HOME団体概要support シネマコリア!メルマガ登録サイトマッププライバシー・ポリシーお問合せ



サイト内検索 >> powered by Google

■日本で観る
-上映&放映情報
-日本公開作リスト
-DVDリリース予定
-日本発売DVDリスト
■韓国で観る
-上映情報
-週末興行成績
-韓国で映画鑑賞
■その他
-リンク集
-レビュー&リポート
■データベース
-映画の紹介
-監督などの紹介
-俳優の紹介
-興行成績
-大鐘賞
-青龍賞
-その他の映画賞


News 韓国空軍を描いたスカイ・アクション映画『リターン・トゥ・ベース』、12/1より全国ロードショー

2012/11/29掲載



 今週末12月1日(土)より、迫力あるドッグファイトと空対地攻撃シーン満載の音速アクション『リターン・トゥ・ベース』が全国ロードショーされる。

r2b.jpg

 韓国空軍を描いた作品が公開されるのは、1966年に松竹の配給で劇場公開された『空爆作戦命令/赤いマフラー』(シン・サンオク監督)以来、実に46年ぶりのこと。『空爆作戦命令/赤いマフラー』の主役戦闘機は朝鮮戦争で活躍したF-86 セイバーだったが、『リターン・トゥ・ベース』のそれはF-15 イーグル。

 日本に配備されているF-15Jは制空戦闘機F-15C/Dが原型であるのに対して、本作に登場するF-15K(愛称 スラムイーグル)は戦闘攻撃機F-15E(ストライクイーグル)の韓国型だ。ちなみに、航空自衛隊のF-15Jは空対空の兵装中心で単座型が多いが、韓国空軍のF-15Kは対地・対艦攻撃能力を持つ複座型。専守防衛の自衛隊と、北朝鮮と対峙している韓国国防軍の性格の違いが垣間見られるちょっとしたポイントだ。

 その他に登場する航空機は、「韓国のブルーインパルス」こと韓国空軍のアクロバットチーム「ブラックイーグルス」の使用機TA-50や、北朝鮮軍の戦闘機MiG-29など。F-15KとTA-50については、韓国空軍の全面協力と空撮チーム「ウルフエア」の参加によって、CGを極力廃した迫力ある映像を楽しむことができる。

 俳優陣も豪華だ。パク・チャヌク監督の『サイボーグでも大丈夫』で映画デビューし、『スピード・レーサー』『ニンジャ・アサシン』など外国映画にも出演しているチョン・ジフン(RAIN)、最近ではホン・サンス監督作品への出演が目立つユ・ジュンサン、そして『青い塩』で一躍注目を浴びたシン・セギョンらが基地内での人間関係を、笑いあり、恋あり、涙あり、サービスカットのモムチャン対決ありで熱演している。

 コリア・ウォッチャーは、北朝鮮軍やその兵士たちが劇中どのように描かれているか、そして、北朝鮮内に不時着した韓国人パイロットを救出する作戦によって生じる、米軍と韓国軍の葛藤などに注目して鑑賞したい。


『リターン・トゥ・ベース』
 原題 R2B:リターン・トゥ・ベース/英題 Soar into the Sun/韓国公開 2012年
 監督 キム・ドンウォン 主演 チョン・ジフン(RAIN)、ユ・ジュンサン、シン・セギョン
 2012年12月1日(土)より、新宿バルト9、シネマート六本木ほか全国ロードショー
 公式サイト http://www.r2b-movie.jp/


>>>>> 記事全リスト


関連記事
スポンサーサイト

Review 『ダンシング・クイーン』 ~民主主義の申し子は夢を追う

Text by 井上康子
2012/11/27掲載



 今年、韓国で正月映画として公開され400万人を動員したヒット作。アジアフォーカス・福岡国際映画祭2012ではオープニング上映され、観客投票で第2位となった。中年夫婦が忘れかけていた夢に挑戦する姿を描いているが、夫の夢がソウル市長で、妻がセクシーなダンス歌手になること、という設定の奇抜さもあって注目を集めた。妻役のオム・ジョンファは実際にデビュー20年目の女優兼歌手であり、彼女の歌って踊るステージ・シーンは華やかでたいへん魅力的だ。劇中のメッセージと対応した歌の力も重なって、観客を大いに元気づける作品になっている。

dancingqueen1.jpg

 まず、気になったのが主役2人の役名が、映画としては異例の俳優名「オム・ジョンファ」と「ファン・ジョンミン」のままであったことだ。

 役柄の「ファン・ジョンミン」はエアロビクスのインストラクターとして働くジョンファの内助の功で、なんとか司法試験をパスして細々と弁護士をしている。市長選に出ることになったのも、駅のホームから酔っ払いが転落し、ジョンミンも誰かに押されて転落したはずみで酔っぱらいを救出したのが命がけの救出と誤解され、マスコミに注目されたためである。けれど、既存の政治家たちが資産を隠し、兵役逃れの過去を持ち、実状にあわない提言をするのを見て、自分は人々の思いをくみとる政治家になりたいと市民に語り始めると俄然カリスマ性を帯びていく。役柄名を同じにすることで、『ユア・マイ・サンシャイン』(2005年)でファン・ジョンミンが演じた主人公に代表される「ダサいが温かみがあり信念を貫くカッコよさがある」という彼のイメージがそのままこの作品のキャラクターに強く投影されている。

 役柄の「オム・ジョンファ」はかつて学生街のクラブで歌って踊り「マドンナ」と呼ばれていたのに、夫と子供の世話に明け暮れる日々を過ごしていた。一念発起して、テレビの歌の勝ち抜き番組に出演したのがきっかけで、熟女グループ「ダンシング・クイーン」のメンバーに選ばれ、活動を始める。これも、オム・ジョンファが女優として最近は『ベストセラー』(2010年)、『ママ』(2011年)などの作品に母親役で主演すると同時に、セクシーな歌手としても活躍し、実際「韓国のマドンナ」と呼ばれていた彼女の経歴と重なっている。オム・ジョンファは歌と踊りと演技の3拍子が揃った唯一無二のエンターテナーとして圧倒的な存在感を放ち、タイトル通りこの作品の主人公は彼女だと言える。

 脚本も監督のイ・ソックンが手掛けているが、トップスター2人を起用し、そのイメージを最大限に活かしつつ、政治と女性の社会進出という硬派のテーマを笑いと感動で描いており、若い監督だが老練である。

 前半は『サニー 永遠の仲間たち』(2011年)のように、夢にあふれていた過去と、夢を忘れた現在が対比して描かれている。過去で強調されているのは1982年以降の民主主義の高まりである。1982年にジョンミンは釜山からソウルの小学校に転校する。将来の夢を「大統領」と自己紹介するのを聞くと、自由に大きな夢を語れる時代の明るさが感じられる。2人の出会いもこの時で、教師がジョンファの隣の席をジョンミンの席に指示したことを何と「民主主義に反する」とジョンファは抗議するのだ。イ・ソックン監督は1972年生まれで、ちょうど作品中の2人とほぼ同い年だが、「1982年」「民主主義の高まり」は強調されている。この年は「中高生の制服・髪型の自由化発表」があった年で、監督にとって何か民主化を強く意識できたことがあったのかもしれない。いずれにしろ、民主主義の申し子である2人が、自由に夢を語り、自由に意見を述べるという子ども時代を過ごしたということは、「歌手になる」「政治家になる」という夢を追う作品後半へつながる印象的な伏線になっている。

 後半の山場はジョンミンがソウル市長選出馬のために、ジョンファに対して歌手を諦めろと命令したことによって起きる2人の葛藤である。しかし、あの「ファン・ジョンミン」が愛する妻の夢を断念させるはずがなく、予定通りの修復が行われる。韓国も日本も女性が母の役割や妻の役割を果たすことが社会の中で強く求められる。2001年に韓国で公開された『猟奇的な彼女』は大学生の女性主人公が、従来の女性の従順さやかわいらしさとは異なる、物おじせずに自分らしく振る舞う姿を見せて大ヒットした。それから11年後、妻で母でもある女性が夢を追うことが描かれ、その作品が大ヒットしたことに時代の変化を感じる。夫と妻の夢追いをうまく融合させたラストもさわやかだ。


『ダンシング・クイーン』
 原題 ダンシング・クイーン/英題 Dancing Queen/韓国公開 2012年
 監督 イ・ソックン 主演 ファン・ジョンミン、オム・ジョンファ
 アジアフォーカス・福岡国際映画祭2012公式招待、2012大阪韓国映画週間上映作
 福岡×釜山 日韓シネマ・エクスチェンジプロジェクト第1弾として2012年12月8日(土)より、T・ジョイ博多にて2週間限定公開
 日韓シネマ・エクスチェンジプロジェクト公式サイト http://www.t-joy.net/cinemaex/

関連記事
 Interview 『ダンシング・クイーン』 イ・ソックン監督
 Column 「日韓シネマ・エクスチェンジプロジェクト」で『ダンシング・クイーン』福岡公開 ~その先にあるものは?

Writer's Profile
 井上康子。福岡市在住。毎年、シネマコリアでアジアフォーカス・福岡国際映画祭をレポート。本年はイ・ソックン監督や、『バラナシへ』チョン・ギュファン監督のインタビュー記事を執筆している。


>>>>> 記事全リスト


関連記事

Review 『ハナ 奇跡の46日間』 ~北朝鮮描写に見る若手監督の心意気

Text by 井上康子
2012/11/23掲載



 1991年の世界卓球選手権大会で、北朝鮮と韓国は統一チーム「コリア」を結成し、無敵の中国を破って優勝を果たしたという実話が題材。チーム結成から優勝までの46日間が描かれている。事実とは異なるフィクションを含めて再構成されており、事実を変えてまで伝えようとした作り手の思いを感じることができる。トップスターのハ・ジウォンとペ・ドゥナが南北のトップ選手を好演している。北の選手と南の選手が突然ひとつのチームにされて生じた葛藤を乗り越えて、強い絆をもち、優勝するまでが、北の政治体制の厳しさも含めて描かれていることで、手ごたえがある作品になっている。

hana5.jpg
左:ペ・ドゥナ演じる李芬姫(リ・ブニ)、右:ハ・ジウォン演じる玄静和(ヒョン・ジョンファ)

 南北の選手の葛藤は政治体制の違いと恋愛観の違いにより生じる。南側に「イルソン」という名の選手がいるのだが、「金日成(キム・イルソン)」と同音のため、南の選手が「イルソン」と呼び捨てにするのを聞いた北の選手は「今度言ったら殺してやる」と激高し、北の選手が政治体制に強く拘束されていることを見せている。一方、その北の選手のクールさに恋心を抱いた南の選手は猛烈にアタックを開始するが、彼女のやり方は当時の韓国女性としてはかなり大胆である。これらのシーンは体制に拘束されている北と個人の自由な振る舞いが許される南の差異をやや誇張気味に描くことで際立たせている。

 ライバルとしての神経戦もあるが、同世代で共通の目的がある彼らは短い時間で仲間になれる。それでも、しこりになるのが経済格差である。ペ・ドゥナ演じる北のリ・プニは肝炎で練習もままならない状態なのに最強の選手であるために大会に参加させられている。ハ・ジウォン演じる南のトップ選手ヒョン・ジョンファは治療のためにも「南に来ない?」と誘うが、プニは自身のアイデンティティが北にあることを述べ、毅然と拒否する。これは『JSA』でソン・ガンホが演じた北の兵士が、南の兵士に「(好物の)チョコパイがいくらでも食べられる」と誘われたのに対して、ほおばっていたチョコパイを吐き出して拒否を示した有名なシーンを思い出させるが、ペ・ドゥナも感情を押さえた演技で貫禄を見せている。

 事実を変更した設定には作り手の強い意志が込められている。実際は北の選手も準決勝に出場したのだが、映画では「北の選手が仏のコーチとたまたま接触があったことなどが保安上問題になり、選手はホテルに拘束され準決勝に出場できなかった」というストーリーになっている。南の選手たちは準決勝を何とか勝ち抜くが、北の選手と一緒に決勝戦に出場できないことにいたたまれなくなり、雨の中、ひざまずいて北の選手の参加を乞う。ジョンファの叫びに心を動かされた北出身のチーム監督が、監視員の隊長に参加の意向を訴えると、冷酷に役割を果たしてきた彼は苦悶するが「見なかったことにする」と告げるのだ。そこからは「監視員も感情を持つ人であり、非情な国家に対する時にすべて個人は同じように弱い立場なのだ」という成熟したメッセージが伝わってくる。

 『JSA』では南北の兵士は凄惨な最後を迎えたが、本作では南北の選手は優勝後に別れるものの心を通わせたままであることが強調され、未来への希望を残していることに監督の心意気を感じる。『JSA』のパク・チャヌク監督がイメージできなかった南北共通の未来を、本作でデビューした30代の若手監督ムン・ヒョンソンはイメージできるのだろう。

hana6.jpg
女子団体のうち3選手は配役名も実名。右から2番目がハン・イェリ演じる兪順福(ユ・スンボク)
映画ではダブルスで優勝が決まっているが、実際は兪順福のシングルスで決した

 世界卓球選手権の会場は日本の千葉県幕張メッセだった。決勝戦で、精神的な弱さを持つ北の若手選手ユ・スンボクが、弱さを克服できたのは、会場を埋め尽くした在日の人々の応援のおかげであった。同じ民族が北と南に別れて存在するという以外に、在日同胞の存在もまた大きく伝えていることを日本に住む私たちは意識しなくてはならない。


『ハナ 奇跡の46日間』
 原題 コリア/英題 As One/韓国公開 2012年
 監督 ムン・ヒョンソン 主演 ハ・ジウォン、ペ・ドゥナ
 移動映画村「韓の風」 in ベイサイド、2012大阪韓国映画週間上映作
 2013年4月20日(土)より、オーディトリウム渋谷ほか全国順次公開
 公式サイト http://hana46.jp/

関連記事
 Interview 『ハナ 奇跡の46日間』 ムン・ヒョンソン監督

Writer's Note
 井上康子。福岡で開催されたイベント、移動映画村「韓の風」で鑑賞。1990年代の後半、交流があった韓国の方と北朝鮮の話題が出た時に、私が「だって同じ民族でしょう」と言ったのに対して、「北の統率されたマスゲームを見る度に、戦争になったら負けると思う。小学生の時から北は鬼だと徹底した反共教育を受けて、今も自分の中に北は鬼というイメージが染みついている」と返され、自分の気楽な発言に恥じ入ったことがある。彼女がこの作品を見たら何と言うだろう。彼女はパク・チャヌク監督とほぼ同世代だ。


>>>>> 記事全リスト


関連記事

Review & Interview 『秘密のオブジェクト』 イ・ヨンミ監督 ~正直な恋をススメます

Text by Kachi
2012/11/22掲載



レビュー

 夫も子供もいて、一見何の不足もなく幸せに生きている女性がいた。あるとき彼女は若い愛人を作り、姦通罪で警察に逮捕される。大胆な事件だが、当の本人は浮気に罪悪感をおぼえるどころか堂々と振る舞っていたそうだ。理由はただひとつ。「夫のことも彼のことも、同じように愛していたから」。インタビューでイ・ヨンミ監督は、20代の時に出会った女性についてそう語った。その時のショックと「愛って何?」という疑問が『秘密のオブジェクト』を撮るきっかけだった。

object1.jpg

 社会学の大学教授ヘジョン(チャン・ソヒ)は40歳。夫はいるが、世間体のために離婚しないでいるだけの冷え切った関係。「婚外情事を経験した後の女性の性意識の変化」が研究テーマで、本当はプライベートでも満足したいのに、年齢と、教授という社会的地位とが心のブレーキとなり踏み切れないことばかり。夜中にこっそり「ヴァギナ解放」というハンドルネームを使い、ネットの掲示板に性への大胆なコメントを書き込むことが欲求不満のはけ口だ。ある日、研究助手募集の貼り紙を見た心理学科の学生ウサン(チョン・ソグォン)がやってくる。両親に愛されて育ったという、純粋でいて男性的魅力にあふれた彼に、ヘジョンの心は少しずつかき乱されていく。だがウサンにはある秘密があった…。

 夫婦で魚屋を経営している女性が、へジョンに対して、従業員の若い男との情事を思い出しながらうっとりと語るシーンがある。2人のセックス描写は、行為そのものだけでなく、原色に近い映像が刺激的だ。監督は「この作品には生々しさ、けばけばしさが似合うと思って」と、今や世界中で1社しか作っていない撮影用フィルムを取り寄せた。はっきりとした色出しは作品全体に見られるが、わけても魚屋でのセックス・シーンは、女性が男性に寄りかかるところでは赤みを強くし、水槽やまな板は古めかしさを強調するなど、色出しにこだわり抜いた。たががはずれたように絡みあって体で幸せを感じた女性の表情をきっちりスクリーンに映し出すことも、監督の目的だったという。

 濃厚なラブシーンから現在のシーンに切り替わった時、魚屋の女性とヘジョンの顔色の落差に女としての2人の生き方の違いが垣間見える。魚屋の人生が彩られた世界なら、へジョンのそれは茶色く乾燥した砂漠だ。以来、募るウサンへの気持ちと裏腹な、へジョンの「でも…」というためらいのたびに、魚屋の女性と愛人のセックスがフラッシュバックする。魚をおろすのが上手かったという、女性の愛人。ウサンもリンゴをうさぎ型に剥けるほど手先が器用だ。男性ならではのたくましい背中とともに、彼の器用で大きな手をカメラはクローズアップでなめるようにして追う。こんなに女性のフェティッシュな欲望が満載な作品は、韓国映画では見たことがない。

 2部構成の物語のセリフ回しを務めるのは、ヘジョンの研究室のコピー機とウサンのデジタル・カメラ。この2つのオブジェクトは、その「写す」という役割よろしくへジョンとウサンの心を見透かして観客に語る。社会学や心理学を研究している2人が逆に分析されているアイロニーが面白い。もし論文を書くならば、さしづめタイトルは「ヒト科の動物の恋愛行為における嘘と本音」といったところだろうか。

 デジカメの語りでウサンの真実が明かにされると同時に、作品前半の伏線が回収される。そこで痛感するのは、人間は心のままに生きることができない悲しい生き物だということ。とりわけ恋愛で素直になれないと、どんなに後悔することか…。そんなこと分かっているのに、いつだって正直になれずに涙を流した経験は誰しもあるはず。賢い2つのオブジェクトは、不器用な2人の恋にそっと手を貸す。それと引き換えにラストで自分たちを犠牲にしてしまうが、哀しくもすっきりした幕引きで後味がいい。

 本作を「これは私の物語」と語るイ・ヨンミ監督が、「愛って何?」という疑問に対して出した答え。

   愛とは、傷つくことなしには成就できないもの。
     それでも得たいなら、素直に生きること。
       自分の思うままに生きなければ。

 ヘジョン世代の女性たちはもちろん、意地を張ることに慣れてまっすぐに生きられないすべての大人たちに見てもらいたい一作だ。



インタビュー

── 女性が男性に感じるフェティッシュに注目した作品だと感じました。

女性からの視線を大事にして撮りました。例えば「美しすぎる」というセリフがありますが、それは女性が言われたいことです。女性が望むようなセリフや仕草を増やしました。また、男性2人が皿洗いをしていて、背中を映したシーンがありますが、男性が女性の体を見るように、女性も男性の体を見るんだよ、ということを表現しました。

object2.jpg

── 魚屋の女性のラブシーンはとても情熱的で濃厚です。一方、へジョンとウサンのラブシーンは、浴室のすりガラス越しで、よく見えなくなっています。この差についてはどうお考えですか?

魚屋の女性は社会的地位の低い女性で、欲望に対して積極的ですが、大学教授であるヘジョンは何でも手に入れているように見えるけれど、欲望に正直に生きることができず、自分自身を表現することができない。本当の愛を知らない女性です。2人を比べた場合、女性としてヘジョンのほうが弱い部分があると思っていて、ラブシーンの描写に関しては、よく見えないくらいがヘジョンの人生観にあっていると考えました。すべてをさらけ出すことができない女性なのです。

── へジョンがウサンへの恋心を、友人に相談する場面があります。へジョンは彼との年の差をとても気にし、彼女の友人も「40歳になることは女性にとって死刑宣告」と言っています。日本では、40歳はまだ女ざかりで自分より若い男性にも積極的だったりしますが、韓国ではどうなのでしょう?

昔は40代になると「4=死」という意味もあり、女として終わりと考えられていました。最近では、寿命が長くなっていることもあり、綺麗な40代の方も増えてきて、考え方がだんだん変わってきていると思います。ただ、そうは言っても、韓国には人と会った瞬間に年齢を聞く文化があり、どんなに綺麗な人でも年は聞かれたくないので、そういう場面に出くわすと靴を持って逃げ出したくなります(笑)。

── 韓国人は自分の意見を相手にはっきりと伝え、日本人はそれに消極的という印象があります。ただ韓国映画を見ていると、男性も女性も「好き」の一言が言えずに苦しい思いをしていることがあります。こういう点は私たち日本人が共感するところですが、恋心を胸に秘めておくことへの美学のようなものがあるのでしょうか? 差し支えなければ、監督の恋愛観も交えてお話しください。

韓国人全体については分かりませんが、ヘジョンの場合、守るものが多くて気持ちに素直になれないのです。私はというと、撮影に入ると3・4ヶ月は現場なので、もし恋人ができても連絡する暇もなくて大変です。でも、恋も大事。私は木でも石でもなく、熱い気持ちを持った人間なので、どれだけ忙しくても情熱的なことは大事にしたいです。そうですね、まずは自分自身から正直にならなければ(笑)。

── 監督自身は、ラストをハッピーエンドとして描かれたのでしょうか?

私はハッピーエンドだと思っています。お互い気持ちを吐き出して結ばれた2人なので。もちろん、どれだけ長く一緒にいるかは分かりませんけれど。私もそうですが、皆いつも隠している気持ちがありますよね。映画の中だけでも正直に生きたうえでの幸せを感じて欲しいです。



object3.jpg
イ・ヨンミ監督


『秘密のオブジェクト』
 原題 事物の秘密/英題 Secrets, Objects/韓国公開 2011年
 監督 イ・ヨンミ 主演 チャン・ソヒ、チョン・ソグォン
 2012年12月1日(土)よりシネマート六本木、12月29日(土)よりシネマート心斎橋ほか全国順次公開
 公式サイト http://www.u-picc.com/himitsu/

Writer's Note
 Kachi。1984年、東京生まれ。図書館勤務。『秘密のオブジェクト』を見て以来、身の回りの製品が自分を観察してるんじゃないか…と考えたりします。面白い反面、劇中のコピー機とデジカメのするどい洞察力を思うと「そんなところまで見てるの?!」とちょっと怖い気も。


>>>>> 記事全リスト


関連記事

Review 『建築学概論』の魅力とヒットの理由

Text by 加藤知恵
2012/11/20掲載



 コリアン・シネマ・ウィーク2012にて、日本初公開となる『建築学概論』を見た。「非常に洗練された、無駄のない上品な映画」、「水のように透明でクセがなく、それでいて見た後に強烈な切なさに襲われる映画」というのが第一印象だ。

architecture8.jpg
現在の主人公を演じるオム・テウンとハン・ガイン

 韓国での公開当時、恋愛映画史上最多となる410万人の動員を記録した本作品。ストーリーは、建築事務所で働くスンミンの元に、突然15年前の初恋の女性ソヨンが現れるというファンタジーな展開で幕を開ける。2人が出会うきっかけは、大学入学後に初めて受けた「建築学概論」の講義。爽やかなピアノの音色と共に蘇る、純粋な初恋の記憶。美しい大人の女性へと成長したソヨンは、自分の家の設計を彼に依頼する。「住む人間を知ってこそ、その人にあう家が作れる」と、彼女を理解しようとするスンミン。その過程では、共通の記憶を確かめあうように、過去と現在の幾つもの場面が交差する。そしてソヨンの家が徐々に完成に近付くとともに、2人の関係性も進展を見せるのだが…。

 韓国ではここ数年、恋愛映画はヒットしないというのが定説だった。過去250万人以上の動員を記録した恋愛映画4本、『私たちの幸せな時間』(2006年、313万人)、『ユア・マイ・サンシャイン』(2005年、305万人)、『私の頭の中の消しゴム』(2004年、256万人)、『私の生涯で最も美しい一週間』(2005年、253万人)は、いずれも5年以上前の作品だ。それでは初恋の記憶をさかのぼるという一見ありふれたテーマのこの映画が、なぜこれほどまでの記録を生んだのか。同日に開かれたシンポジウム「韓国映画の魅力と韓国映画産業の現況」では、監督本人が理由として次の3点を挙げている。

 まず1つ目は、過去の場面が1990年代前半を舞台にしていること。『サニー 永遠の仲間たち』や『危険な相見礼』など、昨年上半期には1980年代を背景にした作品が興行的に成功し、過去回帰の設定はブームの様相を見せていた。しかし1990年代を題材にしたのは本作品が初めてだ。当時最先端だったメモリ1ギガのPC、ファッション、ポケベル、そして流行歌。これらの描写は実際に1990年代に学生時代を過ごした現在の30代・40代の人々の共感を呼び、通常映画のターゲットとされる20代の観客のみならず、幅広い年齢層からの支持を集めた。

 2つ目は「家づくり」という目新しい素材。家の設計・工事の場面には、実際に大学で建築学を専攻し、建築事務所で実務にも携わっていた監督自身の知識と経験が活かされている。また「家を建てる過程と人を愛する過程は同じ」と独自の恋愛観・建築観を語る監督。作品中では、単なる財テクの手段ではない「幸せのための空間」としての家の在り方が提言され、同時にその家に住む人間への愛情も細やかに描かれている。過去回帰のブームと同様に、そのような温かな視点が物質的・経済的な豊かさを追い求める競争や目まぐるしい速度の生活に疲れた現代韓国人の心を捉え、癒しを与えたのではないかというのが本人による分析だ。

 そして最後は効果的かつ豪華なキャスティング。今作品はダブル・キャストを採用し、過去と現在の場面を異なる俳優が演じている。安定した人気を誇るオム・テウン(現在のスンミン)とハン・ガイン(現在のソヨン)、『高地戦』(2011)や『番人』(2011)で高い評価を受けた若手実力派イ・ジェフン(過去のスンミン)。更にはこれがスクリーンデビュー作となる、アイドルグループ miss A のスジ(過去のソヨン)。主演4人の顔触れだけでも話題性は抜群だ。

architecture9.jpg
過去の主人公を演じるイ・ジェフンとスジ

 韓国のブログをチェックすると「キャストに惹かれて見たが、期待値を遥かに超えて内容が良かった」という感想が多い。そしてもう一つ気付いたのは、この作品にはリピーターが多いという事実。友達同士やカップルで、あるいは親子で一緒に3・4回も見たという人が少なくない。

 私自身も2度鑑賞している。そして2度目を見終え、「これは恋愛ではなく人生そのものがテーマの作品なのだ」と考えを改めた。現在のスンミンとソヨンは、今まさに人生の大きな岐路に立っている。結婚を機にこれまでの職場を離れ、母との別れを決意し、アメリカという地で新たな道を歩もうとするスンミン。ステイタスの向上を目指してソウルで過ごした日々をリセットし、故郷の済州島で父と穏やかに過ごす生活を選択したソヨン。2人にとって、現在の自分の出発点となる時期に経験した初恋の記憶と向きあい、その関係の修復を試みることは、いわば自分の全コンプレックスを含んだトラウマの塊を乗り越えるようなものだ。そしてその結果流れる涙には、単なる男女の別れ以上の「過去との完全な決別」による痛みが込められている。エンディングから伝わるのは、人生を振り返り、反省し、そして痛みを抱えながらも前に進もうというメッセージ。だからこそ本質的にはハッピーエンドでありながら、強烈な切なさに襲われるのだ。

 あらゆる世代に共感が可能な素材でありながら、見る人の性別や年齢、見るタイミングによって捉え方が異なる。同じ人間であっても見る度に新たな発見があり、見飽きることがない。そして切ないストーリーに感情が揺さぶられ、最終的には人生の選択を後押しされるような癒しをも感じられる。それがこの映画の愛される理由ではないかと思う。

 監督は韓国版DVDに収録された公式インタビューにおいて、「『建築学概論』は人生の宿題だった」と語っている。映画の道を歩むことを決め、初めて撮りたいと思った素材。初稿から10年間、「味気がないストーリー」と批判を受けながら、それでも「本当に映画として成功しないのか答えを知りたい」と執着し続けた作品。その背景には、映画に掛ける情熱だけでなく、映画を選択することで諦めた建築への思いも垣間見える。10年の間に何百回・何千回もの推敲を重ねながら、その間の監督自身の経験や成長をも全て反映させ、やっと完成を迎えたのがこの作品だ。細部までイメージしつくし、こだわり抜いた珠玉のシナリオと演出美をぜひ堪能していただきたい。


コリアン・シネマ・ウィーク2012
 2012年10月20日(土)~10月23日(火)@韓国文化院・ハンマダンホール
 公式サイト http://www.koreanculture.jp/

『建築学概論』
 原題 建築学概論/英題 Architecture 101/韓国公開 2012年
 監督 イ・ヨンジュ 主演 オム・テウン、ハン・ガイン、イ・ジェフン、スジ
 コリアン・シネマ・ウィーク2012、2012大阪韓国映画週間上映作
 2013年初夏、新宿武蔵野館、シネマート心斎橋ほか全国順次公開
 公式サイト http://www.kenchikumovie.com/

特集 コリアン・シネマ・ウィーク2012&2012大阪韓国映画週間
 Interview 『合唱』 チョ・ジョンレ監督
 Interview 『合唱』 ハム・ヒョンサン先生&チョ・アルムさん
 Interview 『建築学概論』 イ・ヨンジュ監督
 Interview 『ハナ 奇跡の46日間』 ムン・ヒョンソン監督
 Review 『建築学概論』の魅力とヒットの理由

Writer's Profile
 加藤知恵。東京外国語大学で朝鮮語を専攻。漢陽大学大学院演劇映画学科に留学。帰国後、シネマコリアのスタッフに。花開くコリア・アニメーションでは長編アニメーションの字幕翻訳を担当している。


>>>>> 記事全リスト


関連記事

Interview 『建築学概論』 イ・ヨンジュ監督

Text by 加藤知恵
2012/11/19掲載



 10月20日(土)から23日(火)まで韓国文化院・ハンマダンホールで開催された「コリアン・シネマ・ウィーク2012」にて日本初公開となる『建築学概論』を見た。

architecture1.jpg
現在の主人公を演じるハン・ガインとオム・テウン

 建築学科の新入生スンミンと音楽科の女子学生ソヨンとの初恋の記憶、そして15年後に再会を果たした2人の関係を、過去と現在が交差する構成と美しい映像・音楽によって抒情的に描いた作品。韓国での公開当時、恋愛映画史上最高の410万人を動員した大ヒット作であり、前評判を受けて会場は満席だった。ティーチインで質問をする観客の中にも旅行中に現地で何度も見たという人や、直接監督に韓国語で感想を述べようとする熱心なファンの姿が目立ち、この作品の人気の高さがうかがえた。質問の内容も場面の解釈や音楽についてなど、比較的マニアックなものが多い。その全てに身振り手振りや冗談を交えたマシンガン・トークで気さくに回答する監督の姿が印象的だった。


ティーチイン 2012年10月21日(日)上映後

── 済州島の家が大事なテーマになっていますが、この家は監督ご自身が設計されたのでしょうか。また、その家はまだ残っているのでしょうか。

実はこの作品は、最初にシナリオを書いてから実際に制作に入るまで10年かかっています。家は土地を選んで購入しなければデザインに進めないので、一人で構想を膨らませ、実際に映画の制作が決まってから建築学科の同期で現在設計事務所の所長である友人と一緒に設計しました。映画で使った家は元々済州島にあったものを購入し、セットで増築・改築しました。現在は制作会社が全て取り壊し、別の土地に映画とほぼ同じ形態の家を建て直しています。済州島の一つの名所としてカフェと「建築学概論記念館」を兼ねて、来年6月にオープンする予定です。

── 済州島のロケーションが非常に美しかったのですが、ソヨンの実家として済州島を選ばれた理由を教えて下さい。

この映画ではソウルの江南と江北の問題や、地方から上京してくる学生のエピソードが描かれていますよね。韓国の学生は大学1年の時に空間的・文化的な衝撃を受け、一種の成長痛のようなものを味わいます。まずはそこに共感していただけると嬉しいです。済州島を選択したのは、唯一の島としてソウル以外で最も強い個性を持っている場所だからというのが一つです。また済州島の出身者はソウルに上京して長く生活をしても、ある程度歳を重ねると済州島に帰る方が多いので、そのような点が映画にあっていると思いました。

architecture3.jpg
ティーチインの模様

── 大学時代のボーイズ・トークが面白かったのですが、脚本は監督の経験から書かれたのですか。また、主演のハン・ガインさんは確か初恋の人と結婚されたと聞いたのですが。

ひとまずハン・ガインさんのご主人は初恋の人ではありません(笑)。はっきりと申し上げておきます。彼女は若い頃からたくさん恋愛を経験してきたと聞いています。主人公については全てが私の経験談ではありませんが、共通点は幾つかあります。まず日本は違うかもしれませんが、韓国では家を転売しながら引っ越しすればするほど蓄財ができるというシステムもあり、一つの町に長く住み続けることはほとんどありません。しかし私は主人公のスンミンのように、幼い頃からずっと同じ家で暮らしていました。登場人物では、私はスンミンよりはむしろ友人のナプトゥクに似ていると思います。ただ、スンミンの母は私の母がモデルです。母とは冷蔵庫についてよくケンカをしました。また、映画の設定とは違いますが、私にも初恋の人はいました。私の初恋相手はスジ(過去のソヨン役)よりもずっと美人です(笑)。今でもたまに連絡を取りあう仲ですが、この映画がヒットしたことで、周りの友達にご馳走するはめになっているようです。

── 作品で流れる展覧会の「記憶の習作」という歌が好きなのですが、どのような意図で選曲されたのか教えて下さい。

過去の場面は1990年代前半の設定ですが、この曲は1994年に発表された曲です。10年間シナリオを修正していく過程でこの曲を聴き、映画に良くあいそうだと思って選びました。また面識はありませんが、歌手のキム・ドンリュルさんは偶然にも建築学科の後輩です。そのような不思議な縁もありました。

── とても心に残るエンディングでしたが、たとえば2人がハッピーエンドで終わるような、違うバージョンは考えられなかったのですか。

昔シナリオを様々な制作会社に売り込んでいた時期は、会社の方からハッピーエンドを強要されることもありました。当時は大分葛藤もありましたが、今回引き受けて下さった制作会社は最初に私が書いた通りのエンディングを支持して下さいました。勇気の要る判断だったと思います。とても感謝していますし、このエンディングを守ることができて良かったと思っています。ちなみに制作会社に売り込んでシナリオを修正していた時期には、ハン・ガインさんが演じる現在のソヨンが元アイドル歌手だという設定まで存在しました。日本で言う「モーニング娘。」や「SPEED」のようなアイドルが、30歳を過ぎて引退するような話ですね。そのようなバージョンまで書きましたが、あまりにも映画にあわないので、結局は初心に帰って2003年に書いた初稿の内容に落ち着きました。

architecture4.jpg

── スンミン役のオム・テウンさんとイ・ジェフンさんは元々の雰囲気が全然違いますが、キャスティングや演出などのエピソードがあれば教えて下さい。

当初は現在と過去でダブル・キャストの想定はしておらず、同じ俳優が演じ分ける予定でした。年配過ぎると過去の場面があわないし、若すぎると現在の設定に違和感があるので、中間の年齢の俳優を探していたんです。しかし条件にあう男性の俳優が見つからず、ダブル・キャストに変更しました。結果的にはダブル・キャストにしたことで映画的な効果は高まったので、良かったと思っています。ただオム・テウンさんが過去の場面も全部自分で演じると言い張り、それを止めるのが大変でした(笑)。

── 告白をしようとしたスンミンがソヨンの家の前で待っていて、酔っ払ったソヨンが先輩と一緒に家の中に入るシーンがあります。あの後、私は何もなかったと思っていますが、監督の頭の中ではどのような設定だったのでしょうか。

まずご参考までに、DVDを購入して見ていただくと分かります(笑)。それは冗談ですが、その答えは、私にも分かりません。シナリオを執筆中も撮影中も、最大限想像を掻き立てるようにするのが目標でした。主人公のスンミンすら事実を知らず、何もなかったはずだ、いや何かあったはずだ、と想像だけが膨らんでいく。そして結果的に最悪の状況だった場合のことを受け入れる自信がなくて逃げてしまった、情けない男の反省文というのがこの映画のテーマです。結果を予想できるものは全て省いて、私にも分からないという気持ちで作りました。

── ソヨンが放送室から出てきてスンミンと待ち合わせる場面が「初恋」というドラマと似ていますが、関係はありますか。また、015Bの「新人類の愛」という曲を使用されたのも、当時ヒットしていたからという理由でしょうか。

私はドラマを見ないので、その作品も知りません。真似をしたわけではありません(笑)。「新人類の愛」については、まず私が好きな曲というのが理由です。実は「記憶の習作」よりもずっと好きでした。音楽というのは時代背景を表すのに最も効果的なので、選曲には大分悩みました。どんな曲を使えば皆が当時の空気感を思い出してくれるのか、アンケート調査も行って選んだのが、「新人類の愛」とマロニエの「カクテルサラン」です。他にも使いたい曲がありましたが、予算の都合上この2曲になりました。

── 成長したソヨンが事務所に訪ねて来た時、スンミンが彼女に気付かないのは、分かっていたのに分からない振りをしたのか、本当に忘れていたのかどちらでしょうか。

私は気付いていたけど知らない振りをしていたという認識で、俳優にもそのような演技を要求しました。ただ、あまりにも露骨にはしないでくれと言いました。私はスンミンの過去の場面は失敗した初恋の話で、卑怯な男の反省文だと思っています。彼はその後、成長する過程でソヨンに向かって「目の前から消えてくれ」と言ったことをどれほど後悔したでしょう。何であんなことを言ってしまったのだろうと後悔しながら30代になり、もうそんな真似はしないと自分でも信じていたところに突然ソヨンが現れて、無意識に彼女の昔の姿が思い浮かんだのではないでしょうか。そしてあまりにも動揺して、知らない振りをしてしまった。結局は卑怯な男のままだったということです。



インタビュー 2012年10月22日(月)

── 建築学を専攻されてから映画の道へはどのような経緯で進まれたのですか。

韓国では映画学科出身者も多いですが、ポン・ジュノ監督のように他の分野から映画監督になった人もたくさんいます。私は建築学科を卒業後、4年間設計事務所に勤めていました。映画制作を本格的に始めたのはその頃です。元々は建築家になるのが夢で、浪人して建築学科に入ったほど建築に憧れていました。しかし実際に実務を経験してみると、幻想が崩れてしまいました。組織での生活も私にはあわなかったのかもしれません。そんな中で設計事務所に勤めながら文化センターで短編映画を作り始め、一年ほど休職して真剣に映画を撮ってみようかと思い始めた頃、『殺人の追憶』(2003)の演出部へ参加が決まりました。その後ももう少しだけ、もう少しだけと思って続けているうちに、今や後戻りできない状況に至っています(笑)。

architecture5.jpg

── 建築も映画も、組み立てて作り上げるプロセスは共通していますよね。今回の作品も過去と現在がオーバーラップしていく構成や心理描写・音楽・美術などが美しく調和されている点が魅力的でした。どのように作品のアイディアを得て、どのような流れでシナリオを書かれるのですか。

この映画の場合は、やはり建築を専攻した経験から、家を建てる話で映画を撮りたいと思ったのが始まりです。そこからまず現在と過去が交差する構成が決まり、その他のアイディアも少しずつ発展させていきました。

── シナリオは、他の人のアドバイスも取り入れて修正されたのですか。

アドバイスというよりも、制作会社から「こう変えるべきだ」という要求はありました。2003年の初稿から劇場公開の前日まで10年間、ずっと「あまりにもさっぱりしすぎている(ストーリーが平坦すぎる)」ということを言われ続けてきたんです。もっとトラブルや葛藤を盛り込めだとか、ソヨンが不倫する設定にして悪い夫を登場させろだとか、色々な指示がありました。元々は『不信地獄』(2009)より前にこの作品でデビューするつもりだったので、とにかく制作までこぎ着けようと、何度もシナリオを書き直しました。そんな中で今回の制作会社(ミョン・フィルム)に出会い、最終的に初稿の内容に戻りました。淡々とした話であってもシナリオが良ければヒットすると信じていましたが、ベスト・パートナーともいえる、本当に良い制作会社に出会ったなと思います。

── 監督は同じ家で長く過ごされたそうですが、ソウルのどの辺りの、どのような家にお住まいだったのですか。

場所は龍山区の東部二村洞というところで、2歳から38歳までの約35年間、同じアパートで暮らしていました。正直な話、その家にはすごく不満がありました。私の家は建築学的に特異な形態で、自分の部屋の外壁に窓がなかったんです。それにかなりのストレスを感じ、中学・高校時代は自分の感性が侵されていると思っていました。だからこそ空間に対する欲が芽生えて、建築学科に入ったのかもしれません。結果的には母に感謝しないといけませんね(笑)。

── 主人公の2人が会う秘密の場所、初雪の日の約束の場所である空き家には、憧れや懐かしさなど、何か監督の思い入れがあるのでしょうか。

空き家というか「廃屋」というものの佇まいに、私は純粋に美しさを感じます。持ち主について想像力を掻き立てられる点も魅力ですね。幼い頃に友達の家に遊びに行くと、家具や部屋の装飾を見て、この子はこんな子なのかなと無意識に想像したものです。そして家ごとに独特の匂いもあって、それが友達一人一人の記憶と結びついたりする。そういう感覚を再現したいと思いました。また映画の中で現在の2人が新しい空間を作っているならば、共通の記憶の中の空間というものも必要かと思い、それならば空き家にしようと。実は初稿の段階でイメージしていたのは、「敵産家屋」と呼ばれる日本式家屋(日本の統治時代に建てられた2階建ての木造住宅)でした。私が幼い頃は、まだそのような家が空き家としてたくさん残っていたんです。韓国人全般が「敵産家屋」を懐かしく思うかどうかは分かりませんが。実際に春川(チュンチョン)で一つ候補を見つけましたが、残念ながらロケの許可が下りませんでした。

また家に関連してお話しすると、このシナリオには韓国の投資文化に対する批判も込められています。皆、経済的な効果を期待してマンションばかりに住みますよね。私の母でさえ「この家は住みやすい」ではなく「この家は値上がりしそう」と言って選ぼうとします。最近では不動産の価格が暴落してしまい、借金をして大きな家を購入したのに貧乏になった人を「ハウス・プアー」と呼びます。家というものに対するそのような幼稚な認識を卒業するためには、個人住宅の文化が復活しなければいけません。しかし韓国ではマンションやオフィスの依頼ばかりで、町に密着して個人住宅を設計して生計を立てるような建築家がいないんです。建築の基本は住宅だと思うし、私も建築の仕事に就いて家を建てるのが夢だったのですが。幻想が崩れたというのはそういう理由です。

architecture2.jpg
過去の主人公を演じるイ・ジェフンとスジ

── 映画の恋愛の部分についてうかがいます。作品中、女性のずるさや男性との駆け引きがリアルに描かれていると感じましたが、女性の心理はスタッフ・俳優など、女性の意見も参考にされたのですか。それとも監督自身の感覚で書かれたのですか。

後者です。私は少し女性的な部分があって、あだ名も「おばちゃん」です(笑)。それでも嘘を書いてはいけない、自分が経験したり確実に理解していることを書いてこそ良い映画になると思っていたので、推測で書いた部分は苦労しました。もう二度と恋愛映画は撮るまいと思いました。男性の心理はすらすらと書けるのですが。作品の解釈については、男性観客と女性観客で違いがあるようです。男性は単純に「男性が主人公の恋愛映画」と捉えるのに対して、女性のある評論家は「男性は初恋を忘れられず、女性は最も強烈だった恋を忘れられない」と、違う目線で書いていましたね。ソヨンについても「漁場管理」と冗談を言う人もいました。魚を飼うように、何人も男性をキープして管理するという。しかし私自身はソヨンがそんなキャラクターだとは考えていませんでした。男性が好きになるタイプの女性は、女性には好まれないんでしょうか(笑)。

── 最終的にスンミンが結婚する女性は、ソヨンとは全く違うタイプですよね。自分の感情に素直だし、どんどん新しい人生を切り開いてアメリカへ留学もしてしまう。そういう女性を選んだ事はハッピーエンドだったんでしょうか。ちなみに監督自身はどちらのタイプの女性がお好きですか(笑)。

私自身はソヨン派ですが(笑)、これがハッピーエンドだと思っています。ウンチェ(結婚相手)のキャラクター設定もすごく悩みました。私の考えではソヨンはまだ成長過程にいて、スンミンは過去に成長痛を味わい、ソヨンは現在同じ痛みを味わっている。ウンチェはこの2人よりもずっと成熟した人物を想定していました。しかしハン・ガインさんの美貌は際立っているので、ウンチェ役に中途半端な人が来てはつり合いが取れない。観客が納得できる女優を選ぼうと迷った結果、コ・ジュニさんにお願いしました。彼女は現代的な顔で背も高く、ビジュアル面では申し分なかったので。しかし実際に会ってみると、思いのほか愛嬌のある人で驚きました。私がイメージしていたウンチェは物静かな女性だったからです。結局はジュニさん本人の個性とあわさってウンチェのキャラクターが出来上がりました。

── 先ほど「男性は初恋を忘れない」という言葉もありましたが、日本よりも韓国の男性の方が、初恋というものをより美化して捉える傾向があると思うのですが。

意外ですね。日本の映画や漫画を見た限りでは、初恋の描写や恋愛感情の表現は韓国の作品よりずっと繊細に美しく描かれている気がします。例えば「H2」という漫画の、お互い好きなのに言い出せない場面のように。実は韓国の新世代の若者や中国人の観客からは「なぜはっきり言わないのか、いらいらする」という感想もありました。西洋の方はもっとそう思うんでしょうね。私はそういう情緒を理解してもらうことが大事だと思うので、日本の観客はきっと気に入ってくれるだろうと期待しています。

── 純粋だからこそ上手く気持ちを表現できないという美しさはすごく理解できます。それとは別に、初恋はかなわないからこそ美しいという認識もありませんか。

もしこの映画を一言で要約するならば「未完の過去を復元する話」です。初恋の失敗は、言わば未完成の状態ですよね。ただ、この映画が過去の恋を美化しているのは、初恋だからという理由だけではありません。日本の場合は分かりませんが、韓国では大学1年生は人生で最も輝いている瞬間です。学校の周辺だけで遊んでいた小学生が初めて母親と離れて一人で市内の映画館に行ったり、高校生が初めて友達同士で地方へ旅行に出かけたり、そんなふうに自分の周りの空間が少しづつ拡大しながら、大学1年生になるとそれが一気に弾けて広がる。学校もずっと遠い場所にあって、皆で合宿をしたり、海外に行ったりもする。私も幼い頃からずっと同じ町に住んでいたので、大学1年生の時にソウルという都市に対する認識が変わりました。江南や地方出身の友達にも出会い、彼らと色んな話をするのが面白くて、カルチャー・ショックも受けました。大学1年生の頃の思い出は、いつも夏の日のようです。だからこそ当時の初恋の記憶を思い出すと、全てが美化される。それに対するノスタルジーというのがこの企画のコンセプトでした。

architecture6.jpg

── 演出に関してですが、済州島の自然に限らず、登場人物の家や線路を歩いていたシーンなど、ロケ地の一つ一つが素敵でした。選ばれた理由やポイントはありますか。

監督というのは撮影日程や俳優の演技・美術の選択・カメラのアングルなど、たくさんの内容を時間内に決めなければいけません。その際に基準はありますが、私はその基準そのものが私の映画の色であり、更には才能だと思っています。映画にあうかどうかという、本能的な判断ですよね。ただ一つ、あまりにもファンタジーな雰囲気やごちゃごちゃした感じにならないようには気をつけました。例えばネット上では、この映画がクァク・ジェヨン監督の『ラブストーリー』(2003)とよく比較されます。しかし私はこの2本は少し本質が違うと思っています。『ラブストーリー』はファンタジーの要素が強いけれど、『建築学概論』はむしろホ・ジノ監督の『八月のクリスマス』に近いかなと。今回、日常的に使われない表現は台詞でも避けましたし、背景やセットも自然なニュアンスを活かそうとすごく努力しました。唯一ナプトゥクだけがファンタジーの要素でした(笑)。それくらいのバランスを維持しようと心掛けました。

── ダブル・キャストにも全く違和感がありませんでしたが、演技には細かく指示をされましたか。それとも俳優に任せたのでしょうか。

演技指導というよりは、こんなふうにしてほしいとニュアンスを伝えました。それで良くなる俳優もいれば、要求をすると逆に上手くいかない人もいます。どちらかを素早く察知して、放任するのかはっきり伝えるのか分けますね。演技経験の少ない人はあれこれ言ってもすぐに適応できないので、本人に任せた方がいい気がします。今回の場合、スジにはほとんど演技指導をしていません。その代わりに何度もテイクを重ねました。一番気を遣ったのは、緊張しないようリラックスさせることです。「気負って演じようとせず、自分自身の言葉で台詞を言えば良い」と言い続けていたら、クランクインの2・3日後くらいから感覚を掴んだらしく、大分良くなりました。結局最初の1・2日目に撮影した場面はトーンがあわなくなったので、後日アフレコをしました。

── それでは最後に、今回はあまりファンタジーな雰囲気にしたくなかったとのお話ですが、逆にすごくスケールの大きな海外との合作や、歴史大作などのジャンルには興味はありませんか。

今は次の作品を検討中の段階ですが、合作に興味はありますね。引退するまでに一度は海外で生活して映画を撮ってみたいと思っています。ハリウッドではなくアジア、特に日本が良いですね。私の場合、中学・高校時代や大学1年生など、自分の感受性を形成する時期に一番影響を受けたのが日本文化なんです。まだ日本文化が解放されていない頃に日本のアニメの海賊版を苦労して手に入れて、バイブルのように皆で回したりしていました。松田聖子も大好きでしたし(笑)。当時は大分差があったので、日本はこんなに先進国なのかと衝撃を受けました。だからこそぜひ一度一緒に仕事をしたいというロマンがあります。英語や中国語は演技と同じくらい自信がありませんが、日本語は真剣に勉強したいと考えています。



取材後記

 ティーチインやインタビューにおける監督の回答の中で、何度も繰り返されたのは「映画に良くあうだろうという判断」「共感してほしい」という言葉。制作過程でも最優先するのは自分の直感や感性であり、見る側にも細かな説明による理解ではなく、純粋に画面から感じ取ることを求めている。しかし実際にはその一つ一つの演出に明確な意図があり、質問に対して、まるで映画を見ているかのように具体的なイメージを提示しながら答えてくれる。感性と理性、主観と客観の両面から同時に冷静な分析のできる、非常に鋭利な人なのだと感じた。

architecture7.jpg

 「日本の作品を見て気になったのは、子供たちが夏休みに毎朝ラジオ体操に参加してカードにハンコをもらう場面。まっすぐなイメージですね」とのこと。監督独自の視点・感性で作られる日韓合作映画がどのような作品になるのか、ぜひ期待したい。


コリアン・シネマ・ウィーク2012
 2012年10月20日(土)~10月23日(火)@韓国文化院・ハンマダンホール
 公式サイト http://www.koreanculture.jp/

『建築学概論』
 原題 建築学概論/英題 Architecture 101/韓国公開 2012年
 監督 イ・ヨンジュ 主演 オム・テウン、ハン・ガイン、イ・ジェフン、スジ
 コリアン・シネマ・ウィーク2012、2012大阪韓国映画週間上映作
 2013年初夏、新宿武蔵野館、シネマート心斎橋ほか全国順次公開
 公式サイト http://www.kenchikumovie.com/

特集 コリアン・シネマ・ウィーク2012&2012大阪韓国映画週間
 Interview 『合唱』 チョ・ジョンレ監督
 Interview 『合唱』 ハム・ヒョンサン先生&チョ・アルムさん
 Interview 『建築学概論』 イ・ヨンジュ監督
 Interview 『ハナ 奇跡の46日間』 ムン・ヒョンソン監督
 Review 『建築学概論』の魅力とヒットの理由

Writer's Profile
 加藤知恵。東京外国語大学で朝鮮語を専攻。漢陽大学大学院演劇映画学科に留学。帰国後、シネマコリアのスタッフに。花開くコリア・アニメーションでは長編アニメーションの字幕翻訳を担当している。


>>>>> 記事全リスト


関連記事

Interview 『合唱』 ハム・ヒョンサン先生&チョ・アルムさん

Text by mame
2012/11/18掲載



 「2012大阪韓国映画週間」(10月26日~10月30日@シネマート心斎橋)での上映にあわせて、『合唱(原題 ドゥレソリ)』に学生役として主演したチョ・アルムさん、合唱団の先生役として出演するほか、音楽監督も務めたハム・ヒョンサン先生が来阪しました。

 国立伝統芸術高校で結成された「ドゥレソリ」(「田植え歌」の意)という合唱同好会について描かれた本作は、なんといっても実際に韓国の伝統音楽(パンソリ・民謡など)を学ぶ学生が演じる合唱シーンの素晴らしさに圧巻のものがあります。上映後の舞台挨拶では、現在は大学生となったアルムさんが民謡を披露してくれ、会場も大いに沸きました。


劇中、おばさんの前で歌った民謡を披露するチョ・アルムさん
2012年10月27日(土)、シネマート心斎橋にて

 大阪の印象は「自転車が多い!」というアルムさん、「(会場周辺のアメリカ村の雰囲気が)ソウルの弘大(ホンデ)に似ている!」というハム先生に、様々なエピソードをお伺いしました。



インタビュー 2012年10月27日(土)


── 実際に学生生活を送る中での撮影でしたが、出演しようと思ったきっかけは何ですか?

アルムさん:私は国立伝統芸術高校(ソウル国楽芸術高等学校が2008年に国立化)の2期生ですが、「ドゥレソリ」は私の1学年上の1期生の先輩の代に結成された合唱団です。オーディションは希望者ではなく、合唱団全体に命じられました。内容はカメラ・テスト、演技、歌だったのですが、最終的に私の雰囲気が主役の先輩と似ていて、同じ民謡専攻ということもあって、決定しました。主役に決まった時は正直負担に思いました。

── 学生生活を送りながらの撮影は大変だろうし、負担というのも理解できる気がします。実際の撮影スケジュールはどんな感じだったのですか?

ハム先生:撮影期間はほぼ2ヶ月だったのですが、ほとんど土日と放課後でした。学生全員が集まるシーンは学校側と相談して撮影期間をもらい、2日間で集中して撮りました。そうなってくると台本の順番通りには撮れなかったので、感情の流れを表現するのが難しく、改めて本物の俳優さんはすごいなと思いました。

── 劇中で演奏されている合唱曲は元々あったものですか? それともこの映画のために作られたのでしょうか?

ハム先生:映画に出てくる合唱曲は全部で3つあるのですが、「引越しの日」という曲は元々、合唱団で歌われていた曲です。あとの2つはシナリオをいただいてから新しく作りました。実はスケジュールの関係で発表会のシーンが最初の方に来たので、あとの2曲は一晩で作詞・作曲しなければなりませんでした。あまりに時間がなかったので焦りましたが、驚くほどスムーズに曲ができあがりました。なんというか、それは簡単にできたというよりも、今まで「ドゥレソリ」であった出来事を考えると、自然と曲や詩が溢れ出てくる感じでした。当初は時間をかけてゆっくり曲を作りたいと思ったのですが、今考えてみると一気に作り上げてしまう事が思わぬ功を奏した気がしています。

duresori5.jpg
ハム・ヒョンサン先生

── 民謡・パンソリなどの伝統音楽と合唱の融合というのは今まで見たことがなく、大変新鮮に聴こえました。このような音楽ジャンルは以前からあったのでしょうか? また、アルムさんがやっている民謡と、スルギさんがやっているパンソリの違いについて教えて下さい。

ハム先生:今まで民謡から合唱曲を作るという歴史はあったのですが、民謡の歌い手がそのままの歌唱方法で合唱をするというのはこの合唱団が初めてのような気がします。実際「ドゥレソリ」を結成した当初は歌謡曲を歌う合唱団を作るつもりだったので、こんな展開になるとは私も驚きました。その辺りのエピソードは映画と同じですね。民謡はどちらかといえば歌謡に近く、歌詞に1番、2番といった流れがあります。パンソリは全体でひとつの話になっているので、正式に歌うと4時間、5時間ぐらいの長さになったりします。また、民謡が京畿道発祥に対して、パンソリは全羅道発祥で少し方言が入っていたりして、例えば「アリラン」にしても、民謡とパンソリでは発声方法が違いますね(民謡式アリランとパンソリ式アリランを実演してくれましたが、パンソリのほうがこぶしの効いた歌い方に感じました)。

── 映画の反響で「ドゥレソリ」の志望者が増えたりしましたか?

アルムさん:志望者はもちろん増えたのですが、公演依頼が増えました。私はもう卒業してしまったので、今の「ドゥレソリ」は私の後輩たちが中心になっているのですが、ただ、前は同好会活動だったはずが、公演が増えたことで練習や、皆で以前のように集まって喋ったりというコミュニケーションの時間がなくなり、少し大変になった気がします。

ハム先生:元々、同好会というのが皆で集まったりする場として機能していたはずなのに、そうなってしまったのは少し残念ですね。

── 監督の印象はいかがでしたか? また、友達との仲良さそうなシーンが印象的でした。撮影中のエピソードを教えてください。

アルムさん:大変でしたよ~(苦笑)。何が大変って、こちらは演技するのも初めてなので、撮り直しの時に「ここがダメだから、もう一回やり直そう!」と言われたら納得できるんですが、監督の場合「良かった! ん~すごく良かったんだけどもう一回やろう!」と言われるので結構混乱しました! 映画ではアルム、スルギ、ウニョンの3人組が出てきますが、これはモデルとなった先輩たちも3人組だったという設定から来ています。共演するまでは、特に仲が良いというわけでもなかったです。実は、私たちは1歳ずつ歳が違うので、思わず演技中に敬語が出てしまったりして、NGが出たりしました。

duresori8.jpg
主役の3人組:左からウニョン、スルギ、アルム

── ハム先生がクビになった時にヤケ酒を飲みながら「留学したときに、ルームメイトから『なぜ韓国人なのに自分の国の音楽を学ばない?』と聞かれて恥ずかしくなった」と言う台詞には、とても共感しました。

ハム先生:実はあれは私ではなく、監督の知り合いの方が実際に経験されたことで、その方は帰国して実際にサムルノリを学ばれたそうです。私は国楽専攻なので、西洋音楽専攻で留学経験がある、というのは実はフィクションです。この映画を作るにあたって資金集めをした際に「そのほうがドラマチックな展開になるかな?」と話しあって、西洋音楽の先生が国楽を学ぶ生徒と衝突しながら、合唱を完成させていくという展開になりました。

── アルムさんが国楽を学ばれたきっかけは何ですか? 今回は国立伝統芸術高校が舞台ですが、国楽は若者の間でどのように受け入れられているんでしょうか?

アルムさん:小学校の課外授業で国楽を学んだことがきっかけで、民謡を習い始めました。若い人の国楽に対する反応ですが、好き嫌い以前に、関心がないというのが現実ですね。私たちは学校で学んでいるので身近ですが、普通の若者の間では触れる機会がないので。

ハム先生:そうですね。舞台となった国立伝統芸術高校も、まだ歴史が浅いのですが、そもそもこういう高校を作って、伝統芸術を残す支援を国がしなければ、なくなってしまうのでは?という危機感があります。ですので、今回のように映画を作ったりして、面白く見せようという試みが増えれば、伝統芸能に対する興味も深まるのではないでしょうか。そういう意味では、日本では吉田兄弟など伝統楽器を使ったミュージシャンが一般に周知され活躍しているので、羨ましいなと思っています。

── アルムさんは現在大学1年生と聞きましたが、学校はどうですか? 将来の事を考えたりしますか?

アルムさん:そうですね。1年目なので、まだ大学の雰囲気に慣れてない感じですね。将来の事ですか…。頑張って歌を続けたいですが、それだけで生活していくのは難しいので、歌だけでなく、何か別の道も見つけた方が良いのかな?と思ったりしています。

duresori6.jpg
チョ・アルムさん

ハム先生:私は現在36歳なのですが、まだ独身です。「音楽と結婚した」と周りには言っていますが(笑)。やっぱり音楽だけで生活していくのは心もとないし、結婚するとなるとそれなりに責任も伴いますよね。ただ、芸術の道に進むという事で、生活していくのは大変というのは周知の事実なので、そんな中でも心は豊かでありたいと思っています。そういったところをこの映画から感じてもらえると、とても嬉しいです! 昨日・今日と大阪に滞在していて思ったのは、大阪ではストリート・ミュージシャンの歌にも、それなりに耳を傾ける人がいるところが素晴らしいな、と思いました。韓国の場合は、結構通り過ぎてしまう人が多いので。私たちも「ドゥレソリ」で大阪で路上ライブをしたら、盛り上がりそうなので、是非やってみたいと思っています!(笑)



取材後記

 上映終了後の舞台挨拶では、皆さんアルムさんの歌を聴きたくて仕方ない様子で、1日目は司会の方から、2日目は観客から「早く歌って!」とリクエストが出て、アルムさんははにかみながら民謡を披露してくれました。

 ティーチインのエピソードですが、「伝統芸術を学んでいる高校生」というイメージから想定するよりも、自由な学生生活を送っている姿に皆さん驚きを覚えたようです。観客の女性の方から「大学入試の時も茶髪で行っていたけど大丈夫なの?」という質問が出たのですが、「本当は大丈夫じゃありません! それは撮影の都合上、髪を染めて戻してという時間がなかったので…」とハム先生が慌てる一幕もありました。

duresori7.jpg

 取材ではアルムさんに将来について伺いましたが、映画はここで終わっているけれど、出演者にはそれぞれのその後があり、大学生となった今が一番迷ったりする時期なので、「他人に聞かれても『頑張ります』としか言えないよなあ…」と無責任な質問をした自分を反省しました。

 監督には、その後の彼女たちを追って第二弾、第三弾と続編を作っていくアイディアもあるようですが、観てみたい!と思う一方で、それはそれで大変難しい現実を映した映画になると予想できるのもまた事実です。『合唱』という映画は多くの人の心を動かしましたが、それで彼女たち全員に音楽のプロへの道が拓けるわけでは決してなく、迷いながらも希望を持って進んでいくしかない、という芸術家の悩みは古今東西共通なのだと再確認しました。

 「国楽と合唱の融合」というと表現はちょっと堅苦しくなりますが、聴いた瞬間、ざわっと鳥肌が立つあの感覚、さらに例えるならば「無名のミュージシャンのライブに来たら大当たりだった!」という感覚も味わえるこの映画。彼女たちの生み出す稀有なハーモニーを聴いてしまうと「是非これからもライフワークとして歌を続けていってほしい!」と願ってしまうのは間違いないので、プレッシャーにならないよう「ドゥレソリ」メンバーの今後を見守っていきたいと思います。


2012大阪韓国映画週間
 2012年10月26日(金)~10月30日(火)@シネマート心斎橋
 公式サイト http://osaka.korean-culture.org/

『合唱』
 原題 ドゥレソリ/英題 DURESORI : The Voice of East/韓国公開 2012年
 監督 チョ・ジョンレ 主演 キム・スルギ、チョ・アルム、ハム・ヒョンサン
 コリアン・シネマ・ウィーク2012、2012大阪韓国映画週間上映作
 韓国版公式サイト http://www.duresori.co.kr/

特集 コリアン・シネマ・ウィーク2012&2012大阪韓国映画週間
 Interview 『合唱』 チョ・ジョンレ監督
 Interview 『合唱』 ハム・ヒョンサン先生&チョ・アルムさん
 Interview 『建築学概論』 イ・ヨンジュ監督
 Interview 『ハナ 奇跡の46日間』 ムン・ヒョンソン監督
 Review 『建築学概論』の魅力とヒットの理由

関連記事
 Review 『未熟な犯罪者』『合唱』『最悪の友達』 ~葛藤と希望、青少年を見つめる3監督の視線

Writer's Profile
 mame。1983年、岡山県生まれ。2004年、韓国・弘益大学美術学部に交換留学。韓国映画は留学を決めるきっかけにもなった。専攻は木版画。現在は会社勤めをしながら作品制作を続けている。


>>>>> 記事全リスト


関連記事

Interview 『合唱』 チョ・ジョンレ監督

Text by 加藤知恵
2012/11/18掲載



 実在する国立伝統芸術高校の合唱団「ドゥレソリ」(「田植え歌」の意)の創立エピソードを映画化した作品『合唱(原題 ドゥレソリ)』が、「コリアン・シネマ・ウィーク2012」(10月20日~10月23日@韓国文化院・ハンマダンホール)で日本初公開された。

duresori1.jpg

 伝統音楽という特殊な分野を専攻していても、高校3年生になれば、進路選択や受験に伴う不安と重圧が圧しかかる。家庭の事情も三者三様。将来の展望が見えぬまま、鬱々と日々の授業や稽古をこなすだけの少女たち。そんな中、ひょんなことから合唱大会への出場を余儀なくされる。伝統音楽しか知らず、楽譜も読めない彼女たちにとって合唱は未知の世界。当然反発が起こる。しかし仲間と共に歌い、感性のままに豊かなハーモニーを楽しむ時間は彼女たちの心に活力と潤いを与え、いつしか皆前向きな気持ちで受験や人生に向かいあうようになっていく。

 伝統音楽と合唱を融合させた美しい楽曲と迫力ある歌声、そしてまるでドキュメンタリーのように子供たちの自然でありのままの姿を捉えた映像。本物の素材の良さで勝負した潔い演出に、文句なしの感動を覚えた。


ティーチイン 2012年10月20日(土)上映後

── [司会]今回はプロの役者ではなく実際の学生が演じています。その点も含め、制作過程でのお話を教えて下さい。

通常、韓国で劇映画を1本撮る場合、低予算といっても5億から8億ウォン程度はかかりますが、この映画は1億ウォンにも満たない8千万ウォンという超低予算で、苦労して作った作品です。そのためプロの俳優はほとんど起用せず、主人公たちは自分自身の名前でそのまま登場して演じています。ほぼ全員が演技未経験で、最初は固くてぎこちなかったのですが、撮影が進むにつれてどんどんと上達し、最後まで楽しい雰囲気で映画を撮り終えることができました。

撮影の裏話ですが、映画の中で主人公スルギが歌っているのは、韓国の伝統音楽でパンソリといいます。歌にあわせて、その隣で太鼓を叩く人がいますよね。私は大学時代に映画を専攻した後、ちょっとしたきっかけでパンソリに興味を持ち、太鼓を叩く鼓手の資格をとるまでになりました。映画の中でのパンソリのシーンは全て私が直接演奏しています。また『宮廷女官チャングムの誓い』というドラマをご存じの方もいらっしゃると思いますが、ドラマの導入部で流れるテーマ・ソングは、この映画の主役のスルギという子が幼い頃に歌っています。

最後にもう一つ紹介させていただくと、この作品は超低予算で作られたインディーズ映画ですが、国内の映画祭で受賞し、海外の映画祭へも招待されました。それにより韓国のインディーズ劇映画としては史上初めて、メジャー配給会社を通じて全国の劇場で公開されるという快挙を成し遂げました。そして、今日はこうして日本にも招待いただき、皆様にお会いすることができて心からありがたく思っております。


スルギが歌う『宮廷女官チャングムの誓い』テーマ・ソング「オナラ」(韓国プロモーション時)

── 音楽ドキュメンタリーはよく見るのですが、ドキュメンタリーではなく劇映画で作ろうと思った理由や狙いを教えて下さい。また、ご自身で太鼓を叩かれたそうですが、監督がこれまで音楽とどのように関わって来られたのかを教えて下さい。

この映画は韓国の教育事情を扱っており、韓国の青少年は大学入試に関して非常に苦痛を感じています。ノンフィクションとフィクションの割合は7:3程度ですが、実際は現実の話の方がよりハードで映画らしい内容です。最後の写真に写っていたこの主人公のモデルになった生徒たちは、今では大学に進み楽しく元気に過ごしていますが、中高生時代は映画で表現できないほどひどいいじめをするような問題児でした。しかし、そんな彼女たちが合唱を通じて成長する過程をより効果的に描くため、ドキュメンタリーよりも劇映画という形式を選択しました。

国楽については『風の丘を越えて~西便制』という映画を見たことがきっかけで関心を持ち、演奏するまでになりました。次回作も次々回作も、韓国の伝統音楽や伝統衣装を素材にした作品を制作する予定です。

── 先輩の実話を後輩が演じたそうですが、実際の撮影を通じて最初と最後で生徒たちが変化した点はありましたか。また、それを見て監督が感動されたことなどもありましたでしょうか。

韓国の青少年は入試のために夢を諦め、地獄のような毎日を送っていますが、今回出演している子供たちも高校3年生です。普通は高校3年生といえば入試の準備に追われてサークル活動や映画の撮影をする余裕はありませんし、両親からも当然反対されます。そのような状況で撮影中に泣き出す子供もいました。そして子供たちは今回初めて演技に挑戦したので、最初はとても大変そうでした。しかし芸術を専攻するだけあって、皆非常に好奇心が旺盛なんです。この映画は子供たちが演じやすいように、ほぼシナリオの順序通りに撮影しましたが、最後に近づくに連れて演技もどんどん上達し、表情も生き生きとしていきました。そして一番最後のシーンを撮り終えた時には、子供たちも私もスタッフも皆感動して涙を流しました。合唱団「ドゥレソリ」は今も毎年定期公演を行っており、部員も増え続けています。皆勉強も一生懸命頑張っていて、非常に模範的な合唱団として今後も活躍してくれると思っています。

── 撮影期間はどのくらいですか。それとクビになった先生がその後どうなったのか、そして公演の後、校長先生の反応はどうだったのかが気になります。

撮影期間は40日程でした。ハム・ヒョンサン先生は一年毎に契約更新をする非常勤講師です。実際には映画のように解雇はされていませんが、解雇に近い処分は何度も受けました。「ドゥレソリ」は勉強を最優先すべき受験生にとっては、学校の中のガンのような迷惑な存在だったからです。それでも生徒が団結し一生懸命練習したことで、コンクールに出場して賞まで獲得しました。そして最終的には彼女たちのほぼ100%が大学に進学しました。「ドゥレソリ」が当初問題児の集団であったことを考えると、これは想像もできなかった快挙です。その結果、彼女たちは一気に学校が誇るスターになりました。いわば小さな奇跡のような出来事です。結局は元々勉強が得意だったからではなく、自分のやりたい事を意志と自信を持って貫いたことが成功の秘訣だったのではないかと思います。

実際の校長先生は映画の制作に非常に協力的な方でしたが、実は撮影中に解雇されてしまいました。その後1年間後任の先生もみえなかったので、私は撮影期間中ずっと身を縮めて気を遣っていました。しかしこの映画が賞を取ったり海外に招待されたことで、学校側の私や作品に対する評価も大分変りました。

duresori2.jpg
ティーチインの模様

── エンディングで突然ラップの曲が登場しましたが、あれはなぜでしょうか。

エンドロールのラップは「ドゥレソリ」のメンバーの一人が作りました。ピリという伝統音楽の笛がありますが、その楽器を専攻する学生がラップが好きで作ったので、最後に流すことにしました。映画の中の他の曲は全てハム先生が作曲しましたが、エンディングの曲だけは子供たちと先生が一緒に作っています。

── 監督の経歴について伺いたいのと、インディーズ映画を撮られていることについてお聞きしたいです。

私は『おでき』という短編映画で2000年にデビューしました。その作品でもプロの俳優を起用せず、実際の家族をキャスティングして撮影しましが、国内の映画賞を受賞し、フランスなど海外へも招待されました。デビュー作は短編でしたが、元々ドキュメンタリーに関心があり、その後はTVドキュメンタリーを中心に20本ほど制作しました。この『合唱』の前に3年間ほど中高生の現状を取材したことで、韓国の青少年がどれほど辛い思いをしているのかを知り、この作品を撮るきっかけになりました。今は「高陽ワンダース」という独立球団を追いかけたドキュメンタリーの撮影が1年ほどかけて終わったところで、来年3月の公開に向けて準備中です。また韓国の筆を素材にした作品が来年の秋に公開予定です。

── [司会]その野球の映画は日本でも撮影されたそうですが。

球団に同行して約1年間、彼らの姿を記録しましたが、3ヶ月ほど日本の松山と高知で撮影を行いました。「高陽ワンダース」について少し説明すると、韓国のプロ野球チーム「SKワイバーンズ」の元監督で金星根(キム・ソングン)さんという在日韓国人の有名な監督が現在指導するチームです。状況は若干「ドゥレソリ」にも似ていますが、各選手が経営難や様々な困難を経験する中で、それでも野球を続けるために涙を流して努力し、最後のチャンスだと追い込まれながら頑張っています。しかし、そんな球団から今年はなんと5人の選手がプロ野球チームへ入団することが決まりました。ここでも小さな奇跡が起こったわけです。私も彼らを取材しながら何度も感動し、今は最後の編集作業を進めています。もし機会があれば、またこの場で皆さんにお見せすることができれば幸いです。



インタビュー 2012年10月22日(月)

── 監督も伝統芸術高校の学生と同様、映画学科という特殊な学科を選び、実際に受験戦争を経て入学されていますよね。ご自身の受験生時代はいかがでしたか。映画学科を選択された理由や当時のエピソードがあれば教えて下さい。

実は高校時代に劇団で俳優として活動していたのですが、韓国の演劇界は映画界よりも厳しい状況にあります。映画学科に進学したのは、映画学科出身であった当時の演劇の先生に「演劇を続けたいのなら映画学科で演出も同時に学んで幅広い視野を身に付けた方が良い」とアドバイスを受けたからです。しかし、映画学科に出願するというと、高校の先生や両親には猛反対されました。自分でいうのは恥ずかしいですが、私は勉強が得意な生徒でした。当時は演劇学科や映画学科は社会的な評価が低い傾向にあり、学校側としては、日本でいう東大や早稲田のような名門大学に合格させて、高校や先生の名声を高めたいというのがありますよね。それに将来苦労するのが目に見えていますから、両親も同様に嫌がりました。それでも何とか両親や学校を説得して、受験しました。私自身もまた自分のやりたいことに対する意志・執着を貫いて今に至っています。

韓国では、大学入試を巡る状況が昔に比べてより深刻な社会問題になっています。OECD加盟国の中で、韓国は10年間続けて自殺率が1位という嬉しくない記録がありますが、青少年の自殺率も増え続けています。しかし社会全体には「自殺するのも仕方ない」という雰囲気が漂っていて、それが一層彼らを苦しめているのです。「ドゥレソリ」の生徒と出会う前に数年間韓国の青少年を取材したのですが、高校でサークル活動を行っている子供たちはとても表情が明るくて生き生きしているんですね。一方で受験勉強だけに追われている子供たちは、毎日地獄のような日々を送っています。サークル活動をする子供たちは過去の自分にも重なって見えました。また取材を通じて子供たちと接するうちに、彼らの辛い現状を何か文化的な物で解放してあげたいと考えるようにもなりました。そんな時に「ドゥレソリ」に出会い、このような活動が青少年の希望になるのではないかと思い、映画化を決めたわけです。

duresori3.jpg
チョ・ジョンレ監督

── 今作業されている独立球団の映画も、苦しい中で夢を持って頑張る選手が主人公ですよね。やはり作品を作るうえで、そのような人を応援したいという気持ちが根底にあるのですか。

(日本語で)もちろんです(笑)。私は好きな映画のジャンルは幅広くて、スリラーやホラー、刑事物など何でも見ます。特に日本のドラマでは「新参者」や「ストロベリーナイト」が大好きで、何度も繰り返して見ました。しかし実際に自分がシナリオを書くとなると、自然に夢や希望を追い求める話になるんです。現在準備中の作品が5本ありますが、全て夢に関する内容なので、そういう話に関心があるのだと思います。

── 映画のモデルになった「ドゥレソリ」の一期生は100%大学に進学できたというお話がありましたが、大学卒業後はやはり皆、国楽(伝統音楽)の歌い手・奏者になるのですか。また職業として国楽を続けていくうえで苦労はないのでしょうか。

この撮影に参加した「ドゥレソリ」のメンバーもほぼ全員大学に進学しました。しかし面白いエピソードですが、その内の3人はこの映画をきっかけに演技の道へ進んでいます。大多数の生徒はそのまま国楽を専攻してプロの音楽家になりますが、韓国では伝統音楽の技能を活かせる場は限られていて、決して安泰とはいえません。子供たちには希望もあり、夢や目標もあるので、そのような現状は非常に残念です。大学進学と同様に、就職の際もまた大きな葛藤を抱えることでしょう。今後機会があれば、彼女たちの大学卒業後の姿も撮ってみたいと思っています。

── 実際に国楽に携わる方々もこの映画を見られたと思いますが、何か反響はありましたか。

反応は全体的にとても良かったです。これまでに高校生を扱った映画は、快活な面ばかりを強調した非常に明るい作品か、もしくは妊娠・ドラッグ・セックスなどの問題を含んだ非常に陰鬱な作品か、両極端でした。私は彼らのありのままの姿を捉えた作品がないことを残念に思っていたので、国楽専攻という特殊な立場である以前に、現代を生きる高校生の話としてこの映画を撮りたかったのです。大部分の国楽関係者はその意図に共感し、励まし、勇気を与えて下さいました。しかし、ごく一部からは「国楽を専攻する生徒が汚い言葉で罵りあったり、お酒を飲む場面が許せない」と批判も受けました。その時はまだ韓国社会では全てが受け入れられないのかと悔しくなりましたが、基本的には応援して下さった多くの皆さんのお陰で、劇場公開までたどり着けたことに感謝しています。

── この作品では生徒たちのキャラクターが皆個性的で、うまく引き出されていますが、オーディションの時のエピソードやキャスティングの理由を教えて下さい。

オーディションは面白い子供たちがたくさんいました。演技未経験の子ばかりですが、映画の撮影ということで皆楽しそうで、一生懸命演技に挑戦する姿がとても可愛らしかったです。その光景も全て撮影し、ミニドキュメンタリーとしてYOUTUBEにアップしています。その映像を見れば、映画の全体像がよく理解できると思います。エピソードは色々あるのですが、主人公の2人、スルギとアルムについてお話しすると、実は当初アルムのキャスティングにはスタッフ全員が反対していました。オーディションでの点数も一番低かったですし、彼女は他の子に比べて表情や雰囲気に若干暗いイメージがありますよね。しかし私は映画の中では彼女のようなキャラクターも必要だと思い、絶対に彼女を使いたいと主張しました。実際に撮影中も演技の面で非常に苦労しましたが、本人も頑張ってやり遂げましたし、私も最後まで愛情を持って接していましたので、結果的には大成功でした。逆にスルギはオーディションでも卓越した実力を見せ、点数も全ての項目でトップでした。


『合唱』ミニドキュメンタリー(メイキング)


取材後記

 日本のドラマを見て独学で身に付けたという得意な日本語も交え、全ての質問に真剣に、丁寧に答えて下さったチョ・ジョンレ監督。ティーチインでも常に感謝の言葉を忘れず、韓国で報告を待つ生徒たちのことを嬉しそうに語る誠実な人柄が印象的だった。しかし、その穏やかな笑顔の内側に秘められた情熱と向上心は相当なものだ。実は『合唱』も、シナリオを持ち込んだ制作会社に全て断られ、最終的に監督本人が借金した8千万ウォンで何とか撮りあげたという苦労の結晶。また伝統音楽好きが高じてパンソリの鼓手にもなり、現在は伝統文化をベースにしたコンテンツ制作会社を運営するまでに至るというエピソードにも驚かされる。これぞという目標に向かい、一途に突き進む意志の強さ、どんな時も自信を失わず夢を持ち続けるポジティブな姿勢、そして監督の制作意欲の根底にある、社会に伝えたい、応援したい、現状を変えてあげたいという思いは、自己満足の世界を越えて必ず作品に反映され、観客に本物の感動を与えるのだと実感した取材だった。

duresori4.jpg



コリアン・シネマ・ウィーク2012
 2012年10月20日(土)~10月23日(火)@韓国文化院・ハンマダンホール
 公式サイト http://www.koreanculture.jp/

『合唱』
 原題 ドゥレソリ/英題 DURESORI : The Voice of East/韓国公開 2012年
 監督 チョ・ジョンレ 主演 キム・スルギ、チョ・アルム、ハム・ヒョンサン
 コリアン・シネマ・ウィーク2012、2012大阪韓国映画週間上映作
 韓国版公式サイト http://www.duresori.co.kr/

特集 コリアン・シネマ・ウィーク2012&2012大阪韓国映画週間
 Interview 『合唱』 チョ・ジョンレ監督
 Interview 『合唱』 ハム・ヒョンサン先生&チョ・アルムさん
 Interview 『建築学概論』 イ・ヨンジュ監督
 Interview 『ハナ 奇跡の46日間』 ムン・ヒョンソン監督
 Review 『建築学概論』の魅力とヒットの理由

関連記事
 Review 『未熟な犯罪者』『合唱』『最悪の友達』 ~葛藤と希望、青少年を見つめる3監督の視線

Writer's Profile
 加藤知恵。東京外国語大学で朝鮮語を専攻。漢陽大学大学院演劇映画学科に留学。帰国後、シネマコリアのスタッフに。花開くコリア・アニメーションでは長編アニメーションの字幕翻訳を担当している。


>>>>> 記事全リスト


関連記事

Interview 『ハナ 奇跡の46日間』 ムン・ヒョンソン監督

Text by mame
2012/11/17掲載



 ひとつになることが金メダル獲得よりも難しかった…。『ハナ 奇跡の46日間』は、1991年の世界卓球選手権大会を前に結成された実在の南北統一チーム「コリア」の46日間の軌跡を、涙あり、ユーモアありのエンターテイメントとして描いた作品です。当時、韓国に卓球ブームを巻き起こしたスター選手、ヒョン・ジョンファをハ・ジウォンが、北朝鮮代表のカリスマ的なライバル選手、リ・プニをペ・ドゥナが熱演しています。

hana1.jpg

 実話をベースにした作品は多くの人の関心を呼び、プレミア上映となった「2012大阪韓国映画週間」(10月26日~10月30日@シネマート心斎橋)での前売り券は完売。超満員の拍手に迎えられての舞台挨拶でした。ムン・ヒョンソン監督はまだ30代の若手。初監督作品である『ハナ』についてインタビューを行いました。


インタビュー

── 日本での反応は?

大阪での上映の前に、映画の舞台となった幕張で千人規模の試写会がありました。私も想像していなかったのですが、この試写会は実際にチーム・コリアを応援していた在日同胞の方々の21年ぶりの再会の場にもなったそうです。あの大会以降、日本に住む同胞の方々の間でも北と南に分かれてしまい、交流の機会に恵まれなかったのが、この映画をきっかけに、今やおじさん、おばさんとなった姿で再会がかなったと聞いた時、とても不思議な気分になりました。それは一緒に来ていた俳優・スタッフたちも同じだったようで、チーム・コリアの残した功績が、韓国内だけでなく日本に住む同胞にとっても大切な記憶として存在しているのを感じられたことで、強い衝撃を受けたと共に、言葉にできないほどの感謝の気持ちで胸が熱くなりました。

── チーム・コリアについては韓国では誰もが知っている事なのでしょうか?

若い世代のほとんどがこの事を知らず、「事実に基づいたストーリー」という説明を添えなければ、大部分の韓国人には分かってもらえないのではないでしょうか。年配の方に聞いても、「そんなことあったっけ?」という言葉が返ってくるぐらいです。当時は世界選手権後、2ヶ月ほど毎日その報道ばかりだったはずなんですが、実際私も当時テレビで見ていたはずなのに、すっかり忘れていた、そんな世代のひとりですしね。今の時代は皆それぞれの生活に忙しく、多くのニュースに溢れていて、若い世代の南北関係に対する関心もすっかり薄れてしまった気がします。21年前というのは忘れてしまうほど昔ではないはずなのに残念ですよね。

hana2.jpg
ムン・ヒョンソン監督

── 北朝鮮の選手に関して、どうやってイメージを膨らませたんでしょうか?

私が初めて会った北朝鮮の方は、この映画で北朝鮮言葉を指導してくれた先生でした。その先生の言葉や、お聞きする話からイメージを膨らませたのですが、北朝鮮側の人物のイメージを作り上げるのは、失礼になってはいけないし、本当に難しかったです。同じ国だったはずなのに、なぜそんなに気を使ってしまうのかと考えると、そもそも私たちの世代には北朝鮮との良い記憶がないんですよね。生まれた時から分断されているので、違う国というイメージを持ってしまっている人も多い。私たち韓国人は北朝鮮に関する情報を教育で得ることはできるけれど、それ以上に南北関係に関心を持つきっかけはなかなかありません。そうした南北関係の教育者の方々にお会いしてお話を伺ったりしましたが、ほとんどの方が「(若者の南北関係への関心の薄さについて)教育だけでは補えないというのが今の現実だ。それでも、こうして話しあう機会を持つ事が大切なんだ」とおっしゃいました。私はこの作品を作ることで、こんな奇跡のような時間がふたつの国の間に流れていたという事を若い世代に知ってもらい、状況が劇的に変わるまではいかなくても、現在の南北関係について何かを感じてもらうきっかけにしたいと思っています。

── 事実に基づく創作という印象を受けましたが、ノンフィクションのエピソードについて教えて下さい。

この映画の資料として、在日同胞の方が制作したチーム・コリアの46日間の記録ドキュメンタリーを観たのですが、その中で一番心に残ったのが最後の日、北の選手がバスに乗せられて南の選手と離れ離れになる場面です。この場面のためにこの映画があるといっても過言ではありません。北朝鮮代表、韓国代表としてひとつのチームとなった選手たちが、この46日間で交流を深めて、最終的には選手としてではなく昔からの友人のように仲が深まったのに、離れてしまって、それから21年間、会うこともままならない。この46日間によって、まるで新しい離散家族が生まれてしまったように感じました。彼女たちはもともと離散家族ではなかったはずなのに。ですので、実在の人物、卓球についてのスポーツ映画というよりは、感情を描いたメロ・ドラマとして観て欲しいと思っています。

── 優勝したシーンで終わらず、再びライバルとして対決するシーンで終わるのには、監督の思いが込められているのでしょうか?

統一に向けての華々しいムードのまま終わりたくはなかったという思いがあります。私はこの映画で統一にかけるメッセージを叫ぶというよりも、21年前にこんな出来事があったのに、今は会うこともできず、ひとつのチームとして勝利を分かちあっても、2年後には再び敵として向き合い、今も敵同士のままでいるという現実に対して、「このままで良いのだろうか?」というメッセージを投げかけるつもりであのシーンを作りました。答えは今の世代に考えてほしい。こんな奇跡のような46日間があったという事実は、21年経った今でも十分意味があると思っていますので。

hana4.jpg
会場のシネマート心斎橋は超満席

── 韓国代表のヒョン・ジョンファ選手、北朝鮮代表のリ・プニ選手のその後について教えて下さい。

ヒョン・ジョンファ選手には、この映画の監修として携わっていただきました。撮影中はずっと一緒だったのですが、業務用の試写など観る機会は何度もあったのに、観ないと決めていたようで、幕張での試写会で初めて観た際には、当時を思い出したのか終始涙を流していらっしゃったそうです。今年のロンドン・パラリンピックで、ヒョン・ジョンファ選手は大韓卓球協会専務理事として、リ・プニ選手は朝鮮障害者体育協会書記長として再会が期待されていたのですが、残念ながら時期があわず、再会はかなわなかったそうです。

── 今回は卓球の世界選手権が舞台となっていますが、卓球に対して個人的な思い入れはありますか?

そうですね。今の韓国では卓球はそんなに人気がないのですが、映画にあるように、21年前はヒョン・ジョンファ選手の活躍もあり、韓国では卓球ブームでした。私も当時は卓球をよくやっていました。

── 日本ではちょうど今年、ロンドン五輪で女子団体が銀メダルを獲ったので、たくさんの人が関心を持って本作を見てくれるのでは?と期待しています。

私も愛ちゃん(福原愛選手)は知っています。一緒にプロモーションで回る機会が持てたら嬉しいですね!(笑)

── これからの作品の予定を教えてください。

人の感情を重視した作品を撮り続けたいですね。この映画も、実際の出来事を通して人の感情を描きたいというところから始まっています。男女関係、日韓関係など、様々な題材がありますが、人の気持ちに集中しながらその感情を重視した作品を作りたいですね。



取材後記

 この作品は舞台が日本ということもあり、在日の方々にとって忘れられない出来事のようで、劇場内では多くの韓国語が飛び交っていました。今年は『かぞくのくに』のヒットもあり、映画ファンの間でも在日や南北問題への関心が深まっているのではないでしょうか。

hana3.jpg

 取材を終えて感じたのは、現在でも北朝鮮と韓国の接点は思ったより少ないという事への驚きでした。韓国映画を見慣れている者としては、南北問題が身近なジャンルとして成立している気がしていましたが、当の韓国では、もはや違う国とみなして関心を持たない人もいるという事実には、60年以上分断国家として存在している北朝鮮と韓国の問題の根深さを改めて感じさせられました。

 舞台挨拶で「なぜ21年経った今、この作品を作ろうと思ったのか?」との質問に対して、監督は「私も昔この瞬間をテレビで観ていたが、すっかり忘れてしまっていた。数年前たまたま製作者とその話になり、これは映画化すべき出来事だと思った。タイミングを図ったのではなく、忘れてはいけない記憶だと思ったから」と答えていました。北朝鮮への関心が薄れているという現実に対して、映画の持つ可能性に賭けたいという、熱い思いが感じられる言葉でした。

 「韓国での原題は『KOREA』なんですけど、邦題は『ハナ(韓国語で【ひとつ】の意)』なんですよね…」。ムン監督もこの邦題には感じ入るものがあるようで、ひとつひとつの言葉をかみしめるようにゆっくりと思いを語ってくれる姿が印象的でした。


2012大阪韓国映画週間
 2012年10月26日(金)~10月30日(火)@シネマート心斎橋
 公式サイト http://osaka.korean-culture.org/

『ハナ 奇跡の46日間』
 原題 コリア/英題 As One/韓国公開 2012年
 監督 ムン・ヒョンソン 主演 ハ・ジウォン、ペ・ドゥナ
 移動映画村「韓の風」 in ベイサイド、2012大阪韓国映画週間上映作
 2013年4月20日(土)より、オーディトリウム渋谷ほか全国順次公開
 公式サイト http://hana46.jp/

特集 コリアン・シネマ・ウィーク2012&2012大阪韓国映画週間
 Interview 『合唱』 チョ・ジョンレ監督
 Interview 『合唱』 ハム・ヒョンサン先生&チョ・アルムさん
 Interview 『建築学概論』 イ・ヨンジュ監督
 Interview 『ハナ 奇跡の46日間』 ムン・ヒョンソン監督
 Review 『建築学概論』の魅力とヒットの理由

関連記事
 Review 『ハナ 奇跡の46日間』 ~北朝鮮描写に見る若手監督の心意気

Writer's Profile
 mame。1983年、岡山県生まれ。2004年、韓国・弘益大学美術学部に交換留学。韓国映画は留学を決めるきっかけにもなった。専攻は木版画。現在は会社勤めをしながら作品制作を続けている。


>>>>> 記事全リスト


関連記事

News メイド・イン釜山独立映画祭2012で、福岡インディペンデント映画祭推薦作上映

Text by 井上康子
写真提供:FIDFF
2012/11/8掲載



 福岡インディペンデント映画祭(FIDFF)の姉妹映画祭で、釜山独立映画協会が主催する「メイド・イン釜山独立映画祭(MIB)」が、11月21日から25日まで釜山の「映画の殿堂」で開催されます。FIDFFとMIBは、2010年より互いの作品を上映する交流を行っています。今年9月に開催されたFIDFFでMIBの作品が上映されましたが、今度はFIDFF推薦作品がMIBで招待上映されます。

 今年のFIDFFで上映された『Grandma』のKim Ji Gon(キム・ジゴン)監督の新作で『Grandma』の続編といえる『Granma - Cement Garden』も上映されます。『Grandma』は釜山の再開発予定地に住むおばあさんたちを描いた作品で、再開発の問題という政治的なテーマを含みつつ、おばあちゃんたちのパワーと暖かみにあふれた作品でした。今年のMIB上映作から来年のFIDFF上映作が選ばれる予定なので、『Granma - Cement Garden』が来年福岡で上映されるかも…と期待も高まります。

fidff2012-2.jpg
FIDFF代表・西谷氏(左)とキム・ジゴン監督(右)

 開幕作は、FIDFF2011で来日されたKIM Young jo(キム・ヨンジョ)監督の新作『My family portrait』。その他、日韓ドキュメンタリー交流セミナーも開催されます。

 会場の「映画の殿堂 http://www.dureraum.org/ 」は釜山国際映画祭のメイン会場になっているところです。フィルムや映像関連の資料を収集・保管・上映するシネマテークもあります。最寄駅のセンタムシティには世界最大級の広さを誇る新世界百貨店や各種エンタメ施設が揃っていますので、連休に釜山に行かれる方は立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

FIDFF代表・西谷氏からのメッセージ
 MIBは今年で14回目を迎えます。韓流ブームが高まるころ、釜山では釜山国際映画祭が一躍、世界の映画祭の代表として脚光をあつめ、それに連動するかのように、釜山の学校など教育機関には様々な映画の人材育成プログラムが立ち上げられました。そこで韓国の映画関係者や海外で映画について学び帰国した実践的な人々が釜山に集いました。そうして教育関係者や映画関係者により結成されたのが釜山独立映画協会です。産官学の垣根を越え、映画の人材育成や映画理論の教育といった文化的な面に重きがおかれています。しかし首都・ソウルとは違い映画だけで生活し制作する環境は釜山にはありません。そこで釜山独立映画協会が主催し、学校のキャンパスやシネマテーク釜山でMIBが始められました。釜山における独立映画の特徴は、釜山をロケーションにしていること、また映画理論や制作現場という実践の関係が密接であることです。釜山ではテレビ局・学校・行政間の垣根が低く、人脈の強弱でイベントの成功如何が左右されます。それに比べ日本は、産官学といった縦の関係が強く、横の広がりが弱い気がします。対岸の地で、毎年FIDFFが招待していただけるのも、開放的な港湾都市という伝統に相通じる気質に培われ芽吹いたことかもしれません。是非この機会に、アジアを代表する映画都市・釜山でインディペンデント映画の魅力に浸ってみてはいかがでしょうか。

 以下、FIDFF関連企画を中心にMIBのスケジュールをご紹介します。この情報はFIDFFからご提供いただいたもので、映画祭スケジュールの一部です。日程は変更される場合がありますので、詳細はFIDFFにお問合せ下さい。FIDFFの「お問合せ」ページからご連絡いただければ、現地でFIDFFのスタッフと合流できるように連絡をくださるそうです。


メイド・イン釜山独立映画祭2012
 期間:2012年11月21日(水)~11月25日(日)
 会場:釜山・映画の殿堂
 公式サイト http://ifmib.org/(2012/11/8現在準備中)

<スケジュール FIDFF関連企画を中心に>
11月21日(水) 19:00
 開幕式&開幕作品『My family portrait』 監督 KIM Young jo(キム・ヨンジョ:FIDFF2011ゲスト)
11月23日(金) 14:00
 『Granma - Cement Garden』 監督 KIM Ji gon(キム・ジゴン:FIDFF2012ゲスト)
11月23日(金) 16:00
 『祝の島』 監督 纐纈あや、撮影監督 大久保千津奈(FIDFF2012招待作品)
11月23日(金) 18:00
 日韓ドキュメンタリー交流セミナー
11月23日(金) 20:00
 FIDFF短編セレクション(上映順未定)
 『Sugar Baby』 監督 隈元博樹(FIDFF2012優秀作品)
 『今村商店』 監督 告畑綾(FIDFF2012 5分ムービー部門グランプリ)
 『FROM THE DARKNESS』 監督 畑井雄介(FIDFF2012優秀作品)
 『777号に乗って』 監督 井上博貴(FIDFF2012優秀作品・子役賞)
11月24日(土) 14:00
 『かしこい狗は、吠えずに笑う』 監督 渡部亮平(FIDFF2012 120分ムービー部門グランプリ・最優秀作品賞)
11月25日(日) 19:00
 閉幕式&受賞作品の上映


<関連記事>
Report 福岡インディペンデント映画祭(FIDFF)2012
News 速報! 9月の福岡は韓国映画天国 ~アジアフォーカス・福岡国際映画祭、福岡インディペンデント映画祭、東アジア映画フェスティバル~


Writer's Note
 井上康子。毎年、FIDFFをレポートしています。この原稿を書きながら、連休だし、私も今度はMIBで作品を見て、FIDFF作品&監督が招待されて交流を深めるところが見たいなあ、釜山のおいしい魚が食べたいなあ、新世界百貨店の巨大なスパにも行きたいなあという思いがふくらんできました。


>>>>> 記事全リスト


関連記事

Review 『ホン・サンス/恋愛についての4つの考察』

Text by Kachi
2012/11/6掲載



 ホン・サンスの2010年の作品『ハハハ』を試写で見ていて、ジュンシクとその愛人ヨンジュがスイカを食べるシーンが脳裏に焼き付いた。二人は包丁を入れた先から無造作にかぶりつくが、下品にむさぼり食うような印象では不思議とない。ホン・サンス作品が語る、だらしなくも品のある男女の恋愛模様、そしてさも美味しそうにたいらげられるスイカが、ヨンジュだけでなくホン・サンス作品の女性たちに共通しているみずみずしさとオーバーラップしているように思えてならない。この場面には、理屈ではなく感覚に訴えかけてくるホン・サンスの世界が端的に表されているのだ。

 大スペクタクルも感動もない物語は、言葉でつじつま合わせて説明すると味気なくなってしまうのに、実際作品を見るとこんなにも面白く、愛される作り手というのはホン・サンス以外にあまりいない。彼の作品は一貫している。男たちは映画監督や役者・詩人などのクリエイターで、大言壮語はするが大抵うだつが上がらず酒を飲んでは周囲にくだを巻き、女好きの性に振り回されている。不倫・三角関係・昔の恋の再燃といろいろあるけれど、女たちはしょうもない彼らにたやすく口説かれてあっけらかんと一夜を共にしてしまう。実は伏線が盛り込まれていて、少しずつ繋がっていたり、また異なっていたりと巧みな構成なのに、くすくす笑いを誘い、いちいちつっこまずにはいられない会話や、自分たちも彼らの日々にいるような錯覚を覚えるほど自然な日常の描写には、そんな作為はみじんも感じられない。おそらくホン・サンスは恋に落ちる男女が、ひいては恋に振り回されるだらしない人間が可愛くてたまらないのだろう。ゆえに作品の中の彼ら彼女らは、たとえセクシャルな場面であっても下卑たものにならないのだ。そして今回、『ホン・サンス/恋愛についての4つの考察』と銘打たれて一斉上映される4作品『よく知りもしないくせに』(2009年)、『ハハハ』(2010年)、『教授とわたし、そして映画』(2010年)、『次の朝は他人』(2011年)では、これまでどちらかといえば受け身がちだった女性を、もっとしたたかで魅力的に描いている。それも分かりやすいセクシーさだったりものすごい美人というのとは違うというのが、一筋縄ではいかないホン・サンスらしい。


hongsangso-yokusiri.jpg
『よく知りもしないくせに』

 『よく知りもしないくせに』。映画監督のギョンナム(キム・テウ)は審査員として映画祭に参加するが、いまいち居場所がない。おくびにも出さないが他人の評価を気にしていて、後輩がほめられるのが面白くなく「次は200万人が見るような映画を作る」とひそかに息巻く俗っぽさを持っている。人生の伴侶を見つけたいと言うが女たらしで、その上、女難の相があるらしく、友人の奥さんシン(チョン・ユミ)、映画祭プロデューサーのヒョニ(オム・ジウォン)と、行く先々で色っぽい災難に見舞われ、ほうほうの体で逃げ出すの繰り返し。先輩の若妻で昔の恋人スン(コ・ヒョンジョン)との焼け木杭に火をつけ、やっと伴侶を見つけたかと思いきや…。女の方は現実的で醒めていて「人生の伴侶」なんて言葉にほだされない。シンとの関係を疑い激高した友人にギョンナムが言った「よく知りもしないくせに」の一言は、しかしラストでスンから彼自身にも吐かれる。こうしてセリフ「よく知りもしないくせに」は、そう言い放った者にそのままそっくり返って輪のようにしてつながり、誰も、観客さえも、すべてを知ることができない空白を残したまま映画は幕を閉じる。


hongsangso-hahaha.jpg
『ハハハ』

 『ハハハ』。港町・統営(トンヨン)で過ごした夏を、映画監督ムンギョン(キム・サンギョン)とその先輩ジュンシク(ユ・ジュンサン)がふりかえる。ムンギョンは博物館ガイドのソンオク(ムン・ソリ)との、ジュンシクは愛人ヨンジュ(イェ・ジウォン)との艶っぽい思い出が、それぞれ、さながら映画の「カット!」のかけ声のような乾杯の合図であざやかにスクリーンに映し出される。ジュンシクはヨンジュに迫られっぱなしで、いつまでも煮え切らない関係を続けようとしながら甘い言葉をささやくのだが、その喉元に刃の切っ先を突きつけるような「じゃあいつ結婚してくれるの?」というヨンジュの一言にたじたじになる。ムンギョンも、その脚に(!)一目惚れしたソンオクを「気持ち悪い」と言われながら追いかけ続けてついに口説き落とすのだが、思わぬところで人生が交叉していたことに気づいて魔法が解けたのか、ソンオクは手元をするりと逃げていく。一方すんでの所ですれ違いを繰り返した運命のめぐりあわせに、のんきに酒宴をくり広げる男二人は気づかない。いや気づいてはいるのだろうが、互いの火遊びには深入りしそうにない。惚れっぽいわりにあっさりしていて、ソンオクを深追いしなかったムンギョンの軽みとともに、二人のやり取りに粋を感じた作品だった。


hongsangso-kyojyu.jpg
『教授とわたし、そして映画』

 『教授とわたし、そして映画』。近年あまり作品が撮れなくなっている映画監督のジング(イ・ソンギュン)。学生時代のオッキ(チョン・ユミ)との恋に隠されていた秘密は、彼女が撮った一本の映画によって明らかになる。ジングはあの頃やっとオッキを手に入れて有頂天だったのに、彼女は男を、恋愛を冷静な観察眼で眺めていたのだった。妻の口から突然出てきた自分じゃない男の名前にジングの心はさざなみ立つが、オッキとの一件と同じようにジングは最後まで真相を知るよしもない。恋の諸々は男性の物語として語られて女性は男性の欲望に受け身、なんて思っていると痛い目に遭う。男によって語られた物語を女性の目で再び語り直し、『よく知りもしないくせに』や『ハハハ』で男性たちが語りもらした空白を埋め、「ほら、こんなことが」と女性が差し出してみせた本作はホン・サンスの新境地といえる。とはいえオッキの検証の結末には女性だって無傷ではいられない。冷や汗をかく向きも多かろう。恋愛とは諸刃の刃なのだと痛感する。


hongsangso-tugi.jpg
『次の朝は他人』

 『次の朝は他人』。映画監督のソンジュ(ユ・ジュンサン)は先輩のヨンホ(キム・サンジュン)に会いに北村(プッチョン)という街へ向かうが、待ちぼうけをくらう。元恋人キョンジン(キム・ボギョン)を訪ねて一夜を過ごし、割り切っているとも未練たっぷりとも分からないあっさりとした別れをする。「他人に迷惑をかけてまですることではない」と、もう恋愛をしないと誓ったのに、その舌の根も乾かないうちにキョンジンとそっくりなバーのママ、イェジョン(キム・ボギョン二役)に一目惚れする。賢そうで肉感的な大学教授ボラム(ソン・ソンミ)が話す「偶然の出会い」のエピソードに、「人間は理由のないことの集合体で、無理に理由を付けている」と応じるソンジュのイェジョンとの出会いは運命なのか? それとも単なる偶然なのだろうか? 影のある感じのイェジョンは、ヨンホ先輩曰く「相当な訳あり」らしいが、たとえそうだろうと恋に身を投じずにはいられない純粋なぐらい無節操なソンジュはむしろすがすがしく、そんな彼にやや強引にキスされる瞬間、イェジョンも輝くのだ。そして、ボラムに思いを寄せているらしいヨンホ先輩と、「男を待っておかしくなるような女じゃないわ」と言ったのにソンジュに恋いこがれ続けるキョンジンが彩りを添える。モノクロで撮影されて抑制が利いた画面で絡み合う恋模様が艶やかだ。

 どの作品に出てくる女性たちも、触ったら皮ふが薄そうで汁気の多い果物のような、官能的な印象を与える。美味しく味わった男性は、しかしうっかり噛んだ種の苦さに甘美な恋のしっぺ返しを思う。その苦さはハッピーエンドなのか、はたまたバッドエンドなのか…。ありきたりなラブストーリーにはない結末は煙に巻かれたようでいて、あふれる余情に「また次の作品を!」と言いたくなる。登場人物たちの、打算なく当然のように互いを求め合う姿は、(もし、そういったものがあるならば)原始的な恋の形そのものだ。そんな普遍的な姿を、ホン・サンスは、人物の表情を極端に追ったりして無理に観客の感情移入を誘うこともしない。一定の距離を保って時々ズームしてみたりする、気ままだが公平で、人間への愛おしさがにじんでいるようなカメラワークで映し続けるのだ。


特集『ホン・サンス/恋愛についての4つの考察』
 『よく知りもしないくせに』 原題 よく知りもしないで/英題 Like You know It All/韓国公開 2009年
 『ハハハ』 原題 ハハハ(夏夏夏)/英題 Hahaha/韓国公開 2010年
 『教授とわたし、そして映画』 原題 オッキの映画/英題 Oki's Movie/韓国公開 2010年
 『次の朝は他人』 原題 北村方向/英題 The Day He Arrives/韓国公開 2011年
 2012年11月10日(土)より、シネマート新宿ほか全国順次ロードショー
 ※ シネマート新宿では公開記念スペシャル・トークショーを開催。加瀬亮×ホン・サンスのトークあり。
 公式サイト http://www.bitters.co.jp/4kousatsu/

Reviewer's Note
 Kachi。1984年、東京生まれ。図書館勤務。ホン・サンスといえば、タイトルの妙も作品の魅力のひとつ。『気まぐれな唇』からホン・サンス作品を配給しているビターズ・エンド佐竹さんによると「なるべく作品の内容が伝わる邦題を考える」とのこと。ただし『ハハハ』は「これ以外、表現のしようがなかった」となかなか配給泣かせな秘話も…。ホン・サンス独特の雰囲気を壊さない邦題には、いろいろ苦労があるのでした。


>>>>> 記事全リスト


関連記事

News 第13回東京フィルメックスで『ピエタ(原題)』『3人のアンヌ』ほか話題の韓国映画4作品上映!

2012/11/2掲載
写真提供:東京フィルメックス事務局



 アジアを中心とした世界から独創的な作品を集めた映画祭「第13回東京フィルメックス」が、有楽町朝日ホールをメイン会場に、11月23日(金・祝)から12月2日(日)まで開催される。

filmex2012.jpg

 東京フィルメックスは、2000年の第1回以来、キム・ギドク、イ・チャンドン、ソン・イルゴンといった韓国を代表する作家の作品を上映し続けている韓国映画ファンにはお馴染みの映画祭。近年では『息もできない』のヤン・イクチュン、『プンサンケ 豊山犬』のチョン・ジェホン、『ムサン日記~白い犬』のパク・ジョンボムら新進気鋭の監督をいち早く日本に紹介したことで知られる。先日、第25回東京国際映画祭で最優秀男優賞と審査員特別賞を受賞した『未熟な犯罪者(原題:犯罪少年)』のカン・イグァン監督デビュー作『サグァ』を初めて日本で上映したのも東京フィルメックスだ。

 東京フィルメックスの特長は、これと見込んだ作家は、何があろうともその作品を徹底的に上映・紹介し、その作家活動を応援し続けるということ。今年上映される韓国映画のうち、『グレープ・キャンディ』のキム・ヒジョン、『3人のアンヌ』のホン・サンスは自作が東京フィルメックスで上映されるのは2回目、『ピエタ(原題)』のキム・ギドクに至っては4回目となる。アートフィルムを制作する作家にとって、映画を完成させれば東京フィルメックスで上映され、日本のシネフィルと交流できるというのは大きな励みになっているであろうことは想像に難くない。

filmex2012-grapecandy.jpg
『グレープ・キャンディ』
原題 青葡萄飴:17年前の約束/2012年/監督 キム・ヒジョン

 さて、本年、上映される韓国映画は4作品。『グレープ・キャンディ』は、韓国勢唯一のコンペティション部門招待作。少女時代に受けた心の傷を乗り越えようとする二人の女性の葛藤を描いた『13歳、スア』(第8回東京フィルメックス上映作)のキム・ヒジョン監督の新作だ。9月のベネチア国際映画祭、10月の東京国際映画祭と、ここのところ韓国映画の受賞が続いているので、11月は東京フィルメックスでも…と期待したいところだ。

filmex2012-inanothercountry.jpg
『3人のアンヌ』
原題 他の国で/2012年/監督 ホン・サンス

 栄えあるオープニング作品に選定されたのは、カンヌ映画祭コンペティションでも上映されたホン・サンス監督の『3人のアンヌ』。フランスの女優イザベル・ユペールが主演し、ホン・サンス作品に出演経験のある俳優ユ・ジュンサン、チョン・ユミ、ムン・ソリ、ムン・ソングンらと共演している。なお、11月10日(土)より、シネマート新宿で始まる特集『ホン・サンス/恋愛についての4つの考察』では、同監督の近作『よく知りもしないくせに』、『ハハハ』、『教授とわたし、そして映画』、『次の朝は他人』が上映される。前述の常連俳優も大挙出演しているので、あわせて楽しみたい。

filmex2012-pieta.jpg
『ピエタ(原題)』
原題 ピエタ/2012年/監督 キム・ギドク

 特別招待作品で上映される『ピエタ(原題)』は、キム・ギドクの最新作。第69回ベネチア国際映画祭で最高賞にあたる金獅子賞を韓国映画として初めて受賞した今年の韓国映画を代表する一本。オープニング作品の『3人のアンヌ』と並んでチケットの早期売り切れが予想されるだけに、11月3日(土・祝)の前売券発売と同時にチケットは確保しておきたいところだ。

filmex2012-jiff2012b.jpg
『チョンジュ・プロジェクト2012』
原題 デジタル三人三色2012/2012年/監督 ヴィムクティ・ジャヤスンダラ、ラヤ・マーティン、イン・リャン
※ 写真はラヤ・マーティン監督の『グレート・シネマ・パーティー』

 同じく特別招待作品として上映される『チョンジュ・プロジェクト2012』は、韓国・全州(チョンジュ)国際映画祭のオリジナル企画「デジタル三人三色」の2012年版だ。全州国際映画祭がアジア圏を中心に選出した三人の監督に依頼して製作するオムニバス映画だが、今年は、スリランカのヴィムクティ・ジャヤスンダラ、フィリピンのラヤ・マーティン、そして中国のイン・リャンが選ばれている。韓国人監督作はないものの、韓国の映画祭が主導する汎アジア作品として楽しみたい。


第13回東京フィルメックス
 期間:2012年11月23日(金・祝)~12月2日(日)
 会場:有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ 日劇、東劇
 料金:前売1回券 \1,300/当日一般 \1,700ほか
     ※ 前売券はチケットぴあにて、11/3(土)より発売
 公式サイト http://filmex.net/


>>>>> 記事全リスト


関連記事

Copyright © 1998- Cinema Korea, All rights reserved.
Powered by FC2 Blog