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Interview 『春の夢』チャン・リュル監督 ~自分の考えるリズムに合わせて作り、判断は観客に委ねる

Text by 井上康子
2017/10/21掲載



 チャン・リュル監督は2007年に『風と砂の女』で初めてアジアフォーカス・福岡国際映画祭(以下、アジアフォーカス)に参加。その後もアジアフォーカスでは2009年に『イリ』、2010年に『豆満江(とまんこう)』、2014年に『慶州』が上映され、今回の『春の夢』は5作品目の上映になる。映画祭が10年を越えて特定の監督作品を上映し続けるというのは稀有なことだが、それは独自の作品を作り続けることができているからこそだ。アジアフォーカス11年目を迎えた監督に『春の夢』を中心に語ってもらった。

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── シンポジウム「パク・ジョンボムとユン・ジョンビンが語るチャン・リュルの世界」で、『春の夢』の舞台になった水色洞(スセクドン)について「自分の住む街と異なり、人の感情が見える」と発言され、監督が水色洞に惹かれたのだと思いました。水色洞が作品制作のきっかけになったのでしょうか?

私が住んでいる地域は放送局があるビルの森のようなところで、私が住んでいるマンション以外に住宅はありません。私は人が住む街の中で育ったので、昔ながらの市場もある水色洞に行くと気持ちが落ち着きます。頻繁に訪れる慣れた空間です。その風景を自然に撮るようになりました。だから意識してここを撮ろうと思ったというより、自分の慣れ親しんだ場所をただ撮ったという感じです。私が住む街から水色洞までは15分位の距離で近くて撮影に便利だったということもあり、最終的に水色洞を舞台にした映画になりました。私の住まいから水色洞へは地下通路を渡って行くのですが、私の街と水色洞は別世界のように違います。風景や雰囲気ががらりと変わるのです。そのことで水色洞は非現実的な夢のような空間に感じました。それでその空間を撮ったら自分の感じた夢の感覚が映画に投影されたのだと思います。

── 作品中、ジョンビンが「羊肉を食べに行こう」と言っていました。中国に住む朝鮮族は羊肉を食べる習慣があり、監督は朝鮮族なので、水色洞は朝鮮族が多い地域なのかもしれないと思いましたが?

ジョンビンが「羊肉を食べに行こう」と言っていた所は朝鮮族が多い地域で、そこは水色洞ではありませんでした。水色洞は朝鮮族が多い地域ではありません。

── 監督のように中国からソウルに来た朝鮮族のイェリが営む居酒屋は「故郷」という名前で、彼女はアン・スギルの「北間島」(北間島は現在の中国吉林省延辺朝鮮族自治州にあたる)を愛読していました。これは監督自身が故郷を懐かしむ気持ちが強くなったことが投影されているのかもしれないと思いましたがいかがですか?

故郷を懐かしむのは誰もが持っている感情です。自分が特に懐かしく思っているということはありません。イェリという人物から出発して、彼女のような朝鮮族で延吉(延辺の中心都市)出身の人ならと本も選びました。「故郷」という居酒屋は実際に水色洞にあった居酒屋で、閉まっていてどういう店かわかりませんでしたが懐かしさからこういう名前にしたのかと思い、名前を借りました。

── キャスティングについて、シンポジウムで、監督でも俳優でもあり、本作に主演した「ヤン・イクチュン、パク・ジョンボム、ユン・ジョンビンは水色洞の質感に合うのでキャスティングした」とお話でしたが、質感の内容はお金がないとかソウル社会の主流にいないということになるのでしょうか?

彼らの顔を見ると街に相応しい雰囲気を持っていますし、彼らが撮った作品の3人のキャラクターは非主流の人を描いています。ユン監督は江南に住んでいるけれど江南の人だという気がしません。もう少し庶民的な地域に移るんじゃないかという気がします(笑)。

── 『春の夢』というタイトルが上映開始して30分位経って出てきたので驚きました。誰もいなくなったタイミングだったのもあって、それまでのことが夢だったような不思議な感覚に捉われました。最初にタイトルを出さなかったのはなぜですか?

映画全体のリズムを考えた結果です。あそこが合います。

── 寝たきりのはずのイェリのお父さんの声が聞こえてきたり、居酒屋に銃を持って来た男の銃が偽物だったり、夢か本当かという仕掛けを意図的にいろいろ作ったのでしょうか?

自分が考えるリズムに合わせたらこういうふうになりました。見る人によっていろいろ違うでしょうが判断は観客にしてほしいです。いつも上映後に観客と話すと監督よりも明確に分かっているなあと思います(笑)。

── 監督は2007年に『風と砂の女』上映でおいでになった時は中国語で話をされました。その後は韓国語で話をされるようになりましたが、脚本を韓国語で書くのは負担のある作業ではありませんか?

書く時は中国語で書いています。会話は韓国語でできるので口述筆記で脚本を作っています。

── シンポジウムで「ヤン・イクチュン、パク・ジョンボム、ユン・ジョンビンという実名を役名にしたのは名前があまり洗練されてなくて水色洞の住人に相応しかった」とお話しでしたが、韓国語の名前について洗練されていないというようなイメージを持つことができるのは監督の言語能力が既に高いからでしょう。

今はだいたいそういう感じがつかめる様になりました。

── 中心的な人物ではない登場人物の中にボーイッシュな女の子がいると思っていたら、彼女はトランスジェンダーでイェリのことを愛しているのが分かりました。どうして彼女を登場させたのでしょうか?

そういう人は現実世界でどこにでもいます。また、イェリが男性からだけでなく、女性からも愛されるというのを自然に表現するための人物だったという気がします。


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 アジアフォーカスで上映された『風と砂の女』『イリ』『豆満江(とまんこう)』は自身がマイノリティである朝鮮族であることを自覚して作られた初期代表作『キムチを売る女』同様に苛烈を極めるマイノリティの境遇を描いていたが、3年前の『慶州』は作風がガラリと変わり、穏やかに生と死を見つめる作品だった。本作では喜びと悲しみだけでなく、もはや生と死も融合し、監督はそれらを俯瞰して眺めているように思える。彼の興味と体の中に蓄えられたリズムは今後も変化していくに違いない。チャン・リュルはこれからどこに行くのだろう。


アジアフォーカス・福岡国際映画祭2017
 期間:2017年9月15日(金)~9月24日(日)
 会場:キャナルシティ博多ほか
 公式サイト http://www.focus-on-asia.com/

Writer's Note
 井上康子。中国に住む朝鮮族の存在を意識するようになったのは朝鮮族であるチャン・リュル監督の存在や監督作品を知ってからだ。朝鮮族自治州・延吉にはなかなか行くことができず、ソウルの朝鮮族街・加里峰洞に立ち寄ってみた。目に飛び込む看板の文字はハングルでなく漢字、食堂からは羊肉の香りが漂い、朝鮮族が独自の文化を持つことを体感した。


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