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Interview 『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』チャン・フン監督 ~大統領から「歴史を忘れずにいてほしい」と言われた

Text by 加藤知恵
2018/4/15掲載



 2017年に韓国内で1,200万人を動員し、その年のNO.1ヒット作となった『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』が、4月21日(土)より全国で公開される。

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 トンネルを抜ける1台のタクシー。運転しながらチョー・ヨンピルの「おかっぱ頭」を熱唱するのは、主人公のマンソプだ。しかしそんな楽しい気分に水を差すように、車は突如、デモによる渋滞に巻き込まれてしまう。時は1980年5月。新軍部の布告した戒厳令に抗議し、ソウル市内でも市民・学生による民主化運動が激しさを見せていた。

 一方、日本で韓国の情勢悪化のニュースを耳にしたドイツ人記者ユルゲン・ヒンツペーターは、宣教師と身分を偽って韓国へ入国。何が起きているのかを自身の手で取材するため、光州入りを決意する。

 男手1つで11歳の娘を育てているマンソプは、家賃を滞納するほど生活に窮していた。そしてその時、他の運転手が「外国人客を乗せて光州まで行き、通行禁止前にソウルへ戻れば10万ウォン」と口にするのを聞き、客を横取りしてしまう。

 片言の英語とボディランゲージで何とかコミュニケーションを取り、外国人客“ピーター”を光州へ連れて行くマンソプ。しかし外部からの通行も絶たれ、軍部による情報規制まで行われていた光州では、想像もできないほど悲惨な状況が2人を待ち受けていた。

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左からユ・ヘジン、ソン・ガンホ、トーマス・クレッチマン、リュ・ジュンヨル

 本作は、光州で起きた民主化デモに対し、軍部が実弾射撃を含む武力で制圧を行った、所謂「光州事件」を題材としている。偶然事件を目撃することになったのは、民主化運動になど何の関心もなかった、ソウルの平凡なタクシー運転手だ。そんな彼がドイツ人記者ピーターや光州市民との出会いを通じ、憤り、葛藤し、自らの意思で事件に立ち向かっていく。幅広い演技を必要とする主人公マンソプの役を、名優ソン・ガンホが見事に演じている。情深く、義理堅い光州市民として登場するユ・ヘジンやリュ・ジュンヨルの熱い演技も味わい深い。そして本作の要とも言えるピーターを演じるのは、『戦場のピアニスト』(2002)、『ヒトラー 最期の12日間』(2004)等、日本でも重厚な歴史映画への出演で知られるトーマス・クレッチマンだ。

 光州事件という歴史的に重い素材をテーマにしながら、ユーモラスな場面も多く、心温まる作品に仕上がっているのは、数々のヒット作を生み出してきたチャン・フン監督の手腕によるものだろう。次回作の撮影スケジュールにより、残念ながら今回は来日不可能とのことであったが、監督に電話取材をする機会を得た。

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チャン・フン監督

── マンソプ役のソン・ガンホさんはもちろん、ユ・ヘジンさん、リュ・ジュンヨルさんなど、全てのキャスティングが絶妙だと感じましたが、ドイツ人記者ヒンツペーターの役はどのように決まったのでしょうか?

ドイツ人記者の役なので、ドイツ人の俳優に演じてほしいと思っていました。実はトーマス・クレッチマンについては、『戦場のピアニスト』を見て以来のファンで、ドイツ人俳優として最初に思い浮かんだのは彼でした。とても忙しい方なので難しいだろうと思っていましたが、実際に連絡をしてシナリオを送ったところ、意外にも気に入ってくれて、快く引き受けてくれました。

── 彼は作品のどんな点を特に気に入って、出演を決められたのでしょうか?

彼に初めて会った時、この作品を通じて韓国の人々に何を伝えたいのか既に理解していると感じました。彼自身も東ドイツの出身で、危険を冒して西ドイツへ亡命をした後に俳優生活を始めた経緯があるので、歴史への関心が深い方です。この素材やストーリーが韓国の観客にとって重要で、意義深い作品になるだろうということを、最初に会った時から話していました。そして「ドイツ人俳優として、この記者の役をぜひ演じたい」と言ってくれました。

── 歴史的にセンシティブな素材を扱っているため、監督も最初は躊躇され、主演のソン・ガンホさんも一時は出演をためらわれたと聞きました。結果的に出演を決められたのは、監督が説得をされたからでしょうか?

私は説得していません。簡単に説得できる方でもありませんし(笑)。俳優として出演作を選ぶ確かな目を持っている方なので、作品自体に何らかの魅力を感じられたのだと思います。一度は断ったものの、ずっと本作のことが気になっていたそうです。そのずっと忘れられなかった部分が、出演を決める理由になったのではないかと思います。

── では撮影中も監督が演技指導をされたというよりは、ソン・ガンホさんにお任せするような形で進められたのでしょうか。

作品の方向性については撮影に入る前に十分に話しあったため、現場ではあまりそのような話をしませんでした。彼も演技の方向性は固まっていましたし、私もイメージが見えていたので、撮影中に修正が必要な部分がある時だけ再度話しあいました。

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監督オフショット

── 歴史的事件を背景に再構成されたストーリーとのことで、監督は実際にヒンツペーターさんにも会って取材をされたと伺いました。登場人物のキャラクターやエピソードに関して、フィクションとノンフィクションのバランスを伺いたいです。例えば、マンソプが過去にサウジアラビアで働いていたという設定や、「タクシーがケガ人を運ぶだけで罰せられた」というセリフは事実だったのでしょうか?

マンソプがサウジアラビアへ出稼ぎに行っていたという設定は、キャラクターを作り上げる上でのフィクションで、タクシーの運転手がケガ人を運んで処罰されたというのは、実際にあった出来事です。ヒンツペーターさんについては準備段階で本人に確認を取ることができたので、若干映画的に見せ方を変えた部分はあるものの、ご自身のキャラクターに近いです。しかしその他の人物はどんなに捜しても見つからず、情報もほとんどなかったため、作り上げるしかありませんでした。韓国史の重要な一場面を再構成する上で、観客が自然に感情移入できるようにということを考えてイメージしました。実は、本作の公開後に(マンソプのモデルであるキム・サボク氏の)息子さんが現れて話を伺ったのですが、映画とは違う部分もかなりありました。しかし本作をきっかけにキム・サボクさんを捜し出すことができ、彼の実際の姿を知ることができたという意味で、とても嬉しかったです。

── ヒンツペーターさんはキム・サボクさんのことをどんな方だと仰っていましたか?

ヒンツペーターさんよりは年上に見えたようで、光州へ入る時に検問に掛かって裏道から入ったのを見た時は、とても機転の利く方だと思ったそうです。そして大変優しい人だったと言っていました。キャラクターを構成する上で、それ以外に参考にできる情報はありませんでした。

── 公開後に息子さんが現れたというお話ですが、実際は事件の4年後にサボクさんは亡くなっていたそうですね。劇中ではマンソプが別れ際に偽名を伝え、その後ヒンツペーターさんのことを気にしながらも名乗り出なかったという設定ですが、監督はなぜ会おうとしなかったとお考えでしょうか?

本作を準備する過程で、キム・サボクさんを捜し出すために、製作会社を通して全国でキム・サボクという名前の人を全て調べてヒンツペーターさんに写真を送りました。彼らの中に本人がいないかどうか、確認をお願いしたんです。しかしそこにはいないと言われました。私としては、そんなに早く亡くなっているとは思わず、きっと今もどこかで生きていらっしゃると信じていました。それでも名乗り出ないのは、軍事政権において危険な目に遭うのを恐れていらっしゃったからなのかなと。そして直接何もしてあげられなかったという光州市民に対する罪悪感のために、出てこられないのではないかと思っていました。息子さんから聞いた事実は異なっていたものの、観客の方々は劇中のサボクさんと実際のサボクさんという2つの姿に触れ、別の視点から歴史を見ることができたという点で、結果的によかったと思っています。

── 終盤のカーチェイスのシーンも大変見応えがありましたが、個人的にはトランクの中でソウルのナンバープレートを見つけながらも見逃してくれた軍人が印象的でした。彼については具体的な理由や設定はあったのでしょうか?

意図的に設定したわけではなく、実際にそういう出来事があったとヒンツペーターさんから聞きました。命令に従うべき軍人ではあるものの、個人として判断した部分もあったのだと思います。彼以外にも、ヒンツペーターさんが空港から出国する際に、フィルムの存在に気付きながら見逃してくれた人々がたくさんいたそうです。もしも全ての人が自分を捕まえようとしたならば、出国できなかっただろうと語っていました。そのような状況を描くためのキャラクターであり、実在した人物でもあります。

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撮影中の監督

── 少し雰囲気の違う質問ですが、マンソプやジェシクが劇中で歌っている当時のヒット曲はどのように選択されましたか?

冒頭でマンソプが登場するシーンで歌う曲は脚本家と相談しながら決めましたが、その他の曲は既にシナリオに書かれていました。当時の風潮をよく表している曲の中から、各場面に合ったものを選択しています。

── 文在寅大統領も本作を鑑賞されたとのことですが、大統領から監督に対して何かコメントはありましたか?

ヒンツペーター夫人がいらした時に、大統領も一緒に本作を鑑賞しましたが、まずは夫人へ当時の苦労に対する感謝の言葉を伝えられていました。そして私にも「若い世代をはじめ、たくさんの方々がこの作品を見て、歴史を忘れずにいてほしい」と仰っていました。

── 本日はお忙しい中お時間をいただきありがとうございました。監督の今後の作品も楽しみにしております。



『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』
 原題 택시운전사 英題 A Taxi Driver 韓国公開 2017年
 監督 チャン・フン 出演 ソン・ガンホ、トーマス・クレッチマン、ユ・ヘジン、リュ・ジュンヨル
 2018年4月21日(土)より、シネマート新宿ほか全国ロードショー
 公式サイト http://klockworx-asia.com/taxi-driver/

Writer's Note
 加藤知恵。本作では光州の純朴な大学生を演じ、現在公開中の『ザ・キング』では、主人公の親友で暴力団組員という男くさい役どころを熱演しているリュ・ジュンヨル。変幻自在な彼の魅力を両作品で堪能するのもお勧めです。


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