HOME団体概要support シネマコリア!メルマガ登録サイトマッププライバシー・ポリシーお問合せ



サイト内検索 >> powered by Google

■日本で観る
-上映&放映情報
-日本公開作リスト
-DVDリリース予定
-日本発売DVDリスト
■韓国で観る
-上映情報
-週末興行成績
-韓国で映画鑑賞
■その他
-リンク集
-レビュー&リポート
■データベース
-映画の紹介
-監督などの紹介
-俳優の紹介
-興行成績
-大鐘賞
-青龍賞
-その他の映画賞


Review 『未成年』 ~人はみな“未成年”のまま生きてゆく

Text by Kachi
2020/5/30掲載



 女子高生ジュリ(キム・ヘジュン)は、父親デウォン(キム・ユンソク)の浮気を知ってしまう。相手は学校の問題児、ユナ(パク・セジン)の母ミヒ(キム・ソジン)だった。母親が不倫の子を身ごもっていることを知ったユナは、ジュリの母親ヨンジュ(ヨム・ジョンア)に暴露してしまう。ジュリとユナは互いに反発をくり返しながら、まもなく生まれてくる小さな命の姉同士、少しずつ心を通わせていくのだが…。

miseinen-yun.jpg

 メインキャストはたったの5人と、作りはミニマムだ。キム・ユンソク以外は全員女性で、彼女たちの配役と演出が的確になされている。能天気で自己中心的なミヒも、気弱で問題事を避けるヨンジュも手に負えないが、デウォンが誰よりもみっともなく、それが映画の中で絶妙に効いている。妻にも不倫相手にもいい顔をしたいくせにごまかすことが下手という、ユンソクのキャリア史上最も情けない中年男を、監督本人がどこか楽しんで演じている。デウォンの立ち居振る舞いは実に滑稽で、要所要所で観客を笑わせてくれる。

 この映画についてユンソクは「秘密と嘘は家族の内に衝突をもたらします。この映画は、それらが明らかになったときに何が起こるかについて描いています」と語っている。本作で起こる衝突とその結末は、女子高生のジュリとユナには少々ヘビーだ。しかし、この映画を見終わった後の気持ちはなぜか明るい。まだティーンエイジャーの二人が互いにも、だらしのない親たちにも(呆れつつも)優しいからだ。それはとりもなおさず、監督自身が、みっともなくて頼りない親たちに対しても優しい眼差しであるからだろう。「人はみな“未成年”のまま生きてゆく」ことを肯定的に見せてくれる。初監督作品で、ここまで手堅い佳品に仕上げてきたことに拍手を送りたい。


『未成年』
 原題 미성년 英題 Another Child 韓国公開 2019年
 監督 キム・ユンソク 出演 ヨム・ジョンア、キム・ソジン、キム・ヘジュン、パク・セジン、キム・ユンソク
 2020年6月5日(金)より、シネマート新宿、シネマート心斎橋にて公開
 公式サイト http://klockworx-asia.com/miseinen/


>>>>> 記事全リスト


スポンサーサイト



Review 『暗数殺人』 ~ヒューマンドラマとして観る者の心をつかむ「ファクション」

Text by Kachi
2020/3/28掲載



 刑事ヒョンミン(キム・ユンソク)は、ある日なじみの情報屋から一人の男を紹介される。男の名はカン・テオ(チュ・ジフン)。「金を渡されて死体を運んだ」と饒舌にまくしたてるテオの話を軽く聞いていたヒョンミンだったが、突如強行班が乗り込んできてテオを逮捕。容疑は恋人の殺人罪だった。しばらくして、テオから「ヒョンミンにだけ話すことがある」と連絡があり、怪訝な気持ちで拘置所へ向かうと、衝撃的な告白を聞かされる。「俺が殺したのは一人じゃない。全部で7人だ」 警察では誰一人関心を示さなかったが、ヒョンミンはひそかに行方不明者たちの捜査を開始する。執念で遺骨の一部を探し出すが、テオは突然、供述を翻すのだった…。

ansusatujin.jpg

 テオ役のチュ・ジフンは、『コンフェッション 友の告白』『アシュラ』と来て、さらに演技をアップグレードさせたようだ。自己顕示欲のかたまりで、しかしこけおどしに終わらない狡猾さのある殺人者を見事に演じている。一見人懐っこいが、それだけに底知れない闇が身体の奥に広がっているようなキャラクターだ。刑事ヒョンミンに扮したキム・ユンソクも、テオという狂気のかたまりを貫禄で受け止めている。二人の俳優のコントラストが良い。

 『暗数殺人』の中の事件は、家族という絆のもろさも浮き彫りにさせる。ささいな気持ちの行き違いから、疎遠になってしまったなら、心の中で「死んだ」ことにしてしまうかもしれない。大人になってしまえば、なおのことだ。ヒョンミンは、テオの要求のままに差し入れや金銭を渡し、さらに自白を引き出そうとする。テオに翻弄されても遺体をみつけようと奔走する。刑事としての職務ではなく、この世でごく普通に生きていたはずの誰かを「探す」という、人としての信念に突き動かされているのだ。

 事実の出来事をもとに作られたホラーやサスペンスなどのジャンル映画をくくる言葉として、ファクト(fact)とフィクション(fiction)を合わせた「ファクション」という造語がある。本作には、他の「ファクション」作品とは違う、ヒューマンドラマとして観る者の心をつかむに違いない。


『暗数殺人』
 原題 암수살인 英題 Dark Figure of Crime 韓国公開 2018年
 監督 キム・テギュン 出演 キム・ユンソク、チュ・ジフン
 2020年4月3日(金)より、シネマート新宿ほか全国ロードショー
 公式サイト http://klockworx-asia.com/ansu/


>>>>> 記事全リスト


Review 『EXIT イグジット』 ~サバイバル・パニック&コメディの顔をした社会派映画

Text by Kachi
2019/11/17掲載



 昔は山岳部の活動に青春を燃やした青年ヨンナム(チョ・ジョンソク)は、今は金ナシ職ナシ彼女ナシ。うだつが上がらない毎日を筋トレでまぎらわせている。母の古希のお祝い会のため、都心の高層レストラン「雲の庭園」に親戚一同が集まったある夜、ヨンナムはかつてあっけなくフラれた苦い思い出のある後輩ウィジュ(ユナ)と鉢合わせする。同じ頃、地上近くでは謎の有毒ガスが散布される事件が発生。ヨンナムたちにも危険が迫る…!

exit.jpg

 『建築学概論』のナプトゥク役、という説明をつけずとも、イケメンだが二枚目半に徹して、サスペンスからコメディ、ラブストーリーに至るまで味のある演技をみせる俳優のひとりに数えられているチョ・ジョンソク。『EXIT イグジット』では生死の狭間で恐怖のどん底にありながら、ウィジュと協力して懸命に前進していく姿に手に汗を握る。またウィジュは男性に守ってもらう、か弱い女性ではなく、危機的状況で自ら動き、機転でヨンナムを助けるパワフルなヒロインとして躍動していて好もしい。少女時代のユナにこんなに芯の強い役がピッタリだとは、不覚にも発見であった。

 監督はこれが初長編のイ・サングン。壁の中に幽閉された男が脱出し、恋人に会いに行く不可思議なロマンス短編『Mr. Tap's Holiday』(2010年)で評価されていた。リュ・スンワンが制作陣に名を列ねているとはいえ、長編デビュー作でここまで見応えのあるエンターテイメントを、しかも脚本から練り上げてしまったことに敬服する。現実的に、確実にそこに存在する物を使えるように、起こりうる危機と状況から逆算して考えたのだろう。キャラクターの動きやシーンに無駄がなく、ラストまでスクリーンに没入してしまう。それでいて家族愛を織り込みきっちり泣かせてくるのだから、大ヒットもうなずける。

 本作はサバイバル・パニック&コメディだが、有毒ガス事件にまつわる不当解雇や青年の失業問題、二人の脱出をネットで生中継する劇場型社会の描写がアクチュアルだ。そして何より、今も大きな傷痕として残るセウォル号事故に対する意識的な描写に深く考えさせられた。


『EXIT イグジット』
 原題 엑시트 英題 EXIT 韓国公開 2019年
 監督 イ・サングン 出演 チョ・ジョンソク、ユナ(少女時代)
 2019年11月22日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国順次公開
 公式サイト https://gaga.ne.jp/exit/


>>>>> 記事全リスト


Review 『毒戦 BELIEVER』 ~ハードでバイオレンスな中にある深み

Text by Kachi
2019/9/30掲載



 120分間、一瞬たりとも緩まない。

 『毒戦 BELIEVER』は、強烈な暴力と脂の乗った悪役たちが暗躍する。これぞ韓国ノワール、とファンを唸らせながらも、さらに深遠な問いかけもはらんでいるところが新鮮だった。

believer.jpg

 麻薬取締局、通称“マトリ”の刑事ウォノ(チョ・ジヌン)は、巨大麻薬カルテルを牛耳る謎の人物“イ先生”の行方を追い続けていた。そんな中、麻薬製造工場の爆破事故が発生。唯一の生存者で、組織に見放された青年ラク(リュ・ジュンヨル)が発見される。ウォノはラクを利用しようと彼と手を組み、潜入捜査に乗り出していく。

 巨匠ジョニー・トー監督の『ドラッグ・ウォー 毒戦』(2012)を大胆にリメイクしたのは、『京城学校:消えた少女たち』(2015)のイ・ヘヨン監督。前作でも、ワンシーンごとの美意識を感じたが、本作も麻薬製造工場や麻薬組織のアジトといった空間の作り方が見事である。また、『哭声/コクソン』の禍々しい旋律が記憶に新しいダルパランが劇伴を担当しているおかげで、音楽がゾクリとくる演出をしてくれている。さらに脚本では、『親切なクムジャさん』(2005)以降、パク・チャヌクとともに傑作を生みだしてきたチョン・ソギョンが、「一体誰が黒幕か?」というサスペンスフルな展開を通じて、悪と暴力の応酬だけでは収まらない深遠さを加えた。本作の英題「BELIEVER」は「信仰」を意味する。作品を見終わったとき、その言葉が暗示することに重く考えさせられる。

 執念の“マトリ”を演じたチョ・ジヌンの、ギリギリの緊迫感を感じさせる“動”の演技と、眼差しで語るリュ・ジュンヨルの“静”の演技が本作を支えている。だが私はどうしても、闇マーケットの帝王ハリムに扮したキム・ジュヒョクがスクリーンに登場したシーンの、狂気を感じさせる気配が忘れられない。近年は特に、端正な顔立ちで愉快そうに演じる悪役が堂に入った感すらあった。遺作となった今作で、第39回青龍映画賞と第55回大鐘賞映画祭で助演男優賞を受賞している。


『毒戦 BELIEVER』
 原題 독전 英題 Believer 韓国公開 2018年
 監督 イ・ヘヨン 出演 チョ・ジヌン、リュ・ジュンヨル、キム・ジュヒョク、キム・ソンニョン、パク・ヘジュン、チャ・スンウォン
 2019年10月4日(金)より、シネマート新宿ほか全国順次ロードショー
 公式サイト https://gaga.ne.jp/dokusen/


>>>>> 記事全リスト


Review 『今、会いましょう。』 ~北朝鮮の人と共にいる韓国人の私

Text by 井上康子
2019/8/12掲載



 7月に開催された第33回福岡アジア映画祭2019で『今、会いましょう。』を見ることができた。韓国の統一部(北朝鮮との統一、交流や人道支援などを担う国家機関)が製作したオムニバス映画で、原題は『私たち、今、会いましょう』だ。映画を見る前の「北朝鮮の人々と今会うのは無理なのでは」という疑問に対して「北朝鮮の人々と、いつか将来にではなく、今共に過ごすのだ」という強い意思を3監督が見せてくれた。

fukuoka2019a.jpg
『今、会いましょう。』

 国家人権委員会製作映画に参加した経歴から、カン・イグァン監督(該当作品:オムニバス『視線の向こうに』中『歯二つ』、『未熟な犯罪者』)、プ・ジヨン監督(オムニバス『視線の向こうに』中『ニマ』)が依頼を受け、公募で選ばれたキム・ソユン監督が加わっている。統一部が作品内容を規制することはなく、監督たちは自由な創作ができたそうで、3監督の個性を存分に堪能できる。


『運転手先生』キム・ソユン監督


 開城工業団地の食堂に食材を配達するソンミンはそこで働く北朝鮮女性スッキに一目惚れ。スッキはソンミンが携帯プレーヤーで音楽を聴くことに興味をもつ。監視の目を避けて倉庫に行くと、ソンミンはおずおずとスッキの耳にイヤホンを差し込む。二人の気持ちが通じ合う瞬間だ。だが、韓国への帰途にソンミンは開城工業団地の操業停止を聞かされる。これから恋人になるはずだった二人が南北間のトラブルにより、会うことができなくなってしまう。南北問題が心に沁みる若者のラブストーリーとして昇華されていた。

fukuoka2019b.jpg
キム・ソユン監督

 ゲストとして登場した監督は映画を専攻する大学院生で清純な印象は作品のイメージと重なった。開城工業団地は、韓国が南北経済協力事業として軍事境界線に近い北朝鮮の開城で造成したもので、北朝鮮が弾道ミサイル発射実験を行ったことにより、2016年2月に操業停止された。監督はそこで働いていた人たちを取材したが、さらにドラマチックな話も聞いたそうだ。


『私達上手くやれる』カン・イグァン監督


 間もなく結婚する予定のカップルなのに、二人の間はぎくしゃくしている。女性は寒がりで男性は暑がり、女性はパイナップルが嫌いなのに男性はそれを忘れてパイナップル入りのピザを注文して喧嘩になる。北朝鮮は登場せず、どこが南北の話なのだろうと目を凝らして、ようやく二人の関係が南北関係に例えられていることに気づいた。女性はタトゥーを好まないが、男性はタトゥー師。好みも価値観も全く異なる二人だが、共に踊ることで、和解し、譲歩していく。

 二人の激しく、素早く、そして、男性が上半身・女性が下半身中心の異なる動きで一体感を見せる踊りは異質な私たちが共に生きるという強いメッセージを放っていて、このような斬新な表現方法があるのだと胸が高鳴った。


『もしもし』プ・ジヨン監督


 ジョンウンは北朝鮮からの間違い電話を受ける。電話の女性は携帯が壊れて、脱北した息子の電話番号が分からなくなり、記憶に頼って誤ったという。食堂と清掃の仕事を掛け持ちして母を世話しているジョンウンは、お金欲しさで女性の息子を探し始める(プ・ジヨン監督作品『明日へ』でも厳しい仕事に耐える労働者を演じたイ・ジョンウンがコミカルな味わいでジョンウンを好演)。

 一方、ジョンウンには北出身の母がいる。認知症になった母は北で妹が亡くなったことが了解できず、妹に再会することが生きる目標になっている。二人の女性が電話でのコミュニケーションを重ねる中で、互いが相手の立場では出来ないことを代わりに行うという関係が築かれていく。とても温かみのある作品だ。

 中国との国境近くで中国の携帯を持っている北朝鮮住民は韓国との通話が可能だそうだ。そのようにして南北間でコミュニケーションが取られていること、また、脱北者が継続的にいるということは新たな離散家族が生じているということで、こういう状況での統一を考えたのが本作のスタートだったと韓国での取材で監督は語っている。


 2000年に韓国で公開された『JSA』は北の人も人間だが、共に生きていくことはできないと訴えた。あれから19年、映画の中でここまでの進展が見られるとはと、しばし感慨にふけった。


第33回福岡アジア映画祭2019
 期間:2019年7月5日(金)~7月7日(日)
 会場:アンスティチュ・フランセ九州 5Fホール
 公式サイト http://asianfilm.tk/

Writer's Note
 井上康子。大人になって読み始めた、加古里子の絵本が大好き。『だるまちゃんとてんぐちゃん』は異質な二人の葛藤と和解の話だと予想していたら違っていた。徹頭徹尾、主人公だるまちゃんは自分には無く相手が持っているものに好奇心を抱き憧れる。異質なこと自体には差別や葛藤の根拠になるものは何もないのだと思い起こさせてくれた。


>>>>> 記事全リスト



Copyright © 1998- Cinema Korea, All rights reserved.
Powered by FC2 Blog