-movie.info/

Writer's Note
 hebaragi。高所恐怖症なのに展望台が好き。大韓生命63ビルの展望台にも行ったことがある。もし本当に「タワースカイ」が出来たら、ぜひ行ってみたいと思っている。


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Review 『風と共に去りぬ!?』 ~チャ・テヒョンの新作は、なにかと異質な西部劇風・時代劇!?

Text by mame
2013/7/10掲載



 去年の夏、韓国に行った際、映画館には『私は王である!』とこの『風と共に去りぬ!?』のチラシが置いてあり、韓国は時代劇が人気なんだな~!と改めて思いました。正直、日本の時代劇はなんとなくわかるけど、韓国の時代劇ってなんだか苦手。みんな同じに見えるし…。という方も多いのではないでしょうか。

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 『風と共に去りぬ!?』は時代劇ですが、少し異質な作品です。見間違えようのない濃いキャラクターに、舞台となるのはレンガのように積まれた氷が並ぶ倉庫、土と埃にまみれた洞窟と、まるでRPGゲームさながら。さらに主演は『猟奇的な彼女』以来おなじみのコメディ俳優チャ・テヒョン。初の時代劇でも飄々としたコメディアンぶりは健在です。

 時代は朝鮮王朝後期にあたる1700年代。氷の独占権を狙う悪徳高官チョ・ミョンスの策略にはまり、反対派の高官イ・ソンホの息子ドンム(チャ・テヒョン)と、正義感に溢れる役人ペク・トンス(オ・ジホ)は無実の罪を着せられ、それぞれに大切な人を失います。ぶらぶらと暮らしていたドンムはこれを機に一念発起し、ヤン師匠(イ・ムンシク)の遺した書店で猛勉強に励み、復讐計画を練ります。その計画とは、王宮の倉庫にある氷をそっくり盗み出し、氷不足にあえぐ民に分け与え、チョ・ミョンス一族の悪行を曝くというもの。倉庫を爆破する爆弾職人、伝説の盗掘犯、変装の達人など、スペシャリストを集めて窃盗団を結成し、決行の日までそれぞれ準備に勤しみます。

 この窃盗団が韓国映画やドラマに精通している人ならピンと来る名優揃いですが、私のお気に入りは耳の遠い爆弾職人ソク・テヒョン(シン・ジョングン)。常にワンテンポずれており、「うるさい!」と他人の話を遮る空気読まなさぶりは、コントを観ているようで目が点になります。

 見るも涼しげな氷の塊や、銃撃戦も飛び出すアクション・シーンなど、見所は多いですが、根底に流れるのは父から子への愛情です。出番は少ないですが、ドンムのために自ら罪をかぶり、流刑となった父親イ・ソンホは、息子ドンムを見守る優しさに溢れており、また、ドラマ「イ・サン」でもおなじみの悲劇の王子・思悼世子(サドセジャ)の、息子・正祖(即位後のイ・サン)に対する愛情も描かれており、思わずホロリとさせられます。

 欲を言えば、登場人物が多い上に役割がバラバラなのでちょっと頭が混乱…。一度で話を掴むのは難しいかも。私としては『サニー 永遠の仲間たち』のクールビューティ、ミン・ヒョリンの活躍をもっと観たかったです。

 とはいえ、氷をめぐる強奪戦は暑い夏にピッタリです。どこか頼りなく見えるリーダー、ドンムが「オーーケイ!」と指示すれば、なんだか全てがうまくいく気にもなります。頼もしいチャ・テヒョンなんて想像したことがなかったけれど、有能な上司とは意外とこんなタイプなのかもしれません。


『風と共に去りぬ!?』
 原題 바람과 함께 사라지다 英題 The Grand Heist 韓国公開 2012年
 監督 キム・ジュホ 出演 チャ・テヒョン、オ・ジホ、ミン・ヒョリン、ソン・ドンイル、コ・チャンソク
 2013年7月20日(土)より、K's cinemaにて3週間限定ロードショー、以降順次全国公開
 公式サイト http://www.maxam.jp/tgh/

Writer's Note
 mame。これから始まる暑い夏は、映画館で涼しく過ごすのが一番ですね(インドア派でスミマセン…)。『風と共に去りぬ!?』でも、盗んだ氷から作るパッピンスがとても美味しそうでした。


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Report 『ポドリ君の家族残酷史X -韓国の夜と霧-』キム・ソン監督舞台挨拶 ~韓国インディーズ映画の旗手は表現の自由のため戦う

Text by Kachi
2013/7/3掲載



 「ここで上映されて光栄です。」

 6月29日(土)、『ポドリ君の家族残酷史X -韓国の夜と霧-』公開初日を迎えた東京・渋谷のシアター・イメージフォーラムの舞台挨拶でキム・ソン監督は、噛み締めるように言った。一方、本作でやり玉に挙げた李明博(イ・ミョンバク)と朴槿惠(パク・クネ)大統領を「非常に保守的で矛盾が多く、ひどい政治家」とバッサリ切り捨て、「日本の安倍総理も同じようなものでしょうか?」とチクリとやって会場の笑いを誘う。ごく普通のオシャレな若者だが、理知的で燃えるような反骨心を秘めている、というのが第一印象だ。

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 「あまりにも不条理な時代だった李明博政権のことを語るために作りました。彼を支持しないからといって、その前の盧武鉉(ノ・ムヒョン)のことが好きなのでもありませんが、表現の自由によって自分が強い批判にさらされることを恐れていた李明博が大統領になったことで、その自由が侵されたことは事実です。あの時ほど、文化・芸術界の人間が一致団結して戦ったことはありませんでした。」

 狂牛病の不安が取り除かれないままアメリカ産牛肉の輸入を解禁したことに抗議するローソク集会など、李明博の失策への批判は枚挙にいとまがない。わけても文化・芸術への抑圧は、「1980年代以降の韓国における文化政策を一気に後退させた」という声があるほどだ。特に2009年には、文化体育観光部による監査によって韓国芸術総合学校が学問と表現を弾圧された事件に端を発する、パク・チャヌクら映画監督の「韓芸総事態を憂慮する映画監督100人宣言」や、映画人225人による「時局宣言」など、表現の自由の侵害と戦うクリエイターたちの提言が相次いだ。

 「この映画では李明博政権やすべての保守系の政治家に当てこすった描写が出てくるので、彼らが見たら本当に怒り心頭だと思います。特にネズミ。韓国では李明博=쥐(チュ:ネズミの意)なので、大統領官邸のホームページでは쥐(チュ)の文字を入力することができないのです。これこそ表現の自由を侵しています。ポドリ君の考案者である漫画家・李賢世(イ・ヒョンセ)氏についても同じです。彼は韓国一有名な漫画家ですが、李明博や朴槿惠といった保守系を強く支持しながら、子どものキャラクターを創作したというねじれを持っています。」

 保守への抗いを口にする監督だが、実際はどの立場にも与していないそうだ。主人公ポドリ君をはじめとした映画のマネキンや人形たちに、シュヴァンクマイエルやクエイ兄弟、カナダの映画監督ガイ・マディンの影響を認めつつ、「政治的に死んでいる、どの側にも立つことができない人物」としての監督の思いを投影したと話す。そして本作は、警察官だがまだ子どもであるポドリ君が成長していく物語。誰かをポドリ君の母親にと思った時、李明博と同様の政治的矛盾を抱えていた朴正煕(パク・チョンヒ)のことが頭に浮かび、その娘である朴槿惠を母親にすべきだと考えた。

 そのことに韓国の映倫である映像物等級委員会が噛み付いた。『ポドリ君~』のレイティングを「制限上映可」としたのだ。韓国のレイティングは、全年齢観覧可、12歳以上観覧可、15歳以上観覧可、青少年観覧不可(いわゆる18禁)、そして制限上映可の5段階だが、今回彼らが下した「制限上映可」とは、韓国に存在しない「制限上映作品専門の映画館」でのみ上映可、つまり事実上の上映禁止措置なのだ。

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 「委員会は、国家の最も重要な人物を殺害する描写と、作品で朴槿惠の同居人に設定した人物を問題視した、というのです。この作品が審査を受けていた時、朴槿惠はまだ大統領候補の一人にすぎなかったのに。この処分を2回も受けて本当に腹が立ち、その都度行政訴訟を起こして一審では勝利をおさめました。今まで映像物等級委員会は、この種の裁判で負けたことがなかったので、みんな驚いていました。でも彼らとの摩擦によって、韓国で劇場公開されていないにもかかわらず、本作の存在を知らない人はいません。もし実際に映画を見ていたら、こんなに話題にはならなかったでしょうね。」

 映像物等級委員会は、キム・ギドク監督の新作『メビウス』に、母子の性愛関係を扱っているという理由で『ポドリ君~』と同じ制限上映可のレイティングを、また名門私立高校で起きた事件を通じて教育現場の問題を浮き彫りにしたシン・スウォン監督の『冥王星』に、青少年観覧不可(後に15歳以上観覧可に変更)のレイティングを付与するなど、インディペンデント系を含めた韓国映画界との対立は今も続いている。

 「そのことについては、インディペンデント映画界全体で一緒に協力していこうとしています。今回『ポドリ君~』の一審での勝訴が、私たちに有利に働くのではないか?という期待も高まっています。ただ不幸なことに、国家情報院が大統領選で情報操作をした問題と、大統領の秘書官がアメリカで起こしたセクハラ問題に関心がいってしまったのが残念です。」

 『ポドリ君~』はベルリン国際映画祭をはじめ世界各国の映画祭に出品された。しかし、裁判が長引いているせいで、2010年の全州国際映画祭とソウル独立映画祭での上映を最後に、今も韓国では劇場公開の見込みが立っていない。そんな監督に手を差し伸べたのが、シアター・イメージフォーラムだ。韓国インディペンデント映画2004で『反-弁証法』(2001)、『時間意識』(2002)、『光と階級』(2004)を紹介して以来、キム・ゴク、キム・ソン両監督を「アヴァンギャルドな活動を続ける作家として注目し続けてきた」と支配人の山下宏洋氏は語る。日本で劇場公開するため自らクラウド・ファンディングで広告費用を集めるなどした、キム・ソン監督の気骨に賛同したのだ。

 『ポドリ君~』を見るにあたって韓国の歴史を知っていれば、どこまでも深読みができ、面白さが無限に広がっていくことは事実だ。しかし、舞台挨拶で「これを撮らせてくれた李明博、ありがとう!」とうそぶくユーモアを忘れないキム監督の手に掛かれば、強い政治色さえも説教臭く感じられない。本作はあくまで、笑える愛すべきヘンテコ映画。韓国の社会情勢を知らなくても十分楽しめる。

 ラストは大統領官邸の青瓦台で撮影しようと思っていたが、別のデモ隊と政府が小競り合いを繰り広げていたため諦めたという。そうまでして完成させたかったのは、映画人なら当然のこと、作品を公開するためだ。だが今、監督は「制限上映可というレイティングを撤廃させるため、さらに韓国だけでなく世界中の表現の自由のために貢献していきたい」と力強く語った。

 表現の自由は、多様性を生み出し、映画という芸術を豊かにする。それを侵す権力は、映画を愛する者すべてに対する圧力だ。世界から表現の多様性が失われないよう我々映画ファンができるのは、『ポドリ君~』のような作品を一つでも多く見に行くことだ。

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『ポドリ君の家族残酷史X -韓国の夜と霧-』
 原題 자가당착 : 시대정신과 현실참여 英題 Self-Referential Traverse: zeitgeist and engagement 韓国未公開
 監督 キム・ソン 出演 チョン・アヨン、カン・ソク、イ・ラニ
 2013年6月29日(土)より、シアター・イメージフォーラムにてレイトショー、以降全国順次公開
 公式サイト http://podori-zankoku.com/

Writer's Note
 Kachi。写真・左は監督と一緒に来日したチョン・アヨンさん。劇中でネズミを操る謎の美女を演じていますが、韓国伝統舞踊のダンサーで、インディーズ映画にも多数出演しているそうです。監督曰く「僕のペルソナ」とか。


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