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Interview 『1987、ある闘いの真実』チャン・ジュナン監督 ~この映画で、美しさや純粋さがあった時代をふり返って欲しい

Text by Kachi
2018/9/4掲載



 時計が規則正しく時を刻む音と、映写機の回転音が響くファーストシーン。あの日あの瞬間に、時間が巻き戻される。まず映るのは、全斗煥(チョン・ドゥファン)大統領の動向を伝える「テンチョン・ニュース」と揶揄された夜9時のニュースだ。

1987-1.jpg

 『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』が、民主化運動の端緒となった光州事件の告発と闘いを熱く描き切った作品なら、チャン・ジュナン監督『1987、ある闘いの真実』は、尊厳を失って腐り果てた公権力の崩壊の足音を克明に見つめた映画だ。韓国映画界が誇る、華も実力もかね備えたオールスター役者陣が集結したという以上に、人民の気概を強く感じる。民主化運動とは、このようにドラマチックな熱風が吹き荒れた季節でもあったのだと痛感する。

 チャン・ジュナン監督は、『ファイ 悪魔に育てられた少年』以来4年ぶりの新作である。今回、来日した監督にインタビューを行った。

── 民主化運動家ジョンナム(ソル・ギョング)が聖堂から逃走するシーンで、窓のステンドグラスのキリスト像に重なるカットがあります。彼を捕まえようとしたパク所長(キム・ユンソク)はそちらに目を向けるのですが、陽の光で確認できず、結局取り逃がしてしまいます。キリスト像とジョンナムが重ね合わせているように感じました。このシーンの撮影でのエピソードを教えてください。

歴史の事実を伝える映画なので、観客が事実として受け止められるように、映画的な演出を最大限排除しようと考えました。そのため映画の始めのところも、ドキュメンタリー的な感じがあると思います。カメラの方向、ワーキング、もちろんズームなどもありますが、カメラを意識できないような状況で使いました。皆さんが一般的に見ているニュースですとか、ドキュメンタリーを撮っている時の方法を活用しました。しかし聖堂のシーンは、私がもう少し映画的な演出をしてみたいと欲を出したシーンです。ステンドグラスのシーンは、最後まで議論がありました。キリスト、鳩、影は、CGが出来上がる前まで、「なぜあれをやらなければいけないのか?」「時間の浪費では?」「退屈ではないか?」と制作側から意見があり、口論したシーンです。でも完成したシーンを見て、私は制作側と戦ってよかったと思いました。

── 南営洞対共分室パク所長が経験したことは、本当にあったことなのでしょうか?

映画的介在のあったシーンです。フラッシュバックをサウンド処理することによって新しい映画的経験をかもし出すことができると考えました。隣の部屋から聞こえてくる悲鳴の声と過去が結びつくように気を使いました。本当にヒヤヒヤしましたが二人の俳優が立派に演じてくれました。また、観客の皆さんが色々な解釈をできるように余地を残しました。竹は、南の方で育つ植物で、北朝鮮では一般的ではありません。ですので、南北のイデオロギーの違いについて話がされる時、「竹やり」が象徴的に出されることがあります。(自身の心の傷について)所長が真実を述べているのかもしれないし、単身で南に渡った彼が、生き残るために自身のキャラクターを作り上げ、ドラマを創作したとも考えられるよう描きました。キム・ユンソクさんとは色々なことを話しましたが、このシーンを演じる時は「真実だろうと信じて演じよう」と言いました。

── 政治的、あるいは歴史的な題材を映画で表現するのは、現在の韓国では難しいことでしょうか? 政権が変わる前と後では何か変わりましたか?

作品のオファーを最初にいただいた時は朴槿恵(パク・クネ)政権下でしたので、シナリオの脚色を秘密裏に行わなければなりませんでした。これは実話に基づいているので、本来であれば生存している人物にインタビューすることが基本ですが、できませんでした。私たちがこういう映画を作っているという噂が広まっても、不利益や妨害があるかもしれないと危惧しました。私たちは可能な限り、紙の資料をたくさん集めて作業を行いました。作っている間も、無事に完成させてお客さんに届けられるのかとても心配でした。1987年は、本当に奇跡のような出来事があった時代と言えますが、私たちが映画を作り上げたことも、同じく奇跡的なものだったのではないかと思います。
製作当時、政治の世界では、私たちがコントロールできないような状況が次々に繰り広げられていました。崔順実(チェ・スンシル)ゲートが明らかになって、政権の腐敗が発覚し、その後政治的な状況がダイナミックに転換していきました。一方で、俳優の皆さんが勇気を出してこの作品に参加する意思を表明してくださいました。そういった皆さんの力が合わさることによって、この映画を届けることができました。本当に奇跡的なことだったと思います。私は迷信を信じませんが、時折、誰かが見守ってくれていたのではないかと思うことがありました。映画の封切りの頃はかなり状況が変わっていました。公開数週間後、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が実際の遺族の皆さんと映画をご覧になりました。

── 今、日本では報道の自由が侵害されていますが、そうした中で暮らす日本の観客に何かメッセージをお願いします。

(日本語で)本当ですか?(苦笑) 映画にも描かれていますが、様々な人々がそれぞれにおかれた立場において、良心を守ることがいかに重要で、大きな力を発揮するかということがお分かりいただけたかと思います。そういったことがあってどのように歴史を作り上げていくか、変えていくのかということをこの映画は伝えています。本作に登場するユン記者(イ・ヒジュン)は、独裁政権と立ち向かい、真実を報道しようとしています。また女子大生ヨニ(キム・テリ)が光州事件のビデオを見るシーンがありますが、これは『タクシー運転手 ~約束は海を越えて~』でも描かれている、日本でも特派員として活動していたドイツ人記者が撮影したものです。こういったものも、韓国の歴史を大きく変えました。ですので、マスコミの力がいかに重要か、再度考えていただきたいです。参考までに申し上げますと、ユン記者はその後東京特派員でしたが、働き過ぎて過労死されたそうです。

── 監督は1970年生まれで、作品で描かれているデモの主な担い手である、いわゆる「386世代」の下の世代です。この映画は、国家と民衆とに単純に善悪に分けて対立させるのではなく、もっと複雑な立場や、多様な感情の人間たちを描いています。世代による監督の一歩引いた立ち位置は、そうした構成に何か影響があったのではないでしょうか?

複雑な側面があります。1987年に大統領直接選挙を国民が勝ち取りましたが、野党の金大中(キム・デジュン)と金泳三(キム・ヨンサム)が統一候補を立てられずに分裂してしまい、軍事政権を引き継いだ盧泰愚(ノ・テウ)大統領が当選してしまいました。ですから、私が大学に入学した時も、学生運動が盛んで、デモも行われていました。当時の人々は、勝利を手にはしたものの、同時に敗北感も抱いていたのです。そういった時代に私は大学生活を送っていました。私が学生の頃、キム・ギジョンという学生がいましたが、彼はデモの最中に亡くなりました。私も関連するデモに参加していて、催涙弾を受けました。デモの雰囲気に完全には入っていないかもしれないけれど、空気を十分に感じる立場にいたのです。映画を作るうえで、現実的な距離感がありすぎなかったことが、うまくまとめられた要因でもあります。同時に、時代の雰囲気を逃すこともなかった、と言えます。この時代を生きてきた方々が、私にこんなことをおっしゃっています。

「自分は本当にその時代を熾烈に生きてきた。だから現在もその中に閉じ込められ、囚われているから、客観的に事件をみつめることができなかった。だからこうして上手くまとめてくれてよかった。」

本当にありがたいと思いました。

── 朴槿恵前政権でも弾圧が起こっていました。歴史が繰り返されたのも事実です。弾圧とはなぜ起こるのでしょうか? 監督はどう思いますか?

この映画は歴史的事実を扱っています。歴史とは、一歩一歩進むにつれて、その足跡を残していき、後に続く歴史に影響していきます。日本のみなさんが韓国の現代史をすべて理解しているとは思いませんが、朝鮮半島は分断されている。戦争を経験している。朴正煕(パク・チョンヒ)政権が存在した。また、阪本順治監督が『KT』で描いた金大中拉致事件があった。学生運動もありました。朴正煕政権は終わりを迎えましたが、結局、後を継いだ(全斗煥大統領による)軍部独裁政権が始まります。お互い多くのエネルギーが足跡を残しながら、今に至っているわけです。1987年、この時に韓国において直接選挙制が始まり、憲法が改正されて憲法裁判所が作られました、昨年、朴槿恵前大統領が審判を受け、大統領の権利を剥奪されたのもここです。このように歴史とは奥深いもので、互いに影響を受けながら続いています。
私がこの映画のシナリオを書いている時、ろうそく革命が韓国で起きました。非常に悲しかったです。

「広場で人々が革命を起こした映画のシナリオを書いている最中、また30年経って同じことが起きている。何故だ?」

と。一方で、人々がまた力を合わせて民主化に向けて半歩進んでいる、踏み出すことができたとも思いました。歴史が前に進んだのだと期待したいです。歴史学者みたいですね(笑)。

── 1987年当時のスローガンが「あの日が来れば」だったと思います。「あの日」とは理想的な日のことだと思うのですが、監督自身はその理想に向かって動いていると感じていますか?

そう信じたい、と思います。1987年、私たちは本当に純粋で、熾烈な闘いによって独裁政権から大きな権利を勝ち取りました。その時に歌っていた曲が『その日が来れば』でした。「この歌が今現在の私たちにも有効ですか?」と問いかけたいです。1987年に大きな闘いを通して、革命に似た成果をあげました。しかし、その後私たちはどのように生きてきたのでしょうか。マンションの値段が高騰しているのは何故でしょうか。(既得権益に甘んじる)386世代の人たちによって値上がりさせられているのではないでしょうか。私たちがもう一度、あの時のことを振り返ってほしい、この映画がその鏡の役割を果たして欲しい、という思いで本作を作りました。この鏡をのぞき込むことによって、美しさや純粋さがあったあの時代を、映画を通してもう一度ふり返って欲しいのです。


 本作には当初、『普通の人』というオリジナル・タイトルがついていた。ごく普通の生活、権利、幸福を求めて生きている者たちが岐路に立った時に直面する、その一瞬一瞬の選択が実に劇的だ。自分ではどうすることもできないような、大きな社会の渦に巻き込まれてしまった時、人はどうすべきなのか。ラストシーンで淀んだ現実に突き上げられる拳は、か細いが、力強い。


『1987、ある闘いの真実』
 原題 1987 英題 1987:When the Day Comes 韓国公開 2017年
 監督 チャン・ジュナン 出演 キム・ユンソク、ハ・ジョンウ、ユ・ヘジン、キム・テリ、パク・ヒスン、イ・ヒジュン、ソル・ギョング、カン・ドンウォン、ヨ・ジング、ムン・ソリ
 2018年9月8日(土)より、シネマート新宿ほか全国順次ロードショー
 公式サイト http://1987arutatakai-movie.com/


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