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Column 「今年も」の人も「今年から」の人も楽しめる! ~第8回大阪アジアン映画祭のススメ

Text by mame
2013/2/9掲載



 今年で8回目を迎える大阪アジアン映画祭。

 大阪ではこの時期になると毎年、地下鉄の車内吊り広告でその開催を知ることになります。これまでの広告では、『道 ~白磁の人~』、日韓合作コメディ『東京タクシー』、イム・サンス監督の『ハウスメイド』と、韓国映画好きには「おっ!」と引っかかるラインナップに興味が湧いたものの、恥ずかしながら今まで参加したことはありませんでした…。

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ゼミナール最終回の模様 中央が暉峻ディレクター

 大阪アジアン映画祭では、プログラミングディレクターを務める暉峻創三さんによる特別連続ゼミナールが開講されています。「映画祭ビギナーな私には絶好の機会!」と参加してみたら、アジア映画への興味も俄然膨らんできました!

 今年度の講座は9月の終わりから始まり、月1回ペースで全5回。偶然にも3回分のテーマが韓国映画で、「2012年は『建築学概論』のヒットに代表されるように、世界的な【大人の回顧録】ブーム」、「ホン・サンスと対照的な監督はポン・ジュノ」、「『遭遇』主演のミン・ジュンホさんを迎えての映画談義」など。アジア映画に膨大な知識量を持つ暉峻さんから語られる話はとても新鮮でわかりやすく、自然と自分の視点が外に開かれていく気分です。

 受講生のプロフィールを拝見すると、皆さんかなりの映画通なのですが、そのほとんどがリピーターになっているのも、最新のアジア映画事情を知ることができるこの講座内容なら、うなずけます。最終回は、今年のラインナップが決定した週に設定されているので、マスコミ向けのプレスリリースよりも先に、しかも作品を選定した暉峻ディレクターご本人から映画祭の全貌を聞くことができるというおトクなプログラム! 講座を受ける度にアジア映画への関心が高まっていくので、最終回のラインナップ発表では受講生の皆さんの前のめりな熱気に、暉峻さんも圧倒され気味でした。


 今年の上映作品数は全44本。そのうちの韓国映画3本をご紹介します。

 コンペティション部門に出品される『裏話 監督が狂いました』(イ・ジェヨン監督)は日本初公開。『情事』『スキャンダル』で知られる鬼才、イ・ジェヨン監督による、映画制作現場を舞台にしたフェイク・ドキュメンタリーで、まさに業界の裏をのぞき見した気分に浸れそうです。

 特別招待作品部門ではキム・コッビも出演する『1999、面会~サンシャイン・ボーイズ』(キム・テゴン監督)を上映。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭への出品も決まっている本作ですが、コッビ嬢は夕張に3年連続来場とのこと。夕張メロンはありませんが、大阪も名物「粉もん」を武器に、昨年の『蒼白者 A Pale Woman』に続いて2年連続の来阪を期待したいところです。

 インディ・フォーラム部門では『離ればなれの』(キム・ベッチュン監督)が日本初公開。今年は「越境」をテーマに、アジアから選りすぐりのインディペンデント映画が集っているこの部門ですが、本作も韓国にやってきた中国朝鮮族の姉弟が主人公です。

 純粋な韓国映画は以上ですが、マレーシア出身のリム・カーワイ監督による『Fly Me to Minami~恋するミナミ』は、大阪の繁華街ミナミを舞台に日・韓・香港の俳優陣が繰り広げるラブストーリー。香港映画『メモリー -First Time-』は韓国映画『アメノナカノ青空』のリメイクで、イム・スジョンの役をアンジェラベイビーが演じています。他にも、大阪アジアン映画祭2011で大好評を博した韓国ロケのタイ風韓流?コメディ『アンニョン! 君の名は』を生み出した、タイのGTH社の特集(2PMのニックンも出演する『セブン・サムシング』も上映!)など、注目作品が満載です。


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 大阪アジアン映画祭の魅力は、なんといってもアジア全土から集められる最新話題作の多様性、そして「オモロイもん好き」の大阪の特色にあわせてなのか、「観るとハッピーになれる」作品が多いのも特徴です。多彩なラインナップに目移りしますが、暉峻さんいわく「なぜこの作品が?と思われるような目立たない作品こそが実は大傑作」との事。アジア各国の秀作はもちろん、日本の新しい才能にも要注目とのことなので、迷った際にはこの言葉を思い出してスケジュールを練りたいものです。

 第8回大阪アジアン映画祭は3月8日(金)~3月17日(日)までの10日間、市内5つの映画館と2つのホールを会場に開催されます。上映作品は日・中・韓はもちろん、インドやイラン、果てはキルギスまで、計15の国と地域に及びます。今回は実現しませんでしたが、将来的にはなんと北朝鮮の作品も招待検討中とか。芸術性はもちろん、地元民の「娯楽」として愛されている映画が揃う大阪アジアン映画祭なら、「今年も」の人も、「今年から」の人も、きっと楽しめるはずです。


第8回大阪アジアン映画祭
 期間:2013年3月8日(金)~3月17日(日)
 会場:梅田ブルク7、シネ・ヌーヴォ、梅田ガーデンシネマ、第七藝術劇場、プラネットプラスワンほか
 公式サイト http://www.oaff.jp/

Writer's Note
 mame。大阪アジアン映画祭の連続ゼミナールでは、受講生特典として過去に上映した作品のDVD貸出が可能です。私も『東京タクシー』と、ジョニー・トー監督作『単身男女』を鑑賞。どちらもクスッと笑える場面満載で、ますます映画祭への期待が膨らみました。


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Column 謹賀新年! 「2012年 私の3本」

2013/1/9掲載



 遅ればせながら、明けましておめでとうございます。

 シネマコリアのライター陣が、2013年を見据えつつ昨年を振り返って「私の3本」をお届けします。2012年に見た韓国映画(劇場、映画祭、DVD、TV、韓国で鑑賞、新作・旧作など何でもオーケー)から各自が自由にテーマを設定して、とっておきの3本をチョイス。

 皆さんのお気に入りの作品は入っているでしょうか?!

 2013年も皆様が素敵な韓国映画と出会えますよう、願いを込めて。


井上康子

 年が明けても私の心に留まったままで、今年、日本でさらに注目してほしい作品。『はちみつ色のユン』は、国際養子という社会問題を描いているだけではない。アイデンティティの模索、心の成長という人生の問題をリアルに描いている。個々人の人生の悩みを解決してはくれないまでも、励まし、歩みを促してくれる名作。『子猫をお願い』『もし、あなたなら~6つの視線』のチョン・ジェウン監督によるドキュメンタリー『語る建築家』はソウルで見た。建築家チョン・ギヨンの活動を晩年のインタビューや建築物によって紹介し、ガンを患っていた彼が亡くなるまでの過程も描いている。仕事や人生の意味を考えさせてくれる秀作。アジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映された『バラナシへ』は、登場する女性たちの悲しみが作品独自の破壊的なエネルギーによって心に焼き付けられて消えない異色作。

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『はちみつ色のユン』 ポレポレ東中野、下北沢トリウッドで上映中&順次全国公開


hebaragi

 女優の存在感が印象的だったものを3本挙げる。韓国映画の観客動員記録を更新した『泥棒たち』では、チョン・ジヒョンが縦横無尽に活躍するアクション・シーンが楽しい。「ルパン三世」の峰不二子を彷彿とさせるような彼女の衣装も見どころのひとつで、ファンにとってはサービス満点のシーンの数々がストーリーを華やかに彩る。『白夜行-白い闇の中を歩く-』では、これまで純愛やラブコメの印象が強かったソン・イェジンがイメージを大きく覆す「屈折した愛」の形を演じ切り、新たな魅力を解き放つことに成功した。彼女の「氷の微笑」を日本版ドラマでの綾瀬はるかや映画版の堀北真希と比較してみるのも興味深いだろう。キム・ギドク監督がベネチア国際映画祭で最高賞を受賞した『ピエタ(原題)』では、聖女と悪女が同居しているかのようなチョ・ミンスのミステリアスな表情が見る者の心に深く迫り、キム・ギドク ワールドの魅力をさらに高めている。

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『ピエタ(原題)』 今夏、Bunkamuraル・シネマにて公開予定


加藤知恵

 2011年に新人賞を総なめにし、2012年も猛進を続けた若手俳優イ・ジェフンの出演作から、ジャンルも規模も異なる作品をピックアップ。まず彼の長編初主演作であり、繊細で不安定な思春期の高校生を丁寧に演じた『番人/Bleak Night』。インディペンデント映画としては異例の2万人を動員し、国内外の映画祭でも高評価を受けた。そして若き中隊長役として一気に知名度を高めた出世作『高地戦』。心理戦の秀逸な描写により、いわゆる戦争ブロックバスターとは一線を画す傑作だ。最後は他の2作とはイメージを一新、恋愛に奥手で純粋な男子学生の役で女性の心を掴んだ『建築学概論』。この作品は「初恋ブーム」を巻き起こし、ここ数年不振だった韓国の恋愛映画に新たな潮流をもたらした。作品の質・量ともに充実し、かつてないほどの盛り上がりを見せた2012年の韓国映画界。10月末に入隊したイ・ジェフンが復帰する2年後もこの勢いが続いてくれることを願う。

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『建築学概論』 初夏、新宿武蔵野館、シネマート心斎橋ほか全国順次公開


Kachi

 傑作に埋もれてしまうマニアックな3本を選出。『人類滅亡報告書』は、人類滅亡のディストピアとユートピアを、キム・ジウン、イム・ピルソンの2人が描く。韓国映画にはめずらしいゾンビも登場する壮大な悪ふざけと、端正な物語のオムニバスを大いに楽しんだ。キム・ギヨン『玄海灘は知っている』は、特集上映「アジア映画の森」で鑑賞。戦争の悲惨さと差別がテーマだが、様相はホラーか怪獣映画。しかし、計算されたセリフと悪趣味さは唯一無二と改めて実感した。タイトルがすごい『カエル少年失踪殺人事件』。猟奇的雰囲気はあるが、実は「センセーショナリズムの犠牲」に切り込んでいる意外さに驚いた。ジャンル分けできない怪作だった。社会派の名作が続く韓国映画だが、もっとハチャメチャなカルト作も見たい。今年公開の『ヨンガシ 変種増殖』に期待している。

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第25回東京国際映画祭<アジアの風>部門で上映された『人類滅亡報告書』


西村嘉夫

 「私の3本」は『ワンドゥギ』『サニー 永遠の仲間たち』『合唱/ドゥレソリ』です。大の好物、青春映画から選びました。特に『合唱/ドゥレソリ』はオリジナル楽曲の音楽性も抜群! ハム・ヒョンサン先生からいただいたサントラCDが今でもヘビロテしてます。2012年はシネマコリアにとっても変化の一年になりました。新たにお二人からレビュー執筆の申し出を頂戴したのをきっかけに、インターネットを通じた情報発信活動は、情報中心から記事中心に。ウェッブ、メルマガをマイナーチェンジし、ツイッターの正式運用も始めました。シネマコリアは自発性重視の団体ゆえ、一個人の「これをやりたい!」という強い思いがそのまま団体の活動につながっていくのだということを再確認しました。2013年も韓国映画が、私たちの生活にどんな出会いと変化、そして潤いをもたらしてくれるのか、楽しみにしています。

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異例のロングランとなった『サニー 永遠の仲間たち』



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Column 「日韓シネマ・エクスチェンジプロジェクト」で『ダンシング・クイーン』福岡公開 ~その先にあるものは?

Text by 西村嘉夫
2012/12/1掲載



 姉妹都市である福岡市と釜山市が「日韓文化交流と映画産業の発展」を目的とした連携事業「日韓シネマ・エクスチェンジプロジェクト」を発表した。福岡では、日本未公開の韓国映画が12月から来年3月にかけて上映され、釜山では日本映画が上映される。

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『ダンシング・クイーン』

 プロジェクト第1弾として、12月8日(土)より、T・ジョイ博多で上映されるのが、イ・ソックン監督の代表作『ダンシング・クイーン』(2012年)。韓国で400万人の観客を動員した大ヒット作であり、9月に開催されたアジアフォーカス・福岡国際映画祭2012ではオープニング上映され、観客投票2位で熊本市賞を受賞した、日韓の観客から愛された作品だ。

 『ダンシング・クイーン』のイ・ソックン監督は福岡と浅からぬ関係がある。2000年に制作した短編『全人類に平和を/For the Peace of All Mankind』が福岡アジア映画祭2001で、長編監督デビュー作『放課後の屋上』(2006年)も福岡アジア映画祭2006で上映されており、長編第3作となる『ダンシング・クイーン』も含めるとこれまで3作品が福岡の映画祭で日本初公開されているのだ。残念ながらいずれの作品も劇場公開には至っていないのだが、大げさに言うと「福岡が選び、福岡が育てた監督」といえるかも知れない。

 さて、福岡にはもうひとつ重要な映画祭がある。毎年9月に開催されている福岡インディペンデント映画祭(FIDFF)だ。この映画祭は、インディーズ作品の上映を通じた若手作家の育成・交流を目的としており、韓国の「釜山国際短編映画祭」「メイド・イン釜山独立映画祭」と作品の相互交換上映や共同制作を行っている。今回発表された「日韓シネマ・エクスチェンジプロジェクト」は市が主導する商業映画の交換プロジェクトだが、それより前から民間非営利ベースでインディーズ作品の交換上映が行われていたのだ。

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左から、福岡アジア映画祭、福岡インディペンデント映画祭、アジアフォーカス・福岡国際映画祭のポスター
各々、前田秀一郎氏、西谷郁氏、梁木靖弘氏がディレクターを務める

 釜山とインディーズ作品の交換上映を行う福岡インディペンデント映画祭、若手監督のデビュー作を好んで上映する市民映画祭・福岡アジア映画祭、そして福岡市が主催するアジアフォーカス・福岡国際映画祭と「日韓シネマ・エクスチェンジプロジェクト」。これらが組み合わさると、今後、次のようなことが起こらないだろうか?

   釜山の最新インディーズ作品が福岡インディペンデント映画祭で上映され…
   その監督が長編デビューすると、福岡アジア映画祭で上映され…
   更にその監督が秀作・話題作を生み出すとアジアフォーカス・福岡国際映画祭で上映され…
   アジアフォーカスで好評を博すと「日韓シネマ・エクスチェンジプロジェクト」で上映される。

 商業ベースに乗った劇場公開とは違った次元で、福岡には、韓国人監督を無名のインディーズ時代から一貫してその作品を上映することにより支援・応援するシステムができあがりつつあるのだ。

 福岡と釜山は姉妹都市。ならば「エクスチェンジプロジェクト」で上映される作品は、釜山出身ないしは釜山で制作活動を続ける監督の作品であれば、なお良かろう(イ・ソックンはソウル出身)。そういった監督は「釜山国際短編映画祭」や「メイド・イン釜山独立映画祭」から輩出される可能性がある。そして、そういった監督の作品は既に福岡インディペンデント映画祭で上映されているかも知れない。昨年、同映画祭で来日したミン・ビョンウ監督と俳優のイム・ソンジンは来日中にスマホで映画を撮った。今のところ「エクスチェンジプロジェクト」で交換されるのは完成品の映画だが、将来的に制作の交換、すなわち釜山の監督が九州で映画を撮り、福岡の監督が釜山で作品を制作することがあれば実に面白い。

 ここで夢想したことが実現するには長い歳月がかかるかも知れない。「日韓シネマ・エクスチェンジプロジェクト」はまだ始まったばかりで先々どうなるか未知数な部分もあるだろう。しかし、こんな妄想に近い想像力を働かせてみるのも映画ファンのひとつの楽しみであるし、そんな妄想を許してくれる、福岡アジア映画祭、福岡インディペンデント映画祭、アジアフォーカス・福岡国際映画祭は、アジア映画界の大きな資産ということだけは間違いない。


『ダンシング・クイーン』
 原題 ダンシング・クイーン/英題 Dancing Queen/韓国公開 2012年
 監督 イ・ソックン 主演 ファン・ジョンミン、オム・ジョンファ
 アジアフォーカス・福岡国際映画祭2012公式招待、2012大阪韓国映画週間上映作
 福岡×釜山 日韓シネマ・エクスチェンジプロジェクト第1弾として2012年12月8日(土)より、T・ジョイ博多にて2週間限定公開
 日韓シネマ・エクスチェンジプロジェクト公式サイト http://www.t-joy.net/cinemaex/

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 Interview 『ダンシング・クイーン』 イ・ソックン監督
 Review 『ダンシング・クイーン』 ~民主主義の申し子は夢を追う

第26回福岡アジア映画祭2012
 会期:7月6日(金)~7月8日(日)、7月13日(金)~7月15日(日)
 会場:九州日仏学館5Fホール、中洲・明治安田生命ホール
 公式サイト http://www2.gol.com/users/faff/faff.html

福岡インディペンデント映画祭(FIDFF)2012
 会期:9月6日(木)~9月11日(火)
 会場:福岡アジア美術館・8Fあじびホール、冷泉荘・B棟1階ニコイチ
 公式サイト http://www.fidff.com/

アジアフォーカス・福岡国際映画祭2012
 会期:9月14日(金)~9月23日(日)
 会場:T・ジョイ博多ほか
 公式サイト http://www.focus-on-asia.com/

Writer's Note
 西村嘉夫。シネマコリア代表。大阪生まれの名古屋育ち。現在は名古屋在住。最近、東京・大阪で公開されて名古屋で公開されない映画が増えてきていて、ちょっとした危機感を抱いています。


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Column 映画祭映画『大阪のうさぎたち』と杉野希妃の映画作り

Text by 西村嘉夫
2012/7/2掲載



 映画祭の役割とは?と聞かれて何と答えるだろう。

 観客にとっての映画祭とは最新作を見られる場。カンヌのような大手映画祭の場合はフィルムマーケットが併設されていることが多いが、配給会社にとって映画祭とは作品を売買する場所と言えるだろう。最近では、インディーズ作品を支援するために映画の企画マーケットを開く映画祭も増えてきた。製作者の立場からは映画祭は資金調達の場に見えているかも知れない。

 そして、今、映画祭に《ロケ地》という新たな役割を付与しようとしている若きクリエイターがいる。『奇跡の夏』(2005年)で商業映画監督としてデビューした後、2010年にインディーズ作品『遭遇』を撮りあげたイム・テヒョンと、『歓待』(2010年)で世界中の映画祭を席巻し、汎アジアの多国籍インディーズ作品をプロデュースする女優・杉野希妃である。二人が昨年3月の大阪アジアン映画祭で偶然出会い、たった一日で即興的に撮りあげ、4月の全州国際映画祭で追加撮影し、7月に開催された富川国際ファンタスティック映画祭の企画マーケットでポスプロ費用を獲得してアフレコを行った作品、それが今ご当地・大阪で先行公開されている『大阪のうさぎたち』だ。

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 聞くところによると撮影機材は、大阪アジアン映画祭を通じて現地で調達したという。スタッフと呼びうるのは監督一人だけ。監督・出演者も本作の製作に名を連ねており、ポスプロは映画祭の企画マーケットで調達しているので、おそらく製作費は実質的にビデオ・テープ代だけだったのではないだろうか?

 なんともフットワークの軽い製作スタイルだが、映像に安っぽさは微塵もなく、スクリーンには異国の監督の目を通した新感覚な《OSAKA》が映し出される。「人類の90%が死滅した地球最後の日」という設定は、震災の翌日3月12日に撮影されたという事実と相まって観る者に特別な感情をもたらし、撮影当日、実際に出演者が抱いていたであろう不安感はキャラクターの感情そのものとシンクロし、現実とフィクションの垣根をさまよう不思議な空間が映画館に現出する。

 そもそも杉野が出演することになったのは、震災で予定していた韓国人女優の来日がキャンセルされたからで、そのキャスティングは全くの偶然。その偶然を必然に変えてしまうパワーが杉野の最大の魅力だが、その不思議な力は常に《映画祭》を通じて発揮されている点に注目したい。映画祭で人と出会い、資金を調達し、ゲリラ的に一気に撮影する…。筆者は大阪アジアン映画祭にも全州国際映画祭にも参加していたが、あの時あの空間のどこかで『大阪のうさぎたち』が撮影されていたのだと考えると妙な高揚感にとらわれる。ひょっとして自分も出演していた可能性があるのでは?と(事実、杉野の誕生パーティのシーンでは大阪アジアン映画祭のスタッフが大写しになっている)。

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 『大阪のうさぎたち』で縁を結んだイム・テヒョンと杉野希妃は、今年の全州国際映画祭でふたたび《映画祭映画》に挑んでいる。タイトルは『Jury(審査員)』。同映画祭で審査員を務めた杉野の姿を収めたフィクショナル・ドキュメンタリーだが、街頭ではアポなしインタビューを敢行。地元の学生たちに「あなたにとって映画とは?」と問いかけたという。

 「アジア・インディーズのミューズ」であると同時に「映画祭のミューズ」でもある杉野希妃はその類い希なる映画力によって、観客まで映画作りに巻き込み始めた。「映画とは?」と聞かれてあなたは何と答えるだろう。


『大阪のうさぎたち』
 韓国・日本/原題 大阪の二匹のうさぎ/英題 TWO RABBITS IN OSAKA/2011年
 監督 イム・テヒョン 主演 杉野希妃、ミン・ジュンホ
 2012年6月30日(土)大阪シネ・ヌーヴォにて地元先行ロードショー、8月4日(土)神戸・元町映画館、京都みなみ会館ほか順次全国公開予定
 公式ブログ http://ameblo.jp/two-rabbits-in-osaka/

Columnist's Note
 西村嘉夫。シネマコリア代表。杉野希妃さんのデビュー作『まぶしい一日』を配給してから6年。予想もしない形で杉野さんが“時の人”になってびっくりしています。『まぶしい一日』を共同配給したキノ・キネマの岸野令子さんは『大阪のうさぎたち』の宣伝で奮闘中。その経緯は「公式ブログ」でご覧いただけます。やはり杉野さんは自作に人を巻き込んでいく不思議な力をお持ちのようです。


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